天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

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ギフト番外編99中編『ドレスを届ける』

隣の席の子が社交ダンスを習ってるんですよ。ダーリンと一緒に。かっちょいーー!

yukio
 

「えーとえーとえーっと」
正広は、色つきのガムテープを手に唸っていた。
「これ、は〜・・・・・・・・・、アロマキャンドル、だから、えーと、青、と」
段ボールの中身を確認しては、外からでも識別できるようにテープを張っていっているところだ。
「いちいち、中見てんのか?」
「うんー。一緒に入ってたりするのもあるみたいで・・・」
「へー」
しかし、段ボールは壁になっている。正広は、脚立を持ち出して、一番上の段ボールの中身をチェックするので精一杯だ。
「いくら、キャンペーンで安かったからって、一気にこれだけ買うことないよなぁ」
「ねぇ」
脚立を押さえている由紀夫は、困ったもんだと今はいない奈緒美に文句を言う。いや、本人がいたら目の前で言うところだが。
「まぁ、とにかく、早く配っちゃわないと・・・」

電話がなったのはその時だった。

「はい、腰越人材派遣センターです」
典子が明るい声で電話に出る。
「はい、えぇ、昨日・・・。え。そ、それはぁ〜・・・」
「典子ちゃん?」
「えぇ、あの・・・。まぁ、あの、一応は・・・はい、はい・・・」
「どしたの?」
脚立から降りて、正広は尋ねた。
「昨日の運送屋から」
「うん。どしたの?」
典子は深く深くため息をついた。
「・・・昨日の荷物の中に、うちあてじゃないものが混じってませんか、だって」
「えっ」
正広は、さっきまで自分がくっついていた段ボールの壁を振り返った。
脚立に座っていた由紀夫も、これ!?と見上げた。
典子は溜息をついた。
今日の腰越人材派遣センターには、3人しか人員がおらず、しかも。
「・・・んじゃ、俺はこれから、届け物に・・・」
「あーー!にいちゃーーん!」
「由紀夫さぁぁーーん!!」
「いや!だってだって!」
両側から、脚立に押さえつけられたって、行かなきゃいけないものは、行かなきゃいけない。
「兄ちゃん、俺たちのこと、見捨てるんだ・・・。そぉなんだ・・・。正広なんて、もう段ボールの下敷きになっちゃえばいいって、そぉ思ってるんだ」
「おまえはジュンコか!」
水曜11時からのココリコ・ミラクルタイプに出てくる被害妄想キャラ、ジュンコの名前を挙げて由紀夫は正広を叱るが、正広どころか、典子までジュンコ化してしまった。
「そぉなんだ。今の電話も、きっと由紀夫さんからの電話なんだ。典子のことが嫌いだから。典子が憎いから・・・」
「そして正広のことも・・・。正広みたいなチビは、段ボールの下敷きになって、もっとチビチビになっちゃえばいいって、思ってるんだぁ」
「あーーもぉーー!!」
ここで、普通なら、手伝う!といわざるをえないところだが、しかし由紀夫は強かった。

びしっ!びしっ!!

両腕をつかみ、それぞれに被害妄想キャラになってしまっている二人から手を引き抜き、すかさず、でこぴんを炸裂される。
「いたーっ!」
「そんなもん、宅急便屋のミスだろうが。呼んでやらせりゃいいんだよ!」
さっさと荷物を取り、ネクタイを直し、髪の乱れまでチェックして、由紀夫は出ていった。
段ボールの壁の前にうずくまる二人を振り向きもせず。

「典子ちゃん・・・!」
「ひろちゃぁん・・・っ!」

ひしっ!と抱き合って約8秒。
「さ、電話するわ」
「うん、そだね」
すくっと立ちあがる二人だった。甘える相手もいないところで、むだな甘えはしない。そんな合理的な正広と典子。甘えの無駄撃ちを二人はとりわけ憎む!
こうして、腰越人材派遣センターに立ちふさがる段ボールの壁に、3人のチャレンジャーが立ち向かうことになったのだった。

「えーっと・・・」
もちろん最後の一人は、昨日やってきた気の弱そーーな、運送屋だ。
「わ、解らない、ですよねぇ・・・」
「はい。全部見てみないことには。総量を数えるのでも、結構大変です」
きぱっ、と正広は言う。
「すみません。昨日、ホントに荷物が多くて・・・」
彼が言うには、腰越人材派遣センターに、84個口とどけた後、あっちに、4個口、そっちに9個口、なんてやっていたら、1箇所、数が足りないところが現れてしまったと言うのだ。
「・・・それで、他は合ってたんですね」
「はい・・・」
「うちに、85箱あるってことなんですね!?」
「えぇ、ひょっとしたら・・・!」
「それじゃあ、やりましょう・・・!」
腰越人材派遣センターの人間は、体を使うことが結構好きだ。よし!がんばるぞ!とまずは段ボールの壁を崩し、中身をチェックする傍ら、別の壁に積み重ねていく。もう空いている壁、とうか、壁面は、全面窓ガラスの部分しかなかったため、どんどん怪しい事務所になっていってしまった。
「あぁ・・・、こんなことじゃあ、登録したい人が入ってこられないよぅ・・・」
ブルーな気持ちになる正広だったが、彼の仕事はこの段ボール運びだけではありえない。
電話がなれば出なくてはいけないし、FAXがくれば中身のチェックもする。
「はい、えぇ、登録キャンペーン中なんです。え、ご紹介ですか?あ、ありがとうございます!え!?今日ですかっ?」
この事務所にっ!?
はっ!と辺りを見る正広だが、ここ以外、どこがある・・・!
「は、はい・・・。お待ち、しております・・・」
動揺を押し隠し、数がはっきりしたら、やっぱり元の場所に戻そう・・・!と誓う。一面の窓ガラスを塞がれ、腰越人材派遣センターは薄暗くなってきた。
「後は、こっちのロッカーなんです」
壁を積みなおして、典子がロッカーのドアを開ける。
ロッカーの中は、まさしく3Dテトリス状態で、段ボールがこれでもか!とつめてある。
「あ、じゃ、じゃあ、また出しながら・・・」
運送屋は、手前から、外に、外にと出していく。今度は、この3Dテトリスを、壁になるように並び替えていかなくてはならないのだ。

「あのー・・・」
ロッカーの段ボールが半分ほどなくなったとき、薄ぐらい部屋に、おそるおそる、といった声がした。
「はぁいっ?」
「あの・・・、どしたん、です、か・・・?」
「あぁ、こんにちはぁ〜」
正広も知っている、派遣登録している女性だった。さっき電話してくれたのが彼女で、さっそく紹介する友達を連れてきてくれたのだ。
「早かったですね」
「えぇ、でも、これ・・・。まさか・・・!」
「違います、違います!登録料だけ貰って、そのまま会社ごとドロンとかそーゆーことじゃなくって!って、大体うち、登録料とかとってないじゃないですかぁー!」
「あ、あ、そ、そぉですよ、ね」
ニ、ニコ、と笑った彼女は、キャンギャル経験の多い女性だったが、その笑顔は引きつっていた。
人間、図星を差されると、そうなるものだ。
「ちょっと・・・。大掃除なんです・・・。あ!アロマキャンドル差し上げますね、紹介してくださった方と、来てくださった方に!」
どうぞ、と薄ぐらい部屋ながら、そこは綺麗にしてある応接セットに二人を座らせると、典子がお茶を持ってきた。
二人とも、もう段ボールとの仕事には疲れていたのだ。
必要以上に丁寧に登録内容の話なんかをして、二人がかりでの接待がよかったのかなんなのか、新しく彼女は登録をしてくれて、二人そろってアロマキャンドルと、アロマランプを持って帰った。
「「ありがとうございましたーー!」」
やれやれ、と振り向いた二人は、泣きそうな顔の運送屋を見た。

「84個。確かに・・・」
「あら」
「あれ・・・」
正広たちも気の毒そうな顔をするが、ない袖は振れない。
「他には置いてないですよね。開けたりとか・・・」
「開けたのは、ここにある二つだけです。アロマキャンドルと、アロマランプの段ボール」
「これだけですよね」
ロッカーの中は、からんとしていて、もう何もない。

ない。

と、3人は思った。
しかし、そのロッカーには。

<つづく>


ココリコミラクルタイプ・・・。あぁ、気づけば毎週見てしまっているのです・・・!松下ゆきが変で・・・!前は小西真奈美も出ていて・・・!

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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