天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

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ギフト番外編101快適生活を届ける』

昨日と変わらない今日、今日と変わらない明日を愛する女がまだまだダラダラとお送りするギフト番外編をお楽しみ下さい。もちろん、ライバルはサザエさんです(笑)

yukio
 

野長瀬家の朝は、NHKで始まる。下手したら、テレビ体操までしちゃいそうになるのが野長瀬だ。
朝ご飯をきちんと用意して、NHKを見ながら食べる。そしてその美しき朝の風景の中に欠かせないのが野長瀬智子。
ミニウサギの野長瀬智子である。
もちろん、野長瀬家の王は野長瀬智子なので、朝の風景に限らず、野長瀬家にはなくてならないのが真っ白なミニウサギにして、巨大。智子にしてオスな、野長瀬智子。
智子は今、テレビを見ていた。
NHKの朝といえば、朝の連続テレビ小説。そして、今放送されているのは、「ちゅらさん」
野長瀬は、登場人物である、柴田にやたら注目してしまう自分が不思議だった。村田雄浩扮する柴田は、その場にちゃんといるのに、誰からも気付いてもらえないような印象の薄い人間だ。どうして、その柴田にそんなに目が行くのか・・・。

自分と同じ境遇だからじゃん?

智子はそう確信しているが、野長瀬的にはいつまでも不思議なことのようだ。
そして、智子がなぜ「ちゅらさん」を見ているかというと、それはこの「ちゅらさん」というタイトルにあった。野長瀬は、「えり」と呼ばれている主人公の名前が、本当は「ちゅら」なんだと信じている。漢字では、恵里と書いて、「えり」とも読むけど、沖縄の言葉では、「ちゅら」って言うんだ。そうだ、そうに決まっていると。
しかし、智子の知能指数はひょっとしたら野長瀬より高いかもしれないので、そんな智子は知っていた。
「ちゅらさん」とは、「美しい」「綺麗な」といった意味の沖縄の形容詞だ。
そして、智子は思う。
自分こそ、「ちゅらさん」だと。
こんなヒロインよりも、自分こそが「ちゅらさん」なのだ!と。
そんな訳で毎朝ライバルの観察に余念のない智子だが、最近、ご機嫌はよろしくない。
なぜって。
梅雨だから。
野長瀬が出かけた後、あー、やれやれ、やっと邪魔なのが出ていったよ、と、一人でのびのびとしている智子も、ベランダを眺めてはため息をつく日々。
智子は、その美しい毛皮を維持するため、時にはお風呂に入ることさえも厭わない、そんな美を追求するうさぎ。美しい白い毛並みを維持するには、適度なフワフワ感が大事なのだ。
すなわちそれは日光浴。
太陽の光を浴びてキラキラと輝き、温かさでフワフワと膨れた、あの毛皮!
あの時の俺は、ちゅらさん度150%アップ!アップ度合いが大したことないのは、こうしていても、十分美しいから!
でも、湿気が多いと、毛皮にしっとり感がでるものの、地肌にも、じっとり感が・・・。
あぁ、不愉快。
ちゅらさんであるべき自分としてはとても不愉快!

なっとらぁーーーーん!!!!

と、ちゃぶ台の足を齧る智子。
がっ!と齧りつき、足でキックも忘れない、そんな智子だった。本当なら、足を齧り尽くしてもいいくらいだが、智子にはできなかった。何故って、何故って。
あ・・・っ、あつくるし・・・っ!
智子は湿気に弱いのだ。
智子のみならず、兎は湿気に弱い。
うううう・・・・・・・!
やってられっかーーー!!!!
そこらにあるものを片っ端からなぎ倒し、冷たい板張りの台所で、長々と寝そべる智子だった。

「智子ちゃぁ〜ん」
梅雨時期でも野長瀬は元気だ。
ふ、あんなお世話係りに、この俺の繊細な神経や、繊細な体調を理解しろって言うのが間違いなんだよ。ふん。
伸びている智子を見て、きゃあ!可愛い!と乙女な喜び方をする野長瀬は、撫でたーい!抱っこしたーい!と駆けよってくる。
ぎゃあ!
智子は逃げた。
外は雨。
野長瀬は濡れている。
濡れている人間からは湿気!湿気が!
智子のラビットアイは、野長瀬の体から発生する湯煙が見えるような気がした。
「智子ちゃぁ〜ん!」

しかし、それはいつもの智子そのものの反応だったので、野長瀬は、気にせず智子を追いかける。
ああああ、助けて・・・!
あの暑苦しい男に、暑苦しく湿気ている世話係に触れられるなんてイヤーーー!!!

逃げる智子、追う野長瀬、荒れる部屋。

いつもの光景だが、湿度は、80%をこえて、相当鬱陶しい感じになっていた。

「とーもこちゃんっ」

由紀夫と、正広がやってきたのは、そんな梅雨の中休みとも言える、晴れた日だった。正広が買い物に行く先が野長瀬のアパートの近くだったので、智子ちゃんに会いたーい!と鍵を渡してもらっていた。
由紀夫がついてきているのは荷物持ちであって、智子に会いたい訳ではない。
「わー、久しぶりー」
とことこっ、と和室に入っていった正広は、驚いた声で、由紀夫を呼んだ。
「に、兄ちゃんっ」
「んだよ・・・」
もしかしたら、前世で親の仇同士だったのかも、と思うくらい、由紀夫と智子の相性は悪い。
「見て・・・!」
「え?・・・えっ!?」
さすがの由紀夫も驚いた。
和室では、智子が、巨大ミニウサギとはいえ、しょせんウサギの智子が!

タオルケットを引いていた。

日の当たる場所にタオルケットを持っていき、そこに広げようとしていた。まずタオルケットが丸まった状態で移動させ、タオルケットの外から手を出して、引っ張る。それを、あちこちでやる。タオルケットがきちんと引かれるようなるまで、あっちからひっぱり、こっちから引っ張りして、綺麗に広げ切った。
そして、満足そうに、太陽を浴びているタオルケットを確認してから。

ん?何?

と振り向く。
「智子ちゃん、すごーい!タオルケット引けるんだぁ!」
何ゆってんだよ当たり前だろ。
そんな顔をしてみせるけど、正広は、智子が唯一気に入っているお世話係だ。
ん、抱っこか?んむ。くるしゅうない、といったお気に入りのお女中を見る、お殿様のような態度で接してくる。ちなみに、野長瀬は気に入らない下足番といった感じで、これが由紀夫ともなると、南北朝時代からの敵味方みたいな反応になる。
「どーして、兄ちゃんは智子ちゃんが嫌いなの?」
抱っこして、よしよししながら正広が尋ねる。
ふん、と由紀夫は鼻で笑った。
「たかが、ウサギごとき、好きも嫌いもないだろ?」
な・な・なんだとぅーーーーー!!!!てめ、上等だ、表出ろぅ!と色めきたった智子だが、正広の撫で方は絶妙で、へなへなーーと闘争心が奪われてしまう。
そして思うのだ。
あっ!いけない。今の俺の毛皮は、湿気の分だけ、2割ダウン!こんな毛並みだと思われたら、野長瀬智子一生の恥!
ひょっとしたら、プライドのために死ねる。
そんな智子は、えいっ!と居心地のいい、正広の腕から逃れ、タオルケットに駆け戻った。
このタオルケットは、今、温められているところだ。
綺麗に広げられ、満遍なく温められたタオルケットの上に乗り、智子はながながと寝そべった。
背中からは日光。腹からは温もり。
こうして、毛皮をふかふかとさせていくのだ。あぁ、至福・・・。

正広は、その姿を見て、すごい!と思った。
雨の谷間には、きちんと日光を浴びようだなんて、まるで長い冬に耐えぬくヨーロッパ人のよう!この智子の努力に、自分も協力したい!と。
「兄ちゃん、買い物行こう!」
「え?あぁ」
そりゃあ、その途中で寄ってるんだから、当たり前だろうと思いながら、座りもしていなかった由紀夫は、すぐ様玄関に向かう。
一人ひっそりエステ状態の智子に、正広は声をかけた。
「すぐ戻ってくるからね!」
と。

出ていく足音を聞き、智子は、少しだけ傷ついていた。
あの世話係は、もうちょっと、そばにいてくれるはずだったのに・・・。俺の毛皮がしっとりとしていて、地肌がじっとりとしていたばっかりに・・・!
太陽の光を浴び、毛皮は、しっとりから、ふわふわへの変貌を遂げている。本質はしっとり、しかし、触感はふわっと、というのが、智子の理想とする毛皮だ。
もう少したって。
いつもの毛皮のレベルにまで達したら!どこぞの王女様の冬のコートで使える毛皮はこれしかない!ぜひ譲ってください!って言われるほどの毛皮が戻ってくるのに!

それでも、乾くまでの時間を短縮することはできない。
ドライヤーが使えれば、と思うが、ドライヤーの熱は、毛にとってよろしくない。
智子は、ひたすらに、その温もりを吸収するべく、タオルケットの上で、くるくると回っていた。

「智子ちゃん!」
ん、この手触り・・・!と智子が納得しかけていた時、正広の声がした。
「これ買ってきたよ!」
タオルケットの上の智子と、玄関から駆け込んできた正広の目が、しっかり合った。
智子がタオルケットから下り、正広の手が伸び。
そして、智子は正広の腕の中にすっぽりと収まる。
「うわー・・・!ふわふわだぁ〜・・・!」
そう!これこそが、野長瀬智子の本来の毛並み!これ!これこれ!!
智子は満足だった。
どこをとっても「ちゅらさん」な自分の毛並みはこれだ。高いレベルであることを、きちんと、正しく、認識してもらわなくては困る!
ふわふわー、ふわふわーー!と智子を撫で撫でしていた正広は、そうだ、これ、と智子の前に荷物を置いた。
「これ、齧ったら危ないんだけど、でも、こういう時期には必要だよね」
正広が買ってきたもの。
それは、水取りぞうさん。湿気を取る例のグッズだった。
「これで部屋の湿気を取ったら、いつもふわふわでいられると思うから!」
さすが俺の世話係!
感激した智子は、もっと撫でろ!と要求をするのだった。
「ふわふわーー!!」
もっと撫でろーー!
「うわーん!気持ちいぃーーー!」
もっともっとぉーー!!
「智子ちゃんすごぉーーい!」
もっともっともっとぉーーー!!

その直後、いい加減帰るぞ、と由紀夫によって、引き離され、怒った智子はまたもや部屋で大暴れ。うちに帰った野長瀬が、倒されてはいるけれど、破壊されてはいない水とりぞうさんを見て、はっ!と気付いた。
「じょ、除湿機ですね・・・!?」
夏のボーナスが出たら、まずは除湿機を買うことに決定した、野長瀬家であった。


隣の席の子の家の犬は、温かい日に、本当に毛布を広げるそうです。地面の上に丁寧にまっすぐ広げてあたためて、それを小屋に持ち込んで寝るそうですよ。暑い日はプラスチックの小屋を引っ張って涼しい日陰に移動。気に入らないエサを出されると食器をひっくり返し、水入れは、日陰に置いておく。そんなお利口さんだそうです(笑)

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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