天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

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ギフト番外編102全編『さくらんぼを届ける・・・?』

さくらんぼをいただきました!幸せ!美味しい!可愛い!さくらんぼはいいですねぇ・・・!

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腰越人材派遣センターの冷蔵庫は、オフィスにあるとは思えないサイズだ。
イタリアsmeg社製で、色は鮮やかな赤。日本では売ってないものを、イタリアから無理矢理取り寄せた奈緒美に乾杯。
そして完敗。
なんて下らないことを考えながら、正広はその真っ赤な冷蔵庫を開ける。

「あれ」

その冷蔵庫に見なれないものがあった。
いや、それ自体は、何度も見たことがあるし、何度も食べたことがあるものだが、どうしてそこにあるのかが解らない。
「・・・さくらんぼ・・・」
その朝、正広は由紀夫と一緒に事務所に来た。由紀夫は、到着と同時に自転車を洗い始めたから、今事務所にいるのは正広一人だ。
「いつの間に?」
牛乳を飲みましょう、とコップに注ぎながら正広は首を傾げる。
昨日、最後に事務所を出たのも、早坂兄弟だった。そして、今朝は一番に出ているはずなのに、昨日はなかったさくらんぼが冷蔵庫に・・・。
一体何が・・・!?

戦慄を覚えながら、兄を呼んだ正広は。
「夜に、誰か来たんじゃねぇの?」
という答えに、ブーイングする。
「つまんなーい!」
「つまんないったって、それ以外何が考えられんだよ!」
「さくらんぼの妖精さんがぁ〜」
「だから、朝っぱらから子供向けアニメを見るのはやめろっつってんだよ」
「窓から、ふぃよよよぉ〜ん♪って入ってきてぇ〜」
「『あ〜ん、あたしを食べてぇ〜♪』って冷蔵庫に入って冷えてんのか!自ら!」
「便利だよねぇ〜」
「そりゃ、便利だけど!」
「でも、一体どんな妖精さんが・・・」
口の周りを牛乳で白くしながら、冷蔵庫を前に難しい顔をする正広だったが、付き合ってられるか、とガレージに下りた由紀夫は自転車をピカピカに磨き上げた。

「おはよーございますっ!」
今日、奈緒美は一泊二日で接待ゴルフ。野長瀬はゴルフ場まで奈緒美を連れていき、昼過ぎにようやく戻ってこれた。
「あれ?」
しかし、事務所はもぬけの殻。
「どうしたのかな・・・」
典子は休みだけど、正広はいるはずなのに。
倉庫にでもいるのかな、と思いながら冷蔵庫を開けた野長瀬は、あ、さくらんぼ・・・!と目を輝かせる。
さくらんぼ、さくらんぼ。
アメリカン・チェリーしか買えない野長瀬とっては、憧れのさくらんぼ。
もしかして、今日のおやつはさくらんぼっ!?ウキウキっ!とスキップを踏む野長瀬だったが。
「あ、野長瀬さん、お帰りなさい」
倉庫から出てきた正広に、きっぱりと言われた。
「そのさくらんぼはダメですよ」
「えぇーーーー!!」
「あっ!でも、野長瀬さんのだったら、もちろん大丈夫ですけどっ!」
ものすごい悲鳴を上げた野長瀬に、正広は慌てて言った。そうか、野長瀬さんのだったんだ。なんだ、なんだ、そうだよね。妖精さんじゃないよね。
ん?
野長瀬さんが、さくらんぼの妖精さん!?

正広とて、さくらんぼは大好きだ。どうにかして食べたいと思っている。その思いが、正広の思考を空回りさせていた。からからと。
「野長瀬さんの・・・、ですよ、ね・・・?」
上目遣いに尋ねられた野長瀬も思った。
あぁ!これが自分のさくらんぼであったなら、どんなによかったか!しかし、しかし、そんなひろちゃんだって、本当は、自分のなんだけど、3時まではダメって、そーゆーことじゃないの?そーゆーことじゃないのぅーーー!!??
「いや、違う・・・」
「え、違う、の・・・」
じゃあ、このさくらんぼは一体・・・?

いいからしめなさーーい!と赤い冷蔵庫が怒りだすほど、二人はじっと眺めていた。
冷蔵庫の中のさくらんぼを。
ガラスの器にいれられた、可愛いさくらんぼを。

「だから野長瀬さんでもなかったんだよ」
仕事から帰ってきた由紀夫に正広が言った。
「じゃあ、奈緒美とか、典子じゃねぇの?あ、典子ってことはないか。旅行中だもんな」
「そうだよ。彼と旅行中」
「え!彼と!?」
驚いた野長瀬に、正広と由紀夫も驚いた。
「彼といくって言ってたじゃん!」
「友達ってゆってましたよ!?」
「友達って・・・。彼に決まってんだろ?」
「えー・・・!?」
「え、え、野長瀬さん、典子ちゃんのこと、好きだったの?」
興味津々と太ゴシック体で顔に書いた正広が顔を寄せてくる。
「そうなの?」
由紀夫の顔に書かれた文字は教科書体で、サイズも控えめだが、でも、しっかり「釣り合い取れねぇ〜」と読める。
「いや、いや、典子ちゃんがどーとかってことじゃあなくって!」
「あぁ、せっかく仲良しだと思ってたのに、そんなことも教えてくれないなんて、サダコ、ショーックってこと?」
「ううう・・・!」
「おまえは女子高生かぁー!」
由紀夫に怒鳴られたって、野長瀬のショックは和らがないのだ。典子ちゃん、ひどい・・・!友達だと思っていたのに。
「てゆーか、典子ちゃん、別に隠してなかったよねぇ」
「隠してなかったよ、別に」
「でも、僕には隠してたんですね・・・!」
「いやいや、おまえにも言ってたじゃん!」
「言ってたって・・・」
「んーと、ほら、あれとか、『ツレの車で行くんですけど〜』とか」
「彼って言ってないじゃないか!」
「でも、隠してなかったもんっ!」

「まぁまぁ」
早く帰りたかった由紀夫が二人の間に割って入る。
「典子じゃなかったら、奈緒美だろ。鍵持ってんの、後ああいつだけじゃん」
「でも、社長はそんなこと一言も・・・」
「言い忘れたんだろ。だってな」
由紀夫は振り向いて言った。
「奈緒美じゃなかったら、どーすんの、おまえら」
「え?」
「この事務所の鍵を持ってるのは、俺たち5人。ここにいる3人は、確実にこのさくらんぼを知らない」
そう言って、由紀夫は、じっと野長瀬を見つめた。
「・・・野長瀬じゃない」
「なんでですかーー!!」
「こんな込み入ったややこしいことするか!おまえが!おまえは、さくらんぼを手に入れたら、一人で食べようと家の冷蔵庫で冷やした挙句、あのバカウサギに全部持ってかれるようなヤツだろ?」
「智子ちゃんは、バカウサギじゃなーーーい!!」
論点がずれている野長瀬は放っておいて、由紀夫は正広のほうを向く。
「俺じゃないことは、俺が知ってるし、正広でもない」
「信じてくれてるの・・・!?」
兄ちゃん!とキラキラと目を輝かせる正広。
「正広も、さくらんぼを手にいれたら、どうにか自分がたくさん食べようとして、食べすぎたあげく、おなかを壊すタイプだからな」
「赤ちゃんみたいに言わないでよぅーー!!!!」
「典子は、ツレだか、彼だかの車でおとといから旅行中。この状況で、奈緒美じゃなかったらどーすんだよ」

「なーんだ社長ったら!」
「奈緒美さんも、食べてもいいよってメモくらいつけてくれてたらいいのにぃ〜」

こうして、3人だけの腰越人材派遣センターは、その後穏やかに仕事をした。

翌日も、まだ3人だけの腰越人材派遣センターで、最初にやってきた正広は、今日もまた冷蔵庫を開ける。
牛乳、牛乳♪と唱えていた正広だったが、そのまま固まる。
冷蔵庫が氷点下20度くらいになってて、そのまま固まってんのかな、なんて思った由紀夫が後ろから覗き、そして、由紀夫も固まってしまった。
「おはよーございます!」
2秒後にドアをあけた野長瀬も、何?と冷蔵庫を覗き込み、やっぱり固まった。

「なんで・・・」
「どういうことだ・・・?」
赤い、おされな冷蔵庫の中には、さくらんぼが入っている。
それは前日と同じだ。
ただ、量が倍になっている。
「誰・・・?」
おそるおそる冷蔵庫の扉を閉めた正広は、はっ!と顔をあげ、冷蔵庫を叩き、もう1度ドアをあけた。
「な、何だ?」
そして、驚く兄に真剣な顔をして言う。
「冷蔵庫を叩くと、さくらんぼが増える♪」
「そーんな不思議な!っていらねーだろ、そんな冷蔵庫!」
「え、それはいいですよ。も一つ叩いたら、3つになるんでしょ?」
「全部だぞ?」
「・・・全部はキツいなぁ〜・・・」
「それで、増えてたのかよっ!」
怒った声で聞くと、正広がしょんぼり首を振る。
「増えても、減ってもなーい・・・」

果たして、このさくらんぼはどこからどうやって・・・!?

<つづく>


イタリア製の冷蔵庫は、性能はさっぱりわからないんですが、さすがイタリア!という綺麗な色をしてました。ネットで見ただけですが(笑)実は赤い怪獣のうちの冷蔵庫がとても可愛い黄色です。うーらやーまちーー!

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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