天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

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ギフト番外編104電話をする』

隣の席の子に電話が時々かかります。一体誰から!?

yukio
 

その前日。仕事から帰ってきた正広は、ねむたーい、とソファで転寝をしていた。
食事ができたから起きな、といえば起きたけれど、あまり食欲もなく、また寝る。
夏バテかな、と好きなようにさせていた由紀夫だった。

「にーぢゃん・・・」
「うわっ!」
珍しく正広に起こされ、由紀夫は驚いて目を覚ます。
「何!あ、おまえ、その声・・・」
「がぜがなぁ・・・・・・・」
ぴたっと額に手を当てると、確かにほんのり温かい。
「うわー、夏風邪だ。ん?なんで寒い?」
由紀夫はタオルケットをひっぱりよせて、正広にかぶせる。
「えっ?なんでクーラー効いてんだっ?」
「あ、あづがっだがら・・・」
「暑かったからって、クーラーつけたまま寝たら体に悪いだろー!」
そんな訳で、早坂家には扇風機と、ソフト氷枕が用意されている。暑い夏もクーラーは消して寝ることにしているのだが。、耐えられるか!と正広がつけてしまったらしい。
「とにかく、おまえは休みだな」
ベッドから出て、由紀夫は朝食の準備にかかる。正広に何か食べさせないと薬も飲ませられない。
「何か食えるもんあるかー?」
「うー・・・」
ぐずぐずと横になりながら、正広は首を振る。返事がないってことは、食欲ないってことだなと判断しつつ、そうめんを茹でてみたりする。
氷水でキンキンに冷やして、正広が好きだと買い込んでいる麺つゆも冷たくする。
「ちょっとでいいから」
冷たい器ごと寝ている正広の頬に当てると、つめてっ!という顔でしばらく暴れた後、仕方なく、といった風に体を起こす。
「いい、寝る・・・」
「いい香りだなぁ〜」
麺つゆを正広の鼻の前でゆらゆらゆらすと、つまりかけの鼻の奥に、ようやくその香りが届いたようだ。
「う、うん・・・」
「ちょっとな」
「ん、ちょっと・・・」
と、言いつつ、そうめん一人前なんて、簡単に食べてしまった辺り、あまり心配することはないなと由紀夫は思った。
「俺はー・・・、休む訳にはいかないんだな?」
「ん・・・、にいぢゃんは・・・おぢごど・・・」
一般的な風邪薬を飲み、正広はタオルケットの下に入り込む。
「クーラーつけとかないと暑いよなー・・・」
ジレンマだったが、由紀夫は、一階に放置されていた、ビデオ。
じゃなくて、加湿器を持ち出してきた。
「冬だと思えばいいんじゃん?」
「え・・・?」
「クーラーかけて、布団被って、加湿器かけてってので、どうかな」
クーラーで乾燥してるのもよくないだろうと、少々ムチャなやり方で、湿度を確保し、とにかく寝てろと由紀夫は言った。
「なんかあったら電話してこい。昼は、レトルトのおかゆ用意してるから、後もう、あれチンするだけな」
細々と世話をしつつ、由紀夫は事務所に向かった。早坂由紀夫担当課長から、びしばし!仕事をいれられている身分なので。

これは、早坂兄弟の間では恒例のことなのだが、正広が休んでいるとき、由紀夫は時々電話をいれるようにしていた。
大体、どういう状態かは把握できるので、今までは起きている時間に電話が出来た。のだが。

「あ、悪ぃ、寝てたか!」
『ん?んん・・・・・・ん・・・』
出先から電話をしたのは、十二時過ぎ、昼前には一度起きるだろうと思っての電話だった。
「なんかあったらすぐ病院行けよ」
『う・・・、うん・・・』
ぐじゅぐじゅと返事をする正広が気にかかるが、寝てる途中で起こしたのなら悪いことをしたと由紀夫兄ちゃん、反省。
担当課長からの仕事をしっかりこなしつつ、もう一度電話しようと思ったのは、五時過ぎだった。
朝の感じからいけば、熱はそんなに高くない。
そろそろ一度は目を覚まし、退屈しはじめるパターンのはずだったが。
「あれ、出ない・・・」
まさか出かけてる訳じゃないだろ、と思った時、受話器の上がる音がした。
『・・・・・・・・・・・はい・・・・・・・・・・・・・・・』
「正広?」
『・・・・・・・・・・・はい・・・・・・・・・・・・・・・』
「おまえ、大丈夫か?」
『・・・・・・・・・・・はい・・・・・・・・・・・・・・・』
喋り方に、なんの抑揚もなかった。
「お客さん、ダイヤの指輪いかがですか?」
『・・・・・・・・・・・はい・・・・・・・・・・・・・・・』
いるのか!ダイヤの指輪が!
「いいから電話切れ!切って寝ろ!」

これはいかん!と由紀夫はダッシュした。今日はもう直帰決定で、三十分ほどで家に帰りついたのだが。
「あああ!」
正広は、受話器を手に床に座り込んだまま、はい・・・・・・・・、はい・・・・・・・・、と頷いていた。
「正広!」
「う・・・?」
「何やってんの、おまえ!」
「・・・電話・・・」
「いやいや、電話かかってきてないだろ!」
案の定、ツーツー言っているだけの受話器を戻し、額に手を当てる。相当やばい状況かと思いきや。
「ん?」
自分の額にも当ててみて、もう一度、正広にも当てる。
「・・・熱、ひいた?」
「・・・はい・・・」
「何やってんの・・・?」

「・・・・・・・・・?」

不思議そうに由紀夫を見た正広は、眠い、と一言言った。

「寝ろ!」

由紀夫がそう答えたのは言うまでもない。

 

ギフト番外編104電話がくる』

目が覚めた時、正広は喉が痛いと思った。
その感覚には覚えがある。
風邪だ。
いけないことは解っていたけど、どぉーーっしても暑くて!クーラーをつけてしまった。
あぁ、風邪ひいちゃった。
昨日の夜から、なんかだるかったのに。
自らとどめ刺しちゃった・・・。

由紀夫に症状を訴えると、そうめんを作ってくれた。これと薬で、寝てれば治るはずだった。

薬の力もあって、すやすやと寝ていた正広が起こされたのは、11時頃だった。
「う・・・?」
電話がなっている、と、よろよろ起きあがり、よろよろ電話に出ると。
『あ、ひろちゃん?』
典子だった。
「うん・・・」
『風邪、大丈夫?具合どう?』
「ん、薬、飲んでるし・・・」
『そっかそっか。あ、あのね、あたし、今、近くまで来てるんだけど、何かいるものあったら買っていこうかと思って』
「え、いいよ、そんな、の・・・」
『そう?じゃ、なんかあったら、電話して!』
「ん、ありがと、典子ちゃん・・・」
電話をきって、よろよろとベッドに戻ったところで、また電話。せっかく由紀夫が持ってきておいてくれた子機を、リビングのテーブルに置きっぱなしにしてしまっていた。
「あああ・・・」
またよろよろと戻って出てみたら、それが由紀夫からの電話だった。
と、思う。
ちょっとはっきり覚えていない。

それから、ゆっくりと意識が戻ってきて、おかゆと、梅干を食べ、いいともを見て、もう一度ベッドに入る。薬を飲んだら、また眠たくなったところで。

「電話・・・」
今度は、ちゃんと枕元においてあった子機を手にする。
「はい・・・」
『もしもし、ひろちゃん?』
「・・・野長瀬さん・・・?」
『そうそう。野長瀬だけど、ひろちゃん、桃食べない?』
「桃・・・?」
『お客さんが、桃持ってきてくれて。病気の時はやっぱり桃かバナナだろうと思って!』
「桃・・・」
冷たい桃は確かに美味しいだろうと思った。思ったけれど、皮を剥くガッツがない。できれば、安くてもいいから桃の缶詰にして欲しいくらいだ。
もちろん、白桃缶詰は高いけど。
『どうしようか!』
う、ちょと、うるさい・・・。
耳に痛かったけれど、正広はそんな失礼はいわない。
「あの・・・よかったら、兄ちゃんに、預けて・・・ください・・・」
『あ!なるほどね!』
そして、野長瀬は、急に小さな声になった。
『早くよくなってね。ひろちゃん』
「野長瀬さん・・・」
『今、もう社長と二人っきりで、辛くて、辛くて・・・っ』

のながせー!何やってんの!洗車はっ!?

そんな声が遠くから聞こえてきた。
『あぁ・・・っ!じゃ、ひろちゃん、お大事に!』
「あ、はい・・・」
といった時には、もう切られていた。
桃か・・・。と思いながら横になったのだが、なんとなく眠気はなくなっていた。涼しい部屋で、毛布をかぶってぐずぐずしていると、そのうちまた眠たくなってくる。
薬も効いてるな、というふわふわした状態で、また電話がなった。

あ、あれ・・・?
子機が見つからない。
ついさっき、持っていたはずなのに。
仕方なく、はっきり音がしている親機のところまで生き、受話器をとった。
『ひろちゃん、夏風邪ですってー?』
奈緒美だった。最後の大御所だ。
「はい・・・すみません・・・」
『あぁ、いいのいいの。あのね、ひろちゃん、ちょうどいいっていったら、あれなんだけど』
「はい・・・」
『アイスクリーム送ったから』
「あ、あいすぅ・・・?」
『ゴディバのなんだけど、今日家にいるからちょうどいいと思って。受けとってね』
ゴディバの、アイスクリーム・・・?
『クール便で届くから、ちょうどいいじゃない?家にいるときの方が』

そ、そうかな。
そうなのか。
じゃあ、起きてなきゃ。

親機の前で起きてなきゃ、起きてなきゃ、と呟きながら、じっと座っていた正広は、もう1度、電話がなったような気がしたが、あまりはっきり覚えていない。
ただ、起きていなくちゃ、と思っていただけだ。

 

「これがゴディバのアイス!」
寝るだけ寝た正広がすっきり目覚めたのは、夜10時過ぎだった。
熱はすっかり下がっていたからいいものの、電話機の前で、座ったままゆらゆら揺れている正広を見た時は、どうしてくれよう!と電話をしてきた3人に殺意を覚えたものだが、まぁ、無事ならそれでオッケーだ。
「ん、食う?」
「食う食う!」
正広にしてみれば、たかが、369ml。楽勝ー!とそのままぱくぱく食べて、あっという間に空にした。
「おいちー!さっすがゴディバって感じ!チョコ!」
「ゴディバだからな」
その日のうちに、届いた3つのアイスはすっかり食べ尽くされてしまい、翌日、私も食べるーと奈緒美がやってきた時には、もう箱すらなかった(ゴミの日だったので)

1個千円のアイスも、早坂兄弟にとっては、ただの甘いアイスクリームにすぎないのだった。


隣の席の子に電話をかけてくるのは彼女の夫。風邪で寝ている夫は。
「病院のトローチって1日4回って言われたけど、それ以上なめたらあかんの?」
といった電話をかけてくる。
・・・ぷりちー・・・(笑)
だって、外見は、Vシネなのに(笑)!

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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