天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

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ギフト番外編105パンを届ける』

こないだ新潟で美味しいパンを食べました。いいね、パンってね!

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「はう・・・っ」
その朝、稲垣アニマルクリニックの王子様(患畜の飼い主談)稲垣吾郎は軽く狼狽した。
彼は一人暮しなので(ニ本足の子猫ちゃんがいる時なんてない、とゆってしまっては嘘があるが)、食事は自分で準備をする。
朝から、純和風の日だって珍しくない。
朝粥は、京都風にあっさりと美しく。吉野葛のとろみ餡をちょっとかけた朝粥に、薄味のお野菜。高野豆腐も忘れたくない。
でも、炊きたてのご飯に、お味噌汁、焼き魚、焼き海苔、お漬物。そんな旅館の朝食も捨てがたい。魚は色々と。干物もいいし、あぁ、めざし。いいね、めざし。
味噌汁の具にもこだわっていきたい思いはたっぷりだ。

イギリス式も捨てがたい。薄いトースト、ベーコン、焼トマト、卵料理はなんにしよう。

こんなに、こんなに、朝食にこだわっている稲垣医師。
その稲垣医師が朝から狼狽しているのには訳があった。
夜寝る前から、明日はパンにしようと思っていたのに。
パンがない!
なんでないんだ!とキッチン中を捜してみたが、見つかったのは、ゴミ箱の中のパンの袋だけ。

がーん。

大きな書き文字が、稲垣医師のバックに描かれた。
パンがない、なんて・・・!
一日の始まりは朝食、と堅く心に決めている稲垣医師はショックを隠し切れない。そして隠さないまま受話器を取った。

「はい、腰越人材派遣センターです」
はきはきと、朝一番から返事をした正広は。
「はい?」
聞き返した。
「もしもし?あの、こちら、腰越人材派遣センターですが」
『ぱん・・・』
「ぱ、パン?」
『パン、持ってきて・・・』
「え?パンですか?え?どちらにっ?うちパン屋じゃないですけど!」
『知ってる・・・おにーさんに、ゆって・・・』
「お兄さん・・・?え?ひょっとして稲垣先生っ?」
『待ってる・・・』
「え、えっ?もしもしっ?先生っ?先生ーっ?」
受話器を呆然と持つ正広に、イヤな顔で由紀夫が近づく。
「・・・何?」
「あ、兄ちゃん。あの、稲垣先生が・・・、兄ちゃんっ!?」
由紀夫は両手で耳を塞ぎ、さーーっと正広から離れていく。
「兄ちゃん!仕事だってば!」
「何がだよ!」
そのままソファに上がり込んで体育座りしつつ、なおも耳を塞ぐ。
「稲垣先生が」
「聞こえなーい、聞こえなーーい!」
「パン、持ってきて!って」
「わかりませーん、わっかりませーーん!」
「んもー!兄ちゃんっ!」
うりゃ!と手首をひっぱり、片耳から手を離させる。
「パン!」
「パンーっ!?」
「パンがいるんだって」
「パンって・・・」

由紀夫はちょっと考えてみて、これは考えるに値することではないな、と切り捨てることにした。
「そんなもん、手下に持ってこさせりゃいいんじゃん?」
「手下?」
「手下」
「・・・・・・・・・草g先生?」
「そうそう」

正広も考えた。
稲垣医師であれば、別にわざわざうちに電話してこなくても、草g助手でもいいんじゃないかと。
けれど、草g助手には頼まなかった。
なぜ?

☆草g助手は今日本にいない。
→でも、昨日はいた。歩いてるのを見た。

☆草g助手は、入院中だ。
→でも、昨日はいた。歩いてるのを見た。

☆草g助手にそんなことを頼むのは申し訳ないと思った。
→・・・思うかなぁ、稲垣医師が・・・。

☆草g助手は、今一銭も持っていない。
→パン買えるくらいのお金はあるだろうし、先に稲垣医師のとこにいけばもらえるだろう。

☆草g助手は、パンアレルギーだ。
→サンドイッチを食べてるのを見たことがある。

じゃあ、なんで、うちに!?
「あ!」
正広は手を叩いた。
「ひょっとして、好みが違うっ?」
「は?」
「草g先生は、パン買ってきてってゆったら、食パン買っちゃうような人なんじゃない?」
「あぁ。稲垣医師だったら、クロワッサンだろうな」
「そうだよ!クロワッサンにカフェオレだよ!牛乳は、なんたら高原の、ガラス瓶入りじゃなきゃダメなんだよ!」
正広は、典子が持ってきていた情報誌をめくる。
「パン屋さん、パン屋さん・・・っと」
ちなみに、今朝は早坂兄弟が早出することになっていたので、事務所の中は二人だけなもんだから、パン屋情報は雑誌に頼らざるを得ない。
「えーっとねぇー・・・」
正広はパラパラと雑誌をめくって、これ!と指差した。
「ここがね、評判のパン屋さんだって!朝から行列の、美味しいクロワッサンの店!」
「めんどくせー・・・」
しぶしぶ出ていった由紀夫は、朝からその行列に並び、クロワッサンを4つGET。縁起の悪そうな数字にしたのは、ささやかーーなイヤがらせ。
バターのいい香りがするクロワッサンを持ち、稲垣アニマルクリニックに到着した由紀夫は。

「・・・クロワッサンの気分じゃないんだよね・・・」

バスローブ姿の稲垣医師に言われ、頭からカフェオレぶっかけてやろうか!という気分になった。
しかし、バスローブで、玄関に持たれている稲垣医師が怖すぎたため、しぶしぶ引き下がったのだ。
稲垣医師の後ろに、何かを感じとってしまった由紀夫だ。

「クロワッサンじゃねぇぞ!」
結局いい香りのクロワッサンを斜めがけバックにいれたままの由紀夫は、正広に連絡をいれる。
『えー!?クロワッサンじゃないってことは・・・!パニーニ!?パニーニかも!』
正広の指示により、モデルにも大人気!らしいパニーニの名店に由紀夫は急いだ。
「何パニーニがいいんだよ・・・」
様々なパニーニの中から、ベーコンとトマトのパニーニをGET。

「ごいっしょにニース風サラダはいかがですか?」
にこ、と可愛い女の子に首を傾げられ、にこ、と由紀夫も首を傾げる。
「いりません」
なんでそんなもんまで買っていかなきゃいけねんだ!って思った由紀夫は、己が正解だったことをすぐ様知った。

「パニーニ・・・」
「いらねんだな!」
「そこのパニーニは美味しいけど、できれば昼の方が」

続いて、ベーグルもいらないといわれ、フランスパンもいらないといわれ、フォカッチャもいらないといわれ、一体どうすればと思っていた時。

『木村屋かも!』
「木村屋?」
『木村屋のあんぱん!』
「それかぁー・・・!」
和風のパン!それだ!由紀夫は木村屋に急いだ。
木村屋のアンパン。明治天皇に献上されたという桜あんぱんをGETし、由紀夫はこれ以上文句言ったら、ほんっとにどうにかしてやる!という気迫で、稲垣アニマルクリニックに戻る。

「あ、木村屋のあんぱん。しかも桜」
「お待たせしました」
今までとは違う反応に、やっぱりこれか、と思いながら由紀夫はパンを渡す。
「うーん・・・・・・これでいいはずなんだけどぉ〜・・・!」
もう日も高いのに、まだバスローブ姿でうろうろしている稲垣医師は、桜あんぱんを抱えたまま、クリニック内をウロウロする。
「あの、受け取りを」
この桜あんぱんと、バスローブの稲垣医師のツーショット写真は、稲垣医師ファンの(由紀夫にはその存在が信じられない)奥様方に高値で売ってやれ、なんて思っていたら。

「やっぱり違う」

と袋ごと返された。
「何か違うんだよね。今日の僕の朝食に、桜あんぱんは違うと思うんだ」
「はぁ」
すでに、由紀夫のバックは、パンで一杯。香ばしいステキな香りが充満している。そこにさらに、ほのかな桜の香りまでプラスしろというのかい!
「なんなんだろう。ベーグルでも、パニーニでも、クロワッサンでも、フランスパンでも、フォカッチャでも、あんぱんでもないパン・・・!」
「食パンでも食ったらどうですか?」
「食パン?カリカリとサクサクと、ステキな歯ごたえの、トースト?ううん、違う。そうじゃなくて・・・!僕の気持ちはなぜか、なぜか、西に向いているんだ!」
「西?」

たこ焼きパン?お好み焼きパンとか?

そんな風に由紀夫が思った時。

「おあよーござーますー」
口の中をぱんぱんに膨らませた稲垣医師の手下、草g助手が飛び込んできた。
「ちこくすうかとおもって・・って、せんせぇ、まだそんなかっこっでっ!」
「あっ!」
稲垣医師は、草g助手が握り締めているビニール袋をひっつかんだ。
「こ、これ!」
がくがく!とそれを引っ張ると、口の中中パンになっている草g助手ががっくんがっくんゆれる。
「これだよ!僕が食べたかったのは!」
「あぁっ!?」
「Pasco シキシマ!小倉ネオマーガリン!」

「あーーそりゃ名古屋風味だよなーーー!!!」

稲垣医師の今朝の朝食は、Pasco シキシマ小倉ネオマーガリンと、コーヒー。
以上。

早坂家では、それから何日も、パン食が続くことになった。


本当は、「広と正広の神隠し」にしたかったんです(笑)映画見たばっかりだから(笑)
でもどーしていいか分からなかったから(笑)

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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