天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

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ギフト番外編106後編『チケットを押しつけられた』

チケットは一段落!あーよかったー!やれやれーー!!

yukio
 

「兄ちゃん」
「なんだ」
「・・・おなかすいた・・・」
「すいたな」
ペンションの一室。暗闇の中に早坂兄弟の声がする。

ペンションのオーナー、は車で迎えに来てくれて、あまりの軽装の二人に驚いたようだった。
事情を説明すると、タオルやジャージを貸してくれて取りあえず寝ることは出来たのだが。
「・・・コンビニ、ないもんね」
「ないだろ・・・」
駅からちょっといったところに、不似合いに明るいコンビニがあったが、後は、霧の中をただ走っただけ。
「ジュースでも買ってくるか?」
ペンションの玄関に、自動販売機はあった。
「ううん・・・」
正広は小さく首を振って返事をする。
最後にものを食べたのは、盛岡に向かう新幹線の中で食べた冷凍みかんだった。旅は冷凍みかんだよ!と正広が無理矢理かったみかんだったが、確かに旅気分は盛り上がる。
早く食べたい!と指先で、冷たい冷たいといいながらちみちみ剥いていく正広はリスのようだった。
由紀夫は、こんなもん、と一気に半分に割って食べる方式で、そんなの冷凍みかんじゃなーい!と正広から注意された。

あぁ!あの冷たく、すっぱい果実がなつかしい!

時間はまだ12時前。
田舎の夜は早い。

翌朝、自然に目が覚めた由紀夫は、いつもとは違う当たりの様子に、キョロキョロと目線を動かす。
「んっ!?」
そして、隣のベッドに目をやって、一気に覚醒した。
「ど、どした!?」
高原は寒い。正広は、毛布を口元まで引き上げて被っていたが、そこから見える目が。
ギラギラしている。
「ま、・・・正広・・・?」
いつの間に自分の弟は野生動物になったんだ!?
寝起きのため、いつもより回転の鈍い頭で、じーっと野生動物を見つめていたら、野生動物は唸った。
「・・・・・・・・・・・・◎▲×ν・・・・」
「はっ?」
ギラギラした目は瞬きすらせず由紀夫を睨みつけている。
ここで目を反らしたら、あの鋭い牙が喉笛に!?
軽い錯乱状態に陥った由紀夫に対し、野生動物はもう一度唸った。

「・・・・・・・・・・・・おなかすいた・・・・・・・・」

「だからって今にも人を食いそうな顔をするなぁーーーー!!!」

「おなかすいたおなかすいたおなかすいたぁぁぁーーーーーーーー!」
ばたばたばたばた。
両手足をばたばたさせて正広が暴れる。
「おーなーがぁーーー!!」
「解ったから暴れんなっ!」
「あーさーごーはーんーーーー!!!!」
「朝ご飯?朝ご飯は、9時!」
朝は何時にする?と聞かれ、9時と答えたのは由紀夫だった。どうせ正広が起きないと思っての決断だ。
「何時!今!何時ぃーーーーー!!!」
「今?」
ぱっと時計を見た由紀夫は、一瞬黙る。
「・・・何時!?」
「え?あ、もうちょっと、だな」
「もうちょっとって、何時?何時っ!?」
「・・・えーっと。ろ、6時・・・?」
「6時・・・!」
正広は手負いの獣のようにぐったりと四肢を投げ出した。
こんな正広に、実はまだ5時半だと伝えたらどうなってしまうのか。由紀夫は本気で恐れている。
ぐったりとした正広が、このまま寝てくれれば!
そんな一縷の望みを託してみたものの、正広はぼんやりと天井を見上げ、何やらぶつぶつ呟いている。
ん?と聞いてみた由紀夫は。

「コンビニ行こう!な!コンビニ!」
正広を叩き起こした。
「・・・コンビニ・・・?」
「散歩がてら、コンビニだ。コンビニ」
近くに大きなホテルがあることは解っていたが、5時半から店が開いているとは到底思えない。これは少々遠くても、確実に24時間営業しているコンビニに行くしかあるまい。
「さ、ほら、行くぞ」
「コンビニ・・・」
「コンビニがお前を呼んでいる」
「・・・おにぎり・・・」
「そう。おにぎりに、おでん。お弁当にデザート」
「あああ・・・」
ふらふらと正広はたちあがり、ふらふらと服を着替える。まだ口の中で呟いているのは、今食べたいものシリーズだ。
うわごとのように食べたいものを呟き続ける正広をペンションから連れ出す。
「さむ」
一瞬、その寒さに正広が我に帰った。
「スーツ持ってくりゃよかったかな」
シャツ一枚の由紀夫は、半袖の正広を見て言うが、正広は首を振った。
「コンビニが待っている」
キリリ。
「待っているって・・・」
「待ってるよ」
キリッ。キリリ!
キリリ!とした横顔を兄に見せつけつつ、正広は歩く。
「・・・それは逆方向だろう」
「キリッ!」
口でも言いながら、兄の前を通過して、先に歩く正広だったが。

「とぉいよぉぉぉーーーー」
「しょうがないだろ」
てくてくてくてく。
車で5分程度のはずだが、時速60kmの車で、と換算すれば5kmだ。
「寒いよー!お腹空いたよー!だるいよー!」
「だからといってだな」
歩いているうちに体も、頭も、完全に覚醒した由紀夫は正広に言った。
「ここでおまえが歩くのがイヤだからといって待つことにする。コンビニまでは後、2kmくらいだろう。それを俺がいって、買って、帰ってくるまでの時間は、多分4・50分やそこらは楽勝でかかる。でも、おまえが歩けば、2・30分で・・・」
「おんぶーーーー!!」
理屈をぶっ飛ばす、正広だだっこ攻撃!
「正広」
両手を伸ばして、おんぶおんぶー!と騒ぐ正広の肩に、ぽん、と手を置いて由紀夫は言った。
「そんなちびっこには、マミーしか買ってやらねぇぞ?」
「マミー!2リットル飲みたいー!あー!おいてくなー!」

とっとと歩き出した由紀夫の後を、マミーの歌を歌いながら正広はついてきた。

「兄ちゃん」
「なんだ」
「これが文明だよね」
「そうかぁ?」
見なれたコンビニを見つけ、正広は嬉しそうに笑った。
「店ごと売れー!って感じ♪」
スキップスキップ!と店に入った正広を待っていたのは。

商品入れ替え前の、がらんとした店内だった。

「兄ちゃん・・・」
「あ、ほらあんじゃん。おでん」
「兄ちゃん・・・」
「あぁ、ほらほら泣くなって」
兄のハンケチで、ほらほら、と目許を抑えられた時、正広の中で何かが切れた。

「こっからここまで!全部っ!!」

お弁当、お握りなどの棚。そして、温かいフライ類、さらにおでん。
そこから、そこまでの間に残っていたものを、正広は全て買い占めてしまった。

「生き返った気がする」
「俺もようやく弟が帰ってきた気がするよ」
爽やかな高原のベンチで、早坂兄弟の朝食は広げられていた。残ったわずかなおにぎり。わずかな弁当。わずかなおでん、わずかなフライは、あっという間になくなっていく。
「そろそろペンション戻らないと・・・」
時計を見て由紀夫が言うと、正広はよっしゃ!歩くか!とたち上がった。
「もう朝ご飯食べられないかも」
ニコ、と笑いながら言う正広に、んな訳あるか、と心で呟いた由紀夫だった。

「兄ちゃん。おなかすいた」
「え!」
可愛らしいペンションの朝食♪というのを食べた直後、正広が言った。
「おまえ、あんだけ食っただろ!」
「だって歩いたもんよ!」
なだらかな坂を降りてコンビニに向かった早坂兄弟は、当然のことながら、なだらかな坂を登ってペンションに戻ってくることになった。
元気は出ているものの、消して平坦な道ではない。
「だから食べなきゃ」
正広は夏になると体力をつけなくてはと、いつも以上に食べるようになる。由紀夫はそれを、「食欲の繁忙期」と呼んでいたりするが、繁忙期だからといって、何もそこまで!というほど食べる。
時々。
虫がいるんじゃあ、と疑う時もある。
ペンションでの朝食がすんでもまだ9時半。コンサートが始まるのは6時。
それまでの果てしない時間、どうすればいいものかと由紀夫は考えた。
しかも、この、歩く胃袋と化した弟を抱えて。
「あっ!」
部屋に帰って、テレビをつけていた正広が声を上げる。
「わんこそば・・・!」
「は?」
「わんこそばだよ!ここって、岩手県でしょ?わんこそばー!」
「わ、わんこそば・・・!?」

ここで、由紀夫は純粋な興味を覚えた。
食欲の繁忙期に当たっている正広と、わんこそばの対決。
・・・みたい。
「行くか」
「いこいこ!」

「わーん!うそー!」
「あれ、早く、食べないと」
わんこそばをストップするには、椀の中身を空にして、ふたを閉じなくてはいけない。その前にそばをいれられたらいれられた正広の負けになる。
そばで給仕してくれてるおばちゃんは、華奢な正広がどんどん食べていくのが面白いらしく、その持てるテクニックを遺憾なく発揮していた。
由紀夫も同じように食べていたが、由紀夫は量重視ではなく、薬味も美味しく頂きつつ、会話も楽しみつつ和やかだ。
「なんで兄ちゃんそんなのー!」
「兄ちゃん、もう年よりだから、量たべらんないんだよ〜」
「ウソだぁ〜!あっ、また失敗したぁ〜!」
「100杯食べたらお土産あるってよ」
「100なんて無理だよぅー!」
そんな正広の前に重ねられたお椀は、そろそろ90を越えようとしている。
「いけるって!もうちょっと!」
「もー無理ぃ〜!」
騒ぎながらも、ぱっかぱっか開けていく正広が楽勝で100杯を越えたのは言うまでもない。

「だって、兄ちゃんよりたくさん食べるのもどうかと思って」

ひょっとしたらまだ行ける、と言う正広の、帰り道での弁だった。

安比から一度盛岡まで戻り、またそこから安比に戻る。
昼間の電車は、前の夜ほどのおどろおどろしさはなく、のんびりと風景を楽しむことができた。
「あー、もうすぐコンサートだねー」
「・・・あ、そうだった」
「なんだよー!何しにきたんだよ、兄ちゃんわー!」
そんなことはすっかり忘れていた正広は、女子供でごったがえすコンサート会場に近づくにつれ、はー、ペンションで寝ていたい、という気分になってくる。

が。

「兄ちゃん、焼そば!」
「まだ食うのか!!!」

あまりの正広の様子に、一転、この状況が面白くなってしまい、よし。うちわ買おう。うちわ。ペンライトもいっとこう。と二人それぞれに5人分のうちわとペンライトをGETし、心の底からコンサートを楽しむことになった。

追記:翌日の正広の食事。ペンションの朝食。牧場でジンギスカン二人で5人前。ソフトクリーム計3個。シフォンケーキ、タルト、アイスクリーム添え。焼そば2つ。飲み物なんやかんやで2.5リットル。ラーメン大盛り。餃子1人前。菓子パン3つ。


本当に食欲の繁忙期に当たっているのは赤い怪獣です。夏だからたくさん食べなきゃ!っていうのは夏バテする人なので、しない人はいつも通りでいいんですよね?ねっ(笑)??

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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