天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

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ギフト番外編108お買い物』

yukio
 

今日はお休みなので、正広は買い物に行こうと思っていた。
買い物好きの正広なので、何買おうかなぁとウキウキしている。
「正広」
「何〜?」
ウキウキしながら振り向くと、由紀夫が真面目な顔をして立っている。
「え、何?」
スタスタと歩いていく由紀夫を目で追うと、クローゼットの前まで行き、扉を開いた。

「服は買うな」

「えぇ〜〜〜!!!!!」

「えぇ〜〜!って!この状態を見ろ!」
「えぇ〜・・・・・・・・」
確かにクローゼットは、服で埋め尽くされ、服も、ぐ、ぐるじぃ・・・!と言いかねない状況だ。
「でもぉ〜」
秋なのにぃ〜。
新しい服も欲しいのにぃ〜。
「そんなことは、ここにある服全部に1度でも手を通してから言え!」
「だって、今までの服がまだ着られるもん!」
「だから、新しい服買ってもしょうがないだろ!」
「えぇ〜?去年のコートじゃ、恋なんてできなぁ〜い」
などと、昔、どこかのファッションビルだか、ファッション雑誌で使われていたコピーを口走った正広は、兄の鉄拳制裁を受けた。

「ぐっすん」
頭頂部に、ごっつん!とやられた正広は、両手で頭を押さえながら、じゃあ、どこに行こうと、なんとなく路線ズを眺めていて。
「あ、新宿・・・」
と呟いた。

「正広」

由紀夫は、テレビの前にいた。

「GAME CUBEは買うな」

「うっそぉぉぉーーー!!!!」

由紀夫の指先は、テレビのそばに整然と、しかし、数多く置かれているゲーム機たちに向かっている。
「だって、ルイージマンション!!」
「ルイージマンションじゃねぇ!どこにそんな時間がある!すんだのか!ファイナルファンタジー!」

実は、]を買ったのはいいが、\も終わってないことはとても言えなかった。
「でも、だって、ベスト電器ができたのに!」

「正広」

次の瞬間、由紀夫はキッチンにいた。

「ワッフルメーカー、ホットサンドメーカー、餅つき器、パン焼き器、などなどは買うな」

「何でぇぇぇーーーーーーー????」

「ぜってー!使わないだろ!そんなもん!」
「でも、でも、あったら使うよ!パン焼き器で作り立てのパンを朝から食べるなんて素敵ー!」
「おまえ、朝はご飯だろ」
「朝からつきたてのお餅なんて素敵ー!」
「すするのか!九州かどっかの餅すすり大会みたいに!」
「あ、それはやってみたいかも・・・」
「・・・死ぬぞ。おまえ、多分・・・」
「餅がダメとなると・・・あぁっ!兄ちゃん!」
「なんだよっ!」
「精米機!精米機があったらいいんじゃん!?精米する前のお米を買ってきて、食べる前に精米!おっしゃれーー!」
「・・・スーパーでふつーに米を買う俺たちが、どこでそんな精米する前の米を手に入れるんだ?」
「・・・。んと。インターネット、とか、で・・・」
「やるのか?」
「・・・美味しいんじゃないの?」
「解るのか?その味の違いが」
「・・・じゃあ、象印夫人から、圧力IH炊飯ジャー!極め炊きも買うぅーー!!」
「買わなくていい!新しい炊飯器までっ!!」

「・・・・・・・・じゃあ、何買ったらいんだよ・・・」

疲れたようにソファに座る正広に、必要なものがあるんだったら買えば?と正論を吐く由紀夫。
「必要なもの・・・」
「あ、正広」
また由紀夫が言う。
「マンガも買うなよ」
「いいじゃんかよぉぉぉーーーーー!!!!」
何せ、二人のうちは元ビデオ屋。棚なら腐るほどあるけれども、だからといって、古本屋をやる訳でもないのに、そんなにマンガはいらない。
と、由紀夫は思っているが。
「まだ全然置けるもん!あ!俺、古本屋いーこおっと!」
「だから、買うなっつってんだよ!」
「兄ちゃんだって、あったら読むくせにー!」
「新しいのを買うんだったら、いらないヤツを売ってこい!」

「あ。それはナイスアイディア〜」

いそいそとマンガの山の前に座り、これはー、いる。これはー、いる。これもー・・・・・いる。これはぁ〜・・・・、もういっかな?最後に読んでからにしようかな??
床にぺたんと座ったまま、マンガを読みふけり、しっかり2冊読み終えたところで。

「え!?もしかして、これって買い物させない作戦!?」
「気づくんだったらもっと早く気づくか、もうずっと気づかないままでいろ!」

でかけようとしはじめて、すでに2時間近くたってしまったが、それでも買い物!という高い(?)志を持って、正広は部屋を出ようとした。
買う。
今日は買う!
服と、ゲームと、家電と、マンガ以外のものを買う!

えーっとだから。

「あ、正広」

階段を降りていた正広に、上から由紀夫が声をかける。

「食いもんも、買うなよ」

「死ねって言うの!?俺に!?」

「冷蔵庫に入れなきゃいけないもんは入るスペースがない」
「それなら玉ねぎ買ってくるぅー!」
「たまねぎもじゃがいももとうもろこしも、北海道から段ボールで送られてきただろ」
「・・・そうだった」
奈緒美の知り合いが送ってきた大量の段ボールは、じゃがいもと玉ねぎととうもろこしで、それらは、強制的に社員たちが引き受けさせられた。
「スナック菓子も売るほどあるからなぁ〜」
当然、アイスクリームもダメなのか!と、正広は絶望的な気持ちで街に出た。

服がダメ。
ゲームがダメ。
電気製品がダメ。
マンガがダメ。
お菓子がダメ。

あぁ!お財布にはお金があるのに!
一体何を買ったらいいの!?

それでも、ただお店を見てるだけでも楽しいやと、新宿の新しいベスト電器にも行ってみた。ゲームで遊びもしたし、象印夫人の圧力釜も眺める。
バーミックスは買っちゃだめかな、としばらく見つめてみたり、CDは買うなって言われなかった!とCDショップを歩いてみたり。

でも、結局何も買わないまま、夕方がやってくる。
9月になり、日が落ちるのは格段に早くなった。
喫茶店でケーキ2個食べていた正広だったけれど、夕方だと思うと、反射的におなかがすく。
帰ろーっと、と、帰途についた正広は、初めて見る店があることい気づいた。
喫茶店かな?と思わせる可愛らしい外観。新しいカフェかな、と外から覗いてみると、おそろいのエプロンをつけた女の人が忙しそうに働いていた。
「花屋さんだ」
正広は、自分で花屋に入るようなことはめったにない。
お客さんに花を送るように言われて、電話で注文することはあっても、なにせ、男兄弟二人暮し。生活に花は必要なかった。

『だって、俺がもう、花のように可愛いし。ぷぷぷぷぷ!!』

心の中で自らボケ自らつっこみながら、明るい花屋の中をもう少し眺める。
大袈裟な花束ばかりじゃなくて、短く切った花を合わせた、小さな花束なんかもあった。
『あれ、かわいー・・・』
小さ目のグラスに入れておくだけで、随分いい感じだ。
「あの?」
「えっ!」
急に背中から声をかけられて、正広は慌てて振り向いた。
「あ、ごめんなさい」
びっくりした正広の顔を見て、小さく微笑むのは、若い女性だった。
「よかったら、中も見てって下さいね」
「あ、あ、はい」
ニコ、と微笑み、先に店に入る女性を見て、綺麗な人〜!と思ってしまった正広はふらふらとついていく。
「いらっしゃいませ」
ドアを押さえていてくれてた女性から挨拶された。
「ごゆっくり」
花屋さんでごゆっくりって言うのも不思議な感じと思ったけれど、その店は、ただ花を売るだけではなくて、フラワーアレンジメントの教室がメインだったりもするらしい。
色んな雑貨も売ってあって、可愛いお店だった。

「あのー」
さっきの女性が、エプロンをつけて出てきたので、思い切って声をかける。
「あの、これって、売り物ですか?」
グラスにいれられた、小さな花束を差して聞いた。
「えぇ、そうです。これ、グラスもそうなんですよ」
「え?グラスつき?」
「グラスつきで、350円」
「お得!」
「お得でしょー?」
ニコニコと微笑まれ、正広もニコニコと微笑み返す。
食器と、花を買っちゃいけないとは言われていなかった。
「じゃあ、これ下さい!」
可愛い色合いの花ばかりで作られた小さな花束を指差すと、彼女はその花束を手にとり、新しいグラスと一緒に正広に渡してくれた。

小さな花束を手に、ウキウキと帰ってきた正広は、1階のガラス戸を開けた段階で、ぴくりを鼻をうごめかした。
「こ、これは!」
ダッシュ!
階段を駆け上がり、ドアを乱暴にあけ、一気に深呼吸して。

「ごはーーーーん!!」

「・・・動物かおまえは・・・・・・・・・」
「ごはん、ごはん、ごはんのにおーい!」
炊飯器のそばで小躍りする弟に、どーすればいいんだと兄は少し頭を痛める。
「なんか、いい匂いじゃない?」
「新米だからかもな」
「新米!」
きらりん★
正広の目が輝く。新米は、もちろん、正広の大好物だ。
「新米さーん!こんにちは!お花どうぞ!」
「お花って!」
いそいそとグラスを洗って水をいれた正広は、まずは炊飯器の隣に花束を飾る。
「どしたの、その花」
「買ってみました!兄ちゃんこそ、新米なんていつの間に!」
「・・・いつの間にってゆーか・・・」
「あっ!買ってきた?買ってきてくれたんでしょ!んもー!兄ちゃんったらやっさしー!」
「てゆーかぁ」
由紀夫の目は、正広が靴を脱ぎ散らかした玄関に向けられる。
正広も、その目線を追い。

「・・・・・・・・・・何あれ・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・時代劇なんかで、やくざもんとかが、時々巻かれて、大川とかに投げられるヤツ」

「米、俵だよ、ねぇ・・・・・・・・・」

おそるおそる近づいた正広は、その米俵を突ついた。
「・・・米、俵・・・・・・・・・・・・・」
「奈緒美が・・・・・・・」
「奈緒美さんかぁ・・・!」
実際由紀夫は、米好きな弟のために、そろそろ出ている新米を買いにいったのが。
一応5kg買ってきた。
その買ってきた米を炊こうとしているとこにやってきたのが、この米俵。1俵=60kg入り。
差しだし人は、腰越奈緒美。
「美味い米なんだと思うよ」
「そだよね・・・・・・・・」

正広は、そっと花束を移動させた。炊飯器の側から、米俵の側に。

そしてきっぱりと言ったのだ。

「やっぱり象印夫人の炊飯器買った方が!」
「もういいって!!」

結局花束とグラスしか買わなかった正広だったが、食卓に花があるのってなんかいいなと嬉しい気分になる。
新米と、冷蔵庫の中のものを、あれこれつかった、たくさんのおかずと、綺麗なお花と、米俵!まだまだ食べられるっていう象徴、米俵!!
「兄ちゃん」
「あ?」
「明日のご飯のおかず、なんにする・・・?」
「夕飯食いながらウットリした口調で言うな」
「だって、あんなにご飯あるんだよ・・・?」

この花がしおれたら、またあのお花屋さんで花を買って、食卓を飾ろう。
兄ちゃんはやっぱり、花を買うなとは言わなかったからと、米に経緯を払う日本人、正広はウキウキと思っている。


赤い怪獣がお誕生日だったので、たくさんひろちゃんを出してみました。
そしてその花屋さんは、もちろん、ウソコイ恵美ちゃんのお店だ!恵美ちゃんの!可愛い可愛い恵美ちゃんのぅぅぅーー!!!

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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