天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

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ギフト番外編111前編『おかしな探偵が届いた』

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右手右足を骨折した溝口正広は、兄早坂由紀夫の献身的な看護(拘束ともいう)のおかげもあり、早々に治っていた。
しかし、看護と言う名の拘束を受けていた正広のため、短期間で、足、腕の筋肉が落ちてしまい、リハビリも必要になってしまったのだ。
なので現在、これもまた、兄の献身的なトレーニング(スパルタともいう)を受けている。
「いででで・・・・」
「あらっ!ひろちゃん、どしたの!」
デスクに突っ伏していたら、ゆっくりと重役出勤してきた奈緒美に尋ねられた。
「あ、ちょっと、ストレッチとか、しすぎて・・・」
「あらあら。だから言ったじゃない、専門の病院を紹介するわよって」
「あー・・・、でもそんなひどくもないですから。もう、なんとか歩けるし」
「熱血お兄ちゃんがいると、弟も大変ね」
「えへ」
しかし、骨を折ったことも、折れているのに歩き回ったことも、全面的に自分が悪いという自覚がある正広は、小さく笑い返すだけだ。
「ん?その熱血お兄ちゃんはお仕事かしら?」
「はい、お仕事です〜・・・、ん?てゆっか、奈緒美さん、ここにいていいんですか?」
「何が?」
「・・・今日、セミナーがあるって言ってませんでした?」
「あっ!!」
ぐわっ!と大きく腕を振り、エルメスの時計を睨んだ奈緒美は、おっとぉ!と仰け反った。
「お土産がすごいセミナーなのにぃー!」
奈緒美はセミナー荒しなので、美味しいセミナーは逃さない。
「のっ、野長瀬はっ!?」
「現場でトラブルがあって、出かけちゃったんですけどー!」
「いやーん!自分で運転していくなんて、スタイリッシュじゃなぁーい!」

しかし、スタイリッシュじゃない度と、美味しいお土産とを計りにかけて、美味しいお土産を取った奈緒美は、しぶしぶ出かけていった。

典子は、昨日家でカラーリングをしたら、すごいことになってしまった。美容院に行ってからじゃないと、絶っ対っっ!!人前には出られない!と午前中お休みだ。
「いうなれば、私は、赤毛を黒髪にしようとして、緑に染めてしまった赤毛のアンよ・・・!」
電話口で、無駄に専門的なことを言った典子の言葉を思い出す。
「・・・赤毛を一気に緑にするカラーリング・・・。ペンキ・・・?」
こんこんと、シャーペンでおでこを叩きながら、正広は仕事に戻った。
戻ろうとした。

その時。

「やぁ!」
ばぁん!とガラス戸が開き、突然誰かが入ってきた。
「えっ!?」
「薔薇十字探偵社の稲垣だ!」
「はぁっ?」
「あぁっ!やめてください!稲垣先生っっ!すみません、すみません、皆さんっ!!」
『薔薇十字探偵社の稲垣』の背中に、ひしっ!とすがりついているのは、稲垣アニマルクリニックの助手、草g剛。米つきバッタの50倍のスピードで頭を下げ続けている。
「ど、どしちゃったんですかっ?稲垣先生っ?」
「ノンノン、薔薇十字探偵社の探偵だ♪」

「あのぅ・・・」

「すいません、すいません!なんか、朝からおかしくって!!」
草g助手は、今この事務所にいるのが正広一人だと気づくと、正広一人に向けて、土下座せんばかりの勢いで謝リ続ける。
「ところでおチビちゃん」
「おチビちゃん!?」
「君の素敵なお兄さんはどこかなっ?」
「に、兄ちゃん・・・?」
「素敵っていっても、僕の次にだけどね、あははははははっ!」

「草gさぁぁぁん!」
「ね?ね?怖いでしょ?怖いでしょっ?怖いんですよぉぉぉーーー!!!」
仁王立ち。
両手は腰!のポーズで『薔薇十字探偵社の稲垣』は笑い続ける。
「お兄さんは、どこだぁぁぁ〜〜〜!」

ばしっ!

その『薔薇十字探偵社の稲垣』の後頭部に、ナイロンのメッセンジャーバックがヒットした。

「病人は家に帰れ!」
「失敬な!僕が病人だというなら、病気じゃない人間をここへ連れてきたまえ!ここへ!」
後ろ頭を押さえながら、それでも『薔薇十字探偵社の稲垣』はへこたれない。びしっ!とした目線を、ナイスフォームでバックを投げた早坂由紀夫に向ける。
「なんだこいつ!?」
そしてあっけにとられた由紀夫は、草g助手に視線を向け、すみませんーーー!!とさっきまでの倍のスピードで頭を下げ続ける草g助手を見つめた。

「そんなことより!」
草g助手を見つめている由紀夫の視線の間に、すちゃ!と『薔薇十字探偵社の稲垣』が割って入る。
「君は届け屋なんだってね?」
「・・・なにを今更・・・」
「ぜひ、届けて欲しいものがあるのだが、ふ、君にできるかな?」
「だから、おまえそれ、何キャラなんだよ!」
「稲垣先生ーー!辞めてくださいぃーー!」
「怖いよー!にいちゃーん!」
「いやいや、無理なら無理でいいんだ。ははっ、そうだね、この『薔薇十字探偵社の稲垣』に解けない謎が、いかに男前とはいえ、届け屋風情の君には!」
「届け屋は荷物を届けるのであって、謎を解く仕事じゃねぇー!」
「あっはは!そうだね、そうだったね!」
正広は、稲垣アニマルクリニックに何度も行ったし、何度も稲垣医師の声を聞いている。
彼は、あまり大声を出すタイプの人間ではない。
なのに、今の『薔薇十字探偵社の稲垣』は、事務所中に響き渡る声で高らかに喋っている。そのままメロディーをつければ、オペラにでもなりそうな勢いだ。

おかしい。

怯えていた正広だが、じっと『薔薇十字探偵社の稲垣』を見つめる。
何かある。
きっと彼には何か秘密があるはずだ。

「てゆっか、考えるまでもなく、こいつおかしいだろ!」
考え深そうな顔をしたとたん、由紀夫につっこまれ、
「そーだけどぉ!!」
と正広も言い返す。

「助手!いいから、連れてかえれ!」
「はいっ!行きましょ!ね、稲垣先生!」
「行く?」
また背中にすがられ、見事な180度ターンをした『薔薇十字探偵社の稲垣』は、両手を大きく広げる。
「行くって一体どこにだい?この僕がどこにいくって?いや、もちろん、どこででも望まれているのは知っているが、いかんせん、僕の体は一つ。どこにでも、かしこにでも行ってあげられる訳がないのさ!残念ながらね!」
「あ、あのぉ〜」
「つまりこれは、こういうことかな、お兄さん!」
さらに、90度ターン。
「君は、僕が望むものを届けられないってことなんだね!?」
「いや、だから・・・」
「いやいいんだ!無理ならいいんだよ、それなら、この『薔薇十字探偵社の稲垣』がっ、うっ!」

カクン。

いつの間にか、『薔薇十字探偵社の稲垣』の背後に近寄っていた正広が膝かっくんしたのだ!
そのまま、『薔薇十字探偵社の稲垣』は、床に倒れてしまう。
まるで、糸の切れた操り人形のように。
「いっ、稲垣先生っ!?」
「正広おまえ!」
「兄ちゃん安心してください!俺の足は、人に膝かっくんできるほど治っています!」
「いや、それはいいけど!」
「兄ちゃん!そして、草gさん!この人は・・・!この人は稲垣先生じゃあありません!」
「なんで、膝かっくんくらいでそこまで倒れて、意識まで失うかなぁ!?」
正広は、かけてもいない眼鏡を直す真似をして、二人を交互に見る。
「稲垣先生じゃない・・・?」
「えぇ、不思議だと思うでしょう、兄ちゃん。でもこの人は、稲垣助手じゃない。僕には解ります。きっとこの人は、稲垣先生の、生き別れになった双子の弟なんです。生まれた時、双子は不吉だと、この人は、瀬戸内の島に送られてしまったんです!」
「せ、瀬戸内の島?」
「小さな無人島で、省みられることなく育ったこの人は、仕事にも、友人たちにも恵まれた稲垣医師を憎み、そして、今!復讐の刃おぅーーーー!!!」

「いや、稲垣先生は双子じゃあ・・・」

「もちろんこれは、稲垣家の闇の歴史です」
一点のひるみもなく正広は言い切った。
「そうやって、稲垣家は、代々、一族を守ってきたのです!」

「正広・・・」

「この人稲垣医師じゃない証拠だってあります!」
困り果てた顔で弟を見つめる由紀夫だが、正広の目は、いつも以上に輝いている。キラキラと。
「だってこの人は姿勢がいい!」
「はっ!」
「た、確かに!!」
その指摘は、由紀夫と、草g助手の胸の中にすとんと落ちてきた。
その違和感だったのだ。
「・・・背筋がしゃんとしていた・・・!」
「偉そうに仰け反っていたけど、後ろ体重とは言えなかった!稲垣先生が!」

そうだったのだ。
正広は違和感の正体を探って思い当たったのだ。
その姿勢のよさに。
まるで、正義のヒーローのようなその姿勢のよさに。
もっとも、由紀夫と、稲垣医師、どっちがヒーローと聞かれたら、「兄ちゃん」と素直に答える良い子の正広なので、この二人が対峙している様は、さながら、ヒーローとライバル。
星飛雄馬と、花形満。
キカイダーと、ハカイダー。
アムロと、シャア。
ん?それはなんか違うか??
「と、ともかく、この人は稲垣先生じゃないんです!」
「じゃ、じゃあ、本物の稲垣先生は一体どこに!?」
倒れたままのニセ稲垣医師こと、『薔薇十字探偵社の稲垣』を助け起こしている草g助手が尋ねる。

「・・・まさか・・・!」
「え!まさか!?」
「瀬戸内の小島じゃあ!!」
「ウソだぁーーーーーー!!!」

頼むから落ちついてくれ。

そっと思う由紀夫だった。

<つづく>


『薔薇十字探偵社』っていうのは、榎木津さんって探偵のいる探偵社ですね。素敵な名前だったので使ってみましたわ。あぁ、榎木津さん、LOVE(笑)!

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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