天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

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ギフト番外編112前編『ナレーターを届ける』

yukio
 

正広はテレビっ子なため、彼の朝は、テレビと共に始まる。
特に野球と動物は外せないらしく、各局をザッピングザッピングしながら、朝っぱらから楽しんでいるのだが。
「おまえな」
兄の声は冷ややかだ。
「いい加減起きろ」
「お、起きてるよ」
「俺の国では、それを起きてるとは言わない」
「うちの国では言うもん!起きてるよ!ほら、喋れてるし!」
リモコンを手に正広は言ったのだが。

「起きてるってのはなぁーーーっっ!!」

いきなり布団を引き剥がされ、ひゃああ!!と正広は悲鳴をあげる。
「寒いよぅー!」
「まだ10月!そんな寒くないっ!」
「ぬくぬくがぁー!せっかく育てたぬくぬくがぁーー!!」
「さっさと起きろ!」
ぬくぬくぅーー!!とはがされた布団を求める正広は、朝はいつまでもいつまでもベッドにいたいお子ちゃまだった。
「寒いよぅ〜・・・」
えぐえぐと泣きまねをしながら顔を洗いに向かう正広は、しつこい!と由紀夫に叱られた。

「あ、ねぇこの声」
「あ?」
寒けりゃはいとけ!!と、厚い毛糸の靴下でぬくぬくしながらご飯を食べている正広が言う。今ついてるのは、NHK教育。
「この声誰か知ってる?」
「誰?」
テレビでは、絵本や、グッズで見かけるネズミのキャラクターが動いている。
「なんだっけ、これ」
「メイシーちゃん」
「あぁ、メイシー・・・。で、声?メイシー、喋ってねぇじゃん」
「違うよ、これ」
正広は箸で画面をさし、今喋っている男の声のことだと教えた。

『メイシー、今日はもうおやすみ』

「・・・誰?」
由紀夫は首を傾げる。
子供向け番組とは思えないテンション、トーンの低さ。妙な落ちつき。
「誰かと思うでしょー?」
正広は、ふっふっふっ!と引っ張りたかったようだが、番組は短い。すぐにテロップが出てしまった。
「・・・仲村トオル・・・」
「意外じゃないっ?」
「・・・一体誰が、メイシーをアニメ化するときに、仲村トオルに声をかけようと思いついたのか・・・!」
朝から、ものすごく仲村トオルについて考えてしまった由紀夫だった。
ちなみに、由紀夫お気に入りの仲村トオルは、あぶない刑事に出ていた頃。
『トオルくん。変な動物。歌が上手い!』
って、柴田恭平に言われてたっけ。
そうそう、明石家さんまが、浅田美代子から奪還した、芸能界1位の座は、結局彼に奪われたんだよな。そんで今持ってるのがSMAPの?
いや、何の1位かは。いやいやいや・・・。

「前にね、ポケモンの映画を見た時に」
自転車で事務所に行く途中、正広が言った。
「なんか、ちょっと違和感、とか思った。女の子がナレーションって言うか、やるんだけど。『あれあれー?トゲピーがいなくなっちゃったー?』とか」
「うまいじゃん」
「え。そうかな」
あれあれー?トゲピーと何度か繰り返し。
「・・・!?からかった!?」
「本気にするか!?」
「もー!」
今日は、由紀夫の自転車に乗せてもらったいるにも関わらず、兄を蹴ろうとする正広。
「ぶないなぁ!」
「あれあれぇ〜?由紀夫さん、怒っちゃいましたかぁ〜?」
タモリのやる、旅番組の物真似の物真似をして、なお怒られてた。

「ナレーターといえば誰ですか?」
事務所で正広が聞いてみると。
「久米明?」
「出たよ、さすが奈緒美!」
「誰?久米宏?」
きょとんとした正広は、誰のことがよく解らないらしい。
「森本レオよねぇ」
典子は、あの声がすごく可愛いの!好きなのー!レオ様ー!と、ディカプリオファンのような表現をし、野長瀬は。
「木村・・・」
「えっ!?木村くんっ?」
「あ、いやいやあの、木村匡也」
「うわー、最新」
感心したように由紀夫が言うと、誰誰っ?と正広が聞いてきて、めちゃいけとか、どっちの料理ショーとかって教えると、ひゃあー!と感動していた。
「由紀夫、結構ナレーター詳しいわね」
奈緒美が言う。
「そうかな」
「ちょっと、うちもね、そういう仕事にも手を出そうかと思って」
「ナレーター?司会者とかいるじゃん」
「声だけでできる仕事よ」
「そーゆーのは、タレント事務所がやるんじゃないの?」
「あら、いいじゃない。タレント事務所。人材派遣の基本じゃない?」
ほほほ、と笑う奈緒美に、由紀夫は、びしぃ!と言った。
「坂口憲ニに会いたいからってムチャ言うな!」
「あーー!会いたいのよー!坂口憲ニー!」
「坂口憲ニかー。私は、窪塚洋介に会いたいです」
だから、タレント事務所お願いします!と典子が言う。
「じゃ、じゃあ・・・、私、タレントでもいいです・・・!」
「「「ど厚かましい!」」」
ふざけながら、でも、精一杯の思い込めて呟いた野長瀬の言葉は、奈緒美、由紀夫、典子から、切ってすてられた。
飴ちゃん1個万引しようとしたところで、マシンガンを連射されたようなものだった。

「あ、そーいえば」
死体となった野長瀬を事務所の片隅に片付けて、由紀夫が聞く。
「じゃあ、正広には、ナレーターって言ったら、誰なの」
「んーーとね」
正広は、とても難しい顔をした。とてもとても難しい顔をする。何度も首をひねる。
「難しいなーー・・・」
「そんなにたくさんいるの?好きなナレーターの人って」
典子も不思議そうだが、でも、森本レオでしょ?と推してもくる。
「確かに森本レオも好きなんだけど、んーー、どっちかなー、どっちがいいかなぁ〜・・・!」
「誰と誰?」
「草g剛か、稲垣吾郎」

「はいはい」

典子は、あぁ、と頷いてくれたのに、由紀夫には、ばっさりと流されて、えぇーー!!な正広だった。
「いいじゃーん!いいじゃーん!剛くんもー!吾郎くんもぉー!」
「はいはい。よかったよかった。これで早く吾郎くんが帰ってくるといいねぇ〜」
「そーだよおー!!吾郎ちゃーーん!!」
「そうよねぇーー!!吾郎ちゃーーん!!」
典子も叫び、
「あ!吾郎ちゃんにも会いたい!」
やっぱりタレント事務所!と奈緒美も叫ぶ。

変な会社、と思いながら、由紀夫は黙って届け物を持ち事務所を出た。

「言霊って言うのかしら」

そして、真面目に仕事をし、お昼ご飯は一人で豪勢にイタリアンなぞを頂いてから帰ってくると、奈緒美がしみじみと話し掛けてきた。
「言霊?何が」
「やっぱりね、言葉には、力があるのよ。うかつなことは口にしちゃいけないけど、口に出した方がいいこともある」
「何ナカムラミツルみたいなことゆってんの。もしくは、アイダミツオのような」
「ナレーターを探してるって、連絡がきたんだって」
「えっ!?」
正広も驚いた顔をしていたが、由紀夫も驚く。
「な、ナレーターを?人材派遣会社に?あ、まぁ、ナレーターも人材か・・・」
「おほほ。すぐに探さなきゃ、喋る子。野長瀬ー、リストアップできてるー?」
「えっとですねー」
これで、うちもタレント事務所へのステップアーープ!なんて浮かれながら、リストを見るために奈緒美はひらひらと歩きだす。
由紀夫は、ナレーターってなんだよ、と、机の上に置かれた書類を見て。

「男じゃん」

「えっ!?」
奈緒美がすっとんできて書類を見た。
「男!?あ、男っ!!」
「え、お、男ですか!?うちの登録、ほとんど女性ですけど!」
「あっちゃー!うかつだったわ。司会とかできる子をって思ってたのに」
「てゆっか、すっごく大きく書いてるじゃん!男性ナレーターって!こんなに!大きく!」
表題に大きく「男性ナレーター」という文字がある。
「ちょっとまって、うちの登録で男っていったら、どれくらいいるのよ。まず4人でしょ?」

「まず4人?」

聞き捨てならねぇな、と由紀夫が振り返る。

「誰?」
「え?」
奈緒美は驚いたような顔をする。
「4人つったら解るでしょうっ!」
「俺と、正広と、野長瀬と、もしかして!?」
「そ・う・よ♪」
奈緒美は楽しそうに指を振った。
「いやいや、登録してあったって、喋れねぇだろ!」
しかし、確かにあの特徴ある声は、眠らせておくにはもったいない。

そんな男が、腰越人材派遣センターには登録されていた。


メイシーちゃんには驚かされました。ぜひ一度、チャンスがあったら聞いてやってください。仲村トオルとメイシーちゃん。似合わないこと夥しいですから(笑)

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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