天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

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ギフト番外編113前編『ハムを届ける』

yukio
 

中田草介は、平凡なサラリーマンだ。
彼が勤めているのは、サンマルコハムというハム会社。そこの所長以下5名というこじんりした事務所で彼は働いている。
仕事は、ハムの輸入、卸、販売などなど。彼はこの会社に就職してから、世の中には恐ろしい数のハムがある、ということを知った。そしてハムが美味しいということも。
彼はハムが大好きになり、仕事に誇りを持った。
今日も彼は軽トラに乗って、意気揚揚と配達に向かっていた。
今日もこの美味しいハムを届けたい!
やる気まんまんで走らせるトラックは、青空の下、土手の道を走っていく。川はキラキラと輝き、緑の草は、そよそよとそよぐ。窓を開けて走る草介は、その草の香りまで楽しんでいた。
「あれ?」
通りなれた道で、リラックスしていた草介の目線は、その川の水面に向かう。
「あのボート、大丈夫なのかな」
川の流れのままに流れされていくボートがあり、中で人が倒れている。黒尽くめで、動いてるように見えないのがまた恐ろしいところで、死んでる!?という気分にさせられた。
ど、どうしよう!と思った時。

「ぎゃっ!!」

軽トラが跳ねあがった。
「うわっ!」
ハンドルを押さえてサイドミラーをのぞきこむと、大きな石が落ちているのが見えた。
「うわー、びっくりしたー・・・!」
よそ見なんてしてちゃいけない!
見知らぬボートの人より、大事なハム!
草介は、まっすぐ前を向いて運転に集中した。

その頃、ボートに乗っていた人は、目を覚ました。
あぁ、いい天気だ。風も気持ちがいい。
彼は、結構高名な医者だったが、勤めていた病院で恋愛沙汰にまき込まれ、あぁ、もう、めんどくせぇ!!と、自分は死んだということにして、そこからの脱出を図った。今は大変いい気分で、趣味のボート(主に流されるがままの川下り)をのんびり楽しんでいる。
じゃあ、そろそろと、マイボートを、貸しボート屋に戻し、土手に降り立った彼の目には、なぜかそこにある段ボールが見えたのだが。
何せ彼はクールなお人柄だったので、段ボールか、と思っただけで素通りしていった。
彼が好むこの土手には、たんぽぽが咲かない。

土手といえば、散歩。
溝口正広は、しぃちゃんを肩に乗せ、ミニウサギ(大)の野長瀬智子(オス)を抱いて、土手を歩いていた。「天気がいいねぇ」
しぃちゃんに話しかければ、しぃちゃんは軽やかに鳴き、
「すぐだからね」
と智子を撫でれば、気持ちよさそうに耳が動く。
もう冬が近くて気温は低いけれど、早いうちに明るい太陽に当たっておかないとね、と、おまえは北欧人か、というような理屈で、正広は歩いている。今日は、事務所をお休みまでしてしまった。
野長瀬のペット(というにはあまりに態度が大きい)であるはずの野長瀬智子(オス)が一緒なのは、最近智子ちゃんが運動不足なんです、と、野長瀬が言い出したから。
「だったら連れていきますー」

と、部屋の鍵を預かって野長瀬のアパートのドアを開けた正広は、
『これで運動不足って言うんだったら、智子ちゃんの運動量は、すでにトレーニングの域に達してるんじゃあ・・・!?』
元気に飛び跳ねている智子を見て、真剣にそう思った。智子のジャンプ力は、軽くダイニングテーブルに届くくらいあった。
「さー、いっといでー!」
特に草の綺麗な場所を正広は知っていて、そこで智子を下ろす。
智子は、しばらくあたりの様子をうかがっていたら、耳と鼻をぴくりと動かし、急にダッシュを始めた。
「元気だなー・・・。あ、しぃちゃんも行くの?」
その智子を追うように白文鳥のしぃちゃんも飛んで行き、正広は、土手に寝転んで空を眺める。
うーん、気持ちいいなぁ〜・・・。

 

「あれ!?」
しかし、かけらも気持ちよくない男がいた。
取引先の高級スーパーに到着した中田草介だ。
「あれぇっ!?」

業者用駐車場に止めた軽トラの回りを、すでに8回回ってみた。
そしてありとあらゆる角度から荷台を検証した結果、導き出せる答えは、たった一つなのだ。
すなわち。

『荷台は空である』

「なっ、なんでっ!?」
草介は朝からのことを必死に反芻した。
今朝は、目覚ましと同時に目を覚まして、でも、朝ごはんは食べるヒマがなかったから、急いで会社に向かって。
てことは、目覚ましの設定時間が悪いのかな。

それで、会社で途中のコンビニで買ったパンを食べて。あぁ、でも、牛山さんに半分取られたんだった。なんであの人は、あぁ意地汚いのか・・・。
それから発注書を2枚書いて、昨日の日報を書いてなかったから、所長に怒られて、えーっと・・・。あ!電話だ!電話がかかってきて、いや、間違い電話だったっけ。あれ?どっちが先だっけ。間違い電話は、イタリア旅行の相談で、サンマルコって会社名だから、イタリアってのは、あまりに安直だよね。僕だって行ったことないよ、イタリアなんて。いや、海外旅行にそもそも行ったことがないんだけど。行くんだったら、やっぱりイタリアに行きたいなぁ。ハムが美味しいんだよね、ハム・・・。

ハム!だからハムだよ!!間違い電話には違いますってゆったし、もう1本の電話が発注の電話だったんだよ!だから、倉庫に行って、注文されたハムを出して、それから、段ボールにいれたんだ。種類一杯あったし。その段ボールは、倉庫に置いてあったもので、あの場で組みたて直して、ガムテープを貼った。
それで、中にハムを収めて、保冷剤を詰めて、テープで閉じようとして、もう1度中身を見た。
・・・あの時、外に出して確認したかな、ハム・・・。
それに関しては、どうも記憶が曖昧だった。箱の中を覗きこんで、ハムの数と種類を確認したかどうかが不明だ。
いや、でも・・・、それから蓋を閉じて、トラックまで、その段ボールを運んだことは間違いない!
荷台に置いた!置いた!・・・置いた・・・っ!?
もう一度思い出そうとする。
倉庫から、駐車場に出た時の自分は、段ボールをちゃんと持っていただろうか。
・・・いや、持っていた。
バックを、その段ボールの上において、顎でささえながら運んだ記憶がある。
荷台にも置いた。
荷台に置いて、荷物が1つだから、ロープをかけようかどうしようかって考えたんだ。
・・・っていうか、なんで軽トラ!?保冷車は!?

その日、サンマルコハムの保冷車は、草介の先輩にあたる、次屋が使っていた。先輩だし、量も多いし、それは仕方がないって思ったことを草介は思い出す。

それから、運転席に座って、車を出して・・・。
でも・・・。
草介は、当時会社に残っていたメンバーを思い出す。所長、牛山さん、つぼみちゃん。
つぼみちゃんではない。つぼみちゃんが、そんなことをするはずがない。
しかし、他の二人は・・・!
所長は悪気ではなく、ただの勘違いで。牛山さんは悪気で。段ボールを下ろしてしまうことがあったかもしれない!!
会社に戻ろう・・・!
あわあわと運転席に座ろうとした草介は、後ろから声をかけられた。
「サンマルコさん?」
げっ。
「あっ!社長!」
驚いても、草介は営業マン。ニコっ!と笑顔で振り帰った。
「早かったね。ハムは?」
「あーっと、ですね」
笑顔のまま、草介は営業脳をフル稼動させる。どうする!どうすればいい!ここまで来て、荷台にハムがないですむはずがない!
草介は、基本的に正直者だったが、ここで、「ハムが荷台にありません」と言えばどうなるか、ということが想像できないほどのおバカさんではなかった。
なぜ手ぶらなのかの説明をしなくては。説明を。説明を・・・!
「サンマルコさん?」
「あっ、あの!たった今、会社から電話がありましてっ!」
高級スーパーの社長が、携帯を片手に持っていたのを見て、とっさに草介は言った。
「社、社の方に、戻れと言うことだったんです、よ」
「あぁ、そう。じゃあ、ハムだけ受けとっておこうか」
「あっ、えーーーっと」
そうか。それじゃあ、ダメなんだ。このスーパーのためでもあり、急いで会社に戻る用件はってゆーと!
「いえ!あの!ハムが入ったそうなんです!より質のいいもので、いつもお世話になってる、こちらさまに、特別に収めさせていただこうかと!」
言い切った後、次屋の顔が目の前をよぎった。
根拠もないのに、こゆことを言いがちなのは、あの先輩が・・・!
「ほぉ〜。そうかね」
「はいー、そうですー・・・」
ニコニコと社長が恵比須顔になるのを見ながら、草介は微笑みをキープしたまま、運転席に座った。
やばい。
一体どーしたらいいんだ。
そもそも、ハムはどこにあるんだ。

「んー・・・、くちっ」
正広は、鼻をこすりながら体を起こした。
いくら、去年色違いで大量に買ったフリースを来ているとはいえ、11月の野外でうたた寝することは得策ではない。
「んー、だるいなー・・・」
しぃちゃんや智子ちゃんは大丈夫かな、と辺りを見まわすと、見間違えのしようのない白いふわふわが2つ、ちゃんと見えた。
大きな一つが野長瀬智子(ミニウサギ大・オス)のもので、その回りでフワフワ飛んでいるのが、白文鳥のしぃちゃん。
「仲良しだなー」
ほのぼのとした気持ちで、正広は2匹の元に近寄る。
「なーにしてんのっ?」
ひょい、と2匹の間を覗き込み、正広は、ずしゃっ!と飛びすさった。
「な!なにそれ!!」
正広の頭の中では、恐ろしい想像が渦巻いていた。
「と、智子ちゃん!智子ちゃんはウサギでしょう!?ウサギは、ニンジンを食べるんでしょう!?それ!それ何ぃ〜!?」
くすんだピンク色の何かを、智子が齧っている。
その色や、表面のてかりの雰囲気が、何かを連想させる。
・・・肉・・・!肉かも・・・!
なんで肉?なんで土手に肉?お買い物帰りのお母さんが、おっとうっかり、って落としていった固まり肉!?ありえない!
てことは、その肉は。あの。なにか。
ついさっきまで、命のあった、なにかの・・・なにかのぉぉぉぉ〜〜〜????
いやーーーーーー!!!!!!!

自己を崩壊させそうになりながらも、正広は必死に踏みとどまった。
もし、それが本当に、さっきまで命があった、なにかの、なにか、だったら、そのまま齧らせておく訳にはいかない!智子は大事な預かりものだ!
「とっ、智子ちゃん!」
がしっ!たくましい背中を見ながら、えいっ!と両脇を挟む。
「こっちきなさいっ!」
目をつぶったまま、えいっ!と引き剥がし、ダッシュする。しぃちゃんが慌てて飛んでくる羽音もした。
「とっ、智子ちゃん・・・っ!」
急に抱き上げられ、振りまわされる結果になった智子は暴れたが、正広も離してなるものか!と必死につかまえて、こわごわ、自分の方を向かせた。
これで。
白い智子ちゃんの顔が。
その下半分が。
・・・あ、赤く・・・な、なってたら、や、やだ、なぁ・・・・・・・・!
そんなことが起こったら!
・・・泣いちゃうかも・・・!
コワイ、コワイ、コワイ・・・!どきどきしながら正広は智子の体を反転させる。そして!
「・・・普通だぁ〜〜・・・!」
智子の顔がいつも通りで、特別汚れている訳ではないことを発見し、脱力する。
よ、よかった・・・!少なくとも、智子ちゃんがどうこうした命じゃないんだ。

随分と失礼なことを思いながら、正広はおそるおそる、そのピンクの物体を振り返る。
もし、さっきまで生きていた、なにかの、なにかだったら、その、埋めるとか、してあげた方がいいかも、と思ったのだ。
智子を抱いたまま、そぉーっと、そぉーーーっと近づいていき、草の中に埋もれて見える、これは一体なにかしら、と思ったら。
ああああ!!ほ、骨!骨が見えてる!骨!!動物だ!動物だよね!?ひ、人じゃないよねぇぇーー!!
正広は慌てて土手をダッシュで駆けあがる。
コワイ。
コワスギル!

カチン。

正広は、頭のモードを変換させた。
これは、自分の手におえる話ではない。
兄を呼ぼう。
正広がPHSで兄に連絡を取ろうとしている後ろを、サンマルコハムの軽トラが通っていく。
空はあくまでも青く、高く。
空気は秋から冬へむけて、ひんやりとしてきているけれど、心地よく。
ピクニックには最適かなぁーなんて思われる一日のはずだったが、正広と、草介は、おそろしく慌てている。

つづく


いや、黒尽くめの人はもう出てくる予定はないんですけどね(笑)どうでしょうか。出てくるかなぁ、黒尽くめの人(笑)
私ったら、サンマルコハムの人たちの名前を全然知らなくて、HPを見てみたら、いけません。あのHPはいけません(中島誠之助風)ヒカルコのファッションチェックとかやっててもしょうがないじゃないですか。それより、サンマルコハム取り扱い商品の紹介とかしてほしいっすよね(笑)!?ヒカルコのファッションをチェックしたところでそれが買える訳でなし。それよりかハムの方が!ハムうんちくの方が素敵だと思うのに!!中田草介が熱く語る、今週のハムの魅力とか(笑)!

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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