天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

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ギフト番外編115前編『釣り師を届ける』

<今探されている人物>
平成の釣り師森且行。宴会の最中、突如行方不明。お姉ちゃん釣りに出た疑いあり。

yukio
 

「てゆっかさ」
奈緒美が言った。
「なぜ、外に釣りに行く?」
ここにだって、魚はいるじゃないの!と奈緒美が言うのだが。
「ここ?」
と由紀夫はテーブルを見まわす。
「古い釣堀?」
日頃正直な由紀夫は、アルコールが入ると、さらに正直になる。
「あんたねー!」
「私も古いんですかー!」
「典子ぉぉーー!!」
私『も』はまずいよ、私『も』は・・・!野長瀬に腕を叩かれ、ああ!と反省した典子だが、いかんせん、口から出た言葉は取り戻せない。
こーゆーの、ミスターふくすい、ノットリターントゥ・ボン。『ふくすいさんは、お盆に帰ってこない』って言うんだわ・・・!
そんな、ウンナンの古いギャグを思い浮べてしまう典子だ。
「なんなのよ、まったくもぅー!」
カチンときちゃうわ!と冷酒のグラスを一気に開けた奈緒美は、ん?と首を傾げる。
「・・・この荷物、どーすんの?」
「あ、そうだ」
正広は置かれているバックを見る。
「携帯くらい持ってったよねぇ」
スーツの上着を着たままだったし、と電話をしてみたが。

「んー・・・・・・・」
「宇多田ヒカルかー・・・」
そのバックの中から、Travelingが流れてくるばかりだ。
「結構普通の着メロですね」
そういう野長瀬は、昭和歌謡を着メロにしている。
「兄ちゃん、どーしよう・・・」
「どうしようったって・・・」
心配そうな正広に、由紀夫は言った。
「子供じゃないんだし、荷物もあるし、釣りに満足したら戻ってくるだろ」
「でもー・・・」

「お待たせしましたぁ〜!タッカルビです〜!」
きゃーーー!
その言葉に、奈緒美、典子、正広、野長瀬がバンザイで出迎える。
「うわ!そんな喜んでくれなくても!」
大きな鉄板を持ってきた店のお兄ちゃんもニコニコ顔でテーブルに置きながら、熱いから気をつけてくださいねー!と明るく言った。
「うわー!美味しそうねー!」
「おいひいでつー」
「は、早いな、正広・・・」
正広は、鉄板が置かれるかどうか、というところで、すかさず箸を出したし、少なくとも、この瞬間、森医師のことは意識の中から飛ばしている。
素晴らしい早さだ。
「あー、韓国いきたーいですぅー」
「あら、行ったらいいじゃない」
自分はいつ行こうかしら、とすでに算段中の奈緒美に言われ、くやちぃ・・・!と典子は心のハンケチを噛み締める。
どうせ、韓国旅行するようなお金もないわよぅー!
食ってやる!
典子のスピードが上がったことで、いけない!と正広のスピードも上がる。そうすると野長瀬も黙ってはいないため、瞬く間に、まさしく、瞬きをする間に、どんどん鉄板が綺麗になっていく。
「ちょ、あの、おい」
今だ、鶏1つ、さつまいも1つ、トッポキ2つ、後野菜たち2口分、くらいしか口に入っていないような気がしている由紀夫は、おいおいおい、とノンストップな連中にストップをかける。
「これって、ちょっと残しといて、ご飯いれるんだろ?」

はっ!
3人の手が同時に止まった。
タッカルビは、鶏や野菜、韓国のおもち、トッポキを辛目のタレで炒めたもの。これにごはんを入れて炒めるのも、大変美味しい。
しかし、すでに、ご飯を入れていためられるほどの中身ではなくなってきていた。
どうしよう・・・!
3人が止まっている隙に、奈緒美が、まだ残っていた最後の鶏をGET。
「あっ!」
誰からともなく声が上がり、せめて、モチを!と箸が動き始め。
「・・・追加!」
ついに正広が言った。
「そうですね!由紀夫ちゃん、まだ全然食べてないし!」
「そうですよ、由紀夫さん、食べてないじゃないですか!」
追加!追加!と楽しげに歌いながら、最初の鉄板を空にした3人と、ちょっと一人は、すぐ様、タッカルビを追加注文したのだった。

「うそぉー!むちゃくちゃおいしぃー!」
女性が多い店、ということは、当然デザートが美味しい。
「ひろちゃぁぁ〜〜ん、クリームブリュレめちゃくちゃおいちぃぃーーー!」
「えーーー!!パンケーキもすんごぃよぅぅぅ〜〜〜!!典子ちゃぁぁ〜〜ん!!」
「し、白玉が・・・!こ、この弾力が・・・っ!」
「んー、このチーズケーキは買って帰ってでも食べたいわねぇ・・・」
「デザートメニュー豊富すぎだろ!」
ばっかねぇ、とニューヨークスタイルのチーズケーキを美味しくいただいていた奈緒美が、フォークをぶんぶんと振りまわす。
「こーゆー店だからこそ!看護婦さんもお気に入りで・・・、ん?看護婦さん?」
「看護婦さん・・・。ああああ!森先生はっ!?」

森先生がいない!となってから、約1時間が過ぎようとしていたところで、ようやく全員が状況を把握しなおした。
「これだけ帰ってこないっておかしいだろ!」
「探しに行かなきゃ・・・」
正広がパンケーキにフォークを突き刺したまま、不安そうな顔になる。
「とりあえず、ちょっとその辺見てくるわ」
「あ、兄ちゃん、一緒に行く!」
「まー、偉いわー、ひろちゃん」
どっしり座ったまま、立つそぶりも見せず、奈緒美が言った。
「寒いのにねぇ。偉い。ひろちゃんは偉いわ。由紀夫も偉い!」
「ほんとですよねぇ」
こっちも、立つ気配のかけらもないまま、典子は、じぃっと野長瀬を見た。
奈緒美も見た。
由紀夫も、正広も見た。
「あ、そ、そうですね・・・僕も・・・」
野長瀬は、心で泣いていた。
白玉・・・!
彼の白玉あんみつは、まだ全然食べられていないのだ。一つ一つの白玉をじっくり味わいすぎて。
「こっちに戻ってきたら連絡するから」
奈緒美は微笑みながら3人に告げた。
帰ってきたら、もうデザートはないだろうことが、3人には解った。(由紀夫は頼んでいなかったけれど)

「えーっと」
店を出たら、人出はまだ多かった。
「多いな」
ざっと見まわたしてみたが、森医師の姿はない。
出て行って1時間、というのが由紀夫には少々ひっかかる。
まさか、釣りあげるためだけに1時間以上かけるはずはないだろう。あのルックスだし、釣れるとすれば早いはず。
と、いうことは。

・・・今頃、外を歩いているってことはないんじゃあないかなぁ・・・と。
今頃、とっととさばいちゃってんじゃないかなぁ・・・。

「あ。兄ちゃん、なんか大人なこと、考えてるっ?」
「えっ?あっ!ゆ、由紀夫ちゃん、ふ、不潔・・・っ」
「不潔とかゆーな!」
「あ!」
「いたかっ?」
正広の声に、すかさず反応した由紀夫だが、正広は、中空を見つめたまま、首を振る。
「・・・ゆってた・・・」
「何を?」
「前に、慎吾くん、ゆってたと思う。森先生、お酒は飲めるけど、飲んだら大抵おかしなことをするから、こっちが酔えないって」
「おかしなこと?」
「だから、釣りだろ」
「・・・ま、まずかったかなぁ・・・!」
正広だって、ふらっといなくなったまま1時間というのは尋常じゃないことくらい見当がつく。
「とりあえず、この辺りの店で、森先生みたいなのが来たかどうか聞いていくか」
「あ、そ、そだね」
「じゃあ、僕、こっちいきます」
野長瀬の目は、その瞬間女の子が多い方に向いていて、その才能が、現実にいかされないことに、少し哀れを催してみたり。
「じゃ、こっちな」
早坂兄弟は反対に向かって、まず、最初に、ウェイターは顔で採用間違いなし、のカフェで聞いてみた。
「身長180くらいで、足が長くて、顔が小さい?スーツ、あれですよね。ヘルムート・ラング」
「・・・だっけ?」
「グレーで、細かいストライプになってるスーツで、ネクタイが、ひっそりエスメスなのに、リス模様」
「はいはい!見ました!うちの店もちらっと見てたけど、そのままこの道まっすぐ行かれましたよ」
兄ちゃんたちって、すごい・・・。
正広は驚愕しながら、その道を見る。ちょっと、暗くなっているけれども、いかにも大人が行きそうな店がある場所だった。
森先生には、確かにこういうところが似合うや。
「んー、後は、じゃあ、適当に覗いて・・・」
重厚な木のドアに、小さく店名があるだけのバーや、サイバーなイメージのカフェ。なるべく大人っぽい店の数々を当たってみたが、森の姿は見かけられていなかった。
「どこまで行ったんだー?」
「ほんとー・・・」
段々、正広は、本気で心配になってきた。
由紀夫も、結構心配になってきた。
釣ったはいいけど、大物過ぎたとか?
いやいや、美味しくさばいていただいてるなら、別にそれでいいんだけども、いただかれててもやだしなー。もっと先まで行ってみるかなー・・・。

「あ!!」
「見つけた!?」
「慎吾くんだ!」

声を上げたと同時に正広がダッシュする。
「慎吾くん!」
「あ、正広くーん・・・」
はははー・・・と手を振る香取慎吾には、生気というものがなかった。
「ど、どしたの・・・?」
「え、いや、ちょっと、久しぶりに外に出たもんだから、なんか、足がふらついちゃって」
「あ、試験前だっけ・・・」
「え?そう・・・。ん?ひろちゃんに言ったっけ、俺」
「森先生から聞いたんだけど、そ、その!森先生がいなくなっちゃって!」
「へっ!?」
しゃき!
慎吾の背筋が急に伸びる。
「え?いなくなったって?え?なんですって?」
「うちの事務所の連中と一緒に飲んでたんだけど、急にいなくなって」
「もう1時間くらいたってるの・・・!」
「1時間!」
慎吾がはっきりと青ざめる。
「やっべー・・・、1時間!あの、あれですか?事務所ってことは、社長さんとか、女の人いました?」
「いた」
「何人?」
「二人」
「二人かぁーーーっ!」
コンビニ袋を持ったまま、慎吾はしゃがんで頭を抱える。
「二人・・・!二人で1時間かぁ〜・・・!」
「えええーーー・・・!一体なんなのーー???」
正広は、どんどん怖い考えになっていったが、由紀夫の頭は疑問で一杯になった。

「・・・席に女が二人いた、とかって関係あんの?」
「ありますよぉ」
疲れたように立ちあがった慎吾が肩を落とす。
「釣りに、行ったんだよ、な?」
「そうなんです。先生釣り好きなんですけど、下手なんですよぉ」
「え?下手なんだ。そうは見えない」
「見えないでしょ?結構得意そうでしょ?下手なんですよねー。だから、俺が一緒にいるときは、代わりにやったりするんですけど」
「えっ!?」
早坂由紀夫驚愕。
「代わりに釣るってこと?」
「そーですねー。俺、めちゃ得意ですから」
「あー、得意そう」
明るいし、ノリはいいし、勢いで女の子がついていきそうだと由紀夫は思う。
思うが、代わりにって!
「松本人志と、今田耕治の関係って感じ?」
後輩に代わりにナンパさせる、という話をよくテレビでしているから、と思いながら言ったが、慎吾は首を傾げる。
「あ、そうなんですかね?」

ん?

ん??

と二人は顔を見合わせて首を傾げる。
それを真横から見ながら、正広も首を傾げる。

「あ!こんなことしてる場合じゃないや!いそがなきゃ!」
慎吾はささっと辺りを見まわす。
「んーーーっと、この近辺だったらーー、こっちか!」
慎吾が走り出した方向は、まさしく早坂兄弟が、これから向かおうとしていた方向だった。
間違えてはいなかったかと思うが、なんだろう、あの香取慎吾の迷わない足取りは。

その疑問は、とあるお店の前で氷解した。

明るい。明るすぎる店内。
賑やかな人たち。
笑顔や、笑い声に溢れている、その店は。

『ゲームセンター』

「・・・ゲーセン・・・?」
「あ!いた!森先生!!」
「あれー、慎吾だぁ〜」
ちょっと間延びした、ノンキな声がUFOキャッチャーの向こうからしている。

「UFOキャッチャー・・・」
「釣りって、UFOキャッチャーのこと!?」
なにやら問題になっていた、伊勢エビキャッチャーとかでもなく、本当に、ただのUFOキャッチャー!
「ちょっとちょっと!なんでまだ1つも取れてないんですか!」
「だって、あれが欲しいだよ。あれ。二つあって、ちょうどいいんだって!」
「どゆこと・・・?」
正広の疑問に、慎吾が溜息まじに答えた。
「・・・おみやげです・・・」
「・・・奈緒美さんたちに?」
「そう!女の子におみやげ!って思って!」
奈緒美でも、『女の子』のカテゴリーにちゃんといれるところなんかは、さすが!看護婦の中で仕事をしている男。
その心配りは大したものだが。

「ちっ・・・・・・・・!!!めい的に!!下手なんです!」
抱きかかえられるほどの大きなぬいぐるみをとりたーーい、とりたーーいと、ずっと頑張っていたらしい。
1回300円のゲームだったので、すでに、万札が1枚なくなろうとしていた。
「・・・買ったらいいじゃん・・・!」
正広が、正論中の正論を吐いたが、森医師の心には届かない。
「これ!絶対取れると思わない?」
「思いませんね。絶対とれない。これだったら、手前の山から崩していかないと無理です」
こうして、香取インターンは、さくさくとぬいぐるみをとって、とって、とって。4回目に1つめの白いクマのぬいぐるみをGET。6回目で、2つ目をGETした。
その間、わずかに5分。
店内中の拍手を背に、4人はゲームセンターを出た。

「何回も言ってますけどね。一人でゲーセンいったら、大変なことになるんだから、いい加減!やめてください」
「お金、もったいないじゃないですか、森先生ぇ〜・・・」
しかしそんな言葉は、両脇に白いくまを抱えている森の心にはやっぱり響かない。
おみやげだー、おみやげーー、と嬉しそうにしながら、先頭きって、楽に戻っていく。

こうして、腰越人材派遣センターの『女の子』二人は、森医師が『釣り』あげた獲物を手に、機嫌よく帰途についた。早坂兄弟も帰ったし、森医師は、慎吾インターンの手によりタクシーに放り込まれ、まだ試験勉強中だった慎吾は、よれよれと部屋に戻る。

あれ。
また、おいてかれちゃったね。

野長瀬さんったら。


職場の主任が、そゆ人でした・・・!
ホントに飲み会の席からいなくなったと思ったら、大きなぬいぐるみを3つもとってきて!!びっくりするわ!何をするのよ!って思ったけど、知らなかったのは、初参加の私たちだけ。全員が、「あ、ゲーセンです」って・・・(笑)す・て・き・・・!

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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