天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

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ギフト番外編116クリスマスプレゼントを届ける』

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クリスマスシーズンともなると、由紀夫にやってくる依頼は、サンタになってくれが圧倒的に多い。
とは言え、由紀夫は一人。
ということで、毎日忙しく働いている。
しかし。
クリスマスパーティーのサンタ役なんて言うのはいくらでも掛け持ちがきくけれども、大変なのは、24日の深夜、子供にプレゼントを届けてくれ、という親の依頼。
子供が寝た後で、が基本パターンながら、子供がいつ寝るんだよ!というのが大問題になるため、多くは受けていない。
そんなクリスマスイブ。由紀夫は結局9時過ぎから、5軒のお宅で、ひっそりサンタになることになった。
1軒目。幼稚園児。爆睡。
クリスマスツリーやら、ケーキやらが置かれているこたつに入ったまま、爆睡中。
どうせならやっぱり合わせてあげたい!とお母さんが揺さぶっても、お父さんが抱き上げても、まったく!起きなかった。
「あ、でも、そのこっそり来るのが醍醐味ですし・・・」
「えーーー!だって、こんなカッコいい人が来るなんて思わなかったのにぃー!ねぇー!みぃちゃーん!」
いやいやいやいやと由紀夫は手を振り、メリークリスマスと、指定されていた、可愛い、みぃちゃんと同じくらいの大きさのウサギのぬいぐるみをみぃちゃんの隣に置く。
寝ているみぃちゃんと、うさぎのぬいぐるみは、なかなか可愛い写真になった。
「あ、そだ」
由紀夫は、上着を脱いで、画面の中にちらりと赤い衣装が入るように配置して、もう一度写真を撮る。
「どうぞ、これ」
「あっ!サンタさんが来たっぽい!」
喜ぶ両親にポラロイドを手渡して、由紀夫は家を出た。
なかなかいいスタートだったなと思った。

そして、その通りに、2軒目、3軒目、4軒目と、さくさくと仕事が進む。
4軒目の小学校1年生の女の子は、プレゼントは内緒だからと決して親に言おうとしなかったので、一度は部屋に忍び込み、大事にしまってあったサンタへの手紙をちらりと覗いた後、解らないように元に戻すという作業もあったが、なかなか泣かせるお願いだった。
『パパとママが仲良くしてくれますように』

「・・・仲悪いんですか?」
由紀夫の言葉に、ママは赤い顔をして、パパは困った顔をした。
「いえ、あの」
「仲はいいんですけど・・・」
「その・・・」
その様子に、由紀夫もピン、とくる。
「・・・見られましたね?」
「ああっ!!」
二人は仲が悪い訳ではなく、逆に、大層仲良しのシーンを、目撃されたらしい。
「・・・んー。それは・・・」
「はぁ、いえ、あの・・・」
大人3人の中に、なんとも言えない空気が流れた後。
「・・・じゃあ、プレゼントはどうしましょう」
と由紀夫は尋ねた。
「あの、一番いいのはアイディアあるんですけど」
とつけ加える。
「なんですか?」
飛びついてきたママに、由紀夫はにっこりと微笑む。
「弟か、妹」
「んーーー!!!!」

ま、それはじゃあ、来年にってことで、ここは思い切って、どのよおにして赤ちゃんができるのか!についての絵本をいれて、本を何冊か、ということにした。
「それでパパとママが仲良くしている、ということをつかんでもらえればね・・・」
「そうですね・・・」

そしてその子は、サンタさんにお願いをする!とがんばって起きていたようだが、静かにしてないとサンタさん、こないかもね、という両親の言葉に、暗い部屋で、音を立てないようにじーーーーっとしていたため。
当然だが、眠ってしまった。

その子も可愛いし、ママも美人なので、妹が生まれると、なかなか華やかでいいかもしれない。
でも、パパが可哀相だから弟の方がいいのかな。
そんなことを思いながらプレゼントを置き、一瞬フラッシュをたくけど、起きるなよーー!!と祈りながらシャッターを押した後は、そそくさと部屋を出る。
よほどがんばった末力尽きたのだろう、ポラロイドの中の寝顔には、起きる気配のかけらもなかった。

こうして、最後の家にたどり着いたのは、12時過ぎ。
小学校2年生。今回の最高年齢である男の子のいるうちだ。
家の明かりは消えていた。
俺は慎吾ママか、と思いながら、預かった鍵でそっとドアを開ける。
家の間取りは完璧に頭に入っているので、まずは状況確認のため、両親の寝室へ。
「・・・失礼します〜・・・」
「・・・お疲れ様ですぅ〜・・・」
両親は、部屋にこもってはいたが、当然寝てはいない。
「どうですか・・・、息子さん・・・」
「さっき見に行ったら、寝てたようなんですが・・・」
母親は、しかし当惑気味だ。
「・・・寝たふり、かもしれません・・・」
先月、小学校2年生の彼には、哀しい出来事があったのだ。
お母さんの、お母さん。すなわち、おばあちゃんが亡くなってしまった。彼は、かなりおばあちゃんが好きだったので、すっかりショックを受けてしまった彼は、クリスマスなんてものに興味がもてなくなったらしい。
プレゼントは何がいい?といっても、何もいらないの一点張り。
これではいかん、元気を出して欲しい!ということで、サンタクロースを用意したのだった。
もし、子供が目を覚ましていても、サンタがプレゼントを持ってきたということが、何かの思い出になったらいいと思って。

「・・・プレゼント、これ、ですね・・・」
「はい。お願いします」
両親は、とても慎重に由紀夫にプレゼントを渡し、由紀夫も、とても慎重にそれを受け取る。
何せ、ラッピングが大袈裟で、ちょっと動けば、ガサガサと音を立てるのだ。
「では、後程・・・」
ドアを開けてもらい、さらに慎重に、男の子の部屋に向かう。
名前は、宮本透太くん。小学校2年生、性格慎重。成績そこそこ優秀な、優等生タイプ。
そういう子供が、クリスマスイブに考えていることは、由紀夫にも大方想像がついた。
慎重に部屋のドアを開け、枕元にガサガサいうラッピングを、どうにか静かに置こうとベッドに近づいていた由紀夫は、足元に違和感を感じた。
しまった・・・!と思った時には、ベッドの横にあった棚から、雑誌がおっこちて、透太の頭を直撃、彼が飛び起きた。
「いった・・・!あっ!」
「あっ」
眼鏡をかけたら、ハリー・ポッターに似てるかも、という、お利口そうな顔をした彼は、頭を撫でながら由紀夫をじっと見つめる。
由紀夫サンタは、赤い服に、赤い帽子を被り、一応白い袋も持っているが、プレゼントは手にしている。気合のコーディネートとして、家の中でも、ブーツを履いていた。
しかし、どうしたって似合わない!という理由から、白いヒゲはつけていない。
一応あれこれつけてみたのだが、逆に、ウソくささが倍増してしまったのだ。
「・・・サンタ・・・?」
「そう。宮本透太くん?」
「ウソだよ」
「え?宮本透太くんじゃないの?」
「そうじゃなくって、サンタクロースなんて、いないよ」
「じゃあ、俺は誰?」
「知らないけど。お父さんか、お母さんかに、頼まれてきたんでしょ」
「ところで、このワナは、自分で作ったの?」
ベッドに近づく人間がいるとヒモにひっかかり、そのヒモが引っ張るのは、本棚の雑誌、そして、それが自分の上に落ちてくる、という捨て身のワナだった。
「そう。お父さんがくると思ってた」
「でも、俺が来たからびっくりしたんだ」
「そう。お疲れ様です」
大人びた様子で頭を下げられて、由紀夫は小さく笑った。
「なんだそれ」
「だって。・・・お仕事でしょ」
ふん、とそっぽを向き、つまらない顔をする透太に、由紀夫サンタは言ってみた。
「サンタはいないと思うんだ」
「いないよ。当たり前じゃん」
「なんでいないと思う訳?」
「だって。・・・プレゼントとかは、親が買ってくれてるじゃん」
「お父さんたちは、サンタから頼まれて買ってるのかもよ」
「そんな訳ないよ!」

怒ったように透太はいい、布団の中に潜り込む。
「いないんだよ。サンタなんて」
「そうかな」
布団の下で丸くなっている透太に由紀夫は言った。
「アメリカ大統領っていると思う?」
「・・・?」
何を言ってるんだ?と顔を出した透太は、いるに決まってるじゃん、と返事をする。
「決まってるって、なんで?」
「だって。いるよ。テレビとか、出てるもん」
「でも、会ったことないだろ」
「ないよ」
「じゃあ解んないじゃん。あれ、CGかもよ。全部」
「えぇ?」
透太はベッドに起きあがって、違う違うと手を振る。
「そんなはずないじゃない!なんであれがCGなの?いるよ?絶対」
「アメリカ行ったことある?」
「ないけど・・・」
「・・・ほんとにあると思う?」
「あるよ!」
「地図に書いてあるだけで、ホントはないのかもよ?」
「えぇ〜・・・?」
寝起きの小学生の頭は混乱してきた。
「そんなこと・・・ないよ・・・。だって、クラスの子とか、去年、ハワイ行ったって言ったもん」
「でも、透太は、ハワイ、見たことないんだろ?」
「・・・テレビとかで見るよ?」
「ま、でも、ハワイはホントにあるよ。俺も行ったことあるから」

「ほら!」
透太は大喜びで由紀夫を指差した。
「おかしいじゃん。ハワイなんて、サンタはいかないよ!」
「なんで。サンタだって、ハワイくらい行くよ。パカンスで」
「ね、お兄さん、何言ってるの?」
「いや、なんでサンタはいないと思うのかな、と思って。もし、見たことがない、っていう理由だったら、見たことなくても、実際に存在するものは、たくさんあるなと思ったからさ。アメリカ大統領とか」
「そゆんじゃなくって・・・」
透太は哀しい顔になった。
「サンタは、プレゼントをくれるんでしょう?」
「ある種のサンタは、悪い子の靴下に、ムチしかいれてくれないらしいけどな」
「・・・じゃあ、悪い子だから、プレゼントもらえないんだ・・・」
「透太?」
小学2年の、その子は、ぽつりと涙を零した。
「おばあちゃん・・・、もらえないんだ・・・」

「おばあちゃんは、プレゼントできないねぇ」
由紀夫は、透太の頭を撫でながら言う。
「だから、サンタなんかいないんだ・・・」
「いやいや。もう亡くなっちゃった人は、無理だよ。どうしたって。だって、透太がおばあちゃんをプレゼントして欲しいって言ってる時に、透太のお母さんも、おばあちゃんをプレゼントして欲しいって言われたら、どーすんの。おばあちゃん、半分に分ける訳にいかないだろ」
「それは、お母さんが我慢してよ!」
「だって、そんな。お母さんのお母さんだろ?絶対お母さんだって欲しいはずだろ」
「・・・じゃあ、貸してあげるから・・・」
シクシクと泣き出した透太に、これ、と、プレゼントを手渡す。透太の両腕では持てないほど、大きな包みだった。
「本当は、クリスマスの朝ね。つまり、明日の朝、開けるんだけど。今すでに12月25日。クリスマスになりました。開けてもOKでしょ。どうぞ。サンタからです」
「いらない。こんな小さくないよ、おばあちゃん」
「いや、どうだろうな。骨の関節とか、全部外していったら、これくらいのサイズには収まるかもよ」
「えぇっ!」
こーゆーところが子供って可愛いよな、と思いながら、必死にラッピングをほどいていく透太を見守る。華やかなラッピングの中にあったのは、白地に、可愛らしいウサギや、手まりなんかの模様のついた風呂敷で、それをほどくと、中には、セーターや、手袋や、マフラーなんかが入っていた。
「これ・・・!」
その中身は、もう小さくなった透太のセーターや、マフラーをほどいて、亡くなったおばあちゃんが編みなおしていたものだという。
「これは、おばあちゃんからのリクエストで運んできました」
「ウソだよ・・・」
「え、何?透太はおばあちゃんはいないって思うの?」
「いないじゃんか!もう!」
「でも、いたんだよ、おばあちゃんは。ちゃんと。今、目の前にいないからといって、おばあちゃんはいない、って言ったら、おばあちゃん、可哀相じゃん」
「可哀相・・・?」
「おばあちゃんがいたから、お母さんが生まれて、お母さんがいたから、透太が生まれたんだから。おばあちゃんがいない、ってなったら、おまえまでいなくなるぞ」
「ん?あれ?えっと、そゆことじゃなくって・・・」
今は、もう、いないってことで、最初っからいないとかってゆってるんじゃなくって、と、お利口な頭で一生懸命考えよう、考えようとするけれど、由紀夫がマフラーを首に巻いてやると、くしゃ、っと顔を歪めた。

「・・・おばあちゃんは、いるの・・・?」
「いなかったら、大変だろ。誰にだっておばあちゃんはいるんだよ」
「サンタクロースも・・・?」
「まぁ、世界中、くまなく!探して、後、宇宙にまでその捜査の手を伸ばしても、どーーっこにもいない!となったらいないのかも、しれないけど。見たことないから、いない、じゃあ弱いな」
「でも・・・、いる訳ないのに・・・」
「いないんだったら、なんで日本中、誰でも知ってんだろうね」

見たことある人の方が絶対少ないはずなのに、誰だって知っている「サンタクロース」という存在を、どう考えて言いものか、透太は解らなくなってきた。
「・・・僕、絶対おかしなこと言ってないと思うんだけど・・・」
「まぁ、色々考えてみたら?」
もう一度マフラーに触れて、由紀夫は微笑んだ。
「あったかそう。大事にしなよ」
最後にポラロイドで写真を撮り、その写真を透太に渡す。
「・・・ドアから帰るの?」
「昨今の日本で、窓から出入りしてると、警察に通報されるんでね・・・」
この辺りのお約束も忘れず部屋を出ようとして、由紀夫は振り向いた。
「メリークリスマス。よいクリスマスを」
「・・・メリー、クリスマス。ありがとう・・・、サンタ、さん・・・???」

たっぷりの疑問符つきの言葉が可愛くて、由紀夫サンタは、暫くドアの外で笑いをこらえることになった。

家に帰りついたらそろそろ3時になる頃で、当然正広は寝ている。
クリスマスプレゼントも用意してあったから、とりあえずベッドのとこに置いとくか、と思った由紀夫は、テーブルの上にメモがあるのを見つけた。
『サンタさんへ。お疲れ様でした。冷蔵庫にケーキが入ってます』
ふんふん。って、ケーキかよ。
『プレゼントには、ぜひ、ジンジャーをお願いします。今年じゃなくっていいので』
欲望の塊か!!
さすが正広、と思いながら冷蔵庫を開けた由紀夫は、ケーキと一緒に、ひんやりと冷えた新しい財布(プラダですが)を見つけて、夜中にも関わらず大笑いしてしまい、結局正広を起こすことになった。

今年も誰かのサンタクロースになれたらいいですね。


ぬ?ひろちゃんへのプレゼントは一体なんなのかしら?由紀夫ちゃん!
所さんの番組で、サンタはいる、いない、で幼稚園児がディベートするってものがあったそうなんですが、いない派の男の子とこにサンタを派遣すると、いるんだ!ってなったんですって。でも、これは内緒だよ、ってゆったら、次の日、お父さんにも、お母さんにも、誰からプレゼントもらったか、いえないのって言い張ったらしくって!いやーー!!きゃわうーーーい!!

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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