天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

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ギフト番外編118お年賀を届ける』

あけましておめでとうございます。
今年も、由紀夫やひろちゃんたちをよろしくお願いいたします♪

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早坂家の年末は、正しかった。
最後の大掃除を午前中に済ませ、午後からはおせち料理を作ったりしてみた。
といっても作っているのは栗きんとんオンリー。
さつまいもを裏ごしするのも楽しい作業だ。
「だからって、いくら作るんだよ!」
「えっ!?」
正広が見ているレシピはには、4人分×2日分と書いてあるにも関わらず、栗きんとんだーいすきー!と正広は、さらに倍!量で作っている。
「だって、好きなんだもん!それに、栗の甘露煮はこんなにあるんだよ!?」
確かにあった。栗の甘露煮の瓶は、はっきりと大瓶だった。業務用と言ってもいい。
正広が相当ツマミ食いをしていたが、それでも、まだまだたーんとあった。
「おまえさぁ、こんなに作ったって、絶対ダメになっちゃうって!」
「ならないよぅ!」
むぐむぐと、さらに甘露煮をツマミ食いながら正広は言う。
「リスか!」
とそのほっぺたを両方から押しつぶしてやる由紀夫だった。
ちなみに、さつまいもの量は、ほぼ1kgになろうとしている。売るつもりか!!

栗きんとんが、プロの量(あくまでも量)出来あがった後は、さつまいもの裏ごししすぎで正広はへとへと。由紀夫は、うどんを作りはじめた。
「ん?うどんっ?」
「そば、外に食いにいくだろ」
どう考えても、家で食べるより、外で食べた方が美味しい、というのが早坂兄弟の共通認識だ。
しかも、今年は紅白がない。
いや、紅白はあるが、正広に見る気がない。
家で、こたつで、みかんと、紅白と、年越しそば。なんなら、どこかから猫をレンタルしてきて、なんてことはしなくていい。
「そっかそっか。おそばは外でー、そんで、うどんは?」
「いや、夜食に」
「そっかそっかそっか!」
わーいわーいと正広はキッチンに飛び込んでくる。
「兄ちゃん、うどんなんて作れるんだー!」
「うん」
「どこで習ったの?」
「通信教育」
「・・・空手・・・?」
コネタの古典のようなことを言いながら、由紀夫は粉の準備をしている。
「正広、それ、ちょっとずついれて」
「これ?」
これなに?とボウルに入っている水に、思いきりよく指を入れて、正広はぱくっと口にする。
「塩水?」
「・・・おまえ、なんでもかんでも食うなよ!」
「だって、混ぜるんだったら、食べれると思って〜」
「だったら小麦粉でも食うのかよ!」
「それは粉っぽいからやだけどー。・・・粉砂糖なら」
「いいから!それを、ちょっとずついれろー!」
由紀夫は粉を混ぜながらいい、正広は、神妙な顔で少しずつ塩水を入れていく。
しばらく二人は黙って作業をしていたが、粉の中に両手をいれ、上に粉を跳ね上げていくようにする様子が面白いらしく、正広の体は、徐々に徐々に前に前に倒れていく。
由紀夫は由紀夫で、どの程度まで混ぜればいいものかと、じぃーっとボールの中を見つめている。

そうして。

「いって!」
「いたー!」
早坂兄弟、頭頂部と頭頂部がごっつんこ。
「いったー・・・!」
石頭兄弟ズのため、しばし二人は苦しみあったが、ちょっと交代するか、というところで話が落ちついた。
「こう?兄ちゃんこう?」
「そうそう。そうやって。急いで急いで」
塩水を加えながら、正広の手を急がせる。
「ねぇ、兄ちゃんっ!」
ばっさばっさ!と粉を巻き上げながら、正広は尋ねた。
「いつ、うどんとか作ったことあるのっ?」
「ないよ」
「はっ?けほっ!」
せっかく綺麗にした台所を白くするほどの勢いのよさで、自分でも正広はせき込んでしまう。
「ないってっ?」
「ないって、本で読んだから」
「本で読んだだけー!?」
「大丈夫。できるできる」
「通信教育と変わらないじゃーん!」
「いけるって!ホラホラ急げって!」

冬のうどんは8時間ほど寝かさないといけないものだから、出来あがりはビニールにいれてしばし熟成。再び床を綺麗にした早坂兄弟は、しばしの休憩の後、買い物に出かけた。
今年は、正しい年末年始がテーマなので、特別何を買う予定はなくても、アメ横にいかねばならない。
あの中で揉まれるのが、正しい年末だ。
「解ってんな」
由紀夫は低い声で正広に言う。
「『特別何を買う予定はない』んだからな!」
「・・・」
「正広っ?」
「解ってるよっ?」
んっ?と大きな目を見開いて、キラキラとした笑顔を見せる正広。
「なっ!なにするの!兄ちゃん!」
その笑顔を見た途端、由紀夫は正広が斜めがけしたバックに手を突っ込んだ。
「やめてっ!兄ちゃん、やめてっ!あーーれーー!!ご無体なぁーーー!!」
「うるさいっ!」
家の前、すなわち路上で揉める早坂兄弟!そして由紀夫の手には!
「ああ〜!俺の財布ぅー!」
「没収しとくからな!」
「買わないよー!解ってるってー!」

しかし、アメ横に到着した途端、正広の目の色が変わった。
キラキラした笑顔で、魚屋のオヤジを相手に、新巻鮭1本を値切り倒した弟を前に、どうして金を払わずにおられようか。
このコースだけは辞めておけばよかったと、心の底から由紀夫は後悔した。
「すごい・・・!鮭1匹だよ・・?!どーする!?」
「俺が聞きたいよ!」
アメ横到着から、18mで引き返すことになったというのに、時間は、ゆうに1時間近くになっていた。

帰り道は、老舗そば屋で、葱せいろ+酒(由紀夫)と、カレー南蛮(正広)という組み合わせで年越しそばを早めにいただき、家に帰ったら、7時ごろになっていた。

テレビを見たり、ゲームをしたりしながら31日を過ごし、やっぱりうどんを作ろうと二人でうどん玉を格闘する。
「なんかこれおかしくない?」
「堅いな・・・」
しかし、本で読んだだけなので、これが正しい状態かどうか解らない。
「これから伸ばすの?」
「いや、とりあえず、もう一度こねて、足で踏むんだけど・・・」
「野長瀬さんでもないと、手でこねるのは無理なんじゃあ・・・?」
こぶしでどうにかできるような状態ではなかったので、そうか、と由紀夫は思いついた。
「踏もう」
「いきなり?」
「踏む」
ビニール袋にかったいうどん玉らしきものを入れ、二人がかりで踏み倒す。
「あ、兄ちゃん!」
はい!と正広が手を上げる。
「ここで、水を足してはどうでしょう!」
「ん。正広くん、君いい事ゆった。10ccほど持ってきなさい」
「はいっ!」

少し水を足して、踏み倒して、もう一度まとめると、なんとなーく、うどんらしく見えてきた。
「うどんっぽくないか?」
「うん。うどんに見える」
1時間ほどおいて、伸ばして切って、急いで茹でる。
「兄ちゃん、出汁は〜?」
「出汁はいらない。卵出せ、卵」
「卵?」
茹で上がった麺に、生卵をかけて、出し醤油をかけて。
「はい、釜たま」
「うわうわ!おいしそー!これなにー!」
「だから、釜たま。いいから急げ!急いで食べろ!」
「な、なんで!」
「茹でたてであればあるほど美味しいから!」
「あっ!うん!!」

除夜の鐘の中、キッチンで立ったまますすったうどんは。
「え!うそ!美味しくない!?」
「美味しいよな!?」
「イケてるんだよね?!」
「いけてるはず!」
二人して、少々疑問形になりながら、満足する。
こうして、2001年は、2002年になった。

ここまで正しい大晦日を過ごした早坂兄弟は、さらに、正しいお正月を過ごすべく、厚着をして、明治神宮に出かける。
あえて!あーえーてー!一番の人ごみを選ぶのが面白いのだ。
「すっごい!」
「テレビで見てたけど、ほんっと多いな!」
広い参道を埋め尽くす人波に、しばし呆然とした早坂兄弟だったが、後ろからどんどんやってくる人波に押されて、その参道の一部に入り込む。
去年は、色んなことがあって、いいことも、悪いことも色々だったけども、概ね平和な早坂兄弟だったし、腰越人材派遣センターだった。稲垣アニマルクリニックも楽しそうだった。
今年も、たくさんいいことがありますように。
そこでは、神妙に手を合わせる由紀夫と正広だった。
「いくか?」
「あ、うん」
手を合わせていた正広は隣の兄を見たが、あっ!ともう一度手を合わせる。
「吾郎ちゃんが早く帰ってきますように!」
「ま、正広・・・」
「いやいや!マジで!俺もっかい、お賽銭いれとこ!」

こうして、早坂兄弟の正しい元旦はスタートしたのだが。
二人は、家には帰らなかった。
そして、外で、夜を明かし、ビルの谷間から初日の出を見た早坂兄弟は、元旦の正午、奈緒美のマンションにいた。

「・・・買ってきました・・・」
「あーー!お疲れお疲れー!ありがとうねー!みんなー!」
おほほほほーーー!!と奈緒美はご機嫌だ。

「ささ、食べて食べて♪」
豪華おせち料理を社員たちに勧め、満足そうに袋を明けている。
「あー!いいわー!やっぱりここの福袋!」
彼女の目当ては、輸入代行業者が、元旦から発売する福袋。海外ブランド入り福袋の値段は10万円。しかし、普通に買えば、20万は下らない品物が入っているようで、腰越人材派遣センター社員一同は、一律2万円のバイト代をもらっている。
「眠たいー・・・」
「社長、マジなんだもんー・・・!」
年末最終日に、10万プラス2万を渡された社員達は、とても買いに行かない訳にはいかなかった。
恐ろしい迫力だった。
もう、うちに帰って寝ようと早坂兄弟は決めていた。
なにせ、正広の栗きんとんが待っている。

「つっかれたぁ〜・・・!」
「帰って取りあえず寝ような・・・」
よろよろと帰っていく早坂兄弟は、まだ知らない。
正広のバックの中に、1月2日が初売りのデパートのリストと、買うべき福袋と、その代金+バイト料がいれられていることを。
「いくらなんでもさー、元旦からあんなお年賀を強制する会社ねーよなー」
「ないよねー!ま、お年賀たって、僕らがお金出してる訳じゃないけど」

どうなる、早坂兄弟!
そして、栗きんとんを食べ尽くすことはできるのか!早坂兄弟!


2002年もよろしくぅー!
そして、うどん作りは簡単なので、あなたもぜひともやってみてね(笑)!

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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