天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

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ギフト番外編119後編『帰ってきた男』

まだまだお正月気分っちゅーことで♪

yukio
 

お正月早々なんてことだ・・・!
2002の我が身を案じつつ、草g助手は、そっとドアを開けた。
クリニックの中は、動物の鳴き声が少ししている程度で、静かなものだった。
一体どこに・・・!
謎の侵入者の姿を求める草g助手の足取りは、重かった。怖いから、もう帰るっ!と思っている千佳の視界から、いつまで立っても消えてくれない。
細めに開けたドアから、じわじわ、じわじわと、体を入れていくのだが、千佳の後ろを、すでに何人もの家族連れが通過して行っているのに、まだ消えない。
「・・・臆病・・・?」
いやいや、草g助手は、慎重なだけだ。
じわじわ、じわじわと、クリニック内の様子をうかがいながら、こそぉーーーっと入っていく。
まだ、体の半分は、ドアの外にあるけれど。

千佳が、もういいや。
と、帰った後、ようやく、クリニックのドアは、草g助手を完全に飲み込んで、閉まった。
しかし、人の気配は感じられない。
まさか、裏口から・・・?
はっ!と振り向いた草g助手は、『それ』を見てしまった。

ぎゃーーーー・・・・・・・・・・!!!!

稲垣アニマルクリニックから、一つの悲鳴が起きた。

「疲れた・・・」
「そりゃそうだろうなぁ〜・・・」
正月二日というのに、早坂兄弟の顔色は、あまり優れなかった。
なにせ二人は、社長である腰越奈緒美より、福袋購入を命令され、デパートの初売りに突入させられていたのだから。
「これで、全部ー?」
「全部。ってゆってもさぁ、俺らがこれだけで、でも、各デパートに全員派遣されてんだぜ?しかも、明日が初売りのとこもあるからって、野長瀬明日もだよ!ま、でも、野長瀬はな」
「うん。野長瀬さんはね」
二人は、うん、と頷き合う。
「好きだからな、初売り」
「好きだもんね、バーゲンとか」
大きな福袋を両肩からさげながら、早坂兄弟はとぼとぼと歩いていた。あまりに疲れていて、流れのままに電車に乗り帰ってきてしまったのだ。あんまり疲れると、タクシーに乗ればいいという簡単な結論にもたどり着けないらしい。
「こないださぁ、智子ちゃんのお世話しに野長瀬さんち行ったらね、一生磨けるんじゃないかってくらい、歯ブラシと、歯磨きがあったんだよねー・・・」
「ただでもいらねぇよな、そんなに。あ、でも、奈緒美もすごいな」
「あ。すごいね。奈緒美さんもね」
こんなにボールペンをどうする!?というほど、安かったからと箱買いしてしまったりするのだ。
ま、しょーがねーよ、おばちゃんはー、などと、世のおばちゃん、および、奈緒美、野長瀬が聞いたら、きぃぃーー!となりそうなことをいいながら、後ちょっと、と、荷物を抱えなおし歩き出した二人の耳に。

「ーーーーー・・・・・・・・!!!」

「ん・・・!?」
「何・・・っ?」
「悲鳴?」
「ひ、悲鳴っ?どっから?」
いきなり飛びこんできた悲鳴に、由紀夫は敏感に反応する。
「あっちだ」
指差した方向、その先には、稲垣アニマルクリニックがあった。

新年早々何事だとかけつけた早坂兄弟は、なんの躊躇もなくドアを開け、中に踏み込み。

「えーーーー!!!!!!」

今度は、正広が驚愕の叫びをあげた。

「やあ!あけましておめでとう!!」

床にへたりこんでいる草g助手の前に仁王立ちしているのは、確かに、彼だった。

「ア・ハッピー・ニューイヤーだねっ!」
「なんでおまえがいるんだよ!!」
「なんで?ハハ、なんでと聞くのかい、お兄さん」
ははははは!と高笑いをしている、その男は。

「「薔薇十字探偵社の稲垣!!」」

「やぁ、君たち、ひさしぶり!」
声を合わせた草g助手と正広に手を振った薔薇十字探偵社の稲垣は、その後、ちっちっち、と指先を左右にふった。
「薔薇十字探偵社の稲垣『さん』だね」
「あ、あ、すみません・・・」
へたりこんだまま、草g助手が謝る。正広も頭を下げた。
「あ、あの、どしたんですか・・・?」
「どうした?僕が?この僕がどうしたかについて、聞きたい。君はそういうんだね?」
「え。えーーと。はい、あのー・・・」
そこまで知りたい訳じゃなかったけどぉ〜・・・。
しかし、正広の、薔薇十字探偵社稲垣に対する興味は、いまだ尽きていなかった。二重人格だと思ったこともあったけれど、やっぱり、やっぱり、稲垣獣医の呪われた双子の弟説を捨て切れていない。
やっぱり。
やっぱり、彼は再び現れた。
この2002年のお正月に、今度こそ、幸せに暮らしてきた、兄、稲垣先生とすり変わって、ここで生きていくつもりなんだ!
「正広くん!」
「草g先生!」
二人は、ひし!と手を取り合う。
「稲垣先生は!?」
「先生は、ご実家に戻ってるはずなんです!」
「瀬戸内の!?」
「ん?いや、あれ?都内。ん?」
あれ?と首を傾げる草g助手だが、あくまでも、正広は真剣な顔だ。
「おやおや。なんの話しなのかな、君たちは」
うふふ、と笑う薔薇十字探偵社の稲垣は、なぜかタキシード姿だった。
「いえ、あの、先生は・・・。先生は、どうされたのかと・・・!」
正座して、薔薇十字探偵社の稲垣を見上げながら、草g助手は言った。
「先生は・・・!先生は、ご無事なんですか!?」
「ご無事・・・?」
その言葉に、薔薇十字探偵社の稲垣は確かに微笑んだ。しかしその微笑は、どこか、不吉さを幹事させるものだったのだ。
「えっ・・・!?」
正広は、それに敏感に反応する。
「せ、先生は、まさか!?」

勢いよく立ちあがった正広は、そのまま、くらりと、体が揺れるのを感じた。
「あ・・・?」
貧血か!?と不安定になる足元に、手を伸ばして捕まる先を探す。幸い、側にいた兄の腕があって倒れることはなかったのだが。
「正広!?」
「正広くん・・・!」
驚いて立ちあがった草g助手も、立ちあがり切れずに、その場に膝をついてしまった。
「何・・・!?」
さすがに由紀夫も顔色を変える。
自分でも、微かな違和感を覚えていた。どこか、不快なものが、体にまとわりついてきている。
正広が言ったような双子の怨念とか、そういったものを信じている訳ではないけれど、さっきまでとは比べ物にならない、この倦怠感はなんだろう。
「に、兄ちゃん・・・!」
立っていられなくなった正広は床に崩れるように座り、じっと薔薇十字探偵社の稲垣を見上げる。
微笑んだまま、彼は、どこともない場所を見つめていた。
「先生は・・・!?稲垣先生は、どこに・・・!?」
草g助手が、どうにか、一歩にじり寄ったところで、患畜たちが騒ぎ始めた。犬や、猫が鳴き始める。
「ふふ」
その異常な状況の中。
薔薇十字探偵社の稲垣は、タキシード姿で、すっくと立っていた。
由紀夫たちを見下ろして微笑むその笑顔に、正広の背筋は寒くなる。冷たい汗を、こめかみに感じた。

やっぱり、そうだったんだ・・・!
この病院を乗っ取り、真実をする自分たちを、ここで排除する・・・!
そういう計画・・・!
兄ちゃん・・・!せめて、兄ちゃんだけでも、逃げて・・・っ!!

その兄の腕を、千切れる!というほどの力で握り締めていることには気付かず正広は祈った。
けれど、その掴む力さえなくなりかけた頃、突如、由紀夫が立ちあがった。

「に・・・?」
よかった、兄ちゃんは、助かる・・・!俺のこと、忘れない、で、ねぇ〜・・・・・・・・・・・・

そんな思いの中、ゆっくりと倒れそうになった正広の顔に、ふいに、冷たい空気が触れた。
「ん・・・?」
立ちあがった由紀夫は、眉間にシワを寄せた不機嫌な顔のまま、窓という窓を開けていっている。
「なんのつもりだい?」
なおも、うふふと微笑み続けていた薔薇十字探偵社の稲垣の後ろに回り、
「えい」
と、ひざかっくんをした。
その途端、へにょ、と崩れ落ちるタキシードの体。
「に、兄ちゃん、なん、で・・・・・・?」
なんで動けるの、と聞こうとした正広だが、由紀夫はそれに答えるより先に、患畜たちのいる部屋に入り、そこでも、窓を開けているらしい。
ひんやりと冷たい風が、クリニックに満ちてきて、正広は、一度深呼吸をした。
大丈夫。
今なら、動ける・・・!

「大丈夫か?正広」
「うん・・・。なんで?もう、大丈夫・・・」
「あ、僕も、動けます・・・」
草g助手は不思議そうに手を握ったり開いたりしながら由紀夫を見た。
そして、倒れている、薔薇十字探偵社の稲垣を・・・。

「・・・解った・・・!」
正広は、はっ!と兄を見上げた。
「そう、あのな・・・」
「悪の気だね!?」
「はぁ?」
「このクリニックは、薔薇十字探偵社の稲垣!・・・さん・・・、の手によって、悪の気が立ちこめてたんだね!兄ちゃん!」
「そうだったんですね!お兄さん!」
「え?いや」
「だからいつも大人しい患畜たちまで・・・!」
「なんの罪もない動物にまで、なんてひどい事を・・・!」
二人は涙目で薔薇十字探偵社の稲垣を睨んでいる。
「その悪の気を払っただなんて・・・!」
兄ちゃんってすごい!
お兄さんってすごい!
と、一点尊敬の眼差しを注がれ、由紀夫は手を振ってそれを払いのける。
「そーーじゃなくってよ!!」
「そうだ!稲垣先生は!?」
「もう瀬戸内の孤島に!?」
「吐け!吐くんだ!」
草g助手は、倒れている薔薇十字探偵社の稲垣の体を揺さぶった。
「あぁ、やめろって!」
それを止めたのは、意外にも由紀夫だった。

「え、兄ちゃん、なんで!?」
悪の気を払ったのは、兄ちゃんなのに!と、正広が食ってかかる。

「それ以上やると、ホントに吐くぞ!」
「いいじゃないですか!」
きっ!と睨む草g助手に、そうじゃなくて、と、首を振る。
「物理的に、吐く、っつってんだよ」
「えっ?」

そんな風にいわれて、薔薇十字探偵社の稲垣の顔をまじまじと見る草g助手。
確かに顔色が悪い。
「これも、悪の気で・・・!?」
「まぁ、悪の気といえないことないけど」
「こういうの、人を呪わば穴二つって言うんだよね!兄ちゃん!」
「どこでそーゆー言葉を覚えてくるんだよ、おまえはよ!」
いい加減、ボケ二人に突っ込むのも疲れたので、由紀夫はキッパリと言った。

「シンナーかなんかの、中毒だろ」

「・・・シンナー・・・?」
それは不良のやることだと、正広は思っている。
「シンナー・・・」
それは、染み抜きとかをする?と草g助手は思っている。
「シンナーじゃなかったら、なんだろ。あのー、ワックスとか?」

「ワックス!!」

その時、草g助手は、ヘレン・ケラーが水とであった時のような、リンゴが落ちるのを見たニュートンのような、そんな雷に打たれるのに似たひらめきに、全身を貫かれた。
「31日!ワックスかけました!!!」
「それで、換気してないんだか、ワックスの容器が開けっぱなしなんだか知らないけど、それで段々おかしくなったんだろ」
だから、窓全開にして空気入れ替えた、と由紀夫は言う。
「じゃあ、稲垣先生は・・・」
「中毒で、ひっくり返ったんじゃないか?」
今なお意識の戻らない薔薇十字探偵社の稲垣を見ながら由紀夫は肩をすくめた。
「で、でも・・・。だから、稲垣先生は、どこいっちゃったの・・・?」
こわごわ聞く正広には。
「だから、こいつがそうだっ!!!って言ってんだろ!!」
と軽くげんこつをくれてやって、頭をすっきりさせてやる。

えーー、えーーー、だってー、でもぉーー、という正広と、福袋を引きずって、由紀夫は稲垣アニマルクリニックを出た。
後のことは、草g助手にお任せだ。

そしてお任せされた草g助手は。
稲垣獣医なんだか、薔薇十字探偵社の稲垣なんだか解らない人間をそのまま床の上に倒れたままの状態で、2階にある稲垣獣医の寝室に向かった。
きちんと閉じられたドアを開け、中に入った途端。
「う・・・っ!」
その密封された空間に、充満していた、気化したワックスにやられて、気絶。
気付いた時には、不機嫌極まりない顔の稲垣獣医に見下ろされていた。

「・・・何をやっているのかな?」
「あ・・・っ、せ、先生・・・!」
「人の部屋に勝手に入り込んで、大体、君、今日は仕事でしょう?」
「あ、そうです。それで、やってきたんですけど、あの、先生が・・・、おられなくて・・・」
「え?なんだって?」
白衣をキチンと着ている稲垣獣医は、耳に片手を当て、なんですってー??と腰をかがめて草g助手の方に顔を傾ける。
「いや、あの、なんか、おかしな人が・・・、いて・・・」
「そんな人は、一度も見なかったけどね、私は」
「えぇ〜〜???」
「ま、おかしな人っていうか、モチを喉に詰まらせた土佐犬ってのはやってきて、それはそれで大変だったけどねぇぇぇ〜〜!!」
「あああ!す、すみません!す、すぐに!!」
まだくらくらしている頭を抱えながら、草g助手は、部屋を出た。
その土佐犬はすでに帰った後だったけれど、あの、タキシードは、見当たらない。
由紀夫が全開にしたはずの窓や、ドアも、もちろん、全て閉まっている。
果たして、あれは本当にワックスだったのか。
廊下の隅に、フタがあいたままの、古いワックスは確かにあった。

けれど・・・!

解らない。
何も解らない!

草g剛助手。
2002年も、煙に巻かれてばかりの1年、決定。


吾郎様復帰が嬉しかったので、やはり、薔薇十字探偵社の稲垣にも出てきてもらわないことには、ねぇ(笑)

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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