天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

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ギフト番外編120もしも私が』

なんですか、神楽坂って素敵なとこなんですね。

yukio
 

そういえば困るな・・・。
野長瀬定幸は、事務所でテレビを見ていて心の中で呟いた。
その気持ちは、表情に出たのだろう。よくない人相が、さらに凶悪になる。
「の、野長瀬、さん・・・?」
おやつと、お茶を持ってきた正広が、怪訝な顔をしてしまうほど。
今日のおやつは、わざわざ神楽坂まで行って買って来た紀の善の抹茶ババロア。
「どしたんですか?」
「あ、いや」
難しい顔のまま、つまり、真剣に、野長瀬は言った。
「やっぱり、リラックスできないだろうなと思って」
「・・・え・・・?」
何が??今、めちゃめちゃリラックスしてると思うけど??

腰越人材派遣センターの壁の多くはガラス張りになっていて、そのため結構寒い。節約裏技などを使って、ガラスにシートを貼ったりすればいいのだが、それだと見栄え上の問題もあるため、まずは典子が温風ヒーターと、ブランケットを持ち込んで、簡単こたつを作ったのだ。
足元に温風ヒーターを置き、ブランケットをその上にセットすれば足元が温かい。若い女性の常として、典子は冷え性だった。
それはいい!と、すかさず正広、野長瀬が真似をして、由紀夫からイヤな顔をされた。
由紀夫は、冷えとは無関係な男だ。
ちなみに奈緒美は当然冷え性だが、簡易ヒーターどころの話じゃなく、あったかくしているのでそういう見た目上おかしなことはしていない。

で、その簡単こたつの中で、テレビを見ていて、目の前にお菓子とお茶という状況を、リラックスしているといわずして、何をリラックスしているというのか!と正広は思った。
「リラックス、できないですか・・・?」
そうは言っても仕事場だから?
でも、一応休憩中だし・・・。
「うーん、できないねー。やっぱり。彼女の両親と暮らすとなると」

え!!!

衝撃の告白!!!

野長瀬さん、結婚!?

どうして、今ここには二人しかいないの!?

正広は、誰か帰ってきて!早く!と心の底から願った。しかし、それがかなえられそうもないと気付いた途端、全身を耳にして、目にして、一字一句聞き逃しちゃダメだ!と、野長瀬に集中。一体どんな相手なのか・・・!

「彼女の、ご両親と、同居、されるんです、か・・・?」
「そうなったら、やっぱり、玄関はともかく、リビングと、お風呂は二つ欲しいよね」
「あ、あぁ・・・」
そういえばそういうCMやってる・・・!と正広も気付いた。
しかし、あのCMをリアルに感じている人がまさか身近にいるなんて!!
ドキドキと、ワクワクと、ハラハラとで、頬がバラ色になっていくのを正広は感じる。

「ただーいま」
「あっ!兄ちゃんっ!」
まさしく小鹿が跳ねるかのように正広は跳びあがって兄を迎えに出た。
「お帰りっ!」
「な、なに・・・?」
その勢いに後ずさった由紀夫は、あれ、と、正広の額に手をあてる。
「なんだ、赤い顔して。熱か?」
「熱・・・!そうとも言えるかもしれない・・・!」
目もキラキラさせながら正広は答えた。
ウルウルだと熱かもしれないが、キラキラだから大丈夫だろうと、由紀夫はバックを下ろす。
「大体、部屋ん中、暑すぎるんだよ」
「えー、そっかなぁ〜」

「あ、暑いって言えば」

野長瀬が言った。
「暖炉、欲しいよね」
「「暖炉!?」」
由紀夫は、何を急に!?と思ったし、正広は、二世帯住宅で暖炉!?と驚いた。
「だって、リビング別にするんでしょう!?」
「リビング別ってなんだ!?」
「あのね・・・!」
正広は、こそこそと由紀夫に耳打ちする。
「・・・野長瀬さん・・・、結婚するみたい・・・!」
「えっ!?」
「しかも・・・っ!彼女のうちで、同居・・・!」
「マジで・・・!?」
由紀夫は心の底から仰天して、暖炉の前で、ココアを飲むんです。マシュマロを焼いて、などと口走っている野長瀬を見つめる。
「・・・マジ・・・?」
「だって、同居だとリラックスできないから、リビングとお風呂は別にしたいって」
「ヘーベルハウスか!」
「あ、そうなんですよね。由紀夫ちゃん。それなら、ヘーベルハウスが得意分野なのかなと思って」
ヘーベルハウスで二世帯住宅!?
でも、野長瀬のうちには、あの凶悪うさぎがいるじゃないか。あんなの新居に連れてったら、新居ボロボロだろ!

「え?なになに?なにがヘーベルハウス?」
銀行に行っていた典子も戻ってくる。
手には、雑誌やら、コンビニのお菓子やら、爪ぴかっしゅやらが一杯だ。
「・・・野長瀬が、二世帯住宅建てるって・・・」

「うっそぉぉ!!」
ものすごく驚いても、そこはしっかりもので、現実的な女。荷物はきちんと自分の机に置き、あぁ、そうかと手を叩く。
「違いますよ・・・」
早坂兄弟を手招きして、典子はコソコソ囁く。
「今のうちから二世帯にしておけば、誰かが結婚してくれるって思ってるんですって・・・!」
「でも、彼女の両親と住むってゆってたよ・・・?」
「えぇ〜!?」
浮いた噂のまったくないこの男が、いきなり結婚!?
私より先に結婚!?
この男が!?
メラメラと嫉妬の炎が沸き立つ典子。一体どんな相手なの!?と詰め寄ろうとして。

「あ、でも、キッチンも別の方がいいのかな」
「え!?そりゃ当然でしょー!」
女性の立場で、典子は答えた。
「二世帯で、どこか1箇所だけ別にできるとしたら、私はキッチンかなぁ〜」
「でも、彼女の両親と、だから、典子ちゃんだったら、自分のお母さんと同居になるんだよ?」
「んー、それでもやっぱりー・・・。いや、私一人だったらいいけど、彼が使いづらいじゃない。なんか、喉乾いたーとかさ。コップ使っても、洗って戻してとか、気ぃ遣うじゃない?」
「リアルな話だなー」
「キッチン必要だと思うな、キッチン。簡単でもいいんだけど」
「そしたら別に二世帯じゃなくっても、もういいんじゃねぇの?リビングも、風呂場も、キッチンも別って」
「一人娘とかなら、やっぱり一緒にいたいとかあるじゃない?」
なるほどなー。4人はふんふんと頷いた。

「それと・・・」
野長瀬は、はっと夢見る瞳になった。
「庭ですね・・・。庭には大きな犬が」
「うわー、メルヘン!」
正広は笑ったけれど、典子は難しい顔になった。
都内で、庭付きの家?二世帯にして、なおも庭が残る!?え!?いや、そんなバカな。都内とは名ばかりの場所に違いない・・・!絶対そうだ!
由紀夫は由紀夫で、彼女が一人娘ってことは養子?などと思ったりした。
野長瀬定幸という名前って、そこそこいいと思ってたけど、これが例えば、山田定幸とかになる訳か。
田中定幸とか。

・・・途端に、50くらい年齢プラスしたような印象になるな・・・。
だからといって、西園寺定幸とか言われたら笑うけど。

「ちょーっとあんたたちー!仕事はー!?」
毛皮を身に纏った奈緒美が帰ってきて、正広は、あっ!とお迎えに出る。
「何騒いでるの?」
「いえ・・・あの・・・。野長瀬さん、結婚するみたいで・・・」
「へっ!?」
こちらも寝耳に水で、奈緒美の目が丸くなった。
「何それ!」
「彼女の実家を二世帯にして、住むんですって」
「養子ってこと?マスオさん?」
「さぁ・・・」
「でも、彼女が一人っ子みたいにいってたから、ひょっとしたらそうなんじゃん?」
由紀夫は自分の思いつきを口にする。
「でも、二世帯ねぇ〜」
自分は独身だが、結婚している知人も多い奈緒美は難しい顔をする。
「やっぱり、難しいのは難しいわよ。同居と同じだと考えておいた方がいいんじゃないかって思うけどもね」
「野長瀬さんが大変ですか?」
「そりゃそうよー」
「いや、だから、リラックスできるように、リビングは二つ欲しいなって思って」
ニコニコと野長瀬が言う。
しかし、それが建て替えなのか、リフォームなのか知らないが、どれほどのお金がかかるものなのか・・・。
「あ、でも、彼女の方の親も出してくれるのか。二世帯だと」
「やっぱり、僕一人の力ではねぇ。どちらかといえば、彼女には家にいて欲しいんで・・・」
「・・・専業主婦!?家まで建てて専業主婦って、どんな金持ちな訳!?」
ひぃ!と典子が悲鳴を上げたところで。

「で、野長瀬。一体、いつ結婚するの?」

奈緒美が静かに聞いた。

「え?」
「結婚」
「結婚?」
きょとん、とする野長瀬の頭を、由紀夫は反射的にはたいていた。
「おまえまさか、もしも私が家を建てたならって話、してたんじゃねぇだろうな!」
「え?そ、そうですよ!?」
「だったら、あんたは好きなだけレースを編んでなさいよーー!!」
「そして子犬の横にはあなたにいてもらえーーー!!!」
「あーーーばかばかしい!」
「なんで野長瀬さんが、レース編むの??」
小坂明子「あなた」を知らない世代の正広は首を傾げるばかりだ。

そして、なぜはたかれたのかさっぱり解らない野長瀬は、玄関まで別にするとなると、果たして間取りはどうなるんだ??ということを真剣に考えていた。
中心蔵も気になるし、プラスわん、プラスにゃんっていうのもあるけど、プラスぴょんっていうのはないんだろうか。
智子ちゃんとは絶対離れられないし。
もし、彼女や、彼女の両親にアレルギーとかあったことを考えたら、三世帯住宅にした方がいいんだろうか。
ん?その場合、自分はどこに住むんだ?彼女と智子ちゃんとの間で板ばさみ!?

板ばさみになりたくとも、ペットでミニウサギ(大)の智子(雄)でさえ板にはなってくれないであろうことに気付かない、幸せな野長瀬だった。


神楽坂って、なんか素敵なお店とかもできてるんですって!いや、行ったこともないんですけどね・・・。素敵な街って、あちこちにあるんですねぇ・・・。いや、食べてみたいなと思って。抹茶ババロア(笑)

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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