天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

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ギフト番外編121話前編『激しく届けられた』

yukio
 

何かおかしい。
日々医学に勤しんでいる香取慎吾は思った。
何かがおかしい。自分の周囲で、何かおかしなことが起こっている気がする。
「香取くん」
ほら、看護婦さんの笑顔も、なんかおかしい。
「どうしたの?」
「い、いえ」
いつも笑顔の素敵な看護婦さんだけど、今日の笑顔はなんか怪しい。
「これ、森先生に届けてもらえる?」
「あ、はい」
大人しく書類を受け取り、森医師の部屋に向かう。

すれ違う患者さんにも、なんだか用心してしまう慎吾だったが、それには理由があった。

夜中からおかしなことが続いているのだ。
病院でインターンなんぞをしていると忙しいので、早く寝たほうがいいのは解っていても、夜更かしだって大好きな慎吾は深夜番組を楽しく見ていた。
一人暮しのマンションだが、住宅街の中にあって、夜になるととても静かだ。
だから、外の物音が変に気になったりするのだが。

がさ。

3階にある慎吾部屋のベランダで、物音がした。
がさ・・・?
マンションの外には、街路樹があるけれども、それは3階までは届いていないはず。
風か?
ホラー映画なんかは大好きだけど、突然の聞きなれない物音にはやっぱり弱い。
急に、バラエティ番組の笑い声が空虚に聞こえてくる。なにせ、さっきの番組の特集は、「仄暗い水の底から」
「いやぁ〜、風だよ、ねぇ〜・・・!」
慎吾はドキドキしながらベランダに近づいた。
カーテンはびっちりしめてある。朝に弱い慎吾は、遮光力の強いカーテンをつけていて、外の様子は一切知ることはできないようになっている。
もし、このカーテンを開けて、あの、『がさ』の正体が判明したら・・・!?
コンビニ袋が飛んできたとかじゃなくて、誰かそこに立ってたら!?立ってたらどぉする!?
カーテンに触れた慎吾は、その手がかすかに震えていることを見てしまった。
ふ・・・、バカだな、俺。
たとえベランダに人がいたって、鍵はかかってるじゃんか。
・・・かかってるか??
なにせ、朝が眠たいものだから、慎吾はあまりカーテンを開けない。日中の日が照っているような時間には部屋に帰れないし、休みには寝ていることが多い。ベランダにも、そういや最近出ていないし、もしかして、ずっと鍵が開けっぱなしかも・・・!?
それに、鍵なんかしまってたって、本気で入ろうとおもえば、ガラスなんか割ったらいいんじゃん!
強化ガラスじゃないんだから!!!

これはいけない。
慎吾は一度部屋の中を見まわして、武器になりそうなものを探す。
といっても、スポーツをやらないから、バットやゴルフクラブもなく、まさかメスというわけにはいかないし・・・。
せめて防御だけでも、という気持ちで、大きなクッションを片手に、そぉっとカーテンに近寄る。
外からは、なにも聞こえてこない。
しかし逆にそれが慎吾には不安だった。
風で、コンビニ袋が飛んできて、それでがさがさいっているというのなら、今もしていないとおかしいはずだ。
なのにそれすらしない。
・・・まるで、何かが、息を潜めているかのように・・・。

えいっ!
心の中でいいながら、目をつぶって力いっぱいカーテンを開けた慎吾は、急いで目をあけて。
空っぽのベランダを発見した。
コンビニのゴミ袋はなく、それ以外にも、『がさ』という音を立てそうなものはない。
じゃあ、あの音は一体・・・?
裸足のまま冷たいベランダに出た慎吾は、道路を見下ろす。そして、街路樹に、何かが引っかかっているのを見た。
暗いためによくは見えないが、何かが見下ろせるてっぺんにある。
風で、何かが飛んだんだと思いたかったが。
空気は寒いながらも、風はほとんどない夜だった。

なんだか気味が悪いと思いながら、慎吾は病院へと向かうため、翌朝家を出た。
鍵をかけようとドアに向き直った慎吾は、思わず鍵を取り落としてしまう。
「え。こ、これ・・・」
ドアには、何かがひっかいたような、縦に長い傷跡が残っていた。
「何・・・?」
そんな音なんかしたっけ??
傷の深さを確かめながら、慎吾は首を傾げる。
幸い、深さは対したことはなく、ただ、表面をひっかいた程度だが、それにしても、長い。
昨日帰ってきたときは、こんな傷、なかった・・・

と、思う。

いちいちそんなこと気にしないからはっきりとはしないけど・・・。でも、こんな傷があったら気付くはずだ。
とすると、昨日帰ってから、この傷がついたことになる。
一体いつ?
なんでこんな傷が!?
何が起こってるんだ、俺に!????

これはいかん、と慎吾を鍵を拾い、一度中に入った。
持って出てくるのは、セロテープ。
テープを切って、ドアの下に張りつける。
誰かがあければ、このテープに異変が起こるはず。
ん?いや、でもテープだし、一度はがしてもくっつくかな。気付かれちゃダメかな。上と下、どっちに目がいかないかな。両方するべき?あ、下にあるじゃん、はがしてやれ!ってなったヤツが、結局上に気付かないとかあるのかな。
いや、だから、どうするんだっけ。よくスパイ映画とかであるやつはぁ〜〜・・・!

などと考え込んでいて、遅刻をした慎吾だった。

もちろん、電車に乗る時は、ホームの内側に内側に立っていて、危うく乗り損ねるくらい用心した。
しかし、病院についてからも、そのおかしさはつきまとった。ロッカーに入った途端、会話が止まったのだ。
しかも、ほんの一瞬。
「あ、慎吾、オハヨー」
「おはよぉ・・・」
「なぁに?元気ないね、どしたの?」
次の瞬間には、ロッカーはいつもの騒がしさを取り戻した。
「いや、別に」
「あ、ねぇ、今日の検査って、何するんだっけぇ!」
「小児科のことまでしらねーって」
何人かのグループが、口々に喋っている。
果たして、このグループすべてに、同時に、無言の時間が訪れるものだろうか。
慎吾はすっかり疑心暗鬼になってしまっていて、ロッカーを開けるにもビクビクしていたのだが、そのロッカーにも傷が!
「あ、あれ・・・っ?」
「どした?」
「こ、この傷・・・」
隣のロッカーを使っている友達に、これ、と、同じく縦に長くついている傷を見せると、「えっ!?」とやけに彼は驚いた。
「これー・・・!あ、アレじゃないか?掃除のおばちゃん!」
「掃除のおばちゃーん?」
「乱暴だしさ、なんか、モップでもぶつけたんじゃん?」
そんな訳ねーだろ!!
とはつっこめなかった。
そこにいた全員が、そうじゃないか?とおばちゃんのモップ説を支持しているからだ。

何かおかしい。
そのロッカーを出てから、看護婦さんに書類を渡され、森医師の部屋につくまで、慎吾はおかしい、おかしいと呟きっぱなしだった。

「おはようございます」
「おはよぉー」
森医師の背中を見て、ようやく慎吾はホっとした。
変わらない・・・!
この先生はいつもと一緒だ!
「これ、渡すように言われたんですが」
「どれ?」
振り向いて手を出した森医師を見て、慎吾は血の気が引くのを感じた。

森先生は嘘をついている!!!

森医師ほど、嘘をつくのが壊滅的に下手な医者はいない。
歩く告知、と言われるほどだ。
どうしても!という場合に限り、患者さんの前では「私は女優・・・!」という気分で頑張っているらしいが、付き合いの長い病院関係者には丸わかり。
「慎吾?」
「あ、あ、これ、です・・・」
おずおずと書類を渡すと、ありがとと森が背中を向ける。
普段ならここで、昨日のテレビ、なんて話題がしばらくあるのだが、今日はそれもなく・・・・・・・・・

一体何が起こっているんだ!
こないだ見たぞ!スタートレックで!
あの時は、自分の周りが全員おかしくなってると思ってしまうんだけど、実はおかしいのは自分だったっていう話で・・・。

ひょっとして俺ノイローゼ!?
勉強しすぎか!?
くらりとめまいを感じながら、それでも慎吾は仕事に向かった。
患者さんと会い、様子を聞き、そんないつもの風景が、どこか遠くに感じられる。
ドアや、ロッカーの、あの縦長の傷が、やけに鮮明に思い出される。
あれは、悪意なのか?
慎吾は、悪意を向けられることに慣れていない。一体自分はどうすればいいのか・・・!

しかし、それでも時間は進むのだ。
あんまり食欲ないなぁ、と、お昼のAランチ(ミックスフライ)ご飯大盛りと、きつねうどんに、さっぱり抹茶アイスをぐずぐずと、しかし完食した慎吾は、ぷらぷらと庭を歩いていた。
あぁ、こんなにいい天気なのに。
どうも、心が晴れない。
だって、食堂のおばちゃんも、おかしかった。
いや、このおばちゃんに限っては、いつもより、さらにごはんが大盛りだったっていうだけなのだが。
食欲がない時には、それが逆に辛い・・・。
しょんぼりと歩いていた慎吾は、病院の裏門の方から入ってくる二人組に気がついた。
「あ、ひろちゃん・・・!」
そして、隣にいるのは、兄の早坂由紀夫だった。
「今日検査だっけな・・・?」
と首を傾げたが、正広は、つい一週間前に来たばかりだ。
遊びにきたのかな。
そらなら、多分、自分のところに来てくれるだろうな。
先週もそうだったしと、ちょっと楽しみを見つけ、昼からの仕事もがんばろう!と慎吾は心に誓った。

しかし。
それから1時間後に慎吾が見たのは、同じく裏門からでていく早坂兄弟の姿だった。

おかしい!?
やっぱりなにかおかしい!?
あれ!?これってパラレルワールド!?ひょっとして、あのベランダから向こうは、別の世界だった?
俺、扉開けちゃった?
俺のホントの世界はどこ!?

帰ったら、絶対!もう一度ペランダにでようと、拳を握りしめる慎吾だった。

<つづく>


病院にいる人たちって、どーゆー仕事してんのかよー解らんで・・・。ものすごぼんやりした世界になってますね・・・えへ・・・(笑)

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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