天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

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ギフト番外編123話『乱暴に届け返す』

yukio
 

ついにこの日がやってきた。
香取慎吾は、うふ、と小さく微笑む。
自分の誕生日から、19日後には、森医師の誕生日があるのだ。
1月31日の自分の誕生日には、面白い思いをさせてもらった。なんだか、はらはらしちゃって、あちこち傷とかついて、近所の人に謝りにいったりと、ちょっとだけ大変だったところもあるけど、とても嬉しかった。
あのスキー板は。
・・・とても長いスキー板は・・・。
彼の古いアパートの天井につっかからんばかりの勢いだが、斜めに立てかけてある。
いつか、スキーにも行きたい。
・・・自分、ボーダーだけど・・・。

いやいやいや!!!

森先生の好意じゃないか!!ちょっとズレてるところがあるだけで、全部俺のためだよ!!

しっかりと前を見つめそう思った慎吾は。
自分だって、そのご恩を返さねば・・・!と強く思い続けているのだ。

<香取慎吾の計画>

今日慎吾はお休みだが、森医師は通常業務で、夜勤はなし。
おそらく、看護婦さんたちがパーティーの予定をしている。
というか、100%している。なぜって自分のところにも招待状が届いているから。
どうせなら、それより前にプレゼントを渡したい。それはもう乱暴!な感じで。
いや、この乱暴!は、いい意味でね。そう。いい意味で、乱暴にね。うん。いい意味だから。
プレゼントの品は、森医師が前から欲しいと言っていたものにした。
喜んでくれるはずだ。
ただし、相当でかい。
これを、医局の森医師の部屋に運び込んだら面白いはず・・・!うーん!絶対面白い!!
できることなら、森医師がいる時がいいな。

コンコン
『どうぞ』
かちゃ
『あぁ、慎吾。あれ?今日休みじゃなかったっけ?』
『はい。休みなんですけど。でも・・・』
そこで、部屋には入らない。
『どした?入れば?』
『えぇ。あの。森先生』
『何?』
『お誕生日、おめでとうございます!!』

と!ここで、プレゼントを、部屋の中に引きずり込んで!!

『うわ!!すっげーー!!何これ!』
『前から欲しいってゆってたじゃないですか!森先生!』
『あ、覚えてた!そっかー、ありがとなー!んー、どこに置こうかなぁ〜』

よっしゃ!完璧!!

ん?でも、もし、森先生がいなかったらどうしようかな。
んー・・・。

<香取慎吾の計画2>

『あー・・・疲れた・・・。あれ、ドアあいてる?』

・・・あ、そっか。いない時は鍵がかかっているから、その時は、鍵をあけないとな。
開ける方法?
いやいやそれは。ねぇ。そんな。大丈夫大丈夫。それは大丈夫だから。
まずは、鍵をあけて、プレゼントを運びこみ。・・・どこに置く?
そりゃやっぱり、ドアあけて真正面だよね!
そうすると・・・

『うわ!えっ!?これ、何っ?えっ!?』

ここで、クラッカーをぱーん!とならし!プレゼントの後ろからっ!

『お誕生日おめでとうございます!!』
『うわ、びっくりしたー!えー!慎吾ー?これ、慎吾からぁ〜?』
『そうです!お誕生日だし!』
『うわー、そっかぁ〜。すごいなぁ〜、ありがとう、慎吾ぉ〜』

よっしゃ!完璧2!!

後は、これを他の人に気付かれずに、森先生の部屋まで運ぶ方法だよね。
いや、森先生にさえ気付かれなければ最悪なんとか・・・。
そっか。だから、まず、森先生が、どこでなんの仕事をしているか確認しとかなきゃまずいんだ。
えーと、森先生の予定は・・・。
自分の手帳を開けば、森医師の予定まで、なんとなく書いてある香取慎吾。まぁ、ごく一般的な1日であることが判明。さらに。
「おっ、正広くんの定期検診もあるのか!」
てことは、正広くんに手伝ってもらえれば、森医師の予定が解るぞ!病院の仲間たちじゃあバタバタしてて、貼りついてまではくれないからな。よしよし。じゃ、電話して。

「もしもし?」
『はーい、あ、慎吾さん?』
「そうだよーん。今日、病院でしょ?」
『そうですけど』
「あのさぁ、俺今日、休みなのね?それで、森先生、回診とかでるじゃない?出たら、教えてもらえないかと思って」
『森先生が回診に出たら、ですか?』
「そうそう。電話してくれないかな」
『いいです、けど・・・。どうかしたんですか?』
「えっ?」
慎吾は、一瞬迷った。
正直に計画を話すべきかどうか。
正広は気も効くし、親切だ。でも・・・。
「うん。ちょっとね。予定を知りたくって」
『そうなんですか?うん、あの、解ったら電話しますね』
「うん、お願い」

よし!大丈夫だ!
これで、後は、連絡がきたら、プレゼントをもって病院まで行けばいい。
病院までは結構近いし、森先生の回診は長い。看護婦さんや、女性患者さんが離さないからな!しかも今日は誕生日だ。すっごいことになりそうだなぁ〜・・・。

でも、このプレゼントは大きさからいったら、きっとピカイチだ!うっふふーー!

おでかけ準備を整えて、慎吾は正広から電話を待つ。いつだっていけるぜー!大丈夫だぜ、正広くーん!!

『もしもし』
電話がかかってきたのは、それから、1時間ほどしてからだった。
『僕の診察が最後で、今、回診に出られましたよ』
「そっかー!ありがとね!」
『あ、あの・・・っ』
気が焦っていた慎吾は、正広にお礼をいうのもそこそこに電話をきって立ちあがった。
コートも、マフラーも、完璧に身につけてある。後は、靴を履くだけだ!
プレゼントも玄関まで運んであるから、ブーツをはいて、プレゼントを持ってでかければいい!いけ!いくんだ俺!森先生を驚かせろ!
勢いよく靴を履き、大きなプレゼントをかかえて、部屋を出ようとした慎吾だったが!

が・・・っつん

「ん?」
プレゼントが、ドアから出ない。
「ん?あれ?なんでだ?」
縦にしてあら上下がひっかかる、横にしたら厚みがギリギリひっかかる。斜めにしたって、その厚みじゃあどうすることもできない。
「え?え??うそ!出ないってことはないだろ!!」
慎吾は、大きなプレゼントを、あーーでもない、こーーでもない、と、向きを変えたり、高さを変えたりしながら、どうにか部屋から出そうと努力を続ける。
しかし。
どうすることもできなかった・・・。

香取慎吾が、森医師のために用意したプレゼント。
それは、新しい本棚だった。
カタログ雑誌を眺めながら、
『いいよなー、俺、これ、憧れなんだぁ』
と森医師がいったのを、慎吾は忘れていなかった。
それは、単に、手前がスライドするというよくある本棚に過ぎなかったが、森医師にとっては、左右に動いて、奥の本まで見られる!というのが楽しいらしい。
あくまでも、「楽しい」だけなのが、森医師だ。
もしその本棚が手元にきても、並べるのはマンガだったりするに違いないと慎吾は睨んでいる。
でも、からからー!ってできたら楽しいじゃん!という森医師の言葉に、じゃあ、絶対その本だなをプレゼントしよう!そう決めていたのだ。
いたのに!
部屋に到着した時は、組みたて前の部品だったからよかったようなものの。
プラモデル好きの慎吾は、それを組みたてずにはいられなかった。
最初は見るだけのつもりで、パーツを取り出してみた。
ほほう。この穴に、こっちをね。
ふんふん。あ、裏板はこうなってるんだ。
でも、ここ、塗装が甘くない?やりなおそうかな。
こっちも、紙やすりした方がいいかも・・・。

なんてことを思ってしまったら、もう、直したくて直したくてしかたがなくなり、それはそれは美しくくみ上げてしまった。
しかも、接続面は、きっちりボンドで接着。
すでに、解体は不可能になっていた。

・・・・・・・・・こんな大きな本棚・・・・・・・・・・・・・!
自分のうちには・・・・・・・・・・・・いりません・・・・・・・・・・・!!
あのスキー板だけでも長くって、あの、えっとー。じゃま、って言うんじゃなくって、そうじゃないだけど。もらった時はほんっと!嬉しかったんだけど、すぐにスキーにいけなくってー!だから、こう行きたい気持ちと、いけない現実ってもののせめぎあいって言うかぁ〜!

『だから邪魔なんだろ?』

違います神様!嬉しいんです!森先生のくれたものだから嬉しいんだけどっ!このスキー板の上、この本だなは要らないって言ってるんですっ!!

そして。
ついに、慎吾は思ってしまったのだ。
窓だ。
窓からなら出る、と。
ベランダのところの引き戸をフルオープン、なんなら、2枚外しさえすれば、絶対に出る。
そこから、下に下ろせばいい。
そうだ。
もう、それしかない。
その時の慎吾を、誰かが見ていれば、100%具合が悪いんだと思ったろう。
考えすぎて、頭に血が上り、顔は真っ赤だった。
しかし、いかんせんヒートアップしすぎた頭は、正常に働いていない。なにせ。
「ベランダのさくの上でバランスをとれるようにしておいて、ひもでくくって、下にたらして、自分が下におりてそれを引っ張ればいいんじゃん!!」
などと独り言を言っていたのだから。

しかし、今の慎吾と止めてくれる親切な存在は、どこにもいなかった。よっしゃ、まずはベランダのガラス戸を外すぞ!!
と、ベランダに向かったところで。

「慎吾ぉ〜?」
玄関から声がした。
「何やってんの、おまえ、ドア開けっぱなしで」
「森先生!?」
「うわ、何これ!この本棚!あっ!スライド書棚じゃない!」
すごーい!と、スライド!スライド!させている音がしていた。
あぁ。
そうじゃなかったんだ・・・。
病院の、森先生の部屋で使ってもらおうと思っていて・・・!そこで、驚いて欲しかったんだ!
「も、森先生・・・」
「ん?どしたの。おまえさ、今日は、誕生日パーティーでしょ、俺の」
「そ、そーですよね・・・」
「正広くんが、なんかおかしいっていうから、見に来たのに、おまえ、先にスライド書棚買ってるって、ずるくなーい?」
「いえ、これは、森先生に・・・」
「えっ?俺にっ!?」
スライドっ!スライドっっ!とさせながら、キラキラっ!と表情を輝かせる。
「そうなんだぁ。じゃあ、なんでここにあんの?病院運んでくれたらいじゃない?」
「はぁ・・・、運ぶつもりだったんですけどぉ・・・」
「どした?」
「・・・組みたてたが最後、部屋から出なくってぇ・・・」
「うっそぉ!」
慎吾なら持てるけれど、森医師にはかなり重たい本棚を、森医師はドアから出そうとした。
しかし、あっさり放棄。
「無理!ドアからは無理!ベランダだよ!そっから出せば!?」
きっぱりと言い切った森医師は、香取慎吾に勝るとも劣らない発想をしていた。
「おまえが、ベランダの柵まで本棚上げて、俺が、上で押えてて、おまえが下におりて受け取ればいいんじゃない?」
「そうですかね!」
「そうだよ。だから、おまえが下いったら、俺が、下にこう、落とすから、受けとめたら」
「ですね!あ、じゃあ、まずベランダに出しますから、ですね」

「そうじゃないと思いますぅーーー!!!!」

もし、自分がいなくって、兄にも連絡がつかなかったら、本棚と、慎吾くんは、どんな悲惨な目にあっていたんだろう。
心臓バクバクの溝口正広だった。

引越し屋並の道具とトラックを用意してきた早坂由紀夫によって、乱暴ではなく、丁寧に運ばれたスライド書棚は、やれやれと思いながら、森医師のマンガを詰め込んで、毎日スライド!スライド!されている。


スライド書棚は憧れですよ。えぇ、ほんとに。壁一面の作りつけ本棚とか憧れっすよね。あぁ、本だけの部屋とかも夢のようでしょう!?
友達のうちで、本棚を見たりするのは好き。
・・・でも、うちの本棚はみないで・・・。お願い・・・(笑)

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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