天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

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ギフト番外編125話前編『おかしな家を訪ねる』

先週までのお話。典子の近所に謎の家がある。引っ越して結構経つのに、人の姿を見ることがないのだ。一体どうなっているんだそのうちは!
この謎に、腰越人材派遣センターの美青年が挑む!?

yukio
 

それは、単に、週末の飲み会の後、お茶を飲もうというだけの会だった。
どうなのかねぇ、そのうちは!という結論の出ないテーマで、12時過ぎまで居酒屋で飲み食いした後、うちのインテリア、今、カフェ風なんですよ!カフェ風!という典子の部屋にやってきた。

「カフェ風って・・・」
「カフェ風じゃないですかー!ほらー!見て、このテーブルぅー!カフェテーブルぅー!」
確かにカフェテーブルはあった。
そのカフェテーブルは可愛いし、置いてある椅子も華奢で可愛い。
「でも、一人分じゃん!」
「由紀夫さんひどいっ!」
よよっ!と服が積まれたベッドの上に典子は身を投げる。
「いくらあたしが、長く一人だからってそんな言い方・・・っ!」
「いやいやいやいや、カフェ風ったって、そのカフェテーブルなかったら、ふつーじゃん!」
「にしても、あんたよく散らかしてるわねぇ」
玄関に立ったまま、奈緒美がバーキンを振り回しながら言う。
「違いますよぅー!これは、あ・え・て!あえて、散らかった感を出してるんじゃないですかぁ〜。大変なんですから、掃除ぃ〜」
あちこち散らばっている、と思われるものは、あえて!散らばせているのであって、掃除は、それを動かさないようにしているらしい。
もちろん、ベッドの上の服だって、あ・え・て!積んでいるのだ。
「それってカフェ風?」
首を傾げた正広に、もちろんよ!と典子は答えた。
「じゃあ、カフェらしく、エスプレッソ頂戴」
奈緒美がツカツカと上がり込み、カフェーテーブルにつく。
「リキュールある?」
「ありませんし!エスプレッソマシーンもありませんっ!」
「あのあの・・・!」
それまで黙っていた野長瀬が、ふいに口を開いた。
「そのおうちって・・・?」

はっ!

全員がその時我に返った。
そう。彼らは、典子のおうちカフェを楽しみに来た訳ではなかったのだ。
「どこどこどこ!」
奈緒美は素早く窓に飛びつく。
「こっちなんですよ!」
典子は、キッチンに走り、そこの小窓を開けた。
「普通の一軒家じゃん」
そこに一番早くついたのが由紀夫。
兄ちゃん、結構興味あるんじゃん・・・。正広は、そっと心の中で思う。
「でしょ?でも、電気もつかないのよね・・・」
「どれどれ?」
しかし、正広だって好奇心に殺されるタイプ。二人の間に割って入って外を見る。
「普通ね。四人家族くらいかしら。でも、子供が小学校に上がっちゃったら小さいかしらねぇ」
「あのあのっ、あのっ!」
野長瀬も見たがっているが、奈緒美に先にいかれ、あわあわしていた。
「小さいですかぁ?うちより大きいよねぇ」
「ひろちゃんちは二人じゃないの」
「そーですけどぉー」
「あのっ!今日も、いないんですかっ?」
「いなーい。車も・・・、あれっ!?車はある!」
典子の声に、野長瀬を覗く全員が目を凝らした。小さなガレージには、確かに車が入っているようだ。
「カバーまでかけてやがる・・・」
「えっ!カバーまでですか!何色ですかっ!?」
「カバーの色がなんの関係あるんだよっ!」
だって、見えないしぃー、見えないしぃーー!と野長瀬がぐずぐず言うが、ん?ともう一度見た由紀夫は、眉をひそめる。
大抵車のカバーは銀色だ。それが、なんだってあの車は黒なんだ?
「・・・隠れてんじゃねぇの・・・?」
「え?」
「車も目立たないように置いてあるし、部屋の電気がついてないからって、いないとは限らないだろ。いるんじゃねぇか?今、家の中に」

なにをっ!?

全員(−1)の目が、しばらくその家に注がれたが、2分くらいでみな飽きた。
残った野長瀬だけが、いつまでも、いつまでも、動かない家を見ていた。

エスプレッソもないなんて、何やってんのよ!だったら酒持ってきなさーい!という奈緒美により、再び酒宴が始ってしまい、チュンチュンと小鳥が鳴くような時間になって、早坂兄弟は、ようやく帰途についた。まだ寒い朝の空気の中を歩く二人は、ごく当たり前のように、隣の家に向かう。
「兄ちゃん、車!」
「あ。ない・・・」
ガレージの中に、車はなかった。
まだ早朝だから、昨日の深夜、出ていったんだろう。
「黒いカバーなんて、昼間は目立つと思ったんだけど」
「日中の日差し浴びてたら、多分、車の中、煮えるだろうしな」
そして、由紀夫にはなんとなくピンと来た。
多分、ここは、週末婚のうちだと。

「なるほど」
月曜日、奈緒美は、一度うなずいた。
「金曜は、だから、密会してたんだぁ」
「じゃあ、明かりいらないですよねぇ〜」
えっへへ、と笑う典子の顔は、一時的におばちゃんになる。
「えっ!じゃああの時・・・!」
自分が見ていたうちの中で!?そんな!?と、頬を赤らめる野長瀬の精神が乙女だからといって、世界になんの貢献ができよう。
「でも、どんな二人なんだろ」
正真正銘のおばちゃんである奈緒美は、もちろん興味津々だ。
「典子ー、あんたちょっと、もうちょっと見てなさいよぅー」
「だって、週末婚だったら、次の週末まで来ないですよぉー?」
「年代くらいさぁ〜」
「五十代女性と、ニ十代男性とかを夢みてるわけ?」
「私は五十代じゃないわよぉー!!」
由紀夫に対し怒りを顕にしつつ、いや、でも、また金曜日に!今度こそ、現場を押さえよう!そう心に決めた奈緒美だった。(ヒマらしい)

しかし。

「ちょ、ちょっと!」
翌日、典子が転がるように事務所にやってきた。
「ど、どしたの!典子ちゃん!」
「見ちゃった!」
「え!何を!」
すでに全員出社していた会社に、社長を超えた重役出勤してきた典子だったが、誰も彼女を責められなかった。
「女・・・!」
「まさか、週末婚の!?」
「ううん!違うと思う!」
「じゃあ、井川遥ですか!?」
ひょっとしたら、産まれた時から癒されたいと思っているのか!と思われるほど日々、常に癒されたがっている野長瀬は錯乱している。
「見てないわよ!そんなの!そじゃなくって、女が見てたの・・・!」
「典子ちゃんが見てたんじゃなくて?」
「私はその女を見てたんだけど、女が見てたのは、隣のうちなのよ!」
「えっ!」
「じゃあ、それが、本妻ね!?」
「そうですよねぇ!社長もそう思うでしょお!?」
定時に会社に出ようとしていた典子が、何気なく隣の家を見たら、電柱の影に、不自然に隠れている女がいたという。
なんだありゃ、と足を止めたら、その女はじっと家を見ていて、これはいかん!と典子は部屋に戻ったという。
「なんで」
由紀夫の疑問に、正広が答えた。
「部屋から見張った方がいいじゃない!ねぇ!」
「ひろちゃん、その通り!」
びしっ!と正広を指差した典子は報告を続ける。
「それで、見てたんですけどね、徐々に近づいていってたんですよ。すっごくこそこそしてて怪しかったんですけど、表札みたり」
「表札出てたっけ?」
「出てないんです!あるかどうかの確認だと思います。後、ガレージ覗いてみたりしてるんですよ!」
「どんな女?おばさん?」
「それが!!」
バン!バン!バン!と典子は奈緒美のデスクを叩く。
「わっかくって、可愛いんですよ!この子です!」
「おまえ!写真まで撮ったのか!」
「はいっ!」
きっぱりと返事をし、これですと典子はデジカメを取り出す。
ズームされた画面は、多少荒いものの。
「た、確かに・・・」
「若ーい、ひょっとして、10代?」
「10代の奥さんがいながら、週末婚!?」
野長瀬は、貧血を起こしそうだった。セミロングでストレートの茶髪、お目々は大きく、華奢でほっそりの守ってあげたい体型・・・!
こんな奥さんがいながら週末婚!?
「ゆっ!許せませんっ!!」
「てことはさ、だんな、結構年離れてんじゃん?」
由紀夫が言う。
「若い奥さん貰ったはいいけど、やっぱり話もあわねーし、おばちゃんの方が気が楽だと、五十代くらいの」
「だから、私を見ながら五十代って言うなってゆってんのっ!!」
「まなみちゃーん!大丈夫ー!君のことは僕が守ってあげるからぁー!」
デジカメの彼女に、勝手に『まなみ』という名前をつけ、野長瀬は、彼女の幸せを守るんだ!と強く決意したようだ。おそらく、こちらも癒し系、本上まなみが頭にあるんだろう。
「まなみさんは、じゃあ、だんなさんの行き先をつきとめたんですね」
「ま、正広・・・、まなみって・・・」
「危ないわねぇ・・・。どうしよう、隣の家で刃傷沙汰が起こったら・・・」
いかにも心配そうな顔をする典子に、正広も心配そうな顔になった。
「危ないよ、典子ちゃん。ひょっと、たまたま通りかかっちゃって、巻き込まれでもしたら・・・」
「でもー・・・、危険な場所であっても、あそこがあたしの家だしぃ〜・・・」
「だからって、ねぇ、兄ちゃん」
困ったねぇ、という顔で弟に振り向かれた由紀夫は、その顔に、アイアンクローをかます。
「いだいいだいいだいーーーーー」
「すごいわねぇ、片手で顔つかめちゃうなんてねぇ」
つかめる由紀夫の手がすごいのか、つかまれる正広の顔がすごいのか、典子はその両方に感心。しかし由紀夫は力を緩めず言った。
「おまえも、たまたまそんな時に通りかかりたいって顔するなっ!!」
「いだいっでばーーー!!」

なんにせよ、これは面白いことになったと、それぞれが無責任に思っていた木曜日。
腰越人材派遣センターにやってきたお客さんは。
セミロングでストレートの茶髪、お目々は大きく、華奢でほっそりの守ってあげたい体型の、腰越人材派遣センター名、『まなみ』であるところの、彼女だった。
「あの、荷物、届けて欲しいんですけど・・・、住所が」
声も、大変可愛らしい。
全員が息を飲み、住所は知ってます!と思っていた。

<つづく>


顔をつかむ技の名前が解らなくって・・・。ベアクロー?と思っていたら、どうやらアイアンクローのようで?難しいねぇ、プロレス技って(笑)

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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