天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

このページの画像は、すべてyen@gallery様から使わさせていただいております!皆様も遊びにいらしてくださいね!

ギフト番外編126話後編『入学式に届ける』

<先週のお話>
ぴっかぴかの一年生に、おじいちゃん、おばあちゃんからの心づくしの品を届けるように依頼された、日本一男前の届け屋早坂由紀夫!しかし、獅子身中の虫、整理と整頓は違うのだ!ということを知らない男、野長瀬定幸により、届け先のデータを失ってしまったのだ!
危うし!早坂由紀夫!
危うし!早坂由紀夫担当課長溝口正広!!

yukio
 

由紀夫と正広、それに人海戦術で呼び出された野長瀬と典子が探しているぴっかぴっかの!いっちねんせっ!は、(推定)野田ゆかりちゃん。
想像できうる特徴は、髪が綺麗であること。
さらに、お父さんの髪が綺麗であること。
「でも、髪が綺麗って言ってもなぁ」
昨今の若い父親は、大抵おしゃれさんだ。まして、子供の入学式についてくるような父親は、さりげなくいい格好で来ているに決まっている。
髪の毛だってちゃんとセットしてるだろうし、汚い!って人を探す方が難しいに違いない。
「だったら、やっぱりロンゲなんじゃない・・・!?」
「ロンゲなぁ・・・」
例えば、ヤンパパであれば、子供が小学校入学時であっても、24、5。ロンゲであっても不思議はない。
まだ、親子連れはどんどんやってきていた。
けれど、それが無限のものであるはずもなく、入学式の時間も、刻一刻と迫ってくる。
男の子を排除し、それらしい髪の綺麗な女の子を探す。
しかし、小学1年の女の子の髪が汚いはずもなく・・・・・・・・・。
「どうしよう・・・」
正広は呟いていた。
できれば、ゆかりちゃんには、おじいちゃんの帽子に、おばあちゃんのコサージュで入学式に臨んでもらいたかったのに・・・!
このまま見つけられなかったら。
すでに、中に入っていたら・・・!?
不安になり、隣の兄を見上げた正広は、はっ!と息を飲む。
兄の顔に、ありありと不穏の色を見たからだ。
「ま、まさか・・・!」
さっさと学校に入っちゃって、わっかい女の先生捕まえて、ゆかりちゃんのクラスを聞き出すつもりじゃあ!
しかも、楽勝で聞き出しちゃうつもりじゃあ!!
・・・いや。
それなら、そうしてもらった方がいいのか・・・?
早坂由紀夫担当課長として、今回のデータ紛失には責任を感じている。可愛い可愛いと騒いでいないで、先にちゃんとチェックしておくべきだった。
・・・ここは、兄ちゃんに、いや、早坂由紀夫に、若い女の先生をたぶらかしてもらって、なんなら入学式の会場に・・・!
「兄ちゃん・・・!」
正広の声に、由紀夫が気付いた。
その真剣な様子に、二人は、お互いの気持ちが、今まさに通じ合った、ということを確信した。
もちろん、由紀夫は、校門の中にいる若い女の先生をチェック済みだ。
どっちが緊張してるのか解らない様子は、彼女が新人であることを表していた。つっつけばすぐに落ちる。
100%確信を持ち、由紀夫は、最初の1歩を踏み出した。

校庭の中で、やってくる新入生を待ちうけているのは、去年は臨時採用、この4月から、ようやく正式採用となり、名実ともに教師になれたという23歳の女性。童顔。(ちなみに、こう見えて彼氏もち。彼は、スノーボーダー)
その女性教師は、ぴかぴかの一年生たち一人一人に、おはよう!と元気に挨拶をしていた。
私も、このぴかぴかの一年生と同じだ。
今の、ぴかぴかの気持ちを忘れないぞっ!と強く思い、よし!次の子!と顔を上げた。
「うっ、ぴかぴかっ!?」
軽く逆光になっているせいもあったが、校門から、やけにぴかぴかした人がやってきている。
輝いてるってゆーの?
オーラがあるってゆーの!?
彼女の付き合ってる相手にも、オーラはあったけど、ひょっとしたらそれ以上!?
え!?そんなお父さん!?
でも、子供いないじゃない!!
と、まっすぐ歩いてくる姿に、軽くパニックを起こしかけた彼女だったが、その彼女の視界の端に、何か小さなものが見えた。
それは、勢いよくサイズを大きくしながら、どんどん近づいてきている。
・・・子供が・・・・・・、走ってる・・・・・・?
スカートを翻し、ランドセルを激しく上下左右に揺らしながら走っているのは、ぴかぴかの1年生の一人。
「た、確か・・・、相沢さん・・・?」
彼女は、臨時採用だった時期と同じく、1年生を担当することになっていた。自分が担当するクラスの子供たちの、顔と名前は先に覚えておこう!と、昨日まで、必死に覚えてきたのだ。
「そう。相沢さんだわ・・・。え、じゃあ、相沢さんの、お父様っ?」
なーんだ、子持ちか、と正直に思った女性教師は、弾丸のように走っていた相沢さんが、お父様の背中に、いきなり飛び乗ったのを見て、口をあけた。
ぽかんとあけた。

ぽかんと口をあけたのは、正広も一緒だった。
正広は、その小さな弾丸が、よこを擦りぬけていった時から、開けっぱなしだ。
「な、何あれ!」
典子も驚いて正広の後ろから覗きこむ。
「うわ!」
そして、その弾丸が、ほぼ勢いを殺さないまま、兄の背中に飛び乗った時には、目まで落ちそうになった。

目が落ちそうになったのは、実際のところ、由紀夫だった。
女性教師の驚きの表情を眺めながら、とりわけ印象的になるよう、ゆっくり歩いていたところに、背中に衝撃。
ヤクザ映画なら、ラストシーン。
スクランブル交差点で、背中から刺される主人公を連想させる衝撃だった。
「いったー・・・」
しかし、なんとかその衝撃をやりすごした由紀夫だったが。
「おもっ!」
突然、首を締められるような重みに、慌てて後を見る。
「なんだっ?」
「届け屋さんっ!?」
振り向いた由紀夫の目の前には、健康そうなバラ色のホッペをした女の子の顔があった。
「ねぇ、届け屋さんでしょっ?」
「えぇっ?」
ぷっくぷくの、まっるまる。つっやつやなお肌をしているその子は、『健康優良児』という言葉がとても似合う子だと思われた。
なにせ、身がみっしり詰まっている感じがする。
その重みは、由紀夫の首から、背中に、ずっしりとのっかっていた。
「ちょ、ちょ、いいから、降りて。おり・・・、苦しいし!」
驚いた由紀夫が、足やお尻を支えてやれなかったものだから、女の子は、ぶらーーんと自力でぶら下がっているだけ。
「えっ?でも、届け屋さんでしょう?」
「届け屋だ、届け屋だから!」
どうにか降りてもらったら、女の子はわくわくしながら由紀夫を見上げていた。
「うわー・・・、本当だぁ〜・・・」
背は、まだ小さいけれど、手足がしっかりしている。この子は将来大きくなるに違いないと由紀夫は思った。髪型は、わかめちゃんというより、金太郎さん。
「えっと。それで〜・・・、ん?何?」
「届け物、もらいに来たんだよ?」
「え!野田ゆかりちゃん!?」
「違うよぅ!」
ん!?と由紀夫が思ったところで、「ゆかり!!」と声がした。

「あの子がゆかりちゃんだ!」
正広も、校庭の中に急ぐ。正広の前を、綺麗なスーツを着たお母さんが急いでいた。
「ゆかりったら!」
「わたし、わたし、野田ゆかりじゃないよねっ?」
母親に、女の子は言いつける。
「違うわよ。それは、私が、ラブラブなダーリンと離婚して、泣く泣く実家に帰らせていただきますっ!でも、ゆかりを離すもんですかっ!って時にそうなるだけであって、あなたは相沢ゆかりよ!!」
「そうだよねぇぇ〜〜!」
ひしっ!
母と子が抱き合うのを、えっと、だから、この子が、推定野田ゆかりであって、届け先はこの子でいい訳ね?と由紀夫は見つめる。
「兄ちゃん・・・?」
「やっぱり野田は旧姓だった。今は、相沢さんだと」
「あ、そうなんだ」
よかった!やっと見つかった!と正広は胸をなでおろしたが、
「え?でも、なんで?」
由紀夫も、頷いた。

なぜ、向こうから、由紀夫が届け屋だと解ったのか。

「あ!お母さん!ほら!この人!」
「えっ?」
それまで、母と子の抱擁を楽しんでいたお母さんが、由紀夫を見つめる。
そして、娘とハイタッチ。
「さーすーが!お母さん!」
「おばあちゃん、ナイスセンス!」
「はいっ?」
何事?と正広が声を上げる。
「だって、一番カッコいい人に、プレゼント預けたよって、おばあちゃんが言ったんだもん」
「い、一番カッコいいって・・・」
由紀夫が日本一男前の届け屋であるといういことは、ワールドワイドに知られていることらしい。
「ホントカッコいい・・・。ゆかりのタイプね!」
「お母さんだってそうでしょおーっ?」
うっとりと、母子から見つめられ、由紀夫は、少々引きつりながら笑みを浮かべ、バックから、むぎわら帽子と、コサージュを取り出す。
「はいこれ。おじいちゃんと、おばあちゃんから」
ゆかりちゃんの前にひょいと、しゃがんでから、帽子を被らせてあげた由紀夫は、コサージュもブラウスの胸に付けてあげる。
「可愛いね」
まだ、ぷくぷくと子供らしさたっぷりのゆかりちゃんだったが、可愛いお花をつけられると、元気よく、肩幅に開かれていた足も、ちょっと狭くなったりする。
「可愛い?」
にぱっ!と元気よい笑顔をみせられ、由紀夫も、にぱ!っと大きな笑顔で答えた。
「可愛い!」
と。
「じゃあね、じゃあね!」
嬉しそうにゆかりちゃんは宣言した。
「私も運んで!」

こうして、由紀夫は、麦わら帽子と、コサージュで、可愛さ130%のゆかりちゃんをダッコして、体育館まで運ばされた。
すみませぇ〜〜ん、と、母親は大変嬉しそうで、それなら私は、と、由紀夫の腕に手をかけようとして、ダメっ!とゆかりちゃんから蹴られそうになっていた。
「ゆかりちゃん・・・、今日は、お母さんとだけ来たの・・・?」
なんで、俺は小学生を抱っこして(お姫様抱っこがいい!といわれたけれど、スカート丸見えになるぞ!と、縦だっこ中)歩いてるんだろう、という疑問を激しく感じながら、由紀夫は歩いている。
校庭で騒ぎすぎて、時間ギリギリになったもんだから、二人を先頭に、隙あらば!と狙っているお母さん。呆然としたままの女性教師、正広、野長瀬、典子と、ぞろぞろくっついて歩いている。
「えっ?あ、お父さん!」
「あらっ!?あなたっ!?」
ゆかりちゃんの声に、母親が慌てふためいた。
「どこいっちゃったのっ?」
由紀夫が歩くのを辞めたため、行進が止まった。そして、全員の視線が、校門に向けられる。
「あなたぁ!」
門のところから、ちょこっとだけ顔を覗かせているのが、どうやら、ゆかりちゃんの父親らしい。あぁ、髪が綺麗な、と由紀夫が視力を爆発させたところ。

「・・・スキンヘッド・・・?」
「うち、お寺なの!」

『昔』、髪が綺麗だったお父さんか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
ゆかりちゃんの、金太郎さんのような黒髪は、確かに、大変綺麗で腰も強そうだ。

すいません、すいませんっ、と米つきバッタのようにお詫びしながらやってきた父親は、妻と娘のテンションになかなかついていけない恥ずかしがりやさんのようだった。
な、ため、せっかくの娘の入学式だというのに、カメラマンとして、妻、祖父母からプレゼントをもらった娘、届けた日本一男前の届け屋というスリーショットの写真を撮らされる羽目に陥った。

それから二週間。
懸賞であたったハワイでのバカンス(日程変更不可)を楽しんでいた、ゆかりちゃんの祖父母は、大量に送られた写真や、ビデオを見て、とても喜んだ。
特に、おばあちゃんが喜んだ。
「噂で聞いてだけだけど、ほんっとにカッコいいのね・・・!」
映っているのは、5割が孫、2割が娘夫婦。そして残りが、由紀夫。

こうして、早坂由紀夫の評判は、さらにワールドワイドで広まっていくのだ。


ボーダーの彼は出してあげられませんでした。だってボーダーだから、山にいるんだもん(笑)

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

今までのGift番外編へ

What's newへ

SMAPレポートへ

SMAPメニューへ

トップへ