天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

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ギフト番外編130話『カフェを作ろう?』

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カフェブームだという。
正広にはよく解らないが、カフェと喫茶店は違うらしい。
喫茶店には、スパゲティナポリタンがあるが、多分カフェにはない。カフェにあったとしても、楕円形の鉄板の上とかには乗ってこない。
カフェには、「コーヒー」というメニューは、多分あんまりない。多分、コーヒーカップよりも、カフェオレボウルみたいなものに入って飲み物は出てくるんだろう。
カフェには、イチゴショートは、多分、あんまりない。なんか、もっと不可思議なデザートがあったりする。これはご飯ですか?デザートですか?みたいなのとかが。
気になる・・・。
カフェって、どういうところなんだろう。
正広は、とても気にしていたが、今のところカフェらしいカフェに行くチャンスがなかった。
ただ、なんだかおしゃれさーん、と思っていただけだったのだが。

「やっぱりカフェですよね」
野長瀬が言った。
「カフェよ。カフェ」
典子がうなずいている。
「どしたんですか?」
お使いから帰ってきた正広は、二人がカフェのガイドブックを見ながら話しているのを見た。
「何がカフェなの?」
正広が帰ってきた直後、現在、ワールドカップ観戦のため、日本−韓国間を往復している奈緒美が、久々に事務所に戻ってきた。
「あっ!社長!」
「奈緒美さーん!」
おみやげー!おみやげー!とまとわりつく社員たちに、ほーら取っておいで〜!と、ロッテデパート地下で購入した韓国のりを投げる奈緒美。
「犬じゃないんですからっ!」
そんな典子の抗議は、
「あー!これ、美味しいやつだー!ありがとー!」
という正広の歓声にかきけされる。
「あー、つかれた」
自分のデスクに、どっかりと座った奈緒美は、事務所内に目をやる。社長不在であっても、特に荒れたところはないようだ。
野長瀬のデスクの上に、堂々と広げられているカフェ本以外は。
「それで何、カフェって」
お疲れ様です、と、麦茶を持ってきた典子に尋ねる。
「なんか、野長瀬さんがカフェをしたいって」
「はぁ?」
「え!野長瀬さん、カフェするの!?」
インドカフェ!?
正広は勝手にそう思い込んだ。カフェっていうのは、とにかく、変わった空間だと正広は思い込んでいる。そこに置かれている紅茶は、すべて「チャイ」と呼ばれていて、変にスパイシーなはずだ。
「やめときなさいよ」
奈緒美は冷静に言い切り、麦茶を口にする。
「ちょっと前までは、猫もしゃくしも留学留学って言ってたみたいに、今は、だれでも、カフェか雑貨屋がしたいもんなの。そこで残っていこうなんて、無理、無理。まして野長瀬には」
「いや、僕じゃないんですって!」
「え、違うの」
「違うわよー!」
典子がケラケラ笑った。
「野長瀬さんのカフェなんて、怖くっていけないものー!それに、野長瀬さんがするとなると・・・」
典子は、野長瀬の頭の上から、つま先までを見下ろし、もう一度上がってきた。
「一杯飲み屋?」
「肴の美味しいとこだよね!」
ちっちっち。
一気に麦茶を飲み干した奈緒美が指を振る。
「野長瀬はあぁ見えて乙女チック好きだから、カフェをやるなら、ふわふわシフォンケーキ、美味しい紅茶、蜂蜜の種類は10種類以上、ステンシルと、トールペインティングに囲まれた店内は、あくまでもロマンチックで、レェスのカフェカーテンが揺れ!みたいな店をやるわね!」

「うぇーーー!!」
正広にも、典子もや、やけにリアルにその店内が想像されてしまい、二人は悲鳴を上げながら耳を塞ぐ。
「やめてくださいっ!」
という野長瀬の声が一瞬遅れたのは、その店内を想像してうっとりしていたからだ。
「だから!僕じゃないんですってば!」
「そりゃそうでしょ。あんたのカフェなんて。誰がいくの誰が。そんなに給料もあげてないのに」
「うっうっうっ・・・」
泣き崩れる野長瀬定幸。彼の給料は、いつまでも、低い・・・。

「誰がカフェするんですか?野長瀬さん」
「友達・・・」
「なんか、お友達の実家が喫茶店をやってるんだけど、流行ってないらしくって」
典子の言葉に野長瀬がうなずく。
「彼も一人息子だし、どうにかしたいと言ってるんですけどねー」
「店はどこにあるの?」
麦茶の後は、あったかい日本茶に、白玉団子を楽しんでいた奈緒美が尋ねる。
「商店街です。ここの」
「ここ!」
奈緒美は難しい顔をした。
「悪くはない場所だと思うけどー・・・。駅からは遠いわねぇ。駐車場は?」
「ないです」
「それだとねぇ〜」
山手線の駅から、遠くはない。遠くはないが、自転車でちょうどいいくらいの距離だ。
「カフェにすりゃあいってもんじゃないしねぇ〜」
無理無理と軽くいい、白玉団子の感触を味わう。
「どこの喫茶店ですか?」
「ひろちゃん、知ってるかな。あの、スーパーの隣の・・・」
「え!?あそこって開いてるんですか!?」
「うそ!あれでしょ?なんか、ぶあっついガラスの!」
日当たりのいい場所にあり、そのせいなのか、いつもカーテンがかかっていて、中を覗くことができない。開いてるのか開いてないのかも解らないけど、開いてたとしても、なんか、ヤバイ店じゃないかと正広は思っていた。
「そりゃ、人もこないわよねぇ〜!」
「ま、常連さんはいるんですけど・・・」
「とりあえず、開いてることが解るくらいにする必要があんでしょうー?もういいから仕事して。仕事」
パンパンと奈緒美が手を叩き、3人がそれぞれのデスクへと解散する。しかし、すぐに正広が戻ってくる。たんまりと書類を持って。
「奈緒美さん。書類、たんまり・・・」
「うっ・・・!」
「明日は大阪行くんでしょう?」
「・・・寄らなきゃよかった・・・」

どんより気分で仕事をしていた奈緒美は、ドアが開いた時に爽やかな風を感じた。
おぉ、早坂由紀夫。
なんといっても男前。
つかれた気分も、彼の顔を見れば(いくらかは)吹っ飛ぶわ!
奈緒美は、はっし!とドアを開けて入ってきた由紀夫の顔を見つめる。
「あれ、帰ってたんだ」
「そーゆー挨拶はないでしょーがー!」
「野長瀬ー、お客さん」
しかし、由紀夫は遊び歩く社長をあっさり黙殺し、野長瀬を呼ぶ。
「あっ、はいはい」
野長瀬はネクタイを直しながら立ちあがり、小腰をかがめてドアに向かう。営業担当として、接客は彼の仕事だ。
「はい、いらっしゃいませ、って、純ちゃん!」
『純ちゃん』?
誰だ、一体!どんな女だ!と由紀夫を除き、全員の目がドアに向かう。

「はう・・・っ!」

そして、奈緒美は、座っていたはずなのに。
確かに、軽いめまいを覚えた。
あぁ、もし。もし、自分が野長瀬の場所に立っていたら。
きっと、倒れていただろう。
だって・・・!
彼が素敵だから・・・!

由紀夫さんも素敵。ひろちゃんも可愛い。でも・・・!
典子の目は、はっきりとハートだった。
なんって、カッコいいの、『純ちゃん』ってぇーーー!!
ワイルドさがたまらなぁ〜〜い!

野長瀬の友達であり、商店街の人気なさ過ぎる、ニンキというよりも、ヒトケがなさすぎる喫茶店の一応跡取、小此木純ちゃん(by阿部寛)が、腰越人材派遣センターの女性陣のハートをわしづかみにした瞬間だった。

<つづく>


小此木純ちゃんは、本当は花屋さんです。上田次郎教授とは違う人です。えぇ。

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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