天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

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ギフト番外編135話『コピーを作る』

yukio
 

「あー、忙しかった!」
「ほんっと・・・」
腰越人材派遣センターの、夏限定和カフェは、思わぬ人気を呼んだ。
そして、なぜか、出張和カフェとして、あちこちのイベントに呼ばれるハメに陥ってしまった。
このくそ暑いのに!とか、浴衣くるしんだよ!とか、足いてんだよ!とか。
そんな抗議は、『臨時特別ボーナス』と言う言葉の前にかきけされる。
「うー、足いたーい・・・」
正広はベッドに仰向けに倒れて、足をぱたぱたさせている。
オーダーで下駄を作ってもらい(といっても、台と鼻緒を選んで、足に合わせて鼻緒をセットしてもらうだけ)、鼻緒で足を痛めるということはなくなったものの、立ちっぱなしの仕事なのでやっぱり大変だ。
今日は、午後と、夜のダブルヘッダーだったし。
「うーうーうー・・・」
「うーうーゆってる間に、浴衣脱いだらいいじゃねぇか」
こっちは、ばっさばっさと浴衣を脱ぎ散らしている由紀夫は、浴衣のあちこちから、女の子の携帯番号が出てくるのを見て、どーしろってんだよ!と文句をつける。
「せめてプリクラでもないと、電話のしよーがねぇだろ」
でも、一応集めておいておいたりもする。いや、なんとなく。
「・・・もー、一人いると、楽だねぇ」
「何?」
正広の声がよく聞こえなくて、由紀夫が振り返ると、正広はもう寝てしまっていた。
「・・・ゆかた・・・、は、ま、いっか。別に昔の人もそれで寝てたし」
これだけすとんと寝たってことは、相当疲れてたんだろう。下手に脱がそうとして起こすの可哀相だろうと、由紀夫はお楽しみのビールに気持ちを向けた。

「あ、しぃちゃんだ」
「ど、どぉしたの、ひろちゃん」
正広が気がつけば、白文鳥のしぃちゃんが、巨大化していた。
「なんかおっきくなっちゃったねぇ・・・」
「えっ、ふ、太ったってこと・・・?」
がーん!しぃちゃんショック!とやや仰け反る白文鳥しぃちゃん。
「あ、違う違う。・・・ん?じゃなくって、僕が小さい訳・・・?」
「ひろちゃんは、そんなに小さくないわよ」
「・・・小さいんだね・・・」
「違うわ、違うわ!えっと!あ!見てっ!」
ぴしっ!と、白い羽で、しぃちゃんを空を指差す。青い青い、夏の空はやけに高く見えて、そしてその中を飛んでいるのは。
「999!?」
「珍しいわねぇ」
「珍しいってゆーレベルの話なの!?」
「あれに乗ると機械の体がもらえる星に行けるんですってね」
「あ、知ってる〜。でも、しぃちゃんが機械になっちゃったら・・・、文鳥ロボ・・・?」
「ぶ、文鳥ロボ!?」
さっきから、太ったの、ロボって、ひろちゃんひどぉぉーーい!!乙女心が痛く傷つけられたしぃちゃんは、飛びさってしまった。
「しぃちゃん!って、ここどこぉーー!!!」

文鳥サイズになったらしき正広は、辺りをきょろきょろと見渡した。タンポポが咲いていた。正広の身長くらいある。
「き、季節感、ゼロ・・・!」
そんな風に呟いたら、遥か上空に揺れている黄色い巨大なものが見えた。
「・・・ひ、ひまわり!?」
巨大だった。おそらく、あのひまわりの種は、ものすごくでかい。
そんな風に宙を見上げていると、さっき空に上がっていっていた999が、今度は降りてきている。
「うわぁ。科学は進んじゃったんだぁ」
機械の体かぁ。
機械の体があったら便利かなぁ。まぁ、多分疲れないよね。
でも、機械って、ロボコップみたいになるのはやだなぁ。

「どうせだったらコピーロボットが欲しいと思わないかい?」

突然頭上から声がして、きゃあ!と正広は飛びあがる。
「だっ、誰!?」
「こっちこっち」
「稲垣先生!」
稲垣アニマルクリニックの獣医、稲垣吾郎が後ろに立っていたが、そのサイズは微妙だ。
正広が文鳥サイズだとすれば、稲垣医師は、成猫サイズとでもいうのか・・・。
「お、おっきいですねって言えばいいのか、ちっさいですねって言えばいいのか・・・」
「サイズのことなんか聞いてないんだけど、どうせならコピーロボットがいいでしょう」
「え?あ、いいと思います。・・・って、それなんですか?」
成猫サイズの稲垣医師は、いつものように白衣を着ている。そしてその白衣のおなか部分にポケットがあった。
「これかい?」
そのポケットに両手をつっこんで稲垣医師は言う。
「四次元ポケットって言って」
「ドラえもんですか!?」
「ドラえもん!?」
心から心外そうに稲垣医師は眉を上げる。
「ドラえもんって、あの丸々としたタヌキのことかい?」
「え、ドラえもんは猫ですよ。耳はネズミにかじられちゃって、それでドラえもんはネズミが大嫌い!なんです」
「しかし、人間というカテゴリーのはずなのに、どう見ても、トドにしか見えないものがいるように、猫というカテゴリーに入るから、猫だと言われては他の猫が迷惑だと思うんだよね。もちろん私は、犬か猫かといわれればもちろん猫に見えると思うよ。思うけど、それとドラえもんとの間には深くて暗い河があって・・・」
「ごめんなさいごめんなさいっ!」
このままではどこまで話されるのか解らない!と、正広は慌てて稲垣医師の言葉を遮った。
「えっとえっと。あ、それで、四次元ポケットには何が入ってるんですかっ?」
「だから、コピーロボットだよ」

『こぴぃろぼっとぉ〜♪』

と、大山のぶよの声で言った稲垣医師は、そのまるっこいマネキンを正広に渡してくれた。
サイズは文鳥サイズ。
「・・・鼻のとこを押すんですね・・・!?」
「その通り」
ドキドキしんがら、丸い鼻をちょこんと押すと。
「わぁ!」
「わぁ!」
もう一人の自分が目の前にいた。
「すごーい!」
「すごーい!」
「鼻のとこだけ違うー!」
「鼻のとこだけ違うー!」
「他は一緒かなー」
「他は一緒かなー」
自分の姿は自分ではよく見えないからと、着ているものや、靴を確認していると、まったく同じようにコピーロボットもやっていた。
「・・・あのお・・・?」
「・・・あのお・・・?」

そして、鼻の頭以外は、まるっきりそっくりな正広とコピーロボットは、同じ角度で稲垣医師を見上げた。
「これってー・・・」

「これってー・・・」

「え?何が?」
かわゆさダブルでいいんじゃない?と、稲垣医師は首を傾げる。
「でも、コピーロボットって」
「でも、コピーロボットって」
「こんなじゃなかったですよ?」
「こんなじゃなかったですよ?」
正広がパーマンで見ていたコピーロボットは、姿形はそっくりだけど自立して動いていた。
「これじゃあ」
「これじゃあ」
「単にコピーじゃないですか!」
「単にコピーじゃないですか!」

「だってコピーロボットだもん」

「なるほどぉ!」
「なるほどぉ!」

「入りませんっ!」

ぶちっ!ともう一度鼻を押して、コピー正広を、単なるマネキンの形にしてしまった。
「可愛かったのに」
「だって、まったく同じで二人いてもしょうがないじゃないですかぁ!」
「可愛いのに?」
「でも、まったく同じ動きですよ?気持ち悪くなっちゃいますよ。あれ?俺って酔ってる?って」
「んー、でもなぁ、やっぱり、まだ自立で動かすには、ロボットっていうより、アンドロイドっていうか、うーん・・・」

考え始めた稲垣医師を置いて、正広は、999が降りてきそうな場所を求めて歩き出した。
ほんとのコピーロボットはちょっと欲しいけど、まったく一緒じゃ意味ないんだよね。別々のとこにいけないし。
でも、自分が二人がいて、それぞれ別の場所に言ったら、その時の記憶とかってどうなっちゃうんだろう。
あれ?パーマンの時って、おでことおでこをくっつけて、記憶を移したりしてなかったっけ?あれ?
テレビもマンガも大好きな正広なので、いろんな記憶がくっついて訳解らなくなってるようだった。

「ところで、正広くん」
「稲垣先生!?」
もう立ち直ったんですか!?と、隣を歩く稲垣医師を見上げていう。四次元ポケットはなくなっていた。
「触ったものがすべて黄金に変わる人、というのを知っているかい?」
「・・・知りません・・・」
フルフルと正広が首を振ると、稲垣医師はさもあらんとうなずいた。
「何でも望みを言いなさいといわれて、触れるものすべてが黄金になるようにと願った王様がいてね」
「はい」
「でも、なんでも金になるんだよ」
「なんでも・・・」

「食べ物も金になるし、人に触っても金になる。水を飲んでも、喉で金になるんじゃないかと怯えるというような話なんだけど、つまり」
「は、はい」
「『触れる』という言葉の意味を考えてみた場合、物と物が軽く接触することを触れるというんだけども、液体や気体に関しても、それは通用するんだね」
「はい・・・?」
「気体もだよ」
「えぇ」
「すると、彼に触れた空気は黄金になってしまうんだ。空気に切れ目がないとすれば、そんな男が一人いるだけで、世の中の空気は全て黄金。迷惑な話だねぇ」
「全くですねぇ」
「まぁ、おとぎ噺で願いを叶えてもらうってことは、非常に難しい。もし、そんなチャンスがあったら、「現代に通用する日本の紙幣で、100万円分、もちろん番号はバラで」みたいに言った方がいいよ」
「誘拐犯ですか!」
「じゃ、今のことを踏まえた上で、願いを言ってみなさい」

「・・・・・・・・・・・・・・え?」

「君の願いを1つ叶えてあげよう」
「え、えっと・・・」
一つ!?一つなのか・・・!?えっとえっと・・・!

「ちっちっちっち、ブー!」
「えぇっーー!?」
「遅い。遅いよ、正広くん。あのね、こういう時には、まず、『後3つ叶えられるようにして下さい』とか言って、時間稼ぎをしないと!」
「そ、そーゆーもんなんですか・・・」
「背を伸ばしてくださいとかゆったら、ほんとに背中だけ伸びたりするからね、はっきりと希望を口にしなきゃいけないんだよ。さ、どうする?」
「えーーっと・・・!」
「ちっちっち、ブーーー!!!遅い!!」
「だってぇぇ!」
「あぁ、もう、解った解った。君の願いはお見通しだ。じゃあ、こうしてあげよう!」
しゃらんら〜♪
稲垣医師は、どこかからか取りだした、星の飾りのついた、どっからどうみても、『魔法の杖』で、正広の頭の上から何かの粉をまいた。
「けほっ!こ、これ、なにっ!?」
その粉の量があまりにも多く、白っぽくなってしまった正広は、苦しさのあまり、その杖をつかんだ。
そしたら。

「苦しいったら!」

その杖は、正広になった。

「な、なんですか!?これ!」
「自立型コピーロボットを作るのは大変なんで、正広くんが、右手で、握力20kg〜25kgで掴んだものは、もう一人の正広くんになる、という魔法をいかけてあげたから」
これでお仕事も楽勝だねぇ〜〜♪
「えーー!!!まってください、稲垣先生ぃーーーー!!!」
なぜか、ほうきに女の子座りをした稲垣医師は空へと高く舞いあがった。そして。
「こーーーわーーいぃぃーーーーーーー・・・・」
という悲鳴を残して、小さくなってしまった。

「な、なんなの・・・」
「なんなんだろうね、面白いね、これ!」
コピー正広は右手を握ったり開いたりして、いきなり、側にあったタンポポをぎゅっ!と握った。
「あああ!!」
「ほら3人目!」
「え?何何?」
タンポポから出来あがった正広も、寸分違わぬ正広だった。
「ダメだよぉ、そんなにしたら」
「ダメだよって、なんで真っ白になってるの、払わなきゃ」
そういって正広3は正広の頭やら、肩から粉を払ってくれた。どう見ても小麦粉に見えた。
そんなことしてうちにも、正広2は、どんどん正広を増殖させていく。正広3も、正広8とも、正広23も、どんんどん増やしていく。
その増殖スピードは当然のことながら、ネズミを軽く凌駕した。
たちまち、正広は、その野原を埋め尽くしてしまったのだ。

「正広ー?」
そこに、聞きなれた声がした。
「あ!兄ちゃんだあ」
しかし返事をしたのは、正広ではない。おそらく、正広8820か、正広104だろう。
「え?兄ちゃん?あ、にいちゃーん!」
しかしそれに呼応して、すべての正広が、兄ちゃん、兄ちゃんと呼んで、手を上げる。
「兄ちゃん!違うよ!僕ここだって!!」
正広オリジナルの声は、他の声に負けてしまいそうだ。

「兄ちゃん!」
そして、兄は、ノーマルサイズのようで、つまりかなりでかい。文鳥サイズの正広たちを見て、これは困ったという顔をする。
「正広?」
「ここー!兄ちゃんここだってー!」
必死に正広は言うのだけれど、「兄ちゃん、兄ちゃん!正広だよー!」「兄ちゃん、どしたのー?遊びに行くー?」なんて、他の正広たちの声があまりにもでかい。
由紀夫は、正広たちの前に膝をつく。そして、キャスターつき衣装ケースを突然取り出して、一人の正広を手に乗せた。
「兄ちゃん、何?」
と不思議そうな正広800を、その衣装ケースにいれる。そして次々に拾っては衣装ケース、拾っては衣装ケースにいれていく。
あああ!このまま、衣装ケースにいれられて、まとめて飼われちゃうの!?僕って!
「にいちゃーん!正広はここだってばーー!」

そんな風に叫びながら、正広たちをかきわけかきわけして前に出る。
「兄ちゃん!」
そして、足元で大声をあげると、由紀夫がこっちを見てくれた。

「あぁ、こんなとこにいたのか」
「兄ちゃん!!」

そして、正広オリジナルは由紀夫のシャツのポケットに入って、その野原を離れることができたのだった。
たくさんの正広は、キャスターつき衣装ケースに入って、ケースごと引っ張られている。
「あー、よかったー!俺ほんとに兄ちゃんに解ってもらってよかった!兄ちゃんありがとう!!」
あんなにたくさんの、まったく同じ正広たちの中から、本物を見分けてくれるなんて!
なんてすごいんだろう!さすが兄ちゃん!兄ちゃん大好き!
シャツのポケットから出してもらい、景色のいい肩にいた正広は、嬉しいっ!と兄の耳たぶをぎゅう!とつかんでしまい。

「ぎゃーー!!!兄ちゃんまでが正広にーーー!!!」

「・・・何が・・・」

8月18日の早朝。
正広が占領しているベッドの隅っこで寝ていた由紀夫が、迷惑そうな声を出した。
誕生日の朝の夢として、これは、どう・・・?
ひっそりと稲垣医師を恨んだ正広だった。


コピーロボットってほんとにどうなるんだっけなー。最後・・・、って思い出せない私です。コンサ時期にいてくれたら、こんだけ便利なものってないよなー。ま、一番便利なのは、どこでもドアなんだけども(笑)

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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