天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

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ギフト番外編138話後編『白い封筒があった』

yukio
 

兄の秘密を知ってしまった・・・。
しゃっくり騒動の翌日、正広はどんよりした気持ちで、届け屋の仕事のために事務所を出かける兄の背中を見送った。
斜めがけされているバックの中に、あの封筒があるのだ。
きっと。
「ひろちゃん、どしたの」
「えっ」
「ぼーっとして」
奈緒美に声をかけられ、正広はあうあうと首を振る。
「なんでもないですぅ〜」
「だ、大丈夫?」
その挙動不審さに奈緒美が眉をひそめたのが解ったが、正広とて、これ以上は言えない。まさか由紀夫が内職をしているかもしれないなんて!
いわゆる一つの「とっぱらい」ってゆーギャラをもらってるなんて、いえなぁぁーーーい!
さっ!仕事仕事っ!と、送られてもいないFAXを取りに立ちあがった正広だった。

『まだ入ってる・・・・・・・・・』

その夜も、正広は由紀夫のバッグチェックをしてしまった。白い分厚い封筒は、そのままそこにある。
同じ封筒だよねぇ・・・、と、そっと取りだし明かりにすかしてみるが、まったく何も見えない。封筒自体もかなり厚いもののようだ。
『重たいし・・・』
どうしても、どうしても、札束に思えてしかたないのだ。
気付かれないようにバックに封筒を戻し、この封筒を由紀夫に渡していた綺麗な女性のことを思う。一体あの人は・・・。
あのファッションビルにもう一回行ったら、会えたりするのかな。
無理かな。
それに、もし万が一会えたとして、なんて聞いたらいいんだろう。

『あの封筒はなんですか?』
『今月のお手当てよ?』

えーーーー!お手当てぇぇーーーーー??????
それってダメじゃぁーーーん!!!!

ダメダメ!と首を振って、シミュレーションしなおして見る。

『あの封筒はなんですか?』
『国家規模の機密に関する書類なんだけど、それを盗んだ私の命が狙われているの。それで、何かあった時のために、オリジナルを由紀夫さんに』

危険じゃん!!危険すぎるじゃん!重要書類!?ダメじゃん!しかもバックにいれっぱって、ダメじゃん!
こっわーー!!
そんなことになったら、きっとこの部屋にも、なんか工作員とかがやってきて、家がめちゃめちゃにされて、はっ!
「しぃちゃん!?」
急に大声で名前を呼ばれ、白文鳥のしぃちゃんは、びくぅ!と止まり木から落ちそうになった。
「よかった、無事でぇ!」
よかったもなにも、今ピンチでしたよ、あたしゃあ。
よしよし!と指先で頭の上をかかれながら、ひっそり思うしぃちゃんだった。

「ひろちゃん。今日こそは頼んだわよ」
翌日、正広は奈緒美から重々しく言われた。
「はい・・・」
正広も神妙に頷く。
今日こそは、みかん最中を購入しなくてはならない。3時のお茶はみかん最中!と、奈緒美の心は決まっているのだという。
「朝起きた時から、もう、絶対なの。絶対だから」
「はい」
10時ではなく、あくまでも3時のお茶で、と奈緒美は言うのだ。
店頭で作ってくれる最中は、なるべく早く戴くと、皮がぱりっとしていて美味しい。午後に食べるなら、午後買いに行った方がいいのだ。
問題は、その時間の加減。遅すぎると、なくなっているかもしれない。
正広は、2時にお店につけるよう出発することにした。理想を言えば、2時半に買って、戻ってきて、3時に食べるだけど、何かあったら困る。
例えば、スパイ気分で兄を追いかけたら、なんかいらん秘密を背負いこんでしまったりとか。

・・・・・・・・・・。

今日は、お使い途中で兄ちゃんを見ても、絶対!後を追わない!と強く心に誓った正広だった。

が、しかし。

な、なんでいるんだ、兄ちゃん・・・!

あの日とまったく同じ場所に由紀夫が自転車に乗って、信号待ちをしていた。
あのまま、信号を渡り、兄ちゃんはファッションビルに入り、綺麗な女の人と会い、封筒を受け取った。
まさか、今日も・・・!?
いや。
それは兄ちゃんのプライバシーじゃないか・・・!
あの分厚い封筒は、兄ちゃんへの想いが切々と語られているお手紙が入っているのかもしれないじゃないか!
兄ちゃんは、彼女への想いを確信できないまま、この手紙を読んでもいいものかと、シュンジュンしているのかもしれないじゃないかぁ!
それで、シュンジュンってどんな字ー?どんな意味ーー??

・・・しっかりしろ、正広。
たとえ兄ちゃんに何があったとしても、僕は兄ちゃんの味方だ。
内職だろうが、お手当てだろうが、重要書類だろうが、ラブレターだろうが!
だから!
だから、和菓子屋に向かえ!
ここで!ここで、右折すればいいんだ!左折じゃない!左折じゃないよ、正広ーー!!

しかし、正広の自転車、スーパースペシャルエクセレントケッターは、吸い込まれるように左折し、由紀夫の跡を追ってしまう。
そして、案の定、由紀夫のそこらに放置してたら絶対危険ですよ!的自転車は、例のファッションビルに停められた。
あぁ。
好奇心は猫をも殺すというけれども・・・。
好奇心に勝てないのが正広だった。
今度も階段を使い、えっちらおっちら最上階まで上がる。きっと、フロアのカフェに兄ちゃんはいるはずだと正広は思っていた。
こそっと、フロアに繋がるドアを開けると、あの時と同じように、やはりフロアの空気が浮き足立っている。
来てる・・・!
正広はフロアに足を入れ、カフェの様子をうかがおうとして。
あっ!と、頭に手をやった。
前回は、それなりに変装したけど、今は何もしてない!バレたら困る!
カフェと、販売フロアの間には、高い仕切りはなかった。どこかに隠れなくてはと、正広は雑貨屋の中に駆けこむ。
「いらっしゃいませ♪」
可愛らしい店員さんから声をかけられた。
「あ、ど、どうも・・・」
彼女は、由紀夫のフェロモンよりも、正広のキュートさを好むタイプだったので、これは可愛いお客さんが来たぞ!とほくほく気分だった。
平日の昼間だから割とヒマでもあり、こりゃあ、彼にへばりついておきたい気分だ。
「そちら可愛いらしいでしょ?アロマポットなんですけど」
「え?あ、こ、これですか」
話ながら、ちらりとカフェをうかがうと、由紀夫は一人で窓際の席に座っている。この前とまったく同じ席だ。
また来るだろうか、彼女は・・・。
カッパ型アロマポット(頭のお皿部分にオイルを落とし、中の電球にスイッチをいれると、目が光る。キュート)をなんとなく持ったままカフェに背中を向けつつ、左右移動を繰り返していると、またフロアの空気が変わった。

来た。

エレベーターの方を窺うと、黒いスーツ姿の女性がやってきている。
あの人だ・・・!
ミニスカートから、これでもか!と長い、白い足が覗いている。
し、しかも生足ですと!?
モデルさん、みたい・・・。白い、細い足を見送りながら正広は思う。それも、グラビアではなく、ステージモデルって感じ。だって、ムチムチ感ないし。きっと野長瀬さんはそんな好きじゃないと思う。
は・・・っ!むしろ、兄ちゃんは、そーゆー足の方が好きかも!?
もしかして・・・・・・・・。

二人単なる恋人同士!?

カッパを持ったまま、正広は雷に打たれたような気分になった。
仕事中だけど、ちょっと時間を作って顔だけでも見ましょうっていう、都会の恋人同士なのぅ!?

「またお待たせしてしまって・・・」
「いいえ」
「条件、見ていただけました?」
しかし、カフェから聞こえてくる会話は、恋人同士にはとても思えないものだった。
『条件』・・・・・・・。
ビジネスライクな会話の中での、『条件』って言葉が連想させるものは、やはり、雇用条件・・・!?引きぬき!?引きぬきなの!?
でも、兄ちゃん、戸籍とかちゃんとしてないから、よその会社では働けないんじゃないの!?
免許も偽造だし!
あ、でも、偽造でもあるから大丈夫なのか!兄ちゃん、転職するのぅ〜!?
カッパを握り締め、正広は必死にカフェの様子を窺う。

「いいえ」
由紀夫は、バックの中から例の封筒を取り出し、彼女の前に差し出す。
「・・・見てくださるくらいよろしいじゃないですか」
「いいですよ。興味もないですし」
「そうですか?」
「それより、今日の用件は?」
「あ、そうでした。早坂さんももちろん欲しいんですけど、こないだ来られてた弟さん。弟さんと契約できないかと思いまして」

・・・・・・・・・・・?
カッパの首を傾げさせながら、正広も首を傾げた。

『こないだ来られてた弟さん』????

誰が、弟さん?兄ちゃんの弟さん?兄ちゃんの弟さんは、僕だけど?こないだどこに行ったっけ?
「正広ですか?」
「えぇ、ほら、あんなに可愛らしいですし」
彼女のほっそりと綺麗な手が、雑貨屋のスペース内で、カッパともども斜めに傾いでいる正広を示した。
「まぁ、不細工ではないとは思いますけど」
由紀夫も正広を見て答えた。

「えぇーーーー!!!!!!!!????????」

「でも、モデルって柄でもないですから」

「モデルぅ〜?」

「でも、とてもいい素材ですよ。ご兄弟でどうですか?」
「彼は彼で他の仕事をしてますから、おそらく受けないと思いますよ」

「いやいや、モデルって何ぃ〜?なんでそんな話になってんのー?そんで、なんで気がついてたのー!?」

正広が、由紀夫を最初につけた日、由紀夫は、きちんと仕事をしていた。モデル事務所も入っているビルで、よその会社に書類を届けた時に、彼女に声をかけられたのだ。
現在、そのモデル会社に所属しているモデルである彼女だが、近いうちに独立を考えていた。自分がモデルをすることもそうだが、モデル事務所を作りたいというのが最終目標だったため、所属モデル候補も探していた。
「だから、お兄さんにまず声をかけたの」
同じテーブルに座らされ、正広はアヤコから説明を受けていた。
「今の事務所の近くでこういう話をするのはまずいから、ここで待っててもらって、それで書類を受けとってもらったんだけど。その時に、あなたいたでしょう?」
「・・・は、はい・・・」
変装してたのに・・・。
なんで、解ったんだろう。正広は、不思議な気持ちで兄を見る。
「早坂さんが、正広・・・って呟いてらして。お電話した時にうかがったんですよ?どなたですか?って」
「電話?」
「事務所にかけさせていただきました」
当然、事務所には由紀夫あての電話も来る。もしかしたら取り次いだのも正広かもしれないくらいだ。
「で、でも、兄ちゃん、俺、変装ってゆーか・・・」
「変装?」
「へ、変装・・・」
「シャツと帽子で?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「それ以前に、自転車の時から解ってたけど?」
「えっ!」
「お使いかなと思って、そのままにしてただけ」
「うっそぉーーん!」

将来の夢リストから、スパイは消そう。
正広はそう思った。
でも、新たにモデルを追加してもいいかしら!
条件が書いてありますと、自分も白い綺麗な封筒を渡してもらい、それを大事にバックにいれながらそんな夢を見た正広は、すでに現在の時間が三時であることに気付いていない。
しっかりしろ正広!
お使いがまだ途中だ!


槙原教之のスパイを聞くと、この人は女心を知らん、という気分にさせられますね(笑)

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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