天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

yukio

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ギフト番外編141話前編『あの物語の販売に並んだ』

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「ここで並ばないでいつ並ぶんですか!」
野長瀬は盛り上がっていた。
野長瀬は、オープニングに弱い男だ。最近では丸ビル、ルイ・ヴィトン、エルメスなどのオープニングに並んだ。100%周囲の人間からは、怪しい仕事をしているバイヤーに違いないと思われながらも、オープニングの華やかさを堪能したい。
そう。

野長瀬はいつだって思っているのだ。
『美しいものが嫌いな人がいて?』
たとえ、ヴィトンのオープニングパーティーに奈緒美が招かれていて、由紀夫と正広を連れて出席した、なんて哀しき事実があっても、野長瀬は気にせず、夜通し並ぶのだ。

「明日の5時発売なんですよ!」
「5時?」
「じゃあ、仕事休まないといけないじゃないですか」
早坂兄弟の言葉に、野長瀬は首を振る。
「朝です!朝!」
「朝ぁ〜?」
「朝5時って、まだ暗いですよー!?」
驚く正広だが、実際に朝5時を知っている訳ではない。日が登らないうちは起きないのが正広だ。
「朝5時から何を買う訳?」
由紀夫が言うと、野長瀬が、もう、あんたなんか絶対信じられないっっ!という顔をした。
「ハリーポッターですよ!」
「映画、もう来るんだっけ。11月じゃなかった?」
「本です!本!」
「本〜?」
今度は、由紀夫が、おまえばっかじゃねぇの?と極太マジックで描かれたような顔になる。
「朝5時に本買ったって、読む時間ねーだろ!」
「社長!有休を!」
「寝言は寝ていいなさーい!!」

そんな奈緒美は、藤原竜也のエレファントマンを、真昼間から見に行く所存だ。

「でも、・・・楽しそうかも」
その日の仕事を終えて、家に帰った正広が言った。
「そういうの、俺やったことないー。兄ちゃんは?」
「面倒だろ、そんなのー」
「オールでは遊んでたのにねぇ」
腕を組み、片手を頬に当てたおばちゃんのポーズで正広は言い、楽しそう楽しそうを繰り返す。
早坂家のその日の晩御飯は特に意味もなく手巻き寿司だった。
「まぐろー、いかー、なっとー、わさびー、きゅうりー♪」
「おまえの口は直径何センチあるんだ・・・!」
あんぐ!と正広は口をあけて、その巨大な手巻き寿司を飲み込んでいく。
リスみたいで可愛いーー!と年上の女性から受けのいい正広の食べっぷりだが、あまりに行きすぎると、何らかの小動物を飲み込んでいくヘビのようにも見えて、ちょっと怖い。
「あ」
ごっくん!と飲み込んだ正広は、ぱっと表情を輝かせた。
「これ持って、並びにいかない!?」
「えっ?」
「面白くない!?外で手巻き寿司!夜に!」
「そんなもんは、花見のシーズンだけにしろよー!」
「でも面白いって!」
正広の目はキラキラと輝いていた。
もう10月も終わりに近い。夜の寒さもなかなかだ。それでも、行くというのか、弟よ。

行くのだった、弟は。

「えーっと、ネタももったでしょ、ご飯と・・・。お味噌汁とかお吸い物とかもあった方がいいかな。えーっと。でも、そしたらコーヒーが・・・」
「インスタントとお湯持ってけ」
「兄ちゃん、あったまいーー!」
パタパタとキッチンに入り、カップ味噌汁、まつたけの味お吸い物などを用意。

「じゃ、コーヒーもインスタントでいっかー」
インスタントコーヒーの瓶がテーブルに並ぶ。
「寒かったらダメだから、ほっかいろー、ほっかいろー・・・って、どこだっけー?」
正広は、部屋の中をウロウロとする。
「兄ちゃん、ほっかいろしらなーい?」
「さぁ〜・・・」
「どーしようかなぁ〜・・・。あ、毛布持ってけばいいか。フリースのが温かいよね」
「おまえ!朝までいる気か!?」
「だって、それが醍醐味じゃーん!」

正広は部屋の中をばたばたと走り回っていた。
持って行きたいものはどんどん増えて、バックが二つ目だ。
そして、その一つ目のバックは、すでに由紀夫の肩に担がれていた。
・・・なんで俺まで・・・。
「兄ちゃんはだって、11月になったら映画見るんでしょ!?原作も気になるでしょー??」
「原作は先に読まない主義」
「え、なんで?解らなかったら困るじゃん」
「原作を先に読んでて、なおかつ面白い映画って、あんま見たことねぇもん」
「え、じゃあ・・・買っても読まないぃ〜・・・?」
「いや、買ったら読むけど・・・」
そもそも、今度映画化されたのは、2巻なのだから、そんなに気にすることもない話だったが、もう止めようがないと理解した由紀夫は、素直に靴を履いた。
「あー!兄ちゃん、早いよーー!!」
バタバタと、どんどん荷物を詰め出した正広は、玄関までやってきても、まだ何か考えている。
「なんか足りてない気がする・・・」
「別に山奥行く訳じゃねんだから・・・」
「野長瀬さん、先頭取れたかなぁ」
なんでも、ハリー・ポッター4巻は、10月23日の午前5時に解禁されるという。そして、その5時から販売を始めるという本屋に、野長瀬は並ぶと言ったのだった。
「・・・会社出て、速攻行くとは言ってたけど、準備もなしじゃ無理だろうしなぁ」
「智子ちゃん、連れて来てるかなぁ〜」
楽しそうな正広の言葉に、由紀夫はピクリとコメカミを動かした。

野長瀬智子。
どうしてだか相性が悪い、でかウサギ・・・!

まさかあいつが来ている・・・!?

イヤな夜になりそうな予感が、急にしてきた由紀夫だった。

<つづく>


すんません。短いっす。だってー。ハリーポッター読まなきゃいけないからー(笑)

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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