天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

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ギフト番外編147話前編『そして神戸』


 

その日。
早坂兄弟は神戸にいた。
「・・・なんで・・・」
由紀夫は新神戸駅で呆然とつぶやく。彼の目線の先には、なだらかな坂と、そこに広がる神戸の町並みが見えていた。
「わー、神戸なんだー」
隣で正広はウキウキしている。
そもそも、なぜ二人がこんなところに車でいるのかというと。

「東京駅に友達がくるので、これを渡してください!」
由紀夫が依頼された荷物は、財布と携帯電話だった。
「は?」
依頼者は、若い女性二人と、さらに若い男性一人。女性二人にはさまれた男性は、どこか腰が引け気味だ。
「いや、あの、僕の姉なんですけどっ」
「はい」
「どうしてだか家に帰ってこれないんです」
「・・・は?」
「携帯もないっていうし、だから新しく用意したんです、これ」
気の強そうな方の女性がいい、
「お願いしますぅ」
と、ふわふわと可愛らしい方の女性が頭を下げる。
「東京駅ですよね」
「新幹線でやってくる、と、思うんです」
「思う?」
「東京駅で乗り換えするよね」
「できると思う!?」
「じゃなきゃ、先進めないじゃないですかぁ〜」
「あ、あの・・・」
うわーー!っと話はじめた3人の話をまとめると、男性のお姉さんは、どういう訳か家に帰り着くことができず、日本中をさまよっているという。
今回も、北から東京駅に向かっているらしいのだが、それもさだかではない。そして予定では、その後関西まで行くらしいのだが、それだってどうなるか。
なので、東京で留守を守っている弟と、友人二人が、当面必要だろうというものを渡して欲しいと腰越人材派遣センターにやってきたのだ。
「あの」
応対していた正広は、どうもよく解らない、という顔で首を傾げながら尋ねた。
「あの、私どもはもちろんお受けいたしますけれど、・・・皆さんでは、ダメなんですか?」
顔も知ってるし、待ち合わせだってしやすいだろうにと正広は続けたが。

「ダメです!!」

3人は声を揃えて言った。
「ダメよ、絶対・・・!あたしたちが東京駅までいったら、絶対その列車に乗っちゃうわよ!」
「そうですよね!先輩!」
「あの、姉はですね、自分が帰れないだけならまだいいんですけど、あっ、別にそれもよくはないんだけど、まぁ、姉一人のことなら、なんとかしてくれって思うんですけど、どういう訳か、会いに行こうとすると、僕らまで連れてかれちゃうんですよ!」
「危険なんですぅ〜」
ウルウルとキラキラの混ざった瞳で、ふわふわちゃんが由紀夫に目線を向ける。
「ちょっとっ、あんたどこ見てんのよっ」
「えぇ〜?だってぇ〜♪」
「あ、あのっ」
正広は二人の会話に割って入った。
「と、とにかく、お受けいたします。お届け先はどちらになりますか?」

「「「東京駅」」」

3人の息はぴったりあっていた。
しかし。
それ以上の情報は入手できなかった。

「東京駅って広いねぇ」
腰越人材派遣センターは、その持てるほぼ全勢力を、東京駅に投入した。
つまり、早坂兄弟と、野長瀬と、典子の四人だ。
簡単な構内案内図を見ただけでうんざりする四人だが、実は典子以外の3人には、結構やる気が出ていた。
かなりやる気が出ていた。
なぜって。
「綺麗な人ですよねぇ〜・・・」
3人から受け取った写真を見て、野長瀬が心からつぶやく。
「綺麗だよねぇ」
正広もうんうん!とうなずく。写真に写っている依頼人たちの姉であり、友人である女性は、相当綺麗だったのだ。
「えーっと。北からってことは、東北新幹線だろ?そっちのホームではっときゃ見つかるだろ」
こんだけ美人だし、とは口に出さずに思う由紀夫。
典子も、その空気はびんびん感じ取っていたが、正統派だと思うと案外抵抗もできないもので、大人しくそれに従い、四人は東北新幹線のホームを固めた。
しかし。
いつまでたってもそれらしき美人の姿はない。
向こうも、友達や弟が来ると思っているはずなので、いきなりどこかにいくはずもない。人待ち顔、人探し顔をしているはずだ。
「北から、だよなぁ・・・」
そうつぶやいた由紀夫は、はっ!と顔を上げた。
「兄ちゃん?」
向かいのホームではっていた正広は、兄の異変に気づく。と、同時に電話がなった。正広のはPHSだが。
「上野だ!」
「上野!?」
「カシオペアに乗ったのかもしれない!」
札幌−上野間を走る、寝台特急カシオペア&北斗星。これに乗っていたとすれば到着駅は上野。上野から東京へ来る方法なんて、100万通りある(大げさ)!
「で、でも、それなら上野につくって言うんじゃないの!?」
「気づいてなかったら?」
「え?」
「札幌−東京間だと思いこんでるとしたらどうだ?」
どういう訳か家に帰り着けないといわれる人だ。それくらいのことはやりかねない。離れているホームとホームの間で、早坂兄弟は、うんうん、とうなずきあった。

他の二人にも連絡し、東海道新幹線のホームにダッシュする早坂兄弟。
そして、彼らは今にも発車しようとする新幹線に乗り込もうとしている背中を発見した。
「あの人!?」
特徴としてあげられた長い髪、どでかいトランクは間違いなく届け先である女性のものだ。そして彼女の右手はしっかりと、幼い女の子とつながれていた。
「あの!中森さん!?」
由紀夫の声に、ぱっと振り返った彼女は、声の主を探す。
「こっちです!中森さんですよ・・・、えぇっ!?」
由紀夫が手を振ったのだが、彼女は顔色を変えて新幹線に飛び乗った。
「あの!?中森さん!」
しまろうとするドアに向かって由紀夫はダッシュしたが、一歩間に合わず。ドアの中と外に引き裂かれた二人は、ガラス越しにただ見つめあうのみ。
そして発車までのわずかな時間で、由紀夫が取り出せてみせた財布と、携帯を見て、依頼者の姉、中森かえでの瞳は、大きく大きく見開かれた。口まで開いた。
『すみません!!』
と、新幹線の中から頭を下げられたって、このドアが二度と開く訳でもなく、そして、列車は出ていった。
由紀夫たちが残った。

「・・・兄ちゃん」
「こだまだな!」
由紀夫とて、届け屋。
依頼された品を届けない訳にはいかない!
こだま相手なら、ひかりでも勝てる!が、あえてのぞみで!早坂兄弟は大阪入りしたのだ。
こだまより1時間早く大阪に到着し、依頼者たちの乗ったこだまがどのホームにつくのかもチェック。すべての出入り口を見届けられる位置をすばやくキープした。
しかし・・・。
「なんでだ!?」
大阪が終点であるにもかかわらず、彼女と、子供の姿は見えない。
「どしたんだろ、降りちゃったのかな。あ!新横浜とかで降りて戻ったとか!?」
「えっ!?」
それも考えられないことではない。
受け取らなきゃ!と思った彼女が、新横浜から引き返してきて・・・。
「考えられるなぁ〜・・・!」
その上。
「大阪とは言わなかったもんね。関西方面って、京都かもしれないし、神戸かもしれないし・・・」
「和歌山かもしれないし、奈良かもしれないし」
「うわー!どうするー!?」

「あのー・・・」
呆然としつつ騒いでいた早坂兄弟に遠慮がちな声がかかった。
「はいっ?あっっ!」
「中森です・・・」
正面からみると、当然ながらなお綺麗。
早坂兄弟は同時に心でつぶやく。
「すみません。あの、私の荷物ですか?」
「はい。弟さんたちから依頼されまして」
「あぁ、ごめんなさい。私、借金取りの人かと思って」
携帯と財布を受け取った彼女は、申し訳なさそうに頭を下げた。
「借金取り!?」
「この子を、おじいちゃんのおうちまで連れていくところなんですけど・・・」
「正広」
子供に聞かせていい話でもなさそうだったので、由紀夫は正広にその女の子を連れていくように言った。
「おなかすいてない?なんか食べる?」
そんな言葉を聞いて、うん!とうなずいた女の子は、彼女とつないでいた手をほどいて、軽やかに走り出す。
「あ、待って待って!」
と笑いながら追いかけた正広だが、その笑顔は一瞬にして凍りついた。
「あー!だめー!それに乗っちゃーー!」
新大阪発、下り新幹線に女の子は乗ってしまった。
「兄ちゃん、やばーい!」
すぐに正広も追いかけたが、女の子ははしゃいで座席の中までかけこんでいく。
「うわ!」
由紀夫も反対から車両に乗り込み、女の子をはさみうちにしてよいしょ!と抱き上げると、楽しそうに笑い声を上げる。
「もー、新幹線にはビュッフェはなくなっちゃったんだよー?」
うりうり!と高い高いしながら言うと、訳の解らないままに、きゃっきゃと喜んだ。
「あ、すみませーん」
彼女も乗ってきて、床に下りた女の子の手を取る。
「もう、ダメだよ。びっくりしちゃうじゃない」
「おなかすいた・・・」
「そうだね。なにか食べようね」
仲睦ましくホームに下りる二人を、なんとなく微笑みをもって見送った早坂兄弟の耳に、ありえない音が聞こえてきた。

「・・・発車ベル!?」
「やべ!おりなきゃ!!」
と、二人が降りた入り口に向かったら、カウンターパンチをくらったように、正広がふっとんだ。
「正広!?」
「えっ!?」
転びかけて由紀夫に助けられた正広は、ありえないものを見た。
巨体をゆすりながら、必死に乗り込んでくる男たちの団体を。
はちきれそうな白いTシャツの胸には、○×大学相撲部という細丸ゴシック体があった。

呆然としているうちに、列車は発車。
相撲部たちにまみれた車内は、ちらりとしか外が見えなかったけれど、そこから見たホームには、驚いた顔で立ち尽くしている彼女がいたりした。
「これか・・・!」
「俺らも、家帰れなくなっちゃうのかなぁ・・・」

・・・、といったようなことがあって、今早坂兄弟は神戸にいる。
これから無事に帰れるのかどうかは、中森かえでだけが!!
知るはずもないのだった。

<つづく>


今の月9も好きですが、前の月9も好きでした。いいぞ、最近月9!ってここ2回か、好きなのは(笑)!ドラマの中で、中森かえでこと中山美穂が持っていたトランクと同じデザインの財布を買ってうほうほです。でも、ドラマのトランクは特注品なので、色が市販のものとは違い・・・。あぁ、ドラマのやつの方が好きだなぁと思う私なのです。

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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