天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

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ギフト番外編147話ちょこっと中編『そして神戸』


 

どうしても家に帰ることができない美女に、財布と携帯を届けるため。
世界の平和を守るため。
今日もがんばる早坂兄弟は、神戸にいた。
「兄ちゃん」
呆然としている由紀夫に、正広の声はあくまでも明るかった。
「どこいくっ?」
「はっ?」
「せっかく神戸まで来たんだし、どっか行こうよ」
ケロリと言う正広を、由紀夫は上から下まで眺め下す。
「・・・のんきだなぁ」
「来ちゃったもんはしょうがないじゃん!」
「そりゃそうだけど・・・」
「神戸って何があるのかなぁ。何?」
「異人館?」
「異人館かぁ〜」
テレビなんかで見るエキゾチックなイメージを思い浮かべ、正広はわくわくしてきた。
「行きたー・・・」
「後、中華街とか」
「中華街っ?」
ほんわかしていた正広の顔が、いきなり凛々しく変化した。
「ちゅ、中華街・・・、に、行くんだな・・・?」
「はい!」
力強い返答に、由紀夫小さくため息をつき、レンタカーでも借りるか、とカウンターに向かった。

「じゃあ、中華街な」
「はーい!わーい!中華中華〜〜!」
助手席でわくわくしている正広を横目に、レンタカーについていたカーナビを操作する由紀夫。
「んー?中華街って、どこだぁ??」
よく考えてみれば、神戸に中華街があるのは知っていても、住所などがまったく解らない。
「んーっと、どこだー?」
マップ上をカーソルでなぞっていると、
「あ、風見鶏の館だって」
「異人館だな、この辺りが」
「へー・・・、で、中華街はどこかなぁ〜」
あーでもないこーでもないと、画面を移動させていたのだが、当然中華街という住所はない。
「いけないのぅ・・・?」
口がすっかり中華になっていた正広が哀しげにつぶやく。
「あぁ、もう!」
と、ついに由紀夫は最終兵器を取り出した。

「はい。腰越人材派遣・・・、あっ!由紀夫ちゃん!」
東京駅で置き去りにされた野長瀬が声を上げる。
「ど、どうしたんですか!大丈夫ですかっ?」
「大丈夫大丈夫。ちょっとさ、聞きたいことあんだけど・・・」
マナーモードにしていた携帯には、野長瀬から山盛りのメッセージが入っていた。
「はい?」
「えっと、神戸のぉ」

「由紀夫ーーーっ!!」

助手席の正広にも聞こえる奈緒美の怒鳴り声。
「あんた今どこで何をしてんの!!」
「今神戸。依頼人探し中」
つるっとウソをつけてしまう由紀夫だ。
「奈緒美さぁ、神戸の中華街って、どのあたり?」
「中華街〜!?」
「どうも、そこにいるらしいんだけど、住所が解んねんだよ」
「中華街だったら、元町あたりね」
「さすが奈緒美。そんじゃ行ってきます」
「行ってきますって、あんたなんで神戸なんかに!」

ぷちっ。

「兄ちゃんやるぅ」
「いい店まで聞く度胸はなかったけどな」
「だって、奈緒美さんが中華街でいくいい店っていったら・・・」
「・・・スポンサーがいる時に行くか」
早坂兄弟はにこっ、と微笑みあい、目的地を元町近辺にして、レンタカーを出発させた。

そして、最初にそれに気づいたのは、やはり由紀夫だった。
「ん?」
その声に、窓の外の風景を眺めていた正広が振り返る。
「どうかした?」
「この地図・・・」
カーナビの画面を由紀夫が指差す。
正広もそれをのぞきこんだが、別になんの変哲もない画面だった。
「ちゃんと道、走ってるけど・・・」
「走ってるけど、おかしくないか?今、まっすぐ走ってんだから、新神戸駅が真後ろにあるはずだろ」
「え、そうだね」
多少道が曲がっていようと、一度も右左折をしていないのだから、今走っている道をさかのぼっていけば、新神戸駅があるはずなのに。
正広は、後ろを見て、離れていく新神戸駅が確かにあることも確認した。
そしてもう一度地図を見て。
「・・・1本ずれてるよ・・・?」
「ずれてるよな・・・」
動き出したばかりで、自分の位置を把握できていないのか、北から南に向かっている車は、1本西側の道を走っているようになっていた。
「ま、一本くらいは別にいいけど」
なにせ、奇跡の記憶力を持つ男早坂由紀夫だ。元町は、まだまだ南にいけばいいことくらい解っている。
が。
「えぇーーーっ!?」
「ど、どした!」
運転中なため、画面を見られない由紀夫が、その大声にびくっと肩を揺らす。
「曲がった!?曲がってないよね!?この車曲がってないよねぇ!?」
「えぇっ!?」
ちょうど赤信号になり、ばっと画面を見た由紀夫ものけぞった。
なんで曲がってんだ!?
北から南に走っているはずなのに、なぜか画面上では、東から西に車が向いている。
「え?この信号曲がれってことか・・・?」
一本ずれていたとはいえ、今いる交差点を曲がれば、地図に近寄れるようだった。
「・・・なんで、カーナビが先にいくのかな」
「あれじゃない?案内をするときは、案内する人が先にたって、後ろを気にしながらっていう!」
「どんなビジネスマナーだよ」
しかし、しょうがなく由紀夫はその交差点を曲がり、カーナビの地図に従って走る。
「でも、ともかく南に向かわなきゃいけないはずなんだけど・・・」
「これって西向いてるってこと?」
「そうだなぁ」
車内にかすかにイヤな空気が漂ってきた。
画面の地図と、走っている道路が明らかに違ってきている。
地図が読めない人間でも、これは違うと解るほどに、違う。
「兄ちゃん!」
ついに正広が悲鳴をあげた。
「これ道じゃない!!」
「はぁっ!?」
画面に目をやった由紀夫は、建物の上を、一心に進んでいく矢印を発見した。
「ど、どこいってんだよ、この車!」
「あああ!これ!!」

一心不乱に矢印が向かっている方向は。
「風見鶏の館!!!」
「なんで行きたがるんだよ!!!!」

なぜだかは解らない。
ただ、ふざけんな!と、南に、南に向かっても、カーナビは、どうにかして風見鶏の館を目指そうとする。
「兄ちゃん・・・」
「・・・」
もう海も見えているのに。
きっと、この近辺に中華街があるのに。
カーナビは、ただ一心に、ただ無邪気に、風見鶏の館に向かおうとしているのだ。
「行ってあげて・・・」
「・・・解った・・・」
グッバイ海。ハロー山。
早坂兄弟を乗せたレンタカーは、心なしか喜んでいるように思えるナビに従い、風見鶏の館に向かったのだった。

「・・・だからって別に何もねぇじゃねぇか!」
「なんか期待したのに!!」
正広が期待していたのは。
「このレンタカーを前に借りた人がね、行方不明だかなんだかになっちゃったの」
「え?うん」
「その手がかりは、この風見鶏の館にある!カーナビは知っていた!」
「よしよしその通り、その通り」
目いっぱい力説する正広の頭をおざなりに撫でる。
「可愛がってもらったんだよ、このカーナビ!」
「そうだ、そうだ」
「んもー!真面目に聞いてよー!」
「聞けるかー!」
「だってー!埋められてるかもしれないんだよー!風見鶏の館にー!」
「営業妨害になるからやめろってのー!」
ぶいーーん!
なおも、風見鶏の館が美しいのは、あれは、死体が埋められているからだ!と、出典不明のうわごとを繰り返す正広を、中華街に向けて拉致する。
「あっ!ひどい!」
そして正広は悲痛な声を上げるのだった。
「裏切られた・・・」
「はぁ?」
「・・・もういいんだ・・・」
突然しょんぼりした正広を横目で伺い、何がどうしたんだと思っていた由紀夫の目の端で、正広の指が動いた。
「これ・・・」
「え?」
指差されたカーナビの画面を見ると。
「これが、どうした?」
「動いてるじゃん・・・」
「動いてる?あ、動いてる」
そう。
すでにカーナビは、通常の状態に戻っていた。今、二人がいる位置を、正確に表示していた。
「見たかっただけじゃん!」
「風見どりの館をかぁ〜?」
「新人カーナビなんだよ。物見高いっ」
吐き捨てるように言い、ちぇっ、と、ダッシュボードの下あたりを蹴って見たりする。
「正広」
「何」
「おまえ、面白いなぁ」

心からの兄の言葉を聞き、左腕にパンチ!!をかました正広だった。

そしてその頃。
携帯とお財布を受け取り、借金とりから逃れつつ、女の子を家族の下に送り届けようとしていた中森かえでは、そうだお礼をいっておいてもらおうと携帯を取り出した。
弟の携帯番号はっと、と、メモリを呼び出そうとして。
「O件」
・・・真新しい携帯だけ渡してどうするの!電話番号が解らないから欲しいっていったんでしょう!!!
携帯を握りつぶしそうになる中森かえでだった。

<つづく>


しかしね。ほんとに目指すカーナビがいやがるんですよ。風見鶏の館を!マジですよ!マジで!!

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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