天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

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ギフト番外編148話超ミニ編『そろそろ春なので』


 

そろそろ春なので。
「白衣を新調しようかと思ってるんだけど」
「・・・そうですか」
稲垣アニマルクリニックの、稲垣獣医は、ひらりと、しかしややぎこちなくターンをしてみた。
身にまとっているのは、おニューの白衣。
だが、なにせ白衣なので、何がどう違うのか草g助手にはさっぱり解らなかった。
「どうかな」
「どうって」
草g助手には、どう答えればいいのか、想像もできなかった。しかし、厳しい稲垣獣医の視線を受け、
「・・・白衣、ですよね・・・」
おずおずとそう答えた草g助手は、まさに白い目を向けられた。
「じゃあ、こっちは?」
ロングコートのように、ワイルドに白衣を脱いだ稲垣獣医は、次の白衣をまたまたワイルドに身にまとう。
「こ、こっちって?」
だって、それも白衣だ。
今のと、さっきのと、どこがどう違うのかなんか、まったく解らない。だってどちらも白衣だからだ。
「・・・色は、白、なんですか?」
「白衣、だよ?」
「あ、そっか」
「ねぇ」
稲垣獣医は、心から不思議そうに言った。
「これと、これの違いが解らないなんて、そりゃどうかしてるよ?目が悪いんだか、頭が悪いんだかしらないけど」
「・・・」
どちらもシルクなんだけども、織っている人が違う、なんてことが果たして解る人間はいるのだろうか。
草g助手は、黙るしかなかった。

そろそろ春なので。
「冬の間しかできないことをたんまりやろうかと思って!」
ぐつぐつと沸き立つ鍋の中には、キムチベースのスープがあり、豆腐やら、野菜やら、肉やらがうごめいている。
「あつっそー・・・!」
「できれば石鍋でやりたいほどでした!」
早坂家の夕食は今日も鍋だった。
別に春でも、夏でも、秋でも、やりたかったらやればいいじゃん、鍋」
鍋の後は何をいれるかで、真剣に悩んでいる弟に、由紀夫は声をかける。
「いや!それはもう春の鍋だったり、夏の鍋だったりすんだよ!俺は今、冬の鍋をやってんの!」
きりり!と真剣な顔で兄を見つめる。
そして、大きな商談をもちかけるビジネスマンのような表情で言った。
「ごはんと、ラーメン・・・どっちにする?」
「うどんは?もちは?」
「やめてよぉー!」
両耳をしっかりとおさえ、正広は首を振る。
「やっとこさ、やっとこさ、その二つは落としたんだよ!」
「稲庭うどんは?」
「あぁ〜〜!」
「味噌足して、キムチ味噌煮込みうどん」
「死ぬぅーーーーー!!!」
自分で言いながら、自分も死にそうになった由紀夫だった。
「どうすんだよ!種類ふやしてどーすんの!」
「しょうがねぇ、鍋もう一個持ってこい!」
こうして、鍋を小分けして、一つはうどんということにした。しかし。
「でも、うどんがあるからって、ラーメンを外すのはどうかと思うよ?」
「そりゃそうだよな。これな、インスタントがいいんだよな」
「そうだよー」
「じゃあ、こっちはラーメンで・・・」
「でもご飯はどうするのっ?雑炊はいらないのっ!?」
「・・・それもまぁ・・・」
「どうすんだよ、兄ちゃん!どうすんの!」
「うぁー、雑炊なぁ〜、卵入れてなぁ〜」
「きゃあーーーーー!!」
卵いれたらすぐ食べるよね!いや、ちょっとおいて、とろっとした、でも、すぐ堅くなっちゃうもん!すぐだよ、すぐ!
そんな冬の間中行われた会話が、やっぱり今日も行われるのだった。
「すぐにはやめらんねーぞ鍋」
「だねぇ・・・」

そろそろ春なので。
「模様替えがしたいわ・・・」
奈緒美がつぶやいた。
現在の、腰越人材派遣センターのコンセプトは、クール&スタイリッシュ。だが、ものはあふれ返っている。
「こんなにものがあっても、使わないものは山ほどあると思うの」
「だろうね」
由紀夫は奈緒美用のロッカーを見る。よくある細いロッカーを6本使い、なお溢れ出すのが奈緒美の服だ。
「衣裳部屋かよ!持って帰れよ!」
「うちだっていっぱいなのよ!」
「着るのかよ!こんなの!」
相当なミニ、というより、マイクロなスカートを奈緒美の眼前につきつけた由紀夫だったが。
「当然じゃないの!着るわよ!今すぐにでも!」
「やめてやめて、ほんとごめん、やめて」
「何よ。あたし、足綺麗よー?」
「ほんとですよねー」
しみじみと典子がうなずくように、さすがに金をかけている体。奈緒美の足は相当なものらしい。直接見たことがある訳じゃないから由紀夫にははっきりしたことはいえないが。
「模様替えって、どうするんですか?」
「春だしね」
「春ですしね」
にこ、と正広が微笑んだ。模様替えって、なんだかウキウキすると。
「あのねぇ」
奈緒美は、少しはにかむ。
「これねぇ、どうかと思って・・・」
恥ずかしそうに、おずおずと差し出すカタログを受け取り、正広は言葉を失った。
「え」
「おまえ、何考えてんだよ!」
由紀夫はあまりのことに、思わず怒鳴った。
「社長!」
そして野長瀬も声を上げ、奈緒美の手をぎゅうっっ!と握り締める。
「さすがです社長!」
「でしょう!?野長瀬!」
「ウソだ!絶対!」
「えっ!ほんとに!?ほんとですか!?嬉しいっ!」
のけぞる由紀夫の後頭部に、はしゃぐ典子の言葉が突き刺さった。

くまのプーさん専門カタログ。

はしゃぐ3人と、呆然とする二人の間に置かれているのは、にこやかな笑顔をうかべたプーさんが表紙の、可愛らしいカタログだった。

「いやいや・・・おまえ、そんな・・・」
怖いものでもあるかのように、そっとカタログを自分から遠ざけようとした由紀夫は、自分と同じような手つきで、正広が手を出すのを見た。
いくらファンシー好きでも、くまのプーさんだらけって・・・と思っている早坂兄弟。

ではなかった。

「えー!じゃあ、カーテンはねぇ、カーテンはねぇ〜!」
「やっぱりこれでしょ!これでしょ!」
「でもこれじゃあ派手すぎせーん!?」

『可哀想に・・・。俺の弟はアホだった・・・』

春に向け、再認識してしまった由紀夫は、ただ黙って、事務所を出たのだった。

そろそろ春なので。
「看護婦さんたちの白衣もピンクにしようかなー」
「白衣なのにピンクなんですか?」
その一言で、白衣の新調がなくなった草g助手だった。
この春、いい加減彼が覚えるべき言葉は、『口は災いのもと』に違いない。


まったくもってなんのオチもなく!過ぎ行く冬にグッバイ。やってくる春にハローハローと浮かれてみました。くまのプーさん・・・。燃えますね、あーゆーの・・・。スヌーピーとか。ピンガちゃんとか(ピングーではなく)

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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