天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

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ギフト番外編149話前編『HR』


 

正広は子供の頃病弱だったので、あんまり学校に行っていない。
今働いてもいるので、高校にも行っていない。
しかし、まったく学校の勉強には興味もないので、全く苦にしていなかったのだが。

轟先生のクラスなら通ってみたい・・・!
密かにそう思い始めていた。

轟先生は、地元の定時制高校の先生だ。腰越人材派遣センター(現在インテリアテーマはくまのプーさん)から、早坂兄弟の家に帰る途中にある。
夜遅くに帰っていると、いつも楽しそうな声がしているのだ。
「轟せんせー!」
と呼んでいる声がいかにも楽しそうで、きっと、轟先生って言うのは、生徒さんたちから信頼されてるお父さんのような人に違いないと正広は思っていた。

「ただぁいまぁ〜」
今日の、いや、今日も、おやつは、パイシュー。最近できたお店の前は、決して素通りさせない凶悪なバニラの匂いに満ちている。
「買ってきましたー!」
「いやぁ〜ん、待ってたわぁ〜」
高価な、びしり!と決まったスーツの襟元に、ピグレットのピンバッチという姿の奈緒美が、正広とパイシューの包みにすがりつく。
「お茶お茶!野長瀬ー!」
「はいはい。社長、もちろん」

「「はちみつティー♪」」

なにせ、くまのプーさんにはまっているので、当然紅茶にも蜂蜜だ。声を合わせる奈緒美と野長瀬に、げんなりとした顔をする由紀夫。
部屋中が黄色、というのはどうなんだろうかと思う。
何か精神に悪いんじゃあ?と思うほど、由紀夫以外の社員たちは、ウキウキとしていた。
「はい兄ちゃん〜、シュークリーム・・・っ、でかっっ!!」
「なぁ」
由紀夫の後ろには、どでかい箱があった。家庭用4ドア冷蔵庫が入りそうな大きな箱だ。
「ど、どしたの!」
「今搬入されてきた」
搬入、という言葉がふさわしいサイズ。
「まさか、それ、お届けもの・・・?」
「そゆこと」
「ど、どーすんの!?」
「どーすっかなぁ」
そう言いながら立ち上がった由紀夫は、冷蔵庫大のダンボールに手をかけて。
「うわあ!」
持ち上げた。
「か、怪力!?」
「中は軽いんだよ。かさばるだけで」
「えーー!!」
正広も持ちあげてみたが、箱の大きさのため持ちにくいだけで重さはたいしたことはない。
「よかったね」
「ま、これなら一人でいけないこともないな」
「そっか」
と、自分がいない間の依頼だからと書類のチェックをした正広は、ひぃぃ!と甲高い悲鳴をあげて仰け反った。
「なっ、なんだよ!」
驚きのあまりパイシューを握りつぶし、由紀夫のお手々はクリームだらけだ。
「とっ、轟先生っっ!」
「えっ?あぁ、依頼人な」
「会ったの!?」
「え?電話」
「電話ぁ〜?」
「届けて欲しい荷物を、うちに直接入れてもいいかって、いいもなにも、電話きったら届くくらいの勢いだったぞ」
どーゆー緊急ぶりだと由紀夫は思ったが、届けられたものは仕方ないし、電話での異様な慌て方に、とても断ることなどできなかった。
「いつ?いつ届けるのっ?」
「今晩」
「今晩っ!」
「・・・い、いきたいの・・・?」
「・・・うん・・・!」
憧れのまだ見ぬ轟先生に会える・・・!
正広の心はわくわくと浮き立ち、足元もふわふわして。

「あーーーれーーー!!!」

と、パイシューを両手で捧げ持ったまま顔面から倒れた。

その頃。

とある定時制高校の英語教師であり、1年A組の担任でもある轟慎吾は苦悩していた。
確かに始まりはホワイトデーだったのだ。
ホワイトデーにお返しをしたい。
しかし、バレンタインに何ももらっていない。
一体どうしたらいいのか。
轟は、担当生徒である、淡島涼子が・・・。
好きだったりするのだ。
ホの字だったりするのだ。
せめて二人っきりでデートがしてみたいとか思っているのだ。
しかし、淡島からバレンタインにもらったのは、「みんなで食べましょ〜!」と100円ショップで買ってきたらしき、大袋チョコレート。
もちろん、クラス全員であっという間に食べてしまった。
クラスに3人しかいない女子のうち、神野美紀も、宇部恵子もむさぼり食っていた。・・・淡島涼子もむさぼり食っていたが、何せホの字なので、轟の目には映っていない。
あぁ、淡島さん。
心でつぶやく。
ホワイトデーにプレゼントをしたい。
何がいいだろう。淡島さん、何が好きかな。
そんな風に思いながら、学校へと向かっていた轟は、とあるショップのショーウィンドーに心を奪われた。
これだ!
これを淡島さんにプレゼントしたい!
轟は直情径行のある男だ。まして必死になると、50cm先のことも見えなくなる。
すぐ様店に入り、すぐ様購入。そしてすぐ様配達してもらおうとしたのだ。3月14日に、学校に。

素敵だ。
絶対淡島さんも喜んでくれる。
轟はうきうきと3月を迎え、うきうきと3月を過ごしていた。
だってもうすぐホワイトデー。ホワイトデーには、僕は、あれを、淡島さんにプレゼントして・・・!

「そろそろホワイトデーなんですねぇ、轟先生」
ホワイトデーを二日後に控えた夜、職員室で須磨武彦が言った。
「そうですね、須磨さん」
ばっちり計画を立ててある轟の口調は軽やかで、表情は明るい。
「やっぱりあれですよ。お返しをしないと」
「さっすが、須磨さん!」
大人ってのはそうじゃないと!と肩を叩くと、須磨は轟に負けないほどの笑顔になった。
「そうですよね!それじゃあ、宇部さんと、美紀ちゃんと、淡島さんにお返しをしないと」
「え?」
「え?って轟先生ぇ〜」
何の冗談ですかーと、須磨は厳しい顔をする。
「もらったでしょう〜?バレンタインに!」
「100円ショップのチョコレートぉ〜!?」
「それだって、バレンタインにチョコレートいただいてるんですから、やっぱりお返しは必要ですよ?今はー、どうなんですかね?お返しの相場は」
「5倍から10倍だそうですよ」
「ウソだぁ〜!」
クールな同僚、村井のことばに轟は仰け反った。
「そんなバブリーな時代じゃないでしょー!」
「でも、100円だよ?」
「あぁ、1000円か」
だったら・・・と思った轟は、また思考の波に巻き込まれた。
自分が淡島さんに買ったプレゼントは、何十倍返しになるんだろうか。いや、でもそんなせせこましいことよりも、淡島さんの笑顔がみたいんだ。
「村井先生、やっぱりあれですかね」
さすがクラス委員だけあって、須磨はしっかりと計画を練ろうとしている。
「それぞれに、プレゼントした方がいいですよね」
「そりゃそうでしょうね。だって、宇部さん、淡島さん、神野さんに、共通するものってあります?」

「あぁっ!?」

轟は、突然気がついた。
どうして今まで気づいていなかったのか、どうなってるんだ俺の脳!とまずは一発こめかみに拳をいれる。
「いだっ!」
「なっ、何やってんですか!轟先生っ!」
「あのっ、須磨さんっ!プレゼントって、神野さんや、宇部さんにも!?だって、二人チョコレートなんか・・・!」
「いや、ゆってたじゃないですか。買ってきたのは淡島さんだけど、お金は出し合ったって」
「言ってましたかぁ〜!?」
どうしよう!
だってプレゼントは、淡島さんの分しかない!
それにあのでかさだ!
この目ざとい生徒たちには、すぐに気づかれるに決まっている・・・!
どうすれば。
一体どうすれば・・・!
でも、淡島さんには渡したい。
淡島さんち直送するか・・・!?
いや、受け取れないじゃないか。
それに・・・!淡島さんの喜ぶ顔もみたいし・・・!

そうだ!

まずは自分からだと気づかれなきゃいいんだ!
誰かからのプレゼントという形にして、後から自分のだと言えば・・・!

よし!!

ついにそう思いが至った轟は、届け屋、という仕事をしているところに、荷物を依頼した。
ただ淡島さんの笑顔のために・・・!
彼の中には、その思いだけがあったが果たしてこの作戦は成功するのか。

それは届け屋である早坂由紀夫の腕にかかっていた。ような、かかっているような。関係ないような?

<つづく>


半年でHRは終わってしまう・・・。哀しいことです。しかし、慎吾は三谷さんの大河に出ます。多分、来年が大河で、再来年は舞台でしょう。三谷幸喜脚本で、香取慎吾主演の舞台となると。
・・・チケットは夢のまた夢に違いありません・・・!だから1年に3ヶ月ずつぐらいHRをやったらいいんじゃないでしょうか?だめかしら??

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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