天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

このページの画像は、すべてyen@gallery様から使わさせていただいております!皆様も遊びにいらしてくださいね!

ギフト番外編149話中編『HR』


 

3月14日。
正広は、浮き足だっていた。
ついに今日、轟先生に会えるのだ。
「えっとね、じゃあ、これ俺が持つからぁ」
「いや、持てねぇだろ」
ウキウキっ。弾む足取りの正広は、今日のお届け者。冷蔵庫でも入っていそうな段ボールにしがみついた。
「もーてーまーす♪」
その段ボールは、大きいだけで重たくはない。長めの腕を持つ正広は、それを持ち上げて、うきうきとドアに向かい。
「いだっ!」
ドアの上部にひっかかり、段ボールごと後ろにばったりと倒れそうになる。
「何マンガだ!おまえ!」
それを、背中から支えて、段ボールを横に倒した。
「前持って」
「はーい」
横長を一人で持つのはさすがに大変なので、重さの9割を自分が。一割を正広に預け、早坂兄弟は、腰越人材派遣センターを出た。

夜の学校というのは、階段の舞台としてかなり高いランクを誇っている。
今も、暗い校庭と、暗い校舎という組み合わせは、素直に怖いという感情をかきたてる。
はずだったが、その一部、やけに明るい一角があり、正広のこころはさらに浮かれあがった。
轟先生ー!と生徒たちから慕われているに違いない人にやっと会える。
どんな人なんだろう。
金八先生みたいな人?北野広大先生みたいな人?中村先生みたいな人?
って、中村先生じゃあ余命1年じゃん!
「震えてないで、いくぞ」
武者震いの正広を、疲れた目で見つめる由紀夫は、後ろから、ダンボールを押す。
おっとっと、と、校庭に足を踏み入れた正広は。
「これで、急に地震とかきて、それで、外と隔絶されちゃって」
「おまえ、ほんっとテレビ見すぎだぞ」
「好きだったなー、漂流教室」
学校にいかなかったからなのかなんなのか、学園ものというと、とりあえず見ずにはいられない正広は、当然高校教師だって見ているようだ。
「・・・京本政樹みたいな先生だったら、ちょっとやだ・・・」
「相当やだろう!」
大きな荷物をかかえ、よいしょ、よいしょ、と、校舎内に足を踏み入れた二人は、配置図に従い職員室を目指す。

「あっ!」

そして、正広は、突然ダンボールから手を離す。
「わわっ」
と、1割とはいえ、突然の重みに足元をふらつかせる由紀夫にも気づかず、何歩か前に出た。
「轟先生・・・!」
そこには、正広の想像通りの『轟先生』がいた。
優しい穏やかな笑顔、ふくよかな体型。安心できる雰囲気。
「そぉかぁ・・・。『学校』の、西田敏行って感じだぁ・・・」
「いいから持て!」
「あ、ごめんっ」
慌ててダンボールを持ち直し、正広は、あっちだよ、と、由紀夫を先導する。
「あの!」
廊下の掲示板になにやらプリントを張っている『轟先生』に、正広は意気揚揚と話し掛けた。
「お届けものです!」
「はい?」
まっすぐ貼れてる、と、自らの作品に満足していた須磨武彦は、ふいに話し掛けてきて、小さな届け屋さんに笑顔を向ける。
「届けもの」
「はい。こちらです」
「・・・おっきいですね」
「はい」
「えっと。どなたにですかね、荷札が・・・」

「あーーーー!!!!!!」

突然、フロア中に響き渡るような大声がした。
「えぇっ!?」
「そっ、それ!それ、こっちに!お願いします!」
「え?えっ?」
すっとんできたのは、まだ若い男。
「轟先生〜」
「えっ!?」
プラチナブロンドというのがふさわしい髪色をしている背の高い男を見上げて、正広は仰け反った。
あー!GTOかー!いや、あーゆーワイルドな感じでもないけどー!
「あのっ、これっ」
「轟さんですか?」
なぜか慌てている轟に、由紀夫が尋ねる。
「そうです。これ、職員室に・・・!」
「えっ?先生、これなんなんですか?」
「備品です!須磨さん!」
「へー、備品。なんでしょうか。ロッカー?にしては」
「須磨さん、いいんですってば!あの!早く!」
「あ、はい」
運送業、というには華奢な正広が、よいせよいせと運んでいるのを見て、心優しい須磨は手伝おうとする。
「重たいでしょう」
「あ、いえ・・・」
「重たいですよねー!僕手伝いますー!!」

轟は焦っていた。
須磨武彦という生徒は、とてもいい生徒だ。
情に篤く、面倒みがよく。

口が軽い。

この巨大なダンボールが軽い、ということを知られれば、学校の備品などではないことはすぐにばれてしまう。
となると、一体何かを絶対に彼は知りたがる。
思いやりもあり、家族思い、クラスメイト思いの彼は。

好奇心が強すぎる。

「3人いれば十分ですー、須磨さん、ほら、そろそろ授業ですよ!」
「あぁ、大丈夫ですか?」
「だぁいじょうぶです!」
手を出そうとする須磨からダンボールを隠すようにする轟は、現在、ほとんど一人でダンボールを抱えていた。

正広は思った。

授業前の生徒さんのコンディションを考えてあげてる!なんて立派な先生なんだろう!
そうだよね、夜間ってことは、昼間仕事をされてる人がくるってことで、普通より疲れてるんだ。
だから、たとえこれくらい軽いものであっても、生徒には持たせない。
すごい!
やっぱり轟先生カッコいい!
車・車・車・車3つで轟です、の轟さんとは違う!
いや、あっちの轟さんの、高校教すぃも好きだったけど!!

そんな目をキラキラさせている正広。
一人大汗をかいている轟を見ながら、由紀夫は思った。

・・・これは、面倒な夜になる。

その予感は、120%あたるのだった。

<つづく>


うわー!仕事もプライベートも、なーんだか忙しいですわー。ばたばたしちゃっててすみません!来週こそー!がんばれ私ー!
次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

今までのGift番外編へ

What's newへ

SMAPレポートへ

SMAPメニューへ

トップへ