天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

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ギフト番外編150話プロローグ編『4月になったので』


 

カレンダーが4月になった。
春だ。
正広は確信を持つ。
春だから。
「・・・世の中には、スプリングコートという便利な言葉があるぞ」
「ううん!だって春だし!」
綺麗な色のロングスリーブTシャツを着ている正広は、春だ!と鏡の中の己に満足げだ。
「春だね!」
「春だけど」
「ううん。それは違うね」
「は?」
「春、ときたら、な・の・に!」
「おまえいくつだよ!伊藤つかさも知ってんだろ!」
いや、由紀夫は先日入った喫茶店で、若い、しかし確実にOLではあろうグループ3人組の会話に驚愕したばかりだったのだ。

『伊藤つかさって誰ですか』
『大昔のアイドル』
『ちょっと一発屋みたいな』

そうか!?
伊藤つかさって一発屋ってカテゴリーなのか!?
由紀夫は、話に割って入りたいくらい驚いたが、入ったりはしない。良識はあまり気にないが、常識派なのだから。
「伊藤つかさくらい知ってるよー」
しかし、さすが年配の方(奈緒美&野長瀬)と付き合いの長い正広が、歌えてしまうほどだった。
「歌わんでいい、歌わんで」
「ま、いいから兄ちゃん寝てなって」
今日、由紀夫は会社を休むことになっていた。
新年度を迎えた腰越人材派遣センターには、奈緒美の[気まぐれ]顧客満足度アップ戦略というのが発令されていた。
それは。
『年中無休』
これまでも、野長瀬がほぼ無休状態で働いてはいたのだが、それを一般に公開していこうというのだ。
社員たちは、週休二日は変わらず、その代わりシフトを組んで、平日に休むパターンもあり。その一号として、由紀夫がとりあえず休むわ、と言い出したのだった。
「でも、大変だね、どっか遊びに行くんだったら、休みあわせたりとかしなきゃいけないね」
正広の言葉に、今日は起きません、と、ベッドの中に入りっぱなしの由紀夫は、ちっちっち、と指を振った。
「すぐ飽きるに決まってんだろ」
「え?」
「年中無休にしちゃったら、あれでも、あいつ社長だからな、何もかもほったらかしってことはできなくなんだから」
「だって、野長瀬さん、今だって」
「あれは野長瀬が勝手にやってるってことになってんの」
「え。そーなの!?」
「そうそう。奈緒美からしてみれば、野長瀬が会社が大好きだから、電気代も厭わずおいてやってるくらいの気分だぜ」
「うー・・・」
正広は、眉間にぎゅっ!とシワを寄せた。
「・・・どした?」
「・・・春っぽくないっ!」
「は!?」
「春は、もっとこう新しいことをするんだよ!」
ふんっ!と鼻息荒く胸を張る正広の、すべての洋服が、下着にいたるまでおニューだ。
なにせ春だから。
なにせ新年度なのだから。
「だからって、僕はエイプリルフールには反対する!」
「え、なんで」
「世の中には、意外に、面白いウソっていうものがないっていうことが解ったから」
「だませないからだろ?」
「違うよ!」
へんっ!とそっぽを向く正広が斜めにかけているバックも、当然おニューだった。
四月一日、今日の朝から、由紀夫にしょーーもないうそばかりを言って、すべてシカトされたことを、正広は忘れていない。
まだ、起きてから1時間とたっていないのだが。
「とにかく、春一番、元気にいってきまぁ〜〜す!」
「いや、おまえそのカッコじゃ!」

ばたん!

元気にドアの音を立てて出ていった正広は、軽やかに階段を駆け下り、けったましーんもろとも道路に出た。

「うひゃあ!!」

大声で叫んだ。
2階にいる由紀夫にも、それはよぉく聞こえた。
「寒いじゃん!!」
「寒いよ!!」
ぷりぷり怒りながら帰ってきた正広は、ぬくぬくとベッドにいる兄に文句を言う。
「言ったじゃねぇか!雨降ってて寒いって!」
「ウソだと思うでしょ!?」
「いちいちそんなしょーもねぇウソなんかつかねぇよ!!」
朝、大変!雪、雪!と騒いだ弟への、兄からの優しい言葉だった。
「4月なのに・・・」
ぶちぶちと、前からもっている薄手のコートに、正広は袖を通した。おニューではない。
さらに、もういつから持ってるか解らないくらい。どこかに忘れても、必ず出てきてしまう、おなじみの傘を手にした。
おニューでは、ない。
「・・・やだなぁ」
「やだじゃねぇだろ。傘、だったら買えば?」
「だって、あるのに・・・」
服やバックは買うのに、おかしなことを言う弟だと由紀夫は思う。
「それに」
「それに?」
「傘って、種類がいーーーーーっぱい!あるじゃん?好きな1本に出会うための時間を考えると気が遠くなっちゃう」
「どんなおしゃれさんだおまえは!」
「あーあ。4月になったのになぁ〜」
しおしおと、正広は会社に向かう。

こうして、彼の長い4月1日が始まった。

<つづく>


会社のさこちゃんが、ものまねバトルに伊藤つかさのそっくりさんが出ていて、という話をしていたら、確かに相当あんたは若いよ!のあいあいが、「伊藤つかさって誰ですか?」とゆったのです。おっどろきーーー!!知らんか!伊藤つかさ!

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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