天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

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ギフト番外編150話第1回『4月になったので』


 

4月1日なのに。
新年度なのに。
全身がおニューではない正広は、ちょっとムッ!ていた。
しかも、おニューじゃないなら、おニューじゃなくてもいいのに。傘と、コート以外がすべておニュー。

なーのーに!

雨が降っている。
おニューの靴が。
おニューのパンツの裾が濡れて、汚れていく。
しかも寒い。
このままでは、野良猫がダンボールにいれて捨てられてにゃあにゃあ泣いていたって拾えるかどうか・・・!

「にー・・・」
「うっそぉ!」
しかし、その通りのシチュエーションが目の前で展開されてしまった。
公園の外を正広は歩いていたのだが、低い柵の内側にダンボールがあり、子猫が二匹入れられている。
「えーっ!可哀想じゃーん!」
えいや!と柵を乗り越え、ダンボールに近づく。木の根元とはいえ、箱は濡れ、なんとも哀れな様子の子猫だが、二匹とも、大変可愛らしい。
「うわー、捨て猫かなぁ・・・。こんな可愛いのに」
当然、放ってなんておけない。まず事務所に連れてって、それから飼い主を探すか、うちで飼うかしなくっちゃ。
ところが、抱き上げようと手を出したら、子猫たちはそれに驚いてダンボールから飛び出してしまった。
「わ!待って待って!」
すごいスピード、しかも別々に走っていく子猫を正広は追いかけた。
より小さく見えた白っぽい子をまず捕まえようと思ったが、小さいくせにあっという間に木に登ってしまう。
「そんなとこ登ったら降りられなくなるよ!」
と、木の下から枝の上にちょんと乗っかってしまった猫を見上げた。
手を伸ばせば届きそうな場所だが、絶対怖がって降りられなくなってるはずだ。
しばし子猫と見つめあい、そっと両手を差し出した正広だったが、子猫はさらに上の枝へとよじ登っていく。
「だから、危ないってばぁ!」
傘が邪魔になって、下においたまま正広は何度かその場ジャンプをした。
「怖くないから、降りておいで?」
しかし。
その子猫は、正広が想像するより遥かに野性的だった。
子猫を可愛く見せている大きな眼でじぃーーっと正広を見下ろしたかと思うと。

「うわ!落ちるっ!って!いだっ!」

いきなりジャンプ一発!
慌てた正広の頭の上に、見事着地したかと思うと、足元の傘の上にさらなるジャンプ!
上を向いておいていた傘の上を軽くひっかきながら地面に降りたかと思うと、いつの間にかやってきていた、茶色っぽい子猫と並んで、さらに走り出す。
「なんでそんな元気なんだー!」
『雨に打たれた哀れな子猫』というイメージをふっ飛ばす元気いっぱいな、一杯過ぎる様子に、ようやく正広も気がついた。

「・・・野良猫・・・?」

ダンボールに入れられて捨てられていたんではなく。
たまたまそこにあったダンボールに入っていただけ?
その時。
すでに傘もなく走り回っていた正広は、い〜い感じに、濡れていた。
当然、このまま家に帰るという選択肢が大きく正広の前に浮かぶ。
しかし、正広はためらった。
だって。
『捨て猫だと思って拾おうとしたんだけど、どうやら野良猫だったみたいで、ずーっと追いかけてたら、木の上からジャンプしてきた子に、傘も破られちゃって』
という話が、もんのっっっっ!!!すごく、嘘っぽいからだ。
リアリティがない。
このまま家に帰ったとして、兄である由紀夫は濡れねずみの弟を心配してくれるだろう。
でも、この話をしたら、目の奥で絶対笑う。
唇の端で絶対笑う。
それはもう絶対に!
また、むちゃなシチュエーション考えついたなーって思うに決まってる!

何かもっといい言い訳が見つかるまでは帰れない。
となると、もっとじっくり考えられる場所にいかなくっちゃ。
そうして、破れた傘を持ち、正広はとぼとぼと歩き出す。
事務所にいけばシャワーもあるし、温まれる。あ。でも、着替えとかないや。
どーすんの?
買ってきてもらったらいいかな。
奈緒美さんに?
なんかすごいの買ってこられたら困るけど・・・。でも・・・。
正広は、典子と、野長瀬の顔を思い浮かべる。そして、まずファンシー好きの野長瀬を脱落させた。
残るは、今時の女の子典子と、ゴージャスブランド好きの奈緒美。
むーむーむー・・・!
ああ、こんな時に兄ちゃんがいてくれたら・・・!
でも、だめ。
お休みなんだから。
あの、ベッドから出てくることを一切拒否していた様子の兄ちゃんにそんなこと頼めない。だって。
『捨て猫だと思って拾おうとしたんだけど、どうやら野良猫だったみたいで、ずーっと追いかけてたら、木の上からジャンプしてきた子に、傘も破られちゃって、濡れたまま事務所いって、服着替えたいんだけど』
なんてこといったら、電話の向こうで絶対吹きだす!
小さく吹きだすっっ!

こうして正広は事務所に向けて、新たな一歩を踏み出したのだった。

ちなみに、子猫たちは、基本が野良。そして、4つのご家庭の飼い猫風味も味わっているというしたたかちゃんたちであったという。

正広の長い一日は、まだ始まったともいえなかった。

<つづく>


先週プロローグで今回第1回って!
いや、長い1日なので、いつまでどう続くかもよく解らないとうか。2回で終わるかもしれないというか(笑)

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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