天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

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ギフト番外編150話第3回『4月になったので』


 

雨で濡れたためシャワーを浴びたはいいが、着替えも濡らしてしまったため、全裸にバスタオルというとてつもない姿で仕事をしている正広だったが、未だに腰越人材派遣センターには、他の社員はいなかった。
そろそろ服も乾いている頃だが、ちょっと正広は今の自分が面白いと思っている。
裸で仕事なんて!
面白い!
一人ならではのこの状態!
そーほーってこゆこと!?(←勘違い)

しかし、お昼を過ぎ、正広もおなかがすいてきた。
でも、このカッコでお昼を食べにいくと、それはどこから見ても立派な変態。
まだちょっと湿り気感じるけど、これを着ていくしかないだろうなぁ、と、エアコンの風に揺れる服を恨めしそうに眺め、勇気をもってパンツに足を通してみる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・い、いける・・・・・・・・と、思う・・・・・・・!」
さらにおニューのジーンズに足を通し。
「・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!!こ、これは・・・・・・・・・・・・・・・・・・っっ!」
湿り気on湿り気で、ちょっと身動きしたくない感じになってしまい、その場で正広は固まる。
「やーだーなー・・・」
しかし、この湿った状態を我慢していれば、自らの体温でちょっとは温まるはず。
ぎくしゃく、ぎくしゃく、と、意味もなく事務所の中を歩き回る正広は、Tシャツを着るべきかどうか、真面目に考えていた。
少なくとも、このジーンズがどーにかならないうちは、さらなる湿り気を肌に与える気にはならない。
もちろん、まだまだ若い正広の肌には、外からの水分なんてものは一切必要ないのだ。
「きーもーちーわーるぅーーーー・・・」
ぎくしゃくぎくしゃくぎくしゃく・・・
そのうち、どうにか気にならなくなり、思い切ってTシャツも着てみる。
「ぬくっ」
エアコンの風に当たっていたTシャツは、温かい。温かく湿っている。
「で、でも、ジーンズよりは・・・っ!」
そう思い、腕をばたばたさせる。早く乾いてくれないと、お昼が食べられないっ!
このTシャツさえ乾けば、ダッシュでお店にいける!雨はずっと振り続いているけど、お惣菜の美味しいお店まではダッシュで1分かからない。
「・・・だったら、もういっちゃってもいいのかな」
軽く湿った状態のTシャツを着た正広は、ちょっと首を傾げる。
雨は、激しいというよりも、しとしとと降り続けている。傘を差していても、全身がしっとりと濡れるタイプの雨だ。
近所のお惣菜屋さんはなかなか人気のお店で、正広の大好きな揚げたてコロッケは、すぐに売り切れてしまう。
やばい。もう間に合わないかも・・・!
これはいかねばなるまい!
正広は、ひんやりと寒く、湿った屋外に出た。
靴下はなんとか乾いているが、靴は軽く湿っている。でもどうせ濡れるから大丈夫!てってって!と、雨水を撥ね散らかしながら走る。
「こんにちはっ!」
「あら、こんにちは。あーー!残念!」
「えっ!」
お店のおばちゃんは、顔見知りの正広に言った。
「コロッケなくなっちゃった!」
「えーーーー!」
そのために雨の中走ってきたのにー!
「でも、今日は新製品があるのよ!試供品でもってってちょうだい!」
「わーい!なんですかっ?」
「ナスのピリから煮!」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「それと、どれにしようか?おにぎり、色々あるよ」
「あ、えっとね、ツナマヨとぉ、天むすとぉ、おかかとぉ、赤飯とぉ、えーとえーと、なんにしよーかなー」
典型的な痩せの大食いとして、炭水化物を愛する正広は、お握りは5つくらいが基本だ。
「やっぱ梅にしよ!それと〜、あ!肉じゃが下さい!」
「はいはい、ありがとうございます」
「ありがとでーす!」
おまけももらったことだし、愛想よく笑顔を浮かべ、ぺこりとお辞儀。雨の中、たたっ!と駆け出す。
おまけは嬉しい。
嬉しいけど、ナスは苦手だ。
これはうちに持って帰って由紀夫に食べてもらおう。そう考えながら、事務所に向かっていた正広は、また恐るべきものを見た。

「ね、猫!?」
朝は公園で捨てられている(と正広が思っただけだが)子猫を見たが、また猫がいたのだ。
その猫は、そろそろ大人?くらいのサイズで、ちょっとした軒下でうずくまっている。
もしかして、どっか怪我でも?と近寄った正広だったが、猫は動かない。寒いし、雨だし、ま、まさか・・・!
「し、死んでないよ・・・ね・・・?」
猫の前にしゃがみこんだ正広は、そぉっと手を出す。温かくあってくれ!頼む・・・!という思いで、そっと頭に触れたのだが。
「つ、冷たい・・・っ!」
と、仰け反った。
そこに、かっ!と目を開いた猫が、飛びかかってきたのだ。

その時のことを、中居正広さん(17)は後にこう語っている。
「えぇ、あの時、間違いなく猫のサイズは、2mはあったと思います。バケ猫でした。目はランランと燃え盛り、20cmもの長さに伸びた爪は、確実に僕の喉を狙っていました。・・・今こうして生きていること、命があるってことが、信じられません・・・」

実際には、寝ていた猫が、正広によって起こされて、なんだ?と、反射的に前にジャンプしただけだった。
その結果、尻餅をついてしまった正広は、手に持っていた傘も、おにぎりたちも、放り飛ばしてしまった。
「あぁ〜〜!」
なんでこんなことにーー!
どうにか乾かしたジーンズがまた濡れていくのを感じた正広は、これからの自分を想像した。
これから、濡れたまま事務所に戻る。
傘と、濡れたおにぎりを拾うが、多分、濡れてる。簡単に紙に包まれてビニールに入ってるだけだから、きっと濡れてる。
食べられるのは、パックに入ってたナスのピリから煮くらいなもんだろう。肉じゃがはどうだろうか。
いや、きっと今朝からのうまくいかない状態なら、ナスのピリから煮しか残ってないに違いない。
もっかいお風呂に入って、ただ濡れただけならともかく、汚れてしまったこの服は洗わなければなるまい。
あぁ!
なんて不運な俺!
新年度なのに!
おニューなのに!
おニューなのにぃぃぃー!

正広は、なんならその場に突っ伏して泣き出したいくらいの気持ちだった。2003年度なんか、何一ついいことはないと思った。
もう自分の2003年度は終わりだと。

「正広?」

尻餅をついたままの正広は、後ろから声をかけられた。
「何やってんの、そんな薄着で、ってゆーか、何座ってんだよ」
「・・・兄ちゃんっっ!」
ばっ!と振り向いて、泣きながら正広は駆け出した。
「兄ちゃーーーん!」
「うわわわわ!」
その正広の額を手のひらで押えて、これ以上近づけないようする由紀夫。
「ひーどーいー!なんでだよーーー兄ちゃーーーん!」
「だって、おまえ!」
「わーーーん!汚かったらもう兄弟でもなんでもないんだぁーーーー!!!」
「いやいや、待て待て待て!」
ひーどーいー!とわめいた正広は、兄が胸に抱っこしているものを見て、目を見開く。
「化け猫!」
「えっ!?」
それは、まさしくさっき正広を襲った化け猫、こと、単なる猫だった。
「ん?それって・・・」
「さっきそこの溝にはまってたから」
由紀夫が抱いている猫は、全身濡れてしまっている。
由紀夫としては、その勢いで正広に突っ込んでこられては猫が潰れるし、正広も濡れると思って近づかないようにさせただけだった。
「事務所でシャワーあびないと」
「さっきもあびたもーん!」
「何やってんの、仕事中に」
「だって濡れたんだもーん!今日は猫にはひどい目にあってばっかりなんだもぉーーん!!」
騒ぐ正広を自分の傘に入れ、すぐ目の前の事務所に急ぐ。

「ほい、さっさと入れ!」
「えーんえーん!」
「泣き真似すんな!」
「兄ちゃんは、その化け猫の方が大事なんだぁーー!」
「じゃあ、おまえをこのシンクで洗ってやればいいのか!このシンクで!!」
暴れる猫をどうにか押えつけながら、シンクで洗ってやろうとしている由紀夫の勢いに正広は負けなかった。
「洗ってよー!洗ってよぉー!」
「洗うかぼけ!」
「ぼけってゆったぁー!」
「冷えたらまた風邪ひくだろうが!早くしろって!」
「えーんえーん!」
うりゃ!と、膝の裏を軽く蹴って正広をシャワールームに放り込み、外から扉を閉める。
何せ、由紀夫には、正広の500倍暴れるだろう猫が待っているのだから。

「ぶーーーーー」
「おっ。いいねー不細工」
「そりゃその猫の方が可愛いでしょおよ」
タオルとドライヤーでふわふわに乾かされた猫は、由紀夫の膝の上で寝ている。
「美味いよ、このナス」
「でしょおね」
ぷりーと膨れる正広は、なにせナスが嫌いだ。やっぱり唯一無事だったナスのピリから煮を食べることはできない。
今日はへんなことばっかり。
正広の機嫌は、激しく斜めだった。
斜めすぎて垂直になりそうなくらいだ。
バスタオルで何重にも巻かれて、ぬくぬくとされていても、ご機嫌は垂直落下。
「おなかすいた・・・」
「もうくるよ」
「何が?」
宅配ピザだった。
Lサイズが2枚。正広の好きな味ばかり。
「わぁ!」
「ま、2枚ぽっちですが」
「わぁわぁ!うーれちー!」
それくらいで正広のきげんは、簡単に水平になる。
ようは。

おなかが減った!!

だけなのだから。

「にしても、兄ちゃんさぁ〜」
「ん?」
自分も少々ご相伴に預かっていた由紀夫が首を傾げる。
「こんな手のこんだエイプリルフールってある?」
「エイプリルフール?」
「会社お休みなのにー、俺にだけ黙っててー」
「休み?そーいや、なんでみんないねーの?」
「えっ?」
「え?」

こうして、正広の長い一日は、お昼を過ぎ、落ちつきを取り戻した。
由紀夫も一緒に仕事してくれたし、家に戻って、ちゃんとした服も持ってきてくれた。

で、なんで会社に誰もこなかったかというと。

全員が今日は自分が休みの日だと思い込んでいたからだった。
さらにその上。

「え?あれはエイプリルフールだったのに」
「は!?」
翌日、奈緒美が言った。
「だって、24時間営業ってなると、人件費の方がかかっちゃうしー。別に必要ないってゆーかー」
「飽きたな!?おまえ飽きたんだな!?」
「エイプリルフールよ!」
「遊びたくなったんだろう!」
「エイプリルフールなのよ!だまされたのよ、あんたたちは!」

ま、そんな4月1日。新年度だった。


のんびりやってたら5月がきてました!びっくし!!

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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