天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

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ギフト番外編155話前編『ウミドリに届ける』


 

「お久しぶりです!」

キラキラと正広の笑顔が輝いた。
隣を歩く弟の、突然の大声に、由紀夫は反射的に立ち止まり、辺りをキョロキョロと見渡した。
「誰が?何がっ?」
「お久しぶりなんだよ、兄ちゃん」
うんうんとうなずく弟の目じりにキラリと輝くのは、あれは、涙ではないだろうか?
「どうしたぁ〜?」
「いいんだ。とにかく、久しぶりなんだよ。ねっ!」
「ねっ!って言われても・・・」
だって、ここは旅行先。
果たして、誰と正広が久しぶりなのか。
よく解らないままに、由紀夫は立ち尽くす。
「兄ちゃん?」
しかし、心ゆくまで挨拶をしたぞー!気分の正広は、立ち止まったままの兄を振り返り首を傾げた。
「どしたの。ほら、行こうってばー」
兄の手を引っ張って、正広は元気に歩く。
彼が目指す先には、牛タンの文字があった。あぁ、牛タン・・・!
正広は、牛タンが大好きだ。
タン塩を愛している。
同じようにカルビを愛してる。
ハラミを愛してる。
生レバだって愛してる。

「焼肉が好きなんだろ?」
「焼肉がキライな人がいて!?」
古いアニメのセリフをもじりながら、弾む足取りはとまらない。
ここは、宮城県。
牛タンの都宮城県だった。
早坂兄弟は、秋休みを自主的に取得し、秋の宮城にやってきていた。その週末、同じ宮城県内で、SMAPの夏のコンサートがラストを迎えたのは、単なる偶然に過ぎない。
「松島や、ああ松島や松島や」
明るい日差しの中、海を見た由紀夫がつぶやく。
つまり、そこは、松島海岸なのだった。
「何?」
「松島や、あぁ松島や、松島や」
「松島?」
「ここだろ!」
「あぁ!そうだった!」
仙台市内から、特に目的もなくレンタカーを走らせていた早坂兄弟は、まぁ、ドライブといえば海でしょう、というあっさりした考えから、ここ松島にきていた。
幸い天気もよく、車を降りた二人はぷらぷら散歩をしていて、牛タン屋を見つけたところだったのだ。
「牛タン〜嬉しいねぇ〜」
「そうだなー」
もちろん由紀夫だって牛タンは好きだ。
しかし、その店に入ろうとしたところで。

「・・・こっちも牛タン屋!?」
さすが牛タンの都、宮城。
あっちにもこっちにも牛タン屋があるのだ。
正広の目が、すばやく二つの店の間を行き来する。
「どっちかな・・・!」
その真剣さは、正広の食に対する貪欲な姿勢を感じさせた。
「値段も一緒だしなぁ」
間に1軒おいて隣同士といってもいい店は、それぞれの特色をあまり感じさせないようにしていた。これがご近所づきあいというものだろう。
「どうしようどうしよう。どっちかなぁ・・・!」
天気のいい秋の休日。どちらの店にも客は入り、それぞれが楽しげに舌鼓を打っている様子が店の外からも解り、正広を迷わせる。
「どっちも美味いんじゃねぇの?」
由紀夫の言葉はもちろん正論だ。
「んーーー・・・でもなーーー・・・!」
いっそ一つの大きな店にしてくれてれば!それなら迷わなかったものを!
その時の正広は、なぜか、かたくなになっていたのだった。
どうしても、どちらか、より美味しい方で食べたい。
でも、どっちが美味しいかが解らない。
「んーーーんーーーー・・・・・・・・・・・・!」
「海鮮食う?」
「かっ、海鮮っ!?」

正広は、海鮮が大好きだ。
寿司も愛してる。
回転してないお寿司も食べたいけど、回転してても美味しいお寿司はいくらだってある。
「かーいーせーんーーーー・・・!」
「海っぺりだし、絶対あんだろ、海鮮」
「だよねー、あるよねぇぇーーー!」
ざっぱーん!は大げさでも、太平洋がすぐ目の前に広がっているのだ。海鮮がないはずがない。
「海鮮・・・。牛タン・・・!海鮮・・・っ!」
「海鮮だったら、どこあるかなあ」
ガイドブックなどは持っていないので、その辺歩きながら探すか、という兄の提案を受け、コクリ、と正広がうなずこうとしたところで。

「美味しかったねー」

目の前の牛タン屋のドアが開き、女の子の集団がキャッキャ、キャッキャ、騒ぎながら出てきた。
匂いつきで。
「おっ、美味しそぉ〜・・・・・・・!」
またしても正広の心が揺らぐ。
海鮮。
牛タン。
牛タン。
海鮮・・・!
「仙台牛も有名だよな」
「仙台牛!?」
「牛タンもいいけど、普通に肉として食うのも美味そうかなぁ」
「仙台牛・・・!?」
海鮮。牛タン。仙台牛。
最悪、仙台牛と、牛タンをイコールにしても、海鮮とはイコールにできないじゃないか!
どうしろって言うんだ!
「後ー、あ、カキ有名だよな。海鮮の中でも」
「カキ・・・!」
生牡蠣だって、牡蠣フライだって、好きだ好きだ好きだ好きだ好きだぁぁぁ・・・・・・・・・・・!

「兄ちゃんっ!」

きっ!と正広は由紀夫を睨みつけた。
頭の中はぐらんぐらんと揺れている。
まるで、船に乗っているかのように。
「な、何・・・」
幅広い選択肢の中から、よりよいチョイスをしようと、まだまだ宮城ならではの美味しい食べ物について考えていた由紀夫は、急な大声にやや驚く。
「カモメに決めてもらいますっ!」
「か、カモメ・・・!?」
考えすぎて、ついにオーバーヒートしたのか!?と思った由紀夫だったが、正広の目はマジだった。
「あのカモメに・・・!」
びしぃ、と指差す方向には、カモメ、だかウミネコだか知らないが、海鳥がたくさんいた。
「ど、どうやって・・・」
由紀夫の頭の中では。
箱をあけるとウミドリ登場。
口にはおみくじ。
それを広げると、牛タン、とか書いてある、などという映像がぐるぐるしていた。
どこにあるんだ、そんなウミドリみくじが!

それを知っているのは、溝口正広だけなのか!?

<つづく>


お久しぶりでぇーす!9月になり、早坂兄弟が戻って参りましたー!またお付き合いよろしくでぇーす!

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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