天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

『Gift番外編』

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ギフト番外編156話プロローグ編『ピンクキャッツのルリちゃんに届ける』


 

「たたた!大変です!!」
野長瀬が大声を上げながら腰越人材派遣センターに駆け込んできた時、振り返ったのは正広だけだった。
『どしたんですか』と声をかけるよりも早く。
「聞き飽きたわ!あんたのそのセリフは!」
「何回いってんだよ、おめーよー・・・」
「絶対大変じゃないに120円かけてもいいですよ、あたし」
「・・・。み、みなさん、ひどい・・・!」
入ってきたところで、がっくしひざをついた野長瀬は、ウルウルした目で正広を見つめた。

ひろちゃん。
ひろちゃんなら、解ってくれるよね・・・!?

野長瀬さん・・・!
大丈夫・・・っ!

心の中でお互いに親指をたてあった後、正広はきっぱりと言った。
「僕は大変だ!に2円賭けれますよ!」
「ひろちゃーん!」
「今すぐそこに2円を出せ!」
そういって、ようやく由紀夫は野長瀬の方を見る。
「一応、聞こうか?」
「あぁ、いいわよ由紀夫、聞かなくても。それより野長瀬、あんたこの書類めちゃめちゃじゃないのよ」
「あっ、電話かかってましたよー、ピンクキャッツのルリちゃんって人でしたけどぉ〜?」
「ああああ〜〜っっ!」
その名前に野長瀬が声を上げ、ぐわばっ!と床に頭を押し付ける。
「なんですってぇ?」
心から嬉しそうな微笑を奈緒美が浮かべる。
「誰かしら、何かしら、ルリちゃんって♪」
「ね、気になりますよね、ルリちゃんって♪」
「もっ、典子も人が悪いわねぇ、そんな面白いこと黙ってるなんてっ♪」
「だってついさっきなんですよっ、かかってきたのっ♪」
「やるなー、野長瀬、ルリちゃんかぁ〜♪」
「ち、違うんですって・・・!」
「あ、つまり大変っていうのは、ルリちゃんの店にツケがたまって、今追い込みをかけられてるってことね?そうなのね?そりゃ大変ね」
「違いますよ!」
「ピンクキャッツといえば、あんな可愛い女の子が、こんな過激なサービス!?で有名な店。ルリちゃんに入れ込んだ野長瀬がつかった金額たるや!」
「えっ!そ、そんなお店なのっ?」
どきどきとわくわくをあわせた顔で正広が尋ねる。
「いや知らないけど」
「知らないのぉーーっ?」
「どこにあるかも知らない」
「由紀夫も適当なことばっかいってんじゃないの。あれよね、マッサージ系の店でしょ?」
「わっ!そうなんだ〜。さすが、社長!なんでも知ってますねぇ!」
「違いますっ!」
「・・・じゃあ、キャバ系?」
「いや、あの」
ごにょごにょとつぶやく野長瀬は、いつの間にか全員に取り囲まれていた。
「キャバ系のルリちゃんねぇ」
「で、ルリちゃんとどんな大変なことがあるんですか?ま、でも、せいぜいツケのことですよねー」
「普通だなー、野長瀬。おまえの人生、あまりに想像通りじゃねぇ?」
「でも、大変じゃないですか?ルリちゃんについてるヤクザが、野長瀬さんの命を狙ってるんでしょ?」
どんどん話を大げさにしてしまうのは、どこか夢見がちな正広だ。
「そうらしいわぁ。どうも変態らしいのね」
「ナイフを使うって。有名だな、有名」
それにのっかっていくのは、奈緒美、由紀夫、典子のお調子者チーム。
「聞いたことありますー。どこのバイオレンス小説だ!みたいな陰惨な光景が繰り広げられるそうですよー。そのヤクザが通った後って」
「ひぃーー!!」

「誰のなんの話なんですーーー!!」
「バカね!野長瀬の大変な状況をひろちゃんに伝えてあげてるんじゃない!」
「野長瀬さーん!死なないでぇーーーー!」
「ま、とにかく、金を返さないとな。奈緒美貸してやれば?」
「うっふっふっ。いいわよぉ〜、野長瀬〜♪腰越ローンへいらしてぇ〜〜ん♪」
両手の指をおいでおいでという形に動かす奈緒美は、大変恐ろしかった。
ナイフを使うという変態ヤクザよりも怖いほどだった。
「い、いや、そ、それは・・・」
「ど、れくらいツケあるんですか・・・?」
とてもとても、心配、という顔で、正広が野長瀬の前にしゃがみこむ。
「いや、ひろちゃん、あの・・・」
「腰越ローンだって鬼じゃないですよ。よそで借りるより」

「いやいや。よそで借りたほうが絶対いいって!帝国金融とかから!」
「どーしてよー。腰越ローンは、いつだってお客様のことを考えている優良ローンよー?」
由紀夫は何度も首を振った。
「死ぬまで食らいつかれるぞ。そりゃヤクザとどうにかなった方が楽だ、楽」
「しっつれーしちゃーう。いいのよー、野長瀬ー、いくらほしいのぅ〜?」
「お金はいいんですってば!」
「でも、結局話をつけてくれるのはお金よ、お金。金・金・金♪」
「り、リアルー・・・!やですよぅ〜社長〜〜!」
「典子ー?覚えといて損はないわよー?お金で買えないものは、ちょっとしかないんだから〜♪」
つい先週買ったばかりのハリーウィンストンの指輪をした手を頬にあて、おーーーほほほ!と高らかに奈緒美は笑う。
「まっ、まぶしい!まぶしいですう!社長〜〜!」
「まぁ、大丈夫よ、野長瀬。あんただって腐ってもうちの社員じゃない。守ってあげるわよ、社長のあたくしが!」
「ですからー、守っていただくことはーーー・・・!」

「解った!」

由紀夫が手を叩き、野長瀬に優しい目を向ける。
野長瀬が思わず、ぽぉっとなってしまうような、それは魅力的な笑顔だった。
「ルリちゃんと逃げるんだ」
「ええっ!?」
「愛の逃亡劇かぁ〜。そりゃ大変だよなー」
「野長瀬さん、ほんとに!?」
「そうだったのね!野長瀬!どこに!?やっぱり海外!?」
「うわ!ゴージャスー。とりあえず逃げる時は北じゃないですかー?雪深い地方土地に二人で流れていきましょうよー」
「そうなると結局野長瀬がルリちゃんのヒモになっちゃうんじゃないか?」
「さびれた旅館〜、二人で住み込み〜!」
「あっ!いい、いい!それいい、典子ちゃーん!二時間ドラマっぽーい!」
「じゃあ、そんな深刻じゃなくっていいんじゃないですか?野長瀬さん」
「あ、あの・・・・・・・・・・・・・・」

どうしてこの会社はどうなのか。
野長瀬がまともに口を挟めないまま、どんどん話が進んでいく。
そんなことじゃないのに。
そうじゃないのに・・・!

野長瀬の背中を冷たい汗が流れた。
この盛り上がりに対して、自分の真実を告げたとき、いったい何が起こってしまうのか。
それならいっそ、もう、あのルリちゃんと一緒に北の温泉場まで逃げた方がいいのじゃないか。
ヤクザよりも怖い、この勢いにのった同僚たちから・・・!
どうする。
どうなる!?
なお、床にひざをついたまま、ゆっくり動きがちな脳を、必死に早く動かしてみる野長瀬だった。

<つづく>


のれる話にはどんどんのっていこう。それは結構正しい姿勢なのかどうなのか(笑)つっこみのないまま、ボケがボケ続ける恐ろしい展開ですな。どうなる野長瀬!どうする野長瀬ーー!

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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