天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

Gift番外編』

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ギフト番外編156話後編『ピンクキャッツのルリちゃんに届ける』


 

<これまでのお話>
変態ヤクザをヒモにもつ、ピンクキャッツのルリちゃん。そのルリちゃんと何やら抜き差しならぬ関係になったとかならなかったとかどうだとかこうだとかいう野長瀬。しかし、そこに新たなる女が登場した。野長瀬!ルリちゃん!変態ヤクザ!新たなる女!?どうなる4人の絡まった愛憎の糸!!
え?やっぱ違う…?

<今回のお話>

正広は混乱していた。
果たして、野長瀬は、正広の思っているような男だったのか。
実直で、まじめで、人を愛し、うさぎを愛する。そんな、素朴な男だったのか。
そんなまさか・・・!まさか・・・!
「野長瀬さんが、二股かけるような人だったなんてぇぇーーーー!!!」
「かけてなーーい!」
「かけられてなぁぁぁーーーいっっ!!!」

ガラス割れるわ!
という金切り声をあげたのは、第4の人物。いわゆるひとつの昔風にいえば、コギャルだった。
「あたしがかけることがあっても・・・!いやっ!」
ぶんぶん!と首を振る。
「かけない!あたしがかけることは絶対ない!12股とかにならない限り!!」
「え?じゃあ、あんたのベスト12に入るってこと?これが?」
由紀夫が親指で野長瀬を指し示しつつ、コギャルちゃんを見つめる。
はっ、と、コギャルちゃんは息を呑んだ。
か、カッコいい・・・!
こんな男前から聞かれるまでもなく、この野長瀬さんが、あたしのベスト12に入るはずない。入るはずないけど、運転手とかって必要じゃない?生きていく上において。そういう便利グッズとしての・・・!ああ、でもそれじゃあ、股かけることはなく、ただ使えばいいだけじゃないの!?

「・・・な、なんかひどいこと、考えてません・・・?」
おびえる小動物野長瀬は、他者の感情の動きに敏感だ。
「まぁまぁ、それで、えっと、あなたは?」
おどおどとなみだ目になっている野長瀬を、ひざでどかし、前に出ていった奈緒美が笑顔で尋ねる。
「あ、あたしはぁ〜」
「はい」
全員の視線がコギャルちゃんに集まる。
いや、野長瀬だけが、彼女に背中を向けたままうずくまっていた。
「ラ・シレーヌのバイトなんですけどぉ〜」

「は?」

「ラ・シレーヌ?」
正広が首をかしげる。
「ケーキ屋さん?」
「はい」
こく、と、うなずいたコギャルちゃんを、野長瀬以外の全員が見つめる。
「・・・あ、あのー、バイト中は、メイク、違うんでぇ」
「あぁっ!」
頭の中で映像が一本化した由紀夫が仰け反る。
「おまえ顔違いすぎ!」
「ですよねーーー!」
「えー!?そんなバイトの人いたっけー?」
腰越人材派遣センターの近所にできたケーキ屋は、おいしいと評判で、正広も時々いくけれど、コギャル風の子なんて一人もいない。
女の子は、かわいらしい黒の膝丈ワンピースに、白いエプロン、頭にも白いヘッドドレスという乙女と、おっさんの憧れ風だ。
「髪型も変えてるし、大体、顔の色違うじゃねぇか!」
「あー、これねー、んー、今んとこ、こっちがメイクなんすよねー」
「じゃ、ホントは色白?」
紀子はしげしげとコギャルちゃんを眺める。
「ま、そこそこですけどー。あたしはー、ちょっと焼き入ってる方が似合うかなーと思うんでぇ」
「え?解んない、解んないよ、兄ちゃん」
「いや、いるって。確かに、みんな似た感じの子が多いからあれだけど」
「さすが由紀夫ねー。あ、そぉ、でも髪の綺麗な子が多いと思ったのはー」
「けっこーいますよ、ウィッグ」
「えー?えー?ほんとにー?」
「ひろちゃんは解らなくっていいのよー、こんな女の変身っぷりは」
「あ、ほんとっすよ。見たことあります、お客さん」
「ほんとにぃぃーー?」
「はい。えっとー、昨日?エクレア、買ってったでしょ」
「ああっ!それはっ!」
「昨日?エクレア?」
由紀夫の目がキラリと輝いた。
「おまえ、昨日体が甘みを欲してるとかいって、人にぜんざいおごらせたよなぁ!」
「洋菓子と和菓子は違うもーーーん!それにー、エクレア食べたの、朝だもーん!」

「だから!!そのエクレアが!!!」

早坂兄弟が、おまえは甘いもんばっかり食いすぎだ、こら、待て、と、鬼ごっこを始めたところで、コギャルちゃんは、背中を向けたままの野長瀬をにらみつける。
心の中では、その背中を足で踏みつけていることだろう。
「エクレア12ダース!持ってきてんですけど!お金お願いしまっす!!」

「エクレア?」
「12ダース??」

「ああああ・・・!」

野長瀬は床に伏し、泣きまねを始めた。
「私は・・・!私はただ・・・!ただ皆さんが大好きなエクレアを、エクレアをお持ちしようと思ってぇぇーーーー!」
「えー、あのエクレア美味しいからうれしいけどー、12、ダースって、・・・12個、じゃないよ、ねぇ?」
「違います!」
コギャルちゃん、断言。
「12『ダース』です!野長瀬さんからの依頼は、確かに、12『ダース』と書いてあります!」
コギャルちゃんが持ち出したFAX用紙には、確かに、書いてあった。
『ダース』の欄に12、と書いてあった。
「うちも、12ダースっていえば確認はしますけど、腰越人材派遣センターさんって、いつも大目の注文だからそうかなって!」

説明しよう。
ラ・シレーヌのエクレアとは、比較的こぶりなサイズで、1ケースに12個入っている。
それが12ダースで、合計144個!
「だ、だから、大変だって・・・」
小さくつぶやく野長瀬に、悪気はなかったのだ。
そうだ、お給料出たばっかりだし、みんなあそこのエクレア好きだし、黙って注文してて届けてもらったら喜ぶぞ、というそれだけの気持ちだったのだ。
FAXでも注文できるなんて、なんて便利なんだろう。
1箱に12個入っているから、12個入ってるのを、1つ、という気持ちを込めて、ダースのところに、12、と書いてしまったのだ。
「・・・大変って・・・」
正広が首をかしげた。
「あのー、野長瀬さんが、最初に、大変だってゆったのって・・・これ、ですか・・・?」

これ。

なのだった。

「じゃ、あんたなんなのよ、ピンクキャッツのルリちゃんって!」
「だから関係ないってゆってんじゃないですか!」
「でも変態ヤクザはいるんでしょ?ねっ?野長瀬さんっ!」
バイオレンス小説好きとして、そのアイテムははずせないのだ、典子にとっては!
「知りませんよ!」
「じゃあ、単なるキャバクラのお姉ちゃん?なんで野長瀬に電話かかってくるのよ」

「・・・営業電話なんじゃねぇの・・・?」

由紀夫の一言に、あー、なーーんだーーーという空気が流れる。
それはそれ、これはこれ、だったのだ。
そして、やはり、野長瀬の大変でーーーす!は、大変ではなかったのだ。
「とにかく、野長瀬、あんた、それお金払いなさいよ」
「えっ!あ、あのっ!」
「だって、おまえちゃんと注文してんじゃん、12ダースって」
「あの、でもっ」
「僕―、1ダースくらい、食べれるー・・・」
「ひろちゃんっ!」
「おまえ、それ1ダースいくらすっか知ってんの?」
「1ダース、12個入ってて、1個が、200円・・・。うわ」
「うわってことないじゃないですかーー!」
「野長瀬さん、すごーい、12個かける、200円かける、1ダースだってー」
「はい。ちゃんと領収書ももってきました!払ってくださいっ!」
バイト前の姿でコギャルちゃんが言う。
2400円に消費税のつもりだった野長瀬は、28800円に消費税、合計、30240円をエクレアに支払った。

「まったく人騒がせなんだから」
「やっぱり、野長瀬の大変だからなー」
そして、エクレアはただ食いされ、ののしられ、野長瀬は大変大変、しおれていた。
そんな夕方、また、電話がかかってきたのだ、ピンクキャッツのルリちゃんから。
『野長瀬さぁ〜ん♪』
というルリちゃんの甘い声。野長瀬だって男の子。時には、可愛い女の子と無邪気に戯れたくなることがあるのさ。
そうだ。
ルリちゃんに、このエクレアを持っていってあげよう。
きっときっとルリちゃんも喜んでくれるはずさ・・・!

「昨日さ、野長瀬見たぜ」
「見たねぇ、兄ちゃん」
翌朝、早坂兄弟は、腰越奈緒美に報告をした。
「ピンクキャッツって、あっきらかにやばい店だな」
「キャバクラじゃないの?」
「暴力キャバクラって感じ。見るからに」
「へー、そこ行ってたの?野長瀬」
「入ってるとこだったけど。来てんの?」
「・・・まだ来てないけど・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
3人が顔を見合わせているところに、典子もやってきて、4人で顔を見合わせたが、野長瀬はこない。

「あ、電話」
「いけない、FAXしとかなきゃ」
「お客さんとこいかなくちゃーっと」
「それってエステだろー!」

誰か!誰か野長瀬のことを心配してやってください!野長瀬のことをーーーー!!
ルリちゃんの店で、財布ごとがっぽりもってかれ、エクレアも全部もってかれ、エクレアのにおいはあるけども、本体ねぇじゃねぇか!と荒れたペットのミニウサギ(大)野長瀬智子(♂)にぼっこぼこにされてしまった野長瀬のことおーーーーー!!!


エクレアが・・・た、食べたい・・・カスタードの美味しいやつ・・・たーべーたーいーーーーー!

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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