天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

Gift番外編』

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ギフト番外編157話『オリジナルカードを作った』



11月には3連休が2回もある。

カレンダーを見た正広の瞳がキラキラ輝いたからといって、誰が咎められよう。
どうしよう、どこにいこう、何しよう。
あっ、兄ちゃんの誕生日もあるじゃん。どうしよう。11月どうしよう!

「どうしよう!!」
「どうしようって言われても・・・」

単なる平日の夜、単にテレビを見ていただけの由紀夫は、突如弟から悲鳴のように声をかけられギョっとするだけだ。
「どうする!?3連休が2回もあるよ!2回も!」
「え?」
ほらほら!とカレンダーを見せられ、へーと由紀夫はうなづいた。
「いいじゃん」
「いいよね!」
心から嬉しそうに正広は言った。

「どこいく!?」

「・・・ど、どこって・・・」
「出遅れてんだよ!もう10月終わるんだよ!?この週末だよ!?人気のあるとこなんてもういけないよぅ〜!?」
「え、あの、だから・・・」
「人気の宿なんかもう埋まっちゃってるよ!旅サラダの本買っても間に合わないかも!」
「いやいやいや」
「どこ行く!?」
「どこって言われてもー・・・」
こないだ仙台行ったじゃねぇかよと由紀夫は思った。思ったが、それで折れる弟ではないことも知っていた。
「別にどこってこともー・・・」
「え、三連休なのに?」
「だって、おまえだって今気がついたんだろ?」
「そーだよ?だから焦ってんじゃん。どこにもいけなかったらどーすんの!」
「だから、手帳が白かったら青ざめる女子高生みたいな真似しなくても!ゆっくりすりゃいいじゃん!家でのんびりしてもバチあたらないって!」
「うっそーん!」
「ともかく、俺はこれから相棒(テレビ朝日水曜9時、絶賛放送中)を見るので邪魔しないように」
「相棒(弟)が哀しんでるのはほっといていいのーーー!?」
「白文鳥のしぃちゃん、可哀想な相棒(弟)を慰めてあげてください。そんでおまえはあっちでトリビア見んだろうが!」
「おっとっと、そうだったそうだった」
どでかいワンルームという早坂兄弟のうちには、テレビが2台ある。夏の間はナイターから離れられない弟のため、一応寝室と呼べるスペースにひとつ。
リビングと呼べるスペースには、どでかいプラズマがひとつ。こちらは、主に由紀夫の楽しみのために使われていた。
由紀夫は、バカ高いが座り心地抜群!というソファに座って。
正広はのびのびと横になって。
それぞれのお楽しみテレビを楽しんだ。そんな一時間が過ぎ、それから先の1時間はどでかいテレビで水10を見る。(正広が寝てしまっている場合もあるが)
「どうも、ダメだな根元はるみは」
「面白くないよね」
「ないな」
イエローキャブのタレントに求めるのが面白さというのはどうなのか、ということはさておき、そんな一時間を過ごしたのち。

「どうしようか」
一度知ってしまった3連休を忘れたりできないのが、溝口正広なのだった。

「・・・今日は疲れてるから」
「今日は、兄ちゃん1日デスクワークという名前で、雑誌を読んですごしていました。DVDぴあとかでした」
「・・・する仕事がないのに帰れないって、逆に疲れるもんなんだってば」
「ソファに横になって雑誌読みながら、そのうち寝てました」
「・・・うたた寝は体によくないよな」
「会社のソファはひょっとしたら車買えちゃう!?くらい高くてでっかくて、僕はそんな寝ている兄ちゃんに、仕事中にがーがー寝ている兄ちゃんに、あったかい、ふわふわ毛布をかけてもあげました」
「・・・首を寝違えて」
「そんな訳ないじゃん!」
「まぁまぁ正広さん。そんなお怒りにならないと。ね」
「僕なんて、今日はなんか知らないけど忙しかったのに!請求書いっぱい書いたりとか、したのに!」
「書いた?」
「手書きのとこがあるんだもん!」
「・・・あの字で・・・?」
正広の、子供っぽい字を思い浮かべた由紀夫だったが。
「あのね!」
そんな失礼な兄に、正広はびしぃ!と告げるのだ。
「兄ちゃんの字だって、別に褒められたもんじゃないんだからね!」
「そーゆーことを言うな!」
互いの傷をえぐりあい、疲れてしまった早坂兄弟は、ともかくもう休もうということにした。
由紀夫としては、これで弟の攻撃をかわしたようなつもりだったのだが。

夜中に目が覚めた。
そりゃあ、仕事で昼寝をしていたのだから、睡眠時間は足りている。あくまでも由紀夫的には不本意ながら、の睡眠だったが。
時計を見ると3時を回ったところで、静かだな、と思う。
部屋の中は、しん、と、なんの物音もしていない。
外を走る車の音も、何もしない。
ふう、と息をつき、ベッドに起き上がった由紀夫は、寒いなと思った。

寒い・・・?
いや、もう10月も終わるんだから、おかしくないけど。それにしても、今日はこんなに寒かったかな。
静かで、寒い部屋の中、もう一度寝ようと横になった由紀夫は、そのシーツの冷たさにも驚かされる。
ついさっき、ほんの何秒か前まで、自分がそこで寝ていたはずなのに、その体温のかけらもないような冷たさはなんだというのだろう。
「さっみーなぁ」
思わずもらした言葉は、部屋の中で、妙に反響した。
いくらなんでも、静か過ぎるとようやく由紀夫は気がついた。
完全防音の部屋でもあるまいし、こんなに音がしないはずがない。時計は動いているし、冷蔵庫からのモーター音だってするはずだし、大体、同じ寝床で。

誰かが。

寝ているはずなのに。

けれど、大きなベッドには由紀夫の姿しかなかった。
いつも見える位置に堂々と存在しているはずの、鳥かごもなかった。

あぁ、そうだった。
もう、誰も、いないんだった。

この部屋に、自分はただ一人で・・・。
寒い、静かな部屋は、ただ自分のペースでだけ時間が流れていく。
「寒いな・・・」

「ごっ、ごめん!!」

耳元での大声に、はっ!と目を開けると、そこは見慣れた空間だった。
「ごめん!あ、あのっ」
大声を上げたのは、弟の正広。
「・・・なんだ・・・?」
「布団、とってた・・・」
どでかいダブルベッドに早坂兄弟は寝ているが、布団類はシングルのものをそれぞれに使っている。取り合いにならないためだったが。
「なんで、自分の上に、俺のまで使ってんだよ!」
「わかんなーい、暑いーーと思ってたら、こうなってたーーーーー」
二人分の、毛布、掛け布団を身にまとい、正広はうごめいている。
「暑いーー」
「も、ほんっとに・・・」
寒いわ!と思いながら正広から毛布と布団を引き剥がす。
「なんかー」
どうにかそれぞれの定番スタイルに戻りながら、正広は言った。
「なんか、さむーい夢見てて、寒かったんだよ・・・」
「・・・ふーん」
自分にジャストフィーット!する位置に毛布、布団を重ねながら、あまり興味なさそうに返事をした由紀夫だったけれど、同じような夢だったのかな、と思う。
もし、お互いに何かがあって、ひとりだけになったとしたら。
あの、寒さや、静けさを、いやでも味わうことになるのかもしれない。

「あの、さぁ、兄ちゃん・・・」
「ん」
「あのー・・・やっぱ、いいや、3連休」
「え?」
「うん、あのー・・・」
もごもごと正広は布団にもぐりこんでいく。
「どっかいったりとか、別にしなくっても、いいや、って、思って・・・」
別にどこかにいかなくても、ただ家にいるだけでも、それでもいいと正広が言った。
「なんか、やな夢見た気がする。兄ちゃんがいない、みたいな・・・」
「なんだよ、それ」
軽くいなしながら、由紀夫は小さく息をつく。
「別にいなくならねーし」
「だよねー」
「そーです」
「へへ」
照れたように正広は笑う。布団から顔を出さないまま、おやすみっ!と元気に言った。
「おやすみ」
由紀夫も答えたけれど、眠気はもうない。
正広も、じっとはしているけれど、そのじっとしている加減が寝ていないことを表していた。

「正広」
「・・・何」
「どっかいくか」
「どっかって?」
「これから」
「これからぁ?」
「なんか目も覚めたしさ、どうよ、朝4時の東京を散歩ってのは」
「・・・いいかも」

そうして二人しておき出して、適当なカッコに着替えて外に出た。
まだ真っ暗な十月末の朝。結構さみーじゃん!と言いながら、ふらふらと自転車二台でいく。
「よし、海だな」
「海だね」
若者はいつだって海を目指すのだと、朝日を見るために、二人は朗らかに自転車を走らせる。
もう暗くもないし、寒くもないし、静かでもない。
空は明るくなるし、温度は上がってくるし、街は騒がしくなる。
「あぁっ!こんなところにラーメン屋が!」
「タクシー止まってる。うまいかもな」
「食べるっ?」
「っていいながら、店入ってくなー!」

「・・・どうでもいいけど・・・、これはどーゆー訳かしら!?」
その日、重役出勤してきた奈緒美は、入ってくるなり野長瀬に言った。
「あっ、なんか二人とも疲れてるみたいでっ」
「由紀夫昨日も寝てたのに、なんで今日も寝てるかなー!」
バカ高い応接用ソファを二つ使い、早坂兄弟が寝ている。
「だって、社長しょうがないですぅ〜」
典子が言った。
「ほら、見て!ほらほら!」
「何が。・・・!こ、これは・・・!」
「撮影もしましたよ!撮影も!」
「典子!よくやったわ!」
応接セットソファのそれぞれにあったのは、まさに、天使の寝顔―ズ。
「売れるわね」
「売れますよ。これは」
デジカメの小さな画面の中にあっても、由紀夫、正広、それぞれの寝顔は、相当なものだった。これは売れる・・・!奈緒美の商売人魂に火がついた。
「軽いグリーティングカードでも作ってみようかしら。どうかしら」
「いいと思います!印刷もしてみました!」
「さっすが典子―――!!」

これが、腰越人材派遣センターオリジナルカードが販売されることになったいきさつである。


ほしい。
ほしいよ、腰越人材派遣センターオリジナル寝顔カード!
ほしいよ!ちょうだいよ!誰かーーー!!

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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