天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

Gift番外編』

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ギフト番外編160話『リモコンに届かない』



あけましておめでとうございます。
年末に大風邪を引いた溝口正広が完治したのが大晦日。
でかけるーー!!と言い張った弟に引きずられ、早坂由紀夫が大変な目にあったのは当然のことだった。
なんか知らないけどアメ横いくー!と言い張った正広を、まさか一人ででかけさせる訳にはいかず、由紀夫も一緒に行ったのだが。
「なんだこれー!」
「うわー!ほんとにテレビと一緒だー!」
道であるにもかかわらず、満員電車の中みたいになっている通りでもみくちゃになりながら、正広の目はキラキラと輝いていた。
「マグロ買ってー!マグロー!」
「いや、マグロはいいけど、何もあんな塊じゃなくっても・・・」
奈緒美の贅沢になれている由紀夫にとって、冷凍まぐろの価値は低い。
「いくらもー!すじこもー!しゃけもぉー!」
「1本は食えねぇだろ!」
その後は大荷物をかかえて年越しそばを食べにいった後、紅白のために急いで家に戻った。
オープニングからSMAPの大トリまで正広はテレビの前を離れず、終わったと思ったら。

「さ!初詣にいかないと!」
「なにおー!?」
「今年はね、あえてね」
「あえて?」
「明治神宮に行こうかと!」
「おまえはバカかーーー!!」
どういう訳か人ごみの中に入りたくてしょうがない正広だった。
しかし、一週間ずっと家の中にいたのだから、これで気がすむのならと付き合った由紀夫は、まさか年が明けた後、デパートの初売りにも並ぶと言い出すとは思ってもみなかったのだった。

こうして、お正月休みが終わった。
家族サービスに疲れたお父さんの、「あーやっぱり会社が一番」といったつぶやきを由紀夫がもらしたかどうかははっきりしないが、年明けから彼は生き生きと働いている。
正広も生き生きと働いていた。
そして生き生きと働いて事務所を出た途端、さぶっ!とマフラーに顔をうずめた。
1月も過ぎ、ようやく冬らしくなったとでもいうのか、急に寒くなったなーと鼻の頭を赤くしながら正広は家へと急ぐ。
仕事始め早々、誕生日、クリスマスに続き、お年賀をいただくために忙しく呼ばれている兄は、今日も遅いようで一人の部屋に入った途端。
「さぶっっ!」
家の中もやたらと寒かった。
「うひゃー!さむーー!」
仕切りの少ない、大雑把に言えばワンルームの早坂家は暖房効率が悪い。
「寒いさむーい!」
外気と違うのは風がないことくらいだー!と正広はまずベットに飛び込んだ。
「さぶーー!」
しかし窓際からの冷気を受けてベットも冷えていた。
「さぶいさぶーーいさぶーーい!」
なかば面白くなってベッドの中でじたばたしていると、徐々にあったまってくる。
コートを脱ぎ、靴下を脱ぎ、布団の中でごそごそしているうちに、なんとなく眠くなった正広は、そのまま夕寝を決め込んでしまった。

そして目が覚めると、部屋の中が真っ暗。
明かりもつけないまま、寝てしまっていた正広は顔が冷たいと思った。
そして、何気なく顔に触れようと布団から手を出し。
「さぶっ!」
とあわてて手を引っ込めた。
部屋の寒さが尋常ではない。むしろ、クーラーが入っているのか!?と思うほどだ。
白文鳥のしーちゃんは大丈夫なのか!
いや、もちろん寒さ対策は色々してあるけれども、確認に行こうにもベッドから出られない。
なにせ。
正広の目には見えるのだ。ベットの外に跳ね飛ばされた自分のコートや、靴下や、ジーンズが。
寒い。どうしよう。
エアコンつけたい。
エアコンつけたいがリモコンがない。
リモコンはどこ・・・!
目だけでベッドサイドを見るが、どこにも見つけられない。どこだーー?と寝起きのぼんやりした頭で記憶をたどっていくと、食卓の上だ!とういことを思い出す。
通常の動作として、帰ってきたら食卓の上のリモコンでエアコンをつけるというのがあったのに、寒さのあまりうっかりしていた。
「・・・死ぬかもしれない・・・」
ぼんやりとそう思う。
寒い上に、まだ眠たいし、もちろんおなかもすいている。
足元が冷えている。布団がずれてしまっているようだ。これはいけないと二重に重なっている部分を求めて体を動かすが、正広の体温で温まったところ以外は、相変わらずの冷たさなのだ。
どうしようー!さむいー!
兄のいぬ間、すなわち鬼のいぬ間にベッドに入ったままお菓子を食べたい正広だが、今はそのスナック菓子隠し場も空っぽだ。
『に、兄ちゃん・・・!早く、帰ってきて・・・!』
うっ、がく!
などと遊んでみても、体が温まる訳じゃない。
しん、と静かな部屋の中で、このままひっそりと凍死するのか、自分・・・!などと悲劇のヒーローぶっていたら。

「さっぶ!なんだこれ!」

ようやく由紀夫が帰ってきた。
「に、兄ちゃん・・・!」
空気が冷たく、口を開くとその冷たさで咳が出る。
「何やってんだおまえ、窓あけて!」
「えっ!?」

ひゅ〜、と冷たい風が正広の頬を撫でていく。
「ま、窓・・・?」
「そこ開いてんじゃねぇか!」
「ま、まじで・・・!?」
驚いて固まっている間に、由紀夫はリモコンでエアコンを最強にし、窓を閉める。鳥かごのしーちゃんがちゃんと動いていることを確認し、ベッドの横で仁王立ちになった。
「・・・おまえ、窓閉めて出るって言ったよな」
「・・・い、言いました・・・!」
新年早々生き生きと働くべく、さっさと出かけようとした由紀夫とは対照的に、正広は暖かいベッドでぐずぐずしていた。
彼は深い悩みを抱えていたのだ。すなわち、もうちょっと寝るか、朝ごはんを食べるか。
よかったー、OLさんじゃなくてー。メイクのことは考えなくっていいもーん、とかやってる間に、兄に布団を剥ぎ取られ、窓を開けられた。
「寒いじゃーん」
それでものんきでいられたのは、部屋が温められていたからだ。
「ぐずぐずするんだったら先行くぞ」
「え、もう行くのー?」
「たんまり仕事があるんですよ、担当課長」
「おっ、そうだったね、早坂くん。ちみ、新年早々ご苦労だけども、しっかり働いておくれよ」
「何ゴッコだそれ」
ないひげを触る真似をしながら言ったら、兄はさっさと出かけてしまった。
「窓閉めとけよ!」
換気と、弟を起こすために開けた窓。

それをまんまと弟が忘れていた。

「さ、さぶいです・・・!」
「そりゃ寒いだろうよ!だったら着てりゃいいのに、なぜ脱ぐ!」
足元に散らばるジーンズやら、靴下やらを、器用に蹴り上げながら由紀夫は尋ねる。
「無意識に脱いでおったのですーーー!あーー!どこ持ってくのーー!」
「へっへっへっへ」
それらを足で洗濯機の方に運びながら由紀夫はおっさんくさく笑った。
「てことは、おくさぁ〜ん、今恥ずかしいカッコなんじゃないんですかぁ〜い?」
「あー!きゃーー!いやー!返してーー!」
「へっへっへっへ。返して欲しかったら奥さんの恥ずかしい格好を見せてもらいましょうかねぇ」
ジーンズを手にして言うと、きゃー!と正広が悲鳴を上げる真似をする。

「って、ばかなこといってないで返してってば!」
ようやく温まりつつある空気に、正広はベッドから降りた。
「10代男子が股引はいてなー」
「ちがーう!スパッツー!」
「らくだのなー」
「違うでしょー!そんな色してないでしょーー!」
正しい冷え性さんとして、防備は欠かさない。
そんな正広はぶーぶー言いながらジーンズをはき直し、その後、窓も閉めないで無用心な!しーちゃんにも謝っとけ!と兄からげんこつをもらったのだった。


私の部屋はねずみ小屋なので、エアコンをつけなくても私一人の体温であったかいのです!ビバ省エネ(笑)!

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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