天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

Gift番外編』

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ギフト番外編161話ミニミニ中編『怪盗あらわる』



正広が見事雑誌の懸賞で当てた、mina+ヤコブセンの椅子は、2月吉日、腰越人材派遣センターに届けられる運びとなった。

「なんで」
「なんでって?」
その連絡をもらい、ウキウキしている正広は弾む足取りで兄のところにやってきた。
「なんでわざわざ事務所に届けてもらう訳?」
「だって、あのソファが当たったのは、腰越人材派遣センターの溝口正広様だから」
「は?」
「いろんな住所で送ったの」
結構、割と本気で欲しがっていたのだ。だから、自宅の住所でも、職場の住所でも、そして、職場の人たちの住所に、自分の名前でも送ったのだ。
「おまえなんちゅーことを・・・」
「名前だけは自分にしとかないとまずいなって思って!」
「いやいや。まずいなじゃなくって!」
「うちに届いてたら、確実にいただいてたわよ」
「えー、奈緒美さんとこの雰囲気じゃないですよー。ゴージャスじゃないもん」
「なにせキュートですからね」
「うるさい!」
雑誌を投げつけられた野長瀬は、早く椅子が届かないかとそわそわしている実物が見たくてしょうがないのだ。
だから、正広だって野長瀬の住所だけは使わなかった。取り戻せる自信はなかったのだ。

「失礼しまーす」
来た!
運送屋の声に、一同は色めきたった。特に、正広と野長瀬が。
「来たぁ・・・!兄ちゃんどうしようー!」
「座ったらいいんじゃねぇの」
「えー!あんな可愛い椅子にー!?」
一瞬非難するような目を兄に向けた正広だったが。
「座りたぁ〜い」
ととろけるような声で言う。
「どちらにおきましょう」
事務所内の異様な空気には気付かないフリをしながら、二人の運送屋は大きな椅子を運び込む。
見事にパッキングされた椅子は、外からは単なる巨大な塊にしか見えない。
正広は、伝票にウキウキとはんこを押し、愛想よく運送屋を見送る。
本当ならばお茶のいっぱいもお出ししたいところですけど、早く椅子がみたいんですもん。ごめんなさい♪
心でそう付け加え、くるっと椅子の方に振り向いたところで。

「すみませーん!」

また運送屋が入ってきた。
一人はさっきの運送屋よりも小柄な男だ。
「溝口様に、間違った荷物をお渡ししてしまって!」
「えっ!?」
どうやって開けようかと、手ははさみとカッターに伸びていた正広が振り返る。
「それ、違う椅子なんです。すぐお持ちしますので、そちらを」
「あー、そうなんですかー・・・」
正広は、正直に、大変がっかりした顔をした。もう、これは自分のもの!と思っていたのにそうではなかったことへのがっかり。
本当に、ちゃんと持ってきてくれるの?という不安。
兄として、そんな弟の不安を、由紀夫も感じとった。
ちなみに、まったく同じようにがっかりし、不安を感じている野長瀬は、視界にも入っていなかった。
「ちょっと待って」
その運送屋に声をかけたのには、特に意味はない。ただ、今度は間違わないで欲しかっただけだった。
「えっ」
しかし、運送屋は、妙に動揺をした。
はっとしたのはやはり由紀夫だ。
品物を間違えたというなら、その間違えた品物から持ってくるべきではないのか。由紀夫の届け屋魂がそう言っている。
「先に、こいつの椅子を持ってきてくれない?」
「はい。すぐに」
けれど、運送屋がそのまま運び出そうとしたので、由紀夫はドアの前に回った。
「いや、先に」

由紀夫より少し背の低い男が、目深にかぶったキャップの下から由紀夫を見上げる。
その目に見覚えがあった。

「おまえ!?」

「そう!私は!」
ぶわさ!と運送屋の制服ジャンパーを脱ぎ去ると、なぜかそこには黒マントの男。
「怪盗!かわいいもの泥棒!」
「えーーー!!!本物だーーー!!!」
きゃーー!と近寄っていった正広が、兄に首根っこをつかまれてとめられる。
「・・・ていうか、あんた、ひろちゃんとは違うの?」
奈緒美がつぶやいたように。
怪盗かわいいもの泥棒は、なんと、溝口正広と瓜二つだったのだ!
「違う」
「似てないよー」
兄に首根っこを引っつかまれたまま、じたばたしている正広も否定した。
「うわーうわー、ほんとに怪盗だー」
「このまま、穏やかにこの椅子をいただくつもりだったが、バレたんじゃあしょうがない」
パチンと指を鳴らすと、もう一人の男もジャンパーを脱ぎ捨て、なぜか黒の全身タイツ風味の姿に。
「いただいていくぞ!」
「待て!」
「ダメ!そっちは!!」

がっこん。

これは、怪盗かわいいもの泥棒の失敗だった。
実は椅子が大きすぎたため、正面玄関からは入れられず、奈緒美語自慢のでっかい窓からの搬入をしていたのだ。
「何をする!椅子が傷ついたらどうするんだ!!」
「おまえが言うな!!」
盗人猛々しく文句を言う怪盗かわいいもの泥棒の首根っこも由紀夫はひっつかむ。
「やめないか!」
「ミスター!ミスターを離せ!」
どうやら怪盗かわいいもの泥棒はマスターと呼ばれているようだ。
「由紀夫こっちに!」
「ミスタぁーー!!」

そして奈緒美はおもむろにブラシを取り出し、さっさ、と、怪盗かわいいもの泥棒の前髪を下ろさせた。

「えっ!!ひ、ひろちゃんが二人!?」
「アホかおまえは!!」
かようにも、二人はそっくりなのだ。野長瀬が見間違えてしまうほどに!!
「やめないか!」
さっさと前髪を上げて、怪盗かわいいもの泥棒は不愉快そうに眉間にしわを寄せる。
すると、今度は典子がワックスを使って正広の前髪を上げてしまう。
「はっ!ど、どっちがミスターなんだ!?」
「おまえもか!!おまえもバカなのか!!」

由紀夫に怒鳴りつけられている部下を見ながら、怪盗かわいいもの泥棒は軽く唇を噛む。
完璧な計画だったというのに・・・!

一体どうしてやろう!

怪盗かわいいもの泥棒のコンピューターのような頭脳が、今動き始めた!

つづく


怪盗かわいいもの泥棒は、ヨーロッパの陶器の指ぬきなんかも好きですが、こないだ朝のワイドショーで紹介とかされてて。あら、小さく流行っていたのかしらと驚いてみたりして。
怪盗かわいいもの泥棒は、和賀英良くらいの絵でお楽しみください(笑)騒がしいけどね(笑)

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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