天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

Gift番外編』

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ギフト番外編162話『バレンタインにおしかけられた』



2月のイベントといえば、もちろんあれだ。
日本中、全国民がといってもいいほど盛り上がるあのイベント。
恋人たちが、仲間たちが、家族たちが、喜びや幸せに打ち震えるそのイベント。
そう。
『豆まき』である。

「あるか!」

と誰にともなく、怪盗かわいいもの泥棒はつっこんだ。
彼は自分のことをつっこみキャラだと思っているのだが、本質的にはボケである。そうでなければ、怪盗かわいいもの泥棒などとは名乗らない。
もちろん、彼にとって2月のイベントといえばバレンタインデー。おっとこ前なので、チョコレートは色々もらえるが、それよりも、なによりも。
クリスマスと同じように、とにかく、バレンタインって可愛いと思っている。
ひな祭りだって可愛い。
だから、まぁ、節分だってそんなに悪くはないんだけども、バレンタインに比べれば地味だ。
さて、じゃあバレンタインに何をするかというと。

「かわいい・・・」

デパートなどのバレンタイン特設フロアのガイドブックを眺めるのだった。
どこの会場が一番かわいいかを考える。だが、足を運びはしない。あんなに人で混雑した会場なんて可愛いはずがない。
だが。
と、怪盗かわいいもの会場は考えた。
人のいない時間だったら?
誰もいないチョコレート売り場。ただ、ディスプレイされているだけのチョコレート。
たとえばショーケースに白い布がかけられているかもしれない。その布をはがし、中のチョコレートを眺めたり?
少しかわいいかも。

と、怪盗かわいいもの泥棒は思ったので。

「だからって!人の弟を誘いにくるな!」
「好きかと思って」
「好きだよ!」
心からの気持ちをこめ、両手を握り合わせた正広がいい、由紀夫はその後頭部をはっ倒した。
「おまえはほんっとに!バカだな!この中に詰まってんのはなんだ!生クリームか!」
後ろから両手で頭をつかみ、ぐいんぐいんシェイクもした。
「脳です!脳!」
「脳!?そんな立派なもんが入ってんだったら、好きだよとかゆってる場合じゃねぇって解るだろう!」
後ろからぐいんぐいんシェイクされて、軽く目を回しながら正広は振り向いた。
「だって、怪盗かわいいもの泥棒が誘ってくれてるのに!」
「誘いにくんなよ、そんなことによぉ〜!」
「だって兄ちゃん知らないの!怪盗かわいいもの泥棒のことを!」
「知ってるよ!こないだ腹も踏まれました!」
「もー、そんなこと根に持たないのぉ〜」
兄の肩をパンパン叩きながら言った正広は、一転真顔になった。
「すごい人なんだから」
「は?」
「怪盗かわいいもの泥棒はね、かわいいものしか盗まない」
「・・・・・・で?」
「だから、かわいいバックだなーと思ったら、中身はおいといて、バックだけをいただくんだ!」
「・・・・・・・」
由紀夫は絶句し、怪盗かわいいもの泥棒は小さく笑みを浮かべる。
バックが欲しければ中身をおいていくどころか、怪盗かわいい泥棒は、可愛い財布だなと思ったら、中身には1円たりとも手をつけない。レシートの1枚にいたるまで、すべて、そこそこ可愛いお財布に入れ替えてくるほどなのだ。
「そんな怪盗かわいいもの泥棒が、バレンタインチョコ会場を見に行こうって誘いに来てくれてるんだよ!?どうして行かずにいられるの!」
「忙しいんだよ!」
「なんで!もうご飯も食べたしすることないじゃん!」
「あるんだよ!」
「何がぁ〜?ビデオならとれるよ!大丈夫!相棒も今日30分ずれてるけどとれるし、水10だって別のデッキで取るからぁ!」
「そうじゃなくって!そのなんとか泥棒が」
「怪盗かわいいもの泥棒ね」
「が!土足で入ってきたから!シーツを替えるんだよ!」

バレンタインフェアを一緒に見に行ってもいいなと、怪盗かわいいもの泥棒は早坂兄弟宅にやってきたのだが、またもや窓から入り、ベッドの上に着地していたのだ。

あ、という顔を正広はして、そそくさと新しいシーツを取り出してくる。
「まま、兄ちゃん座って座って。あ、怪盗かわいいもの泥棒さんも座って座って。ここはね、僕がちゃちゃっとやっちゃいますから。そしたらでかけましょうねぇ」
「でかけんな!」
「えー!なんでー!?」
「尋ねかえすな!」
やっぱり正広の頭蓋骨には、カスタードクリームでも詰まってんのか?と由紀夫は思う。
なんでこんな訳の解らない話に乗ろうとするのか・・・!

「えー・・・じゃあ〜・・・」
正広は肩を落とし、しょんぼりしながらシーツを替えたベッドから離れ、玄関へ向かう。
で!でかけるのか!と思ったら、くつを持ち、怪盗かわいいもの泥棒に。
「すいません、とりあえず靴は脱いでもらえますか」
と声をかける。
あぁ、と平然とした顔で靴を脱いだ怪盗かわいいもの泥棒は、黒尽くめのスタイルで、手袋も黒だ。
「で、じゃあこちらから」
「わざわざ窓から出ていこうとするなーーー!!」
「えー!だってー!スタイルってもんがさー!」
「玄関へいけ!!」

びしぃ!と玄関を指差した由紀夫は、二人が玄関に向かうより前に、食卓の上に、どん!とあるものを置いた。
「えっ?何それ」
すかさず正広が食いついてくる。
「ん?鍋」
「えー!すごい可愛いー!」
「ル・クルーゼの、ミニフォンデュセット、チェリーレッド」
怪盗かわいいもの泥棒も静かに言った。
由紀夫はにやりと笑みを浮かべ、その横にチョコレートを置いた。
「バレンタインも近いし、鍋ももらったし、チョコフォンデュでもしようかと思って」
「えーー!ええええーーー!!」
正広は興奮した。興奮しきった。
チーズフォンデュでもすごいと思うのに、その上チョコフォンデュ!とろとろとろけたチョコレートに、フルーツとかをつけていただく!あの!チョコフォンデュをご自宅で!
「な、なんでなんで!?」
「なんでって。バレンタインだし。チョコいっぱいあるし?」
14日が土曜日にあたるせいで、すでに由紀夫の手元にはチョコレートが届いてきている。
「ま、いろんなチョコをブレンドすれば、オリジナルチョコフォンデュができるなじゃないかなーと思っただけ」
「だ、だけ・・・」
そんなことぐらいでチョコフォンデュをしようなんて!
「しかも一人で!」
「だっておまえ、でかけんだろ?脳みそカスタードにしながら」
「えーー!?ええええええーーーーー!!!」
正広は悩んだ。
チョコレート売り場にいったところで、夜にはチョコレートがないかもしれない・・・!でも、今ここにあるチョコレートは確実に食べられる・・・!
「さ、さっさと行って。俺は美味しいチョコフォンデュ食べますから。イチゴもあるしなー」
「ぐおっ!」
「バナナは、普通のと凍らせたのも用意しちゃったしなー」
「あーん!ひどいよぅーー!!」
半泣きで、正広は席についた。
そして、怪盗かわいいもの泥棒も。
「・・・あなたはいいです」
「私は別に甘いものが好きな訳じゃないんだ」
「は?」
「ただ、ル・クルーゼは可愛いから」
「み、見ていくのか!?」
「まぁ、1つ2つくらいは」
「食べても大丈夫ですよねー」
「別に食べていただかなくていい!」

こうして、なぞのチョコフォンデュパーティーが開催されたのだった。

その夜、洗った食器を片付けていた由紀夫は、フォンデュ鍋がないことに気がついた。
「・・・・・・・・?」
あんなに鮮やかな赤い鍋がどこにいった?と洗い物をした正広に聞いてみる。
「え?洗って、おいといたよ?」
「拭いてどっかしまったんじゃねぇの?」
「うん。やってなーい」
なんで?と、首をかしげた由紀夫は、あ、と顔を上げた。
「あのガキ・・・!」
「えっ?」
「あのなんとか泥棒だ!」
「怪盗かわいいもの泥棒!?」
怪盗かわいいもの泥棒はチョコフォンデュが終わった後、ありがとうとも、ごちそうさまともつかない微笑を浮かべ、またたく間に、また窓から出ていってしまっていた。
「あの後盗みにきやがったな!?」
「すごーい!全然気がつかなかったー!」

そう。速さか兄弟は、何度も窓からやってきた怪盗かわいいもの泥棒に、窓以外からはこないと思い込まされていたのだ。
鍋が洗われた後、ごく普通に玄関から入ってきて、鍋をいただいていった怪盗かわいいもの泥棒は、小さな可愛いフォンデュ鍋を、部屋の飾り棚に飾ってみる。
「うん」
そして満足そうに微笑んだのだった。


ちょっと気にいってるみたい。怪盗かわいいもの泥棒(笑)ふふ・・・(笑)

次回更新は、来週水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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