天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

Gift番外編』

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ギフト番外編164話ちょこっと中編『ウソが届いた』



<これまでのお話>
4月1日、エイプリルフールの日に、おまえたちのウソにはセンスってものがない、とばっさり断罪された腰越派遣センター一同。と、言うことは、ばっさり断罪した側である早坂由紀夫は、腰越人材派遣センター一同、の中に含まなくていいのだろうか。
おそらく彼は、こう答えるだろう。
『それでいい。むしろ、それがいい』
と。
そこで腰越人材派遣センター一同は、彼の微笑みを得るために、センスのいい笑えるウソをつかなくてはいけない羽目に陥ったのだ!

「・・・でも、さあ」
じゃあ、仕事いってきまーす、と、届け屋の仕事に由紀夫が出ていった後、しばらく事務所は静かだった。
まず口を開いたのは、奈緒美だ。
「・・・自分の、笑顔が見たかったら?言うことを聞け?ってゆーの?それって、どーゆー人格なの?」
「社長・・・」
野長瀬も、眉間に深く深くしわを刻んでいる。
「・・・なかなか、あぁは言えないですよね・・・」
典子もため息混じりだ。
だが、結局人間は正直に生きるべきなのだ。正広は、ぱっと顔を上げる。
「・・・見たい」
「ひろちゃん・・・」
「僕は、見たいです・・・!」
「あぁ〜、あたしだって見たいわよぉ〜!」
「可愛く、にこ、っていうのもいいしぃ〜、さっきのセクシー系なんて、もぉー!」
もちろん野長瀬だって見たいに決まっているのだ。そこでしばし、由紀夫の素敵な笑顔トークが盛り上がるだけ盛り上がった。
仕事?
いいのだ。人は仕事のために生きているのではない。生きていなくては仕事もできないのだから(意味のない言葉)

「じゃあ、どうする!?」
いくら盛り上がったって、このエイプリルフールでセンスあふれる笑えるウソをつかないことには、新しい笑顔との出会いはおぼつかない。奈緒美は3人を見つめた。
「えっとー・・・」
「センス・・・」
自分のセンスが、少し一般的ではない、と気づいてはいる野長瀬は表情を曇らせる。
「どっきり系はダメってことですよね。ひろちゃんが倒れたとか」
「あー、絶対ダメね。ましてひろちゃんじゃあ。野長瀬がバニーガールにヒールで顔面を蹴られて入院くらいならいいけど」
「よくないでしょう!」
「野長瀬さんがぁ・・・」
そこで正広も考えた。
「野長瀬さんが、商店街で、暴れ馬に」
「暴れ馬!?」
「暴れ馬に、蹴られそうになったけどぉ、なんか、それにまたがっちゃってー、どっか行った」
「ウソ丸出しすぎでしょう!ひろちゃん!」
「野長瀬さんがぁ」
典子も一応言ってみる。
「野長瀬さんが、こないだ行ったキャバクラのおねえちゃんに電話番号を聞いたけど、それが、どっかの自己啓発セミナーの番号で、今えらいめにあっている」
「ウソじゃないじゃないですか!!」
「しかもそれ、誰でも知ってるわよ」
そっかー、と、野長瀬の傷をえぐったまま、話し合いは続けられた。
「何がいいかしらねー。ウソ、ウソ・・・」
「ウソ、なぁ〜・・・」

こう考えてみると、笑いを誘えるようなウソというのはなかなかないものだった。
「和めるウソってー、どういうのかなぁ〜」
「『もちろん、昨日の食事会は女の子ばっかりだったわよ』、とか言うのがそうじゃない?」
「奈緒美さん・・・」
「『あたし、実はお金持ちの家の子なの!生まれた時に病院で取り違えられて!』」
「それは昭和のドラマだわね」
「昭和のこと、典子、よくわかんなぁ〜い♪」
「バカはほっといて、困ったわね〜、私がつくウソはもっとディープなものだし〜・・・!」
「・・・怖い・・・。奈緒美さんのディープなウソ・・・」
思わずつぶやいた正広には、ほの暗い奈緒美の微笑みが向けられる。

こうして、会議(いつの間にか会議にまでなっていたのだ)は遅々としてゴールに向かえなかった。
あれはどうだ、これはどうだ。このウソはすごかった。あのウソにはだまされた。そんな体験談ばかりが出て、つまり、独創性がまだ彼らにはなかったのだ。
そんな中、ある単語が突然正広の脳裏に浮かんだ。
それは、『白浜の双子パンダ』だ。
『な、なんで今突然そんなことを思っちゃったんだ??』
急に浮かび上がった単語に、正広は戸惑う。なんだろう、白浜の双子パンダって・・・と、自分の思考の軌跡を追い始める。えっと・・・、アンデスメロンは、アンデスとは関係ないけど、あのネーミングって、ウソという範疇なの?冗談?メロンパンにはメロンが入ってないっていうのはどうってことで・・・。
『あぁ・・・』
正広は自分の思考の単純さに、そっと頬を赤らめた。
メロンパンから双子パンダに到着するなんて・・・。ポ・・・っ。
「でも、いいかも・・・」
「え?何が?メロンパンにする?由紀夫でも、知ってるわよねぇ」
「メロンの入ってるメロンパンがあるってことまで知ってそうじゃないですか?兄ちゃん」
「・・・あるもんね・・・」
「そうじゃなくって、パンダです」
「パンダ?」
「白浜に、今度は三つ子パンダが生まれた!とか」
「生まれたの!?」
「生まれてませんけど!それを、いかにも生まれたって風に作ったら面白いかなーって。あのー、ほら、HPとか作っちゃうんですよ!三つ子パンダの!」
「あら!可愛い!新聞を作っちゃうみたいなものね!」

「でも、誰が?」

典子の無邪気な問いかけに、腰越人材派遣センター一同は、再び口を閉ざした。

HPを作るような能力は、この4人にはかけらもないのだった。残念ながら、その能力は由紀夫にもないのだった。
しかし、由紀夫は遅くとも夕方には帰ってきてしまう。
このままウソの一つもつけないようでは、一体どんな冷ややかな視線を向けられてしまうのか・・・!
どうにかできないか!彼らは、さらに高速で頭を回転させ始めた。


つづく


みじかーい!でも、なかなか可愛いウソっていうのもないもので。
みなさんご苦労されてますわー(笑)

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