天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

Gift番外編』

yukio

このページの画像は、すべてyen様の作品です♪

第16話プロローグ編『チョコレートを届ける』(べたですまん…!)

めっちゃ短い前回までの話。

「野長瀬が飼い始めたうさぎは、智子(山口智子のファンなので。でも、実はオス)と名づけられ、さっそく賃貸アパートの柱をかじって部屋をえらい事にしている。そんな中、2月の大イベントが近づいていた」

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「えっとぉ」
ごったがえすデパートのチョコレート売り場。フェイクファーの派手なミニのコートにストレッチブーツという姿の千明は、買い物客のジャマになるのも気にせず、通路の真ん中に突っ立って、あちこち眺めていた。
「由紀夫にわぁ、あたしが、甘くって、超―美味しい、プレゼントだからぁ、後は、ひろちゃんとぉ、野長瀬さんは…、どぉしよっかなぁー」
由紀夫が聞いたら、こぶし震わせて「ぶっ飛ばす!!」と怒鳴るに違いないおっそろしいセリフを吐きながら、千明はキョロキョロとあちらこちらの売り場を眺めて歩いた。
超有名ブランドのバカ高いチョコレートから、可愛らしいチョコレート、冗談めいたチョコレート。太っちゃうから、食べたらダメーっ!と解っていても、自分の分をがばがば買い込みたくなる千明。
「ダメ、ダメっ、とにかく、ひろちゃんにっ」
ぶんぶんっ!と首を振って、正広に似合いそうなプレゼントを探し始める。可愛いのがいいなぁー、と思いつつ、元気よく歩き出した。

千明の体力には化け物じみたものがある。暖房の効きすぎたデパートの地下は、コートで着膨れした人間が大量になだれ込み、待ってくれ、そろそろ冷房効かせてくれや、という状態になるにも関わらず、涼しい顔で千明は買いものをする。正広用にと、可愛らしいクマのぬいぐるみとマグカップ(チョコ入り)のセットを買い、あまりに可愛いチョコレートが多かったため、野長瀬、田村にも選んで、他にも買っちゃおっかなぁー、とウロウロしてた千明は、それに耐え切れなかったらしい女性をみつけた。

「だぁいじょうぶ、ですかぁー?」
階段近くでうずくまっている女性に声をかける。千明と変わらないくらいの、若い女の子だった。
「あ…はい…」
「わぁ、顔、真っ青ですよぉー。す、座った方が…」
あろうことか、5m程離れてるベンチを千明はひきずってきて、そこに彼女を座らせる。
「すみません…」
「ううんっ。平気、平気―。それより、何か、欲しいものない?お水、とかぁ。ほら、ここデパートだから、なんでもありますよぉ」
ニコニコっと邪気のない笑顔で千明はいい、青ざめた顔の彼女の表情も、少し和らぐ。
「んーと、んーと、あ!ハンカチぃー」
バッグから取り出した、お定まりのキティのハンカチを、千明は彼女に手渡した。
「すごい汗だよぉ」
「はい…」
受けとった彼女はそっと額にハンカチを当て、息をついた。それとともに、ふと顔を上げて、一瞬顔を強張らせた。
「え。何…?」
「あの…、水…」
「水?」
「か、買って来てもらえませんか…っ?」
キョトン?としながら、千明は根が単純。
「うん。いいよ」
ぱっと立ち上がって、ミネラルウォーター売り場に走った。

「えっとねぇ、エビアンとぉ、六甲のおいしい水とぉ、…あれっ?」
帰ってきた千明は、キョロキョロと辺りを見る。ベンチには、千明が買ったチョコレートの入った袋しかない。
「あれぇ…?」
落っこちたのか?とどうみても空っぽのベンチの下まで覗ききこんで、裏っかわも覗きこんで、ようやく解ったのは、彼女がその近辺にはいない、ということだけだった。
「あれれぇ?あれぇ?」

デパートの店員に助けられたのかなぁ、とベンチに座ってしばらく待ってみたが。
さすがの血の巡りの悪い千明も気がついた。

「騙されたぁっ?」
すくっ!と立ち上がる。
「ひっどーい!もおっ!ベンチまでひっぱってきてあげたのにぃっ!」
そのまま放り出していこうとして、店員の目が背中に感じられたため、ずるずると引っ張り直す。
「どぉーしてあたしがぁっ!?」
おじ様族にアピールする、千明のふくれっ面は、やっぱり見事なふくれっ面であった。

むしゃくしゃするぅっ!!
と、その辺のおっさんだまくらかして、食事でもおごらせてやるぅ!と思った千明だったが、幸か不幸か、好みのおじさんが見つからなかったため、すごすごと家に戻る。
今日は、バレンタインイブの金曜日。今年のバレンタインは、土曜日のため、オフィスユースが少なく、デパートもやや困っているらしい。が。千明には関係がない。
「これが、ひろちゃんでしょー?これが、野長瀬さんでぇ、これが田村さんでぇ、これが…。あれ?」
千明の男友達は、かなり大量に登るため、デパートの紙袋の中には、大量のチョコレートが入っていた。が、由紀夫以外は義理のため、大して大きなものではないし、同じ種類が10個とか入ってる。
「こんなの、買ったっけぇ」
千明が首を傾げながら取り出したのは、ごくごくシンプルな茶系のラッピングペーパーに、深いブラウンのリボンが、こちらもシンプルにかけられているチョコレート。形も当たり前の長方形。
正広は、一応、同じ男を愛するもの、という同士心が(千明の方で一方的に)あるので(正広かなり迷惑(笑))、一番大きくて、値段も張るものを買ってある。星の形になっていて、ラッピングも可愛らしいピンクに、鮮やかな色合いのキャラクターが散っていて、外側はオーガンジー、そして、大ぶりなリボン、というもの。野長瀬や、田村には、とにかく面白いものっていうので、こちらもラッピングはひたすら派手。十把一欠けらのボーイフレンドたちにも、値段の安さを感じさせない、可愛い、明るいラッピングのものを選んである。
「こんな地味なの、買ってなぁーい」
ポイッ!と放り投げ、数を数えて、別に間違ってないことを確認して、ようやく千明はおかしいと思い始めた。
「…万引き、しちゃったのか、なぁ…」
そりゃもちろん、万引きくらいやったことはあるけれど、無意識にやってしまうほど、内面に何かがあるわけじゃなかった。
「それかぁ、間違えて入っちゃったとか?」
ごったがえす人並だったし、たくさんチョコレートを積み上げていた人もいたし、その人とぶつかった時にでも、袋の中に落ちたとか。

もう一度手に取ってみると、そのチョコレートは、随分と上等なものに見えた。
ラッピングしてあるから、中味がどういうチョコレートかまでは解らなかったけども。
「これぇ、由紀夫にあげちゃおっかなぁー…」
メインのプレゼントは、甘くって、超―美味しい自分、と決めてはいるものの、正広と一緒に暮らしてる部屋に行くために、美味しく食べてもらえるかどうかは解らない。
一応、これもあるのよ、って事にしといた方がいいかも。

それでいいのか!?という疑問は一切持たず、千明はパック、むだ毛処理など、ホームエステに余念のない千明であった。

翌朝。2月14日。
こっそり早坂家の玄関までやってきた千明は、スラっと取り出したヘアピンで、ナチュラルに鍵を開ける。
こっそりこっそり階段を上がり、ゆっくりゆっくりドアを開け、そぉーっと部屋に忍び込んだ。リビングを抜け、ベッドの側まで近寄ると、例によって、例のごとく、由紀夫を正広が一緒に寝ていた。パカっと口を開け、ほぼ大の字になって無防備に寝ている由紀夫に、隅っこの方で、毛布を抱き込んでうつ伏せになっている正広。
由紀夫ったら、かわゆいーっ!!
心の叫びが唇から飛び出さないように手で押さえ、千明は足をじたばたとさせる。

心ゆくまでジタバタして、どこから行こうかなぁ、と場所を吟味する。正広が向こうにいるから、こっち側から入ってってぇ、やだっ!隣にひろちゃんだなんてっ!燃えちゃうかもぉーっ!!!
と、由紀夫に知られたら、成層圏までぶっ飛ばされそうな事を考えながら、心の中で失礼しまぁーす、と呟いた千明は、ベッドに片膝をかけ。

「殺すぞ」

脅された。

「なぁんで!なぁんで殺されなきゃいけないのよぉー!」
「でけぇ声出すな!正広が起きる!」
「あ、そよね。ひろちゃんが起きちゃったら、できないもんねっ」
「何もしねぇよっ!出てけ、こらぁっ!」
無理矢理布団の中に入り込んでしようとする千明、その千明を押し出そうとする由紀夫。それぞれ違って意味で正広を起こしたくない二人の無言の攻防は続く。

「何やってんのぉ…?」
しかし、努力空しく、毛布が引っ張られたため、正広は目を覚ましてしまった。
「千明ちゃん…?」
ちょっと肩ののぞいたパジャマ姿に、寝癖のついた頭を、斜めにかしげてぼんやりした瞳で二人を眺める正広。
「…こうなったら、3人でぇーっ!!」
「死んでしまえぇーっ!」

ボクサーパンツから伸びる足に階段から蹴り落とされ、蒲田行進曲じゃないんだからぁーっ!!という叫び声を残した千明だったが、目にも留まらぬ早業で二人にチョコレートだけは手渡した。

「チョコレート美味しかったっ?」
「んなもん食ってねぇよ」
「なぁんでぇ?なぁんでぇよぉー!あ!ひろちゃんは食べてくれたよねぇー」
「え、あの…」
16日。腰越人材派遣センターにやってきた千明は明るく尋ねた。
「えっとぉー…」
「食わせてねーよ」
「なぁんでぇー?あのねっ、別に手作りとかじゃないのよっ!」
「えばるな!」

「あ!千明ちゃーん!」
野長瀬が大喜びで走りよる。
「ありがとうねぇ。チョコレート、もう、俺、嬉しくて…!」
泣き真似をしながら、奈緒美、典子を見る野長瀬に、二人ともが言った。
「だって、土曜日だったじゃない」
「知ってるんですよっ!社長!由紀夫ちゃんとひろちゃんに、宅配でチョコ送ったでしょおっ!!」
「送ったけど、それがどしたのよ」
「ど、どしたって…」
「バレンタインのチョコレートってのは、好意を持ってる相手に贈るもんでしょう?」

ガーン。

「奈緒美ぃ、それ言っちゃったら、身も蓋もねぇって」

いいんだ、いいんだ、僕には智子(みにうさぎ。実はオス)がいるんだ…。ぶつぶつ呟く野長瀬がうずくまっていたのは、テレビの前だった。基本的にテレビがつけっぱなしの腰越人材派遣センター。画面はニュースだった。
「あ」
千明がその画面を見て声を上げる。
「あたし、知ってるー、この人―」
「え?」
画面は、行方不明のOLの写真を映している。
「あんた、この人行方不明って…」
「え、でも、金曜にデパートで…」
「行方不明になって半月って…。おまえ、最後の目撃者じゃねぇのか?」
由紀夫に言われおろおろしていた千明は、突然後ろから肩を抱かれ、悲鳴を上げた。

<つづく>

また、なんちゃ考えてないの丸解りやね(笑)野長瀬のウサギちゃんは、そんな野長瀬が好きっ!と立候補してくださった方がおられたので、その方のお名前を使ってしまいました。智子さん、ありがとうございますぅ!山口智子さんじゃありませんよ、念のため。
あるかいっ!!

次回、来週の水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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