天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

Gift番外編』

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このページの画像は、すべてyen様の作品です♪

第16話後編『チョコレートを届ける』

めっちゃ短い前回までの話。

「キティちゃんのハンカチがどうしても気になる千明は、山野美智子の部屋に忍び込んだが、ハンカチを探す事はできなかった。一体、彼女はどうしているのか、という話の中で、男がいるんでしょう、という言葉を聞いた千明は、ようやく紛れ込んでいたチョコレートの事を思い出した」まとまりのないあらすじですまん。

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今日の由紀夫ちゃんのお仕事

その1.届け物「山野美智子」届け先「朔原令子」
その2.届け物「チョコレート」届け先「山野美智子のイギリス人恋人」

そして、案の定というか、何と言うか。
包装紙とチョコレートのパッケージの間には、フロッピーディスクが挟まれていた。丁寧に包装を開けて、フロッピーを入れたらしい。
「あったじゃん…」
「あったねぇ…」
自分で保存しておいたチョコレートながら、正広も驚く。
「フロッピー…、じゃあ、大したデータ入らないわよねぇ」
奈緒美がいい、当たりを見回す。
「見たって、コンピュータなんかねぇよ」
「あんった、今時、なんてこと言ってんのぉ?ちょっと、じゃあ、これ田村んちに」
言いながら、朔原を見る。
「いいんでしょ?」
「そうねぇ…。下手に上司に渡すと、どこでどう処理されちゃうか解らないし。複製作っといて」
やれやれ、これで終わった、とソファに座り込んだ由紀夫は、朔原の声に顔を上げる。
「じゃあ、早く彼女を見つけてね」
「はぁっ?」
「依頼は終わってないのよ。ほら、急いで」

やれやれ、と、由紀夫が立ち上がった時、一瞬静かになった室内に、低い音がした。
「何…っ?」
驚いた千明に正広が、ビデオ予約してたから、と答え、それを聞いた由紀夫は思い出した。
「あの、部屋…」
「え?」
「おかしいとは思わなかったか?あの部屋」
千明と、朔原を交互に見て、由紀夫は尋ねる。
「おかしいって…?」
答えたのは、指紋までを調べた朔原の方。
「俺と千明があの部屋に入った時、部屋にカーテンがひかれてて、薄暗かった。随分暗い部屋で、明かりは、留守番電話の点滅だけだったんだ」
「だから?そりゃ出てるんだから…」
「でも、いくら出かけたって、ちょっと出かけるだけだったら、テレビの主電源までは切らねぇんじゃねぇか?」

あの部屋は、入っただけで全体が見渡せるくらいのワンルームマンションで、テレビもビデオも見える位置にあった。テーブルの上に、リモコンも二つあった。
「俺が知ってる人間の中じゃあ、正広は結構几帳面な方だし、奈緒美は基本的にケチだ。それでも、普通に出かける時に、テレビの主電源までは切らない。切るとしたら」
「…長期間いなくなる時」
几帳面だと言われた正広は、自分だったらそうだろうと思う時を答える。
「無理に連れ去られたんだったら、そこまではしないだろ。山野美智子は、自分で出て行ったんじゃないか?」
「ごみ箱が空だったのよ。キッチンも水跡一つなし」
朔原が言った。
「自分で姿を消した、というのは間違いなさそうね」
バッグを持って立ち上がる。
「今更だけど、空港に問い合わせて見るわ。JRと。だから、あんたも急いでね」
「あ、やっぱり急ぐのか…」
しょーがねぇなぁー…、と、由紀夫はようやく正広が調べた山野美智子の同僚リストに目をやった。

「山野さんは、休暇ですけど…」
会社帰りに、由紀夫はグッチのスーツに甘い笑顔を武器にして、正広のリストの中でも、物見高そうなOLは捕まえていた。彼女はびっくりしたように由紀夫を見ている。
「あぁ、そうですか。いえ、山野さんに直接お会いする訳にはいきませんので、ぜひ、川原さんのお話をお伺いしたいんですけれど」
にっこり笑って、相手の名前をちゃんと呼ぶ。あなたの力が必要です、と思いっきりアピールすることで、由紀夫は山野美智子の同僚、川原しずくの心をGETした。
ごくごく自然な流れで(この辺りは、溝口武弘の得意技)彼女を喫茶店に誘導。ケーキと紅茶で、なおも気持ちをほぐした。
「山野さんの事を、ちょっとお伺いしたいんですが、あの…、何の事か解ります?」
「いえ…」
曖昧な顔で首を捻る彼女に、事務的な丁寧な口調で由紀夫は言った。
「山野さんにご縁談がありまして…」
「あぁ!」
ケーキを頬張っていた川原しずくは、手を叩いた。
「決まったんですかぁ?」
「はぁ…」
驚きを押し隠し、負けずに曖昧な笑顔を作る。
「でも、イギリスでも身上調査ってするんですねぇ」
イギリス!?外人と付き合ってんのか!?
「どこの国でも、お子様の事は気にかかりますからね」
「そっかぁ…。でも、美智子は、イイコですよ。ちょっとおっちょこちょいなとこあるけど、明るくって、元気だし。心配することないですよぉ」
「はぁ。お仕事は、どんな感じで?」
「仕事は…、私たちは普通のOLだから、別に、特別は…。あ、でも、美智子って、部長から直接仕事頼まれてること多かったかなぁ」
それをね、不倫だとかなんだとか言う人がいてぇ、と話し続ける彼女の話を適当に聞き流しながら、山野美智子の所属してる部が、朔原に目をつけられてる部署だという事を由紀夫は考えていた。

これはもう海外だろう、と、朔原は成田への問い合わせを強化したが、山野美智子は引っかからず、それなら関空、と手を伸ばして数日、千明から、腰越人材派遣センターに驚くべき電話が入った。
『山野美智子さん帰ってるみたいーっ!』
「はぁっ!?」
電話を受けたのは、他の仕事をやるにやれず朔原の連絡待ちをしていた由紀夫はうつらうつらしていた野長瀬が椅子からずり落ちる程の大声で怒鳴り返した。
「何だってぇ?おまえ、どこいんの!」
『マンションの前ぇー!カーテン開いてるのぉー!』
「…お母さんでも来てんじゃねぇの?」
『解んないけどぉ!』
解んないけど、行かなくてはならなかった。例のフロッピーディスクは、決定打になるのは無理のようだったが、どこにどう金が動いたか、という大雑把な内容が把握できる経理のデータで、ここに、証言まで加われば、かなりいい線までいけるはずだと言うから。

なるべく怪しくないようにと、大人しめの色合いのスーツを来てマンションに到着した由紀夫は、入り口に止まっているトラックを見て、立ち止まった。
「…引越し…?」
「あ!由紀夫〜っ!」
千明がバタバタと走りよってきて報告した。
「引越しなのぉー!」
「山野美智子か?」
「そぉ!」
急いで部屋に駆けつけた由紀夫は、ちょうどドアから出ようとしていた山野美智子と鉢合わせした。写真より、実物の方がいい感じだな、と一瞬思う。
「あのっ」
「はいっ!?」
急に声をかけられてビク!っと震えた山野美智子は、由紀夫の後ろの千明を見て、
「あぁー!」
と指差し合った。

「ごめんなさい、これ、お返しできなくて…」
引越し屋がバタバタしてる部屋の片隅で、山野美智子は千明にバッタモンキティハンカチを返す。
「あぁ、よかったぁー…」
「マジでそれ取り返すつもりだったのか…」
ギュっと胸元に抱きしめている千明は心の底から嬉しそうにしている。
「あの…、という事は…、あの、フロッピーは…」
「…警察が持ってます」
「そうです、か…」
困惑した顔で俯く。
「あの…、どうなるかなぁって思ったんです、よ」
「え?」
「誰の手に渡るか、な、と思って」
困ったような顔で、彼女は言った。
「あたしも、相当ノンキなOLで、自分がやってる仕事がどういう事か、今一つってゆーか、今全然?解ってなかったんですよぉ。何も気にしてなくって。それで、こないだ、仕事辞めたいって言った時に、なんか、すごく困ったようにされて、あれぇ?って思ったんですよねぇ」
他のOLたちは、残念だねぇ、と型通りの言葉で見送られていくのに、別に優秀でもない、事務職の自分がなんで?と思った。そして、恋人のイギリス人留学生にあーでこーで、と話したところ、
「なんか、おかしいんじゃないか?って言われてぇ…。怖く、なったんです。…あたし、会社結構好きだし、悪い事してるって言われても、ピンとこなくて。でも、ピンとも来ないんだけど、よりにもよってあたし、そういう社会派推理モノとかよく読んでて、消されたらどうしようとかって、どんどん怖くなって、もう、誰も知らないところに行きたくなって…」
「イギリスに行った?」
「え?いえ…」
「じゃあ、男のところ?」
「彼、水産大学で調査船に乗ってるんです」
「…見つからねぇはずだよ…!」
由紀夫が言い、すみません…と山野美智子は小さくうなずく。
「帰って来たのが、バレンタイン前で、チョコレート買いたいなって思ってデパート行ったんですけどぉ…。会社の子も買いに来てて、見つけられたくなくって」
「それでぇ、あたしの荷物にチョコいれたの?」
「こうやって、フロッピーを人に渡して、それが、どう転がるかで、運が解るんじゃないかと思って…。普通の人が見ても、なんだか解らないでしょう?突然、あれだけあっても」
確かに、山野美智子が持っていた、という前提がなければ、どこの会社のものか判別するのは難しそうな内容だった。
「あなたに渡しただけだったら、せいぜい見たことがないチョコレートがあるから、って開けて見て…、で、まぁ、中を見ても、何?って思うくらいだろうって思って。そしたら、あたしもう、このまま行方くらましちゃおうって」
「どこに引越すつもり?」
「今後こそイギリスです。彼も、もう帰国が近いんで」
「親にも内緒で?」
「いや、親はね、彼とのことちょっと反対なんで、それで黙ってただけで、向こうについたら言わなきゃいけないなとは思ってたんだけど…」
「でもぉ…。もう、警察に、行っちゃったんでしょう?フロッピー…」
山野美智子は、少し淋しそうに微かに笑った。
「…ってことは、警察の方が運が強いんです。このまま、逃げる訳にはいかなくなっちゃったっ」
立ち上がった彼女は、テキパキと片付けている引越し屋を捕まえて、ちょっと待って、と予定変更を告げる。
「したくないけど、証言しなきゃ、いけないんでしょ?」
「…してくれたら助かる、ってヤツがいます。性格には問題あるけど、有能なヤツだから、危険な目には合わせられる事はないですよ」
静かに由紀夫は言った。

「あの、ね、これ…」
朔原の元に行かなくてはならなくなった山野美智子に、千明が手渡したのは、あの茶色のパッケージのチョコレートだった。
「あ!同じだけど、あれじゃないのっ」
買い直したものだと言いたいらしい。
「大事なもの、かなぁって、思って…」
彼にチョコ渡せた?と尋ねる千明に、山野美智子は首を振った。
「隠れてたから…」
そのチョコレートを受け取り、由紀夫に手渡す。
「彼に、渡してもらえません、か?明日、空港で待ちあわせする事に、なってたんです…」

「ねぇ、時間かかるのかなぁ」
「さぁなぁ。まぁ、朔原もあぁ見えても、一応女だから、考えてくれんじゃねぇの?」
成田空港にチョコレートを届けた帰り、正広が聞いた。
「心配そうだったよねぇ」
どうしても帰らないといけないけど、またすぐ来ますと、人の良さそうなイギリス人は眉間に皺を寄せながら言った。
「あ、結局千明ちゃんのチョコ、食べたの?」
悪気なく正広に聞かれ、由紀夫はイヤな顔をする。
「…食わされた。誰のおかげだっつって…」
「そぉんなイヤな顔しないのぉー」
ケラケラと笑う正広に、由紀夫が聞き返した。
「そういうおまえは食ったのかよ」
「…えっ?」
「食ってねぇなぁっ!?」
「いや、だってっ!兄ちゃんが、あんまり言うからぁっ!」

帰ったら絶対食わせてやる!!
本末転倒してしまっている由紀夫だった。

<つづく>

水曜日の夕方になって、君、君、ちょっと、春から会社を変わってくれるか?というような事になってしまって(ややこしい内容を簡単に説明するとそんな感じ)、えらいショックを受けてしまったため、なんや、訳解らない話になってしまってすんません。それでも、こうやってHPやれるくらいやから、大したショックではないのか、それともよほどHPが好きなのか…(笑)。おまえってすごいな、めちゃめちゃでも、一応はやってみんねんな、と自分にやや感心(笑)いや、でも、そんな事は仕事してたら当たり前のことやねんな。元気だそ。

次回、来週の水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

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