天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

Gift番外編』

このページの画像は、すべてyen様の作品です♪

ギフト番外編182話プチ前編『新入社員の忘れ物を届ける』

 

おう、オリーブ、なんてこったい。

この四月からサラリーマンとなった大卒男子、田中孝は心の中でつぶやいた。
というか、叫んだ。
どこにいっちゃったんだ、俺の書類!

就職難は、相変わらず続いていた。彼も大学3年からのリクルート活動をへて、どーにかこーにか入った会社。
4月1日から働きはじめ、数週間。
まだまだ解らないことだらけで混乱している頭。
そんな中、田中はちょっとした仕事をすることになった。田中が勤めている営業所から、都心ど真ん中の本社に挨拶がてら書類を届けることになったのだ。今日は、他の営業所に配属された新人たちが集まって、改めて講習を受ける日である。
しかし、今覚えてる数々の仕事に比べればそんなもの、子供の使いと変わらない。田中はちょっとした外出を楽しむ気分で駅に向かった。
「ねむー・・・」
しかし、田中は疲れていた。
日々覚えることは多く、前日は疲れの中、歓迎会をしてもらっている。まぁまぁ飲みなさい、飲みなさいとすすめられた。もちろん田中は飲んだ。飲んで飲んで飲まれて飲んで、店を出てから、朝までの記憶がない。
目覚ましの音ではっ!と気づくと、スーツのズボンだけを脱いだ状態でベッドに入っていたほどだ。
スーツはよれよれ。顔もよれよれ。それでも、会社に遅刻してはいけないとちゃんと目覚ましはかけたらしい昨夜の自分を褒めてやりたいと田中は思っている。
急いでシャワーを浴び、よれよれのスーツは、こましなスーツに替えて、急いで会社へと向かい、書類を受け取って、お昼過ぎ、会社を出てきた。
で、駅に到着した田中は、ため息をついた。
「田舎って辛い・・・」
都心へと向かう電車は、まだまだ来ない。
人気のないホームのベンチに座って、田中は電車を待つ。
天気はよく、風はそよそよと気持ちよく、田中は眠ってしまいそうになった。
「う、いかん・・・!」
かくん、と折れそうな首を振り、立ち上がった田中は、ホームをとぼとぼと歩く。歩いていれば眠気もなくなると思ったのだが。
「眠い・・・」
その結果疲れてしまい、電車に乗った段階で恐ろしい睡魔に襲われてしまったのだ。
「いかん・・・!いかん・・・っ!」
もう一度田中は立ち上がった。電車の中はがらっすきだが、それでも立ち上がった。この先、田中は何度も乗換えをしなくては本社にたどり着けない。うっかり乗り過ごすわけにはいかなかった。

そうして、田中はがんばった。
がんばって、がんばって、眠らないままやってきたのに。
最後の最後、ちょっとした快速列車に乗ったところで、自分が書類を持っていないことに気づいた。

おう、おりーぶ・・・、な、なんてこったい・・・!

書類は会社の封筒に入っていて、さっきまで確かに持っていたんだけど・・・!
一体どこで??
前の乗り換えの時はあったはず。あったはず・・・!
いや、確実にあった・・・。
だって、さっき駅で乗換えをした時に、自動改札を入ろうとしてぇ、そこでぴんぽんなったから、あ、いかんいかん、スイカチャージをしようとしてぇ、書類が邪魔だったからちょっと脇において・・・・・・・・

お!置いたんじゃん!!

自動販売機の前の!あの、なんかちょっとものが置けるようなスペースに置いたじゃん!
置いて!
置くだけ置いて!
もってこなかったんじゃん!!

ど、どーすんだよ俺!
と、取りに帰らなきゃ・・・!
しかし、これは快速列車。次の駅は少し先になる。
いやいや、でも、そこから戻って、書類を持ってから本社に行かなきゃ・・・!ああ、でも・・・!時間がない・・・!講習の時間は・・・!
まて俺!
俺が講習を受けることと、会社の書類を届けることとどっちが大切なんだ!
俺なんか、俺なんか、俺なんか講習を受けられなくったって平気だ!よし!次の駅で降りるぞ!
ちゃき!
田中は携帯を取り出した。昨今の若者であるから、もちろんここでやるのは乗り換え案内。ここから一度戻って、そこからもう一度本社に向かうと・・・。
おおよそ1時間弱の遅刻になろうか・・・。
・・・。
で、電話いれれば大丈夫かな・・・。

新人の分際で何をしでかしているのかと落ち込みつつ、携帯で電話をしようとした時だった。

「すみません」
田中はまだ若い少年から声をかけられた。
「え?」
「何かお困りですね?」
「は、はい・・・」
きりっ!とした表情の少年だった。
「僕はこういうものです」
背伸びした口調で言いながら、彼は名刺を差し出してくる。
「腰越人材派遣センター。・・・は、早坂由紀夫担当、課長・・・?」
「溝口正広と申します」
「はぁ。あ、あの、田中、です」
田中も名刺を差し出した。あぁ、俺ってビジネスマン・・・!とちょっとくすぐったくも嬉しい瞬間だ。
「田中様。何かお困りではないですか?忘れ物をしたとか」
「あっ、な、なんで・・・?」
にっこりと正広は笑った。
「届け物でしたら、うちの早坂にお任せください」

<つづく>


会社の人が飲み会の後、電車で一人になってからのことを覚えていないとゆーてました。
目覚ましで起きると、コンタクトを外し、スカートだけを脱いだ状態で寝ていたそうです(笑)ここで化粧まで落としておけば女として正解だったんですがねー!おしい!

てことで、次回は来週の水曜日!の予定は未定にして決定にあらずってことを人々はもう知りすぎている!

今までのGift番外編へ

What's newへ

SMAPレポートへ

SMAPメニューへ

トップへ