天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

Gift番外編』

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ギフト番外編183話プチ後編『雨の境目を探す』

 

<これまでお話>

その、曇り時々雨、という天気のある日。
腰越人材派遣センターの人々が珍しく書類と戦っている中、由紀夫はヒマだった。
それが、人々の神経を刺激し、大量の甘いものを買いにいかされる羽目に陥ったのだった。
そして入った和菓子屋「あん」で、突然の大雨に降られ、閉じ込められてしまった・・・。

「・・・やみませんねぇ」
由紀夫は、叩きつけるように降る雨を見ながら、ため息まじりにつぶやく。
「やみませんねぇ♪」
その調子でどんどん降り続けてっ!と「あん」のアルバイト店員ノリコは天に感謝を捧げていた。
「すみません、なんか、こんなことまで・・・」
「いいえぇ♪」
ノリコは、自分が持ってきたお弁当を、可愛らしく小さなお皿に盛りつけて由紀夫に出している。
「お口に合うかどうかぁ」
そのお弁当は、あえて黙っているが、専業主婦暦二十年、料理上手で評判な母親が作ってくれたもので、味は保証済みだ。
「お弁当作ってるんですね」
「えぇ(母が)♪」
「あ、美味い・・・」
「そんなぁ♪」
豪雨で他のお客さんがこなさそうなことをいいことに、やりたい放題のノリコだったが、奥では着々と水ようかんが作られていた。

「あー、できたできたっ、あれっ!?」

出来立ての、美味しい美味しい水ようかんを抱えて登場した「あん」の若きオーナー職人は、店の様子が変わっていることにのけぞった。
「う、うちはいつからcafeに!?」
「て、店長!」
「あっ、すみません!」
店頭のちょっとしたスペースに座り込んで、お弁当やらお茶やらを無批判に食べていた由紀夫が立ち上がって謝る。
「いやいやいや。な、なにをやってるの、ノリコちゃん」
「あ、えーーっと。あのー、この雨なのでーー」
「あ、雨すごいよねー」
「すごいですねぇ・・・。・・・!?」
「えっ」
「おっ!」
3人は、道路に面したガラスの壁の向こうを、じっと見つめる。
不思議な光景だった。
灰色のカーテンのように激しく流れていた雨が、ゆっくり左へ、左へと流れていく。カーテンが開き、右から現れるのは明るい日差し。
「雨の、境目・・・?」
反射的に由紀夫は店を飛び出していた。
「おもしれーー!!」
ゆっくりと動いていく雨の境目の間に入ると。
「左半身が雨で、右半身が晴れ!」
「わーー!楽しそうー!」
「あーー!俺も俺もーーー!!」
こうして3人は楽しく体半分だけ雨に降られたのだった。

どこからどうみても立派なバカ3人組、だった。

「じゃあ、どうもすみませーん!」
「いえいえ、どうもありがとうございましたー!またぜひいらしてくださいねーー!」
美味しい水ようかんを大量に買い込み、半分濡れた状態で由紀夫は店を出る。半分濡れたノリコと、半分濡れた店長は朗らかな笑顔で見送る。
「cafeもいいなぁノリコちゃん!」
「やりましょうよ、店長!」

「・・・ず、ずるぅぅぅいぃぃぃぃーーーー!!!」

腰越人材派遣センターに正広の悲鳴が響き渡った。
「な、何が!」
「そんなのずるいずるいずるいずるい兄ちゃんずーーーるーーーーいぃぃぃーーーーー!!!」
書類に包囲されて疲れていたのだろう。
正広は。
本当に。
床に寝っ転がって。
手足をばたばたさせて。
駄々をこねた。
「・・・うそん・・・」
「やだやだやだーーー!!俺もやるぅーー!俺もやりたいぃぃーーー!!」
「・・・いいから水ようかん喰え。一人1本買ってきてやったんだから喰え」
「な、なんですって・・・!?」
その言葉に、奈緒美が驚く。
「『あん』の水ようかんは、お一人様2本までって決められてるはずなのに、一人一本ですって・・・!?」
「おまえまで駄々こねようとすんな!」
デスクから離れ、床にしゃがもうとしている奈緒美を由紀夫は止めた。
「ねー、にいちゃぁぁぁーーーん」
駄々をこねながら床を転がってきた正広が、由紀夫のズボンにしがみつく。
「やりたいよぅぅぅーーー!」
「だーかーら。やりたいって言われて、はいそーですかってできるようなことじゃねーの」
「だってーだってー、ずるいよぅ〜。兄ちゃん、お菓子買いにいってそんな楽しいことやるなんて、ずるいよぅ、ずるいよぅぅー!俺もやりたいよぅぅーー!」
いやーんいやーん!と駄々をこねる正広をどうしてやっていいのか、由紀夫にはわからなかったので。

とりあえず、仰向けになった口に水ようかんを流しいれてみた。

「んがっ!!・・・んまっ!んまっっ!!なんだこれっ!」
「美味いよなぁ」
「うんまぁぁーーい!!」
こうして、どうにかごまかしたつもりの由紀夫だったのだが。

その週末。
「できたっ?できたっ?兄ちゃんできたっ!?」
「・・・なんでこんなこと・・・」
自宅ベランダで、豪雨を再現するという実験に取り組まされていた。
複数のホースに細かく穴を開け、最適な水圧をかけて雨の状態を作り上げる。それは、左右に移動するようになっており、正広に雨の境目を自由に楽しんでもらえるシステムでなければならなかった。
あぁ・・・。
あんな体験しなければよかった。
まだまだ、その楽しげなシステムは完成しそうもなく、早く正広がこれに飽きて欲しいと祈るばかりの由紀夫だった。


背の高いマンションでは、気候が変わるのが早く、本当に雨の境目を楽しめることができる。
と。
須賀原洋行がゆーてました。
この人が言うんだからウソじゃないと思います。多分(笑)

てことで、次回は来週の水曜日!の予定は未定にして決定にあらずってことを人々はもう知りすぎている!

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