天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

Gift番外編』

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ギフトプチ番外編187話前編『もちろん誕生日がやってくる』

 

<これまでのお話>

毎年やってくる由紀夫の誕生日をどう過ごすか。正広は考えていた。
分散しがちな性格のため、思いはいくらでも広がっていく。
すでに、収拾がつかなくなっていく正広だったが、そうなっているであろう弟を見ている由紀夫の困惑もなかなかのもの。
どうなる!由紀夫の誕生日!

<正広の考えた誕生日企画その7>

ごくごく正統的な誕生日。
前の日は、12時になるより前に寝て、起きた時に、「おはよう!お誕生日おめでとう!」と言う。
朝ごはんは普通目に。お昼ごはんはちょこっと豪勢に。
晩ご飯はごちそうで、その時にケーキも出して、ろうそく立てて、ハッピーバースデー歌って、ろうそくの火を消して、誕生日プレゼント渡す。

これを7番目に思いついた時、正広は、うんうん、と何度かうなずいた。
大体いつも突拍子もないことをしようとするから、なんとなーくおかしなことになってしまうのだ。
いや、毎年毎年、正広的には楽しいのだが。
だけど、これだけの企画であっても、お料理はどうするか、ケーキはどうするか、プレゼントは何にするか、そういったことを考えていかなくてはならなかった。
「でも、二人だけでいいかなぁ。みんなでパーティーの方がいいんじゃないかなぁ」
そうつぶやいた正広は、企画書をぱらぱらとめくる。

<正広の考えた誕生日企画その4>

サプライズパーティー。
朝から、普通にすごす。ごくごく当たり前の1日として過ごして、帰りも別々にする。
しかし、先回りして家に戻り、帰ってきたところで、愉快な仲間たちと一緒にクラッカーでお出迎え。
後はたくさんの人たちとにぎやかなパーティーで盛り上がる。

・・・って、思ってたけど、これじゃああまりにもいつも通りな感じだしー、奈緒美さんや、野長瀬さんが何をしでかしてくれるか解らないしー。
大体、兄ちゃん驚かないしー・・・。

あ。そうだった。
正広は、はた、とひざを打つ。
兄ちゃんに驚いても欲しかったんだ。
驚いて喜んでもらいたかった。んーんー、それじゃあ、その7の計画にしても、んー、驚きはないよなーー。

始まりに戻る。

そう。正広の頭の中は、それくらいぐるぐると回転していた。
まったく着地点の見えない中、正広は今日も今日とて、おつかいに出かけていた。
デパ地下は今日も楽しげでキラキラしている。冬に入りかけた街は、風が冷たいけれど日差しはまだ温かい。
「ちょっと寒いなー・・・」
日の当たるところを選んで歩きながら、正広は初めてくる街を珍しそうに眺めていた。(今日は、お取り寄せの名店に直接来ている正広だ)
昭和の商店街を思わせる町並みは、こじんまりと可愛らしい。
分厚いガラスの古い喫茶店のメニューには、絶対分厚いデコボコしたガラスのコップに入ったミックスジュースがあるはずだ。
『わー、可愛いー雑貨屋さ〜ん♪』
正広の心根には女子成分がたんまり入っているので、細々としたものが飾られた可愛い雑貨屋のウィンドウにいそいそと張り付く。
ウィンドウのあちこちには、小さなお人形が飾られていた。それ自体は売り物じゃあなさそうだったが、女の子や男の子、犬や猫。綺麗に色を塗られたシンプルなつくりのお人形はやけに可愛くて、売ってないのかなぁと気になる。
「あのー・・・」
その雑貨屋は、お店というより、ふつうの家のような造りになっていたので、ちょっとドキドキしながら正広はドアを開けた。
「いらっしゃいませ」
店員は、若い女性だった。座っている小さなテーブルの上で、今まさにあのお人形が出来上がろうとしている。
「あ、その人形・・・」
「こちらですか?」
「はい。それは、売ってるんですか?」
「あ、これは好きで作ってるだけなんですけどー・・・」
「すごく可愛いですね」
「ありがとうございます」
にこ、と笑いかけられ、正広も、にこ、と笑い返す。
「どうやって作ってるんですか?」
「これ、紙粘土なんですよ」
「へー・・・」
こうやって、と、形を作って見せてもらい、おぉ、と正広は思った。これは、楽しそうだと。

そうして、11月13日がやってきた。
11月12日の夜から、由紀夫は、なんとなく落ち着かない気持ちになっている。何かをされるのではないか、と。
しかし、正広はいたって平静な様子で、ノンキそうにテレビを見ている。お笑い番組を見ながらゲラゲラ大声で笑っている正広を見れば、何がそんなに面白いんだと覗きこむことになり。
「ひゃははは!」
「ひゃーひゃーひゃー!!」
久々にツボにはまった由紀夫も大笑いしてしまった。
で、正広はそのまま寝てしまったので、お誕生日になった瞬間、というのは特に何事も起こらなかった。
メールがやたらと来たが、イチイチチェックするのは面倒だったので、明日以降に回すことにして、由紀夫も寝て。そして朝。

「兄ちゃんおはよーー!」
「おはよ・・・」
『今日はいい子にするぞ計画』に引き続き、今日も早く起きた正広は得意気に由紀夫を起こす。
「お誕生日おめでとー!」
「あぁ、ありがと・・・」
福利厚生がしっかりしている腰越人材派遣センターには、さまざまな休暇があり、由紀夫は誕生日休暇を、正広は、ファミリー誕生日休暇を取っているので早起きの必要は別になかったのだが。
「せっかくだから、1日色々しようよぅーーー」
そういった正広は、カフェ風朝ご飯を用意していた。小さなしきりがたくさんついてる白いカフェプレートに、クロワッサンだの。キノコのサラダだの。フルーツだの。おめざのチョコレートだの。そんなものをちょこちょこと乗せて。
「可愛いじゃん」
「可愛いでしょう」
えっへん。
胸を張る正広は、今年の誕生日のテーマを、『可愛い』に集約させていた。
「カフェオレは、カフェオレボウルでいただきます!」
いくら、インスタントカフェオレであっても、大きなカフェオレボウルに入れればとっても可愛い。
『可愛い』由紀夫の誕生日は、まだ始まったばかりだ。

<つづく> 


ひゃひゃ!短いーーー!しかし、可愛いのはいいね。カフェ的な。雑貨屋的な。アルネとか、リンカラン的な(笑)

てことで、次回は来週の水曜日!の予定は未定にして決定にあらずってことを人々はもう知りすぎている!

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