天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

Gift番外編』

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ギフトプチ番外編187話後編『もちろん誕生日がやってくる』

 

<これまでのお話>

由紀夫の誕生日をどう過ごすかということを、正広は、結構真摯に考え、真摯にことに当たっている。
テーマは『可愛い』。
可愛い朝食から、誕生日はスタートしたのだった。

「兄ちゃん、お散歩いかないー?」
「散歩?」
可愛い朝ごはんの後、てきぱきっ、としゃきしゃきっ!と後片付けをした正広はそう言った。今日しているカフェエプロンは、新品。綺麗な紺色がいいぞ、などと思っている。
「天気いいし」
「いいけど・・・」
「よしいきましょう!はいいきましょう!」
と、正広は、パジャマ姿の由紀夫に、じゃあこれで!と服を出してきた。
「えっ?」
綺麗なキャメルのハイネックニットと、上品なウールのパンツは、所謂ひとつの綺麗目コーディネート。昨今はやりのちょいワルの気配は毛ほどもない。
ま、由紀夫はそのそも、ちょい、どころか、かなりワルなので、わざわざちょいワルコーディネートなどと考える必要なしなのだが。
「これ、高そー・・・」
「それは、奈緒美さんからのプレゼントです」
「あー、すごいわ。手触り。ほら」
「うわっ。なんだこれ!」
早坂兄弟は、しばしそのニットをなでさすりまくった。
毛羽立つわ!というほどに、撫でまくった後、由紀夫はそれを着て、正広も、可愛さではそれを上回るキュート爆発な服(もちろん奈緒美プレゼンツ)を着て、公園へと向かった。

「さて兄ちゃん」
「は、はい」
その公園には、グラウンドもあり、遊具もあり、森的なものもあり、つまりかなり大きかった。
「公園と言えばなんでしょう」
「・・・公園と言えば?」
「公園と言えば?」
「公園、と言えば、キャッチボール?」
きゃっ!と、正広は小さく飛び上がった。
「た、確かに・・・!それはあるよね・・・っ」
正広は野球大好き少年だから、キャッチボールなんかはかなりやりたい。しかし、ここはぐっとこらえた。
「ぶ、ぶー・・・!」
「はずれ?ま、なんも持ってきてないからな」
「公園と言えば!あれです!!」
びしぃ!と正広が指差した方角。そこにあったものは。

「・・・。代わるぞ?」
「い、いい、よ・・・!兄ちゃんは、のんびり、と・・・っ」
正広は、ボートを漕いでいた。
由紀夫を乗せて、一人で。
「ちょっと、白鳥のはどうか、と、思って・・・、だ、大丈夫・・・っ」
しかし、なかなかうまく漕げず、ボートは思ったほうに進まない。
「ど、どこ行きたい訳?」
揺れるボートの上で由紀夫はどうにかバランスを取りながら、広々とした池を見渡す。
「あ、あそこ・・・」
オールを操作しながら、きょろきょろと目線を動かした正広は、またもや自分が思っている方角からずれてしまったことに気づき、うーー・・・、と小さくうなった。
「ちょっと交代しようぜ」
「だってー」
「そこまで労わってくれんのは敬老の日でいいからさ。ほら」
これ以上意地を張ってもしょうがないだろうと、正広はしぶしぶオールを渡す。
「どれ?あの小島?」
「そう。あそこ。上陸できんの」
「へー、そうなんだ」
実際には、正広はそこに行ったことはない。でも、小さなその島には、可愛いものがあると人から聞いていた。
「おっ!なんだなんだ!」
「わ、ほんとだほんとだ!可愛いー!」
「うわ、可愛いなー!何?あの島猫が生えてんの!」
「生えてるって!」
その島は、猫の島だった。捨て猫を保護するのに、公園の管理者はその島を使っている。
「可愛いーー!」
「なんだおまえー、不細工だなー。いいなー」
ボートを降りて、早坂兄弟は猫まみれになった。正広は、小さなアメショーもどき猫を抱いて舐めるつもりかというほどに可愛い可愛いと繰り返していて、由紀夫は、白と、黒と、茶が見事なバランスの、10kgくらいありそうな猫をかまう。
「里親になりたい人が見に来たりするんだって」
「おまえ、猫買うの?」
「うちはダメだよー。しーちゃんもいるしー」
「そうだなー」
片手で、8kgくらいありそうな黒猫のアゴをくすぐりながら由紀夫は答える。帰りがけに、エサ代を寄付して行こうと思った。

二人とも、シンプルながら値段の高い服が猫の毛だらけになるのも気にせずに猫と戯れ、後ろ髪をひかれまくりながらボートで戻った。
もちろん、漕ぐのは由紀夫だ。
「おなかすいたね」
時間は、そろそろ12時。ゆっくりと朝ごはんを食べたから、まだ食事が終わって2時間くらいしかたっていないところだったが。
「ランチのメニューは?」
由紀夫が尋ねると、正広は、こっち、と歩き出す。
「お。ここも可愛いな」
「可愛いでしょ!」
えへん!と正広は胸を張る。自分の店のように。
オープンエアのカフェは、当然、白飯じゃなくて、雑穀ですよー、という、オーガニックカフェ。正広は、体に悪いものが大好きなのだが、奈緒美もお気に入りのこの店は。
とにかく、美味しい店なのだ。
有機野菜ー、五穀米ー、自然な甘さのデザートー、フルーツー。
そんなものを食べながら、由紀夫は正広に話しかけた。
「『体の中が綺麗になりそう』」
「『血液サラサラだよね』」
ナチュラルおしゃれ系雑誌にありそうな言葉でしばし会話を続け、最後はハーブティーで占める。

「まだ散歩するのか?」
「するよー?もう帰りたい?」
「いいえー、今日は正広さんのエスコートにお任せいたしてますし」
「ささ、お手をどうぞー、おじょおさん」
「嫁入り前ですので、ご遠慮いたしますわあ」
ケラケラ笑いながら、本日の、メイン目的に向かう。
あの雑貨屋についたのは、ちょうど3時だった。

「ふーん・・・、いい感じ」
「可愛いでしょ。この人形とか」
「うん」
店の中を由紀夫が見ていると、正広はカウンターの中にいる店員の女性に話しかけた。
「こんにちは」
「いらっしゃいませ。どうぞ、そちらでできますよ」
「はーい」
「できる?」
「兄ちゃん、一緒に作らない?」
「何を?」
「人形。ほら」
正広が見せたのは、作りかけの人形の胴体。お店に飾られているものは、滑らかな円錐の胴体を持っているけれど、正広が作っているのはなかなかそうはいかない。
「難しいんだけど。こっちはね、できたんだ」
店員の女性が、ちょっとしたお菓子の箱みたいなのを持ってくる。中には、人形の部屋が作られている。
「ほら。すごくない?うち」
「お!すげー、ほんとだー」
ドールハウス、というほどのものではなくて、間取り図を立体にしたような作りのものだった。家具は、正広が不器用ながら手作りしたものだ。
「後は、兄ちゃんと俺でしょ?でも最後になっちゃってさー」
「作る作る。面白そう」

11月13日の午後、早坂兄弟は、雑貨屋の店員さんからアドバイスをうけながら、それぞれ1体ずつ、人形を完成させた。
由紀夫作、溝口正広は、かなり可愛い出来だったのだが。

「・・・・・・・・・これは・・・・・・・・いったい、なんだ?」
「宇宙人ですよ!あぁそうですよ!宇宙から地球を侵略するためにやってきた物体ですよ!!」
でこぼことした体に、でこぼことした頭を持った、その人形は、早坂家のドールハウスの中で、異様な存在感をアピールしている。
来年こそは・・・!
と、指先にバンドエイドを2枚張り、リベンジを誓う正広なのだった。
「面白かったからいいけどな」
「そうだね。世の中にはやっていいことと、やると面白いことがあるんだもんねっ!」


多分、セーターは猫の毛と、木材のかけらでえらいことになってると思います・・・。
リッチ兄弟なので、そんなことは気にしませんでしょうが。

てことで、次回は来週の水曜日!の予定は未定にして決定にあらずってことを人々はもう知りすぎている!

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