天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

Gift番外編』

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ギフトプチ番外編190話前編『カフェに行ってみたい2』

 

そういえば、カフェに行ったことがない、と正広は思った。
喫茶店には行ったことはあるし、ケーキ屋さんだって、甘味さんだってあるけど、カフェに行ったことがない。
「兄ちゃん、カフェ行ったことある?」
「あるよ」

答えた由紀夫は、ん?と弟の方を見る。
「・・・行ったろ、おまえも!」
「行ってません・・・!」
「おーい」
由紀夫は、弟の頭を、こんこんこんとノックする。
「誰かいますかー!起きてますかーっ!」
「起きてるよっ!痛いなぁ、もぉー!」
「一昨日あったことも覚えていられない人がいるんですかー!!」
「そうじゃなくってぇー」
「俺は飲んだぞ、くそ寒いなか意味もなくシャンパンを」
「寒かったねー、あそこは寒かったねぇぇ」
早坂兄弟は、一昨日、おされーなカフェに行っていた。
手作りあったかカフェではなく、つん!とすました様子の、仕事できますよー!という大人の女が一人で来るような感じのカフェ。
くそ寒い中、オープンテラスの席に座った早坂兄弟は、寒さに震えながらカフェを、とりあえず堪能した。
由紀夫は、これでしばらく弟の正広がおまぬけなことを言い出すのはやめるのかと思ったのだ。

が。

彼の想像以上に、正広というのはノンキな生き物なのだった。

「カフェー、カフェ行きたいーー」
「行けばいいだろ!」
「えー、兄ちゃんも行こうよぅー」
「寒いっ」
「寒くないよっ!」
外の席なんか絶対ないと思う!無理だもん!と正広が言い張って由紀夫を連れてきたのは。
「・・・これはカフェではない」
「え?だって、カフェって書いてあるし」
そのビルの看板を指差して正広は言った。
「ほら。インターネットカフェって」
「そりゃおおむねマンガ喫茶のことだ!」
ニヤリ。
由紀夫の言葉は、正広の胸には響かなかった。ここがインターネットカフェだろうが、マンガ喫茶だろうが、その両方だろうが、正広にはかまわないことだ。正広は、ただ、その中に入りたかった。
しかし。
「・・・ここ、会員にならないといけないの」
「あぁ?」
「身分証明書がいるんだけど、僕学校にも行ってないしー」
「社員証があるような会社じゃねーし?」
「兄ちゃんなら、免許持ってるから♪」
兄ちゃんの免許は、偽造製品ではあったが、それはもう見事な偽造っぷりなので、どこにいっても通用してしまう代物だ。
「よく似た兄弟だから、弟ですってことで一緒に作ってもらえるかなーって♪」
「そうそう。俺らよく似た兄弟だから。似てねぇ!」
「そんなことないない。ほら目も二つ、鼻は一つで口一つ。似てるって、似てるって!」
はい!行きましょう!はい行きましょう!と、兄の背中を押して、てってこ正広は走る。
ものっすごい量のマンガがあるのよ!と典子が教えてくれた店だった。
由紀夫が、正広ともども会員になり、二人席を選んで席につく。ゲームもできるし、DVDも見られますよ、という席だったが。
すでに二人の目の色は変わってしまっていた。
なんでこんなとこまできてゲームをしなきゃいけないんだ!
DVDなんか家で見る!
マンガだマンガ!なんだこのマンガの量!
マンガ喫茶といえばこれだよね、という、フリードリンクに目もくれず、無言のまま棚の間を回遊する二人。もちろんすでに別々の通路を歩いている。

『ふわぁ〜・・・!ドカベンにしよっかなぁ〜・・・、キャプテンかなぁ〜・・・、それともアストロ球団っ!?』
正広の瞳は、キラキラキラ〜〜☆ととめどなく輝く。
『あ、あっ、でも、どうしようっ、こんなにあったら読めないよぅ〜!』
決められないー!と通路をウロウロしている正広の横を、どっちゃりマンガを持った由紀夫が通過していく。片腕にはマンガをどっちゃり持ったまま、ドリンクコーナーへ向かい、コーヒーなんぞをひっつかんで席に戻る。
『今日はこの六三四の剣全24巻を読み終えるまでは一歩も動かん・・・!』
そう決意した由紀夫は、続きをとりに行く間以外は、まったく動かなかった。(それも、持ってくる冊数がどんどん増えていったので、結局三度しか取りに行っていない)
その間、正広が読めたマンガ、六冊。
ただでさえ読む時間が遅い上、どれから読めばいいのぅーー!と少女マンガの棚までくまなく回った結果だった。

・・・不完全燃焼だ・・・!
「いやー、すごかったな」
ニッコニコしている兄との帰り道、正広はもやもやしたものを感じざるを得なかった。
フリードリンクだって、もっと飲みたかったし、マンガももっと読みたかったし、買うほどじゃないゲームもあったし、うぅぅー、また行きたいー!っていうか行く!
もう会員証もあるからっ!
読みたいマンガが決まらなかったのがいけないんだよね。なんのマンガがあるかインターネットとかで検索できるみたいだったから、先に検索すればいいんだよね。だってインターネットカフェでもあるんだから。
・・・マンガ読みに行くのに、そこでインターネットしなくってもいいのか・・・。
でも、どうやって読みたいマンガ決めたらいいの!?
いや、今度こそドカベンだドカベン!

そんな正広は、自分の前に、またもや別の未体験のカフェが現れることなど気づくよしもなかった・・・。

<つづく>


家のそこそこ近くに、そこそこ大きそうなマンガ喫茶ができそうな様子です。
んー・・・!通うようになったらどうすればいいのか・・・!

てことで、次回は来週の水曜日!の予定は未定にして決定にあらずってことを人々はもう知りすぎている!

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