天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

Gift番外編』

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ギフトプチ番外編190話後編『カフェに行ってみたい2』

 

「えーっと、銀行終わり、郵便局終わり、本屋さん終わりっと。後は〜」
正広は、おつかいメモに目を落とす。
一度お出かけしたら、一度に用事を済ませるようにしたいので、メモは結構長い。
最後の最後は、基本的にお菓子やさんだ。手ぶらでは帰れないことになっていた。
「あ、あ、名刺も取りに行かなきゃ。今日、忙しいやー」
それもこれも、ここ2・3日天気が悪いー、とか、寒いーとか、ひろちゃん、遊ぼうーという奈緒美の誘いなんかがあり、急ぎではない仕事がたまりにたまっていたせいなのだが。
正広は、正広スペシャルケッタマシーン(別名ママチャリ)にまたがり、よいせーっ!と、走り出す。
名刺を受け取ったら、最後はデパ地下に行って、典子ちゃんご指定のケーキを買って帰る。
正広の予定はそう決まっていたのだが。

「うっそーん!」
正広は絶望の声を上げた。
「しっかりしろー!正広スペシャルケッタマシーン!」
倒れている正広スペシャルケッタマシーンのそばに膝をつき、起きろー!と励ます。
しかし、倒れた正広スペシャルケッタマシーンは、二度と立ち上がることは・・・・・・・
ないことはないが、今すぐには無理そうだった。物理的に立ち上がれても、自転車と動くことは無理なのだ。
そう。正広スペシャルケッタマシーンは・・・・・・、チェーンが外れてしまっていた・・・。
正広は、自転車のチェーンを外したことがない。
外したことがないのだから、当然直したこともない。できることは、手で押しながら自転車屋に行くことだけなのだが、残念ながら名刺は新しいデザインにしたため、印刷所は今日初めていくところで近所の様子が解らない。
「あーー、どうしようーーー」
もう名刺を受け取っていれば、腰越人材派遣センターに戻るところなのだが、これから印刷所に行くところ。
「自転車を置いていく・・・、でも、取られるかもしれないし・・・」
チェーンの外れたママチャリを、どれだけの人が盗ろうと思うのか不明だが、正広にとってはとても大事な自転車なので、慎重になってしまう。だから、そのまま、とにかく押していく。
別に重たい訳じゃないし、置いていくのは可哀相だから。

「どうもありがとうございますー」
新しい名刺は、奈緒美好みの派手なものに出来上がっていた。
「いいえ、わざわざ取りに来ていただいて申し訳ありませんでした」
「いえいえいえ、近くに来る用事もありましたので」
うふふ。えへへ。と、大人の微笑みを交し合い、正広は自転車屋の場所を尋ねる。
「ちょっと自転車のチェーンが外れちゃって・・・、この辺りに自転車屋さんってありませんか?」
「この辺り・・・・・・」
印刷所の綺麗なお姉さんは困惑顔になった。

そこは、銀座だった。

『あるわきゃねーか!銀座に自転車屋は!』
デパ地下に行くには都合がいいが、自転車が壊れてもどうすることもできない街。それが銀座。
多分。
いや、ひょっとしたらどっかに、昭和八年創業とかいう自転車があるのかもしれないけどー・・・。
だから、正広は覚悟を決めるしかなかった。
このまま、事務所まで歩いて帰ろう、と。
「典子ちゃんのケーキには、たんまりドライアイスを入れてもらって、と」
それでもケーキは買って帰る。
典子のため、というよりも、正広自身のために・・・!

「気持ち、いい、なー」
自転車に荷物を一杯乗せて、正広はその自転車を押して歩く。
天気はよく、風はそよそよ。冷たすぎない風が春らしくてよかった。幸いなことに、早坂兄弟はどちらも花粉症ではない。(当然ながら、野長瀬は花粉症だ。そういうのを外す男ではない)
今まで歩いたことのない道を選んで、正広は歩いた。
なんか、いい感じと思う。
よく、そういうの言うじゃん。いつもと違う道を歩いてみませんか?とかさーー。おんなじ道ばっかり歩いていたら、頭よくならないとかさー。この一歩一歩で頭よくなってるかもっ。もっと頭を鍛えるDSトレーニングで20歳いっちゃうかもっ!(正広は漢字に弱いので、なかなか高得点が出ない)
と、歩き出して最初の30分くらいは正広の機嫌は大変よかった。
が、やたらと張り切って歩いていたものだから、ちょっと疲れてもしまった正広の目に、『カフェ』の文字が飛び込んできた。
「あ、カフェ」
いわゆるカフェ、そしてインターネットカフェこと、マンガ喫茶にも行った正広は、あっ、カフェカフェと、そちらに流れて行く。
雑居ビルの三階にあるらしく、正広は正広スペシャルケッタマシーンを大切に停めて、階段に脚をかけた。
「あ、もしかして・・・」
てこてこと階段を上がりながら、看板には、なんだか可愛らしいマークがついていたのを思い出す。
「ここって、あれかも・・・」
正広は、ちょっと前に雑誌でその記事を読んでいた。
最近、街には『ニットカフェ』なるものがあるのだと。
そこでは、お客さんが編み物をしているという。
編み物はしたことないなー、どうやるのか全然解らない。でも、なんだか面白そうじゃん?喫茶店で編み物だよ!ざんしーん!
うひょひょ、楽しみだーーっと、これまた可愛らしいペイントされている白木のドアをあけて、ぱかっと口を開けた。

「いらっしゃいませー」

看板や、ドアからイメージするのは、シャンプーのコマーシャルに出てくるような女性。(エッセンシャルシャンプー。あの頃の私がいた、ってやつの、今、な人たち)
さらさらな髪にナチュラルメイク、自然素材が似合うさわやかな女性。だったのだが。
正広に、声をかけてくれたのは。
男性。
で、とても、カフェ店員には見えない人だった。
「あ、あの・・・」
「初めてですか、ねぇ?」
「あ、は、はい」
「何か作りたいものありますか?」
比較的がっしりしたお兄さんからそう聞かれ、あ、やっぱりニットカフェなんだ、と正広は安心する。大体、テレビに出てるニットの貴公子だって、貴公子ってくらいだから男の人じゃん。
「えっと、初めてなので、すぐに何か作りたいとかはないんですけどー」
「あ、そうですか。技術の時間とかでやったことは?」
「技術?家庭科じゃなくて・・・?」
「あぁ、今の学校だと、家庭科になるのかな。技術・家庭科って分かれてない」
「あーー、ちょっと僕、入院してたりして、学校ちゃんといってないんで、あれなんですけどー・・・」
おや、と、店員さんはちょっと気の毒そうな顔をして、じゃあ、こういうのはどうですか?と、正広の前にちょっとした箱を出してきた。
「キットなんですけども」
「キット・・・」
「LCDが5×7で配置されてて、好きなところに文字や絵を表示できるんですよ」
「ん???え?」
「小さい電光掲示板みたいなもんですね」
「・・・それを、ニットで?」
「ニット?いや、はんだで」
「は、はんだ??」

あれ?これって夢かな?なんか夢の世界に入り込んじゃってるのかな?毛糸で、電光掲示板でできるとか、はんだとかって。
は、はんだ?はんだって、はんだづけのはんだ!?

「すいません、ここはニットカフェじゃなくって・・・?」
「はんだつけカフェです」
「そんなカフェが!?」

カフェの世界、奥深すぎて、早くも正広挫折の気配・・・!


秋葉原にあるんですね。いや、はんだづけさせてくれるスペースがあるってところが(笑)
ニットカフェにはいってみたいです。どんな空間なんかと!

てことで、次回は来週の水曜日!の予定は未定にして決定にあらずってことを人々はもう知りすぎている!

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