天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

Gift番外編』

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ギフトプチ番外編191話後編『カフェをやってみたい???』

 

<これまでのお話>

おされカフェ、インターネットカフェ、はんだごてカフェと、様々なカフェをこらしめてきた溝口正広。
続いてはメイド喫茶だ!と意欲を燃やしたのだが、もうそんな時代ではないのだ。
もっと新しいカフェを作るべく、腰越人材派遣センターが動き出した。そのカフェとは!

「あれー?こんなところにカフェなんかあったっけ」
彼は、首を傾げる。そして、こっちを見た。
「あ、どうもお久しぶりです。稲垣アニマルクリニック院長、稲垣吾郎です」
そのお久しぶりに登場した稲垣アニマルクリニック院長、稲垣医師は、近所のお散歩中に、見慣れない看板を発見した。
「おうちカフェ・・・」
診療時間中ではあるが、今日の患畜は、大型犬、大型犬、休んで、休んで、中型犬(肥満)、と犬ばかり。稲垣医師の好みではない、ということで、助手の草g剛に診察を任せ、気分転換のお散歩だ。
そんな時に、目新しいカフェがある。
そこで、入らずに通りすぎられようか!

ということで、マンションの一室を使っている『おうちカフェ』のドアの前に稲垣医師は立っている。
ごく普通のファミリータイプのマンションで、そこが隠れ家ぽくっていいなと思いつつ、ドアを開けると。

「お帰りなさーい!」
ぱたぱたっとスリッパの音をさせながらやってきた少年に、稲垣医師は目を丸くする。
「正広くんっ?」
「あれっ?稲垣先生だ。え?なんでっ?」
「えっ?あれ?引っ越した?え???」
「違います、違います、ここ、おうちカフェなんです。どうぞどうぞー、靴脱いでくださいねー、スリッパどれがいいです?」
「何してんの、何してんのー?」
正広が、一つとして同じ柄のないスリッパをひっくり返している横を、地味なブラウスに地味なスカートになぜか割烹着の奈緒美が、洗い終わった洗濯物をかかえて通っていく。
「ほらほら、早くしないと」
「えっ?あれ?社長さん??」
玄関には、いくつかの靴が置かれていて、それにはなんの関連性も感じられない。サンダルがやけにリアルだ。
「稲垣先生、どうしますー?えっとねぇ、アンニュイなスリッパっていうのがどれだか・・・」
「いや、別にアンニュイなスリッパである必要はないし、そもそもアンニュイじゃなきゃやだって訳でも・・・、あ、じゃあ、その薔薇模様のにしようかな」
キャラは裏切ってはいけないということを、稲垣医師はよく解っている。
「改めてっと。お帰りなさーい。早かったねっ」
「う、うん・・・」
短い廊下を通り、リビングに入ると、広いリビングにはダイニングテーブル、ソファセット、気持ちのよさそうなラグ、どでかいプロジェクター、リクライニングチェア、なぜかロッキングチェアなどが間隔をとって置かれている。
思った通りに腰越人材派遣センターの人々がいた。
「お帰りー」
面倒くさそーに言う由紀夫は、対面キッチンの中にいる。
「あ、ども」
「何飲む?なんか食べる?それともお風呂にする?」
「お風呂っ?」
「あ、その前にどこに座りますー?」
「えーっと。じゃあ・・・、あ、いいソファだね」
「でしょー?っていうか、いいソファなんですか?」
「うん。へー。ここがいいなー。・・・で、ここはカフェ、なんだよね」
「そーですよ。はい、メニュー」
「あ、メニューは普通・・・・・・じゃ、ないね・・・」

飲み物、食べ物と、そこらのカフェにあるようなものが色々ある中で、お風呂だの、洗濯だのが書いてあり、さらに。
「お説教・・・」
「あ、これはですねぇ、なんか、叱って欲しいことがあったりしたら、言ってもらったら」
「お説教してくれると」
「だらだらもありますよ。あっち、だらだらスペースです」
正広が指差した和室には、座布団やクッションが転がっていて、やや薄暗くしてあった。
「あ、あれいいねぇ」
ソファもかなり気持ちいいが、和室でごろんとするのもよさそうだった。
「そうだなぁ、じゃあ、まぁ、お風呂はあれなんで、ミルクティーと、そうだなぁ」
稲垣医師は、ベランダで洗濯ものを干している奈緒美を見て、それから由紀夫に目線をやる。
「『今日会ったこと』お願いしようかな。お兄さんに」
「あぁ〜っ!?」
「かしこまりましたー」
キッチンから、由紀夫のドスの効いた声がしたが、正広は気にせず、紅茶、と、今日会ったこと、由紀夫、と書いて、キッチンに持っていった。
「兄ちゃーん、オーダーでーす」
「・・・なんで、あいつが来てんだよ。連絡したのか?」
「いやー、だって今日プレオープンで、3人しかまだいないのに呼ばないよー。でも、看板は出したから、それ見たのかな」

そう。
こここそが、腰越奈緒美が考案した『ファミリーカフェ』だった。
妹カフェ、お父さんカフェ、お母さんカフェ、などと、一人ずつに特化する必要がどこにある!
「ここは『家庭』という劇場になるの・・・!」
ベランダに、それは見事な洗濯モノを翻らせながら、奈緒美はリビングに戻ってきた。
「様々なタイプのお父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん、お兄ちゃん、お姉ちゃん、妹、弟、赤ちゃん、いとこ、はとこ、おじさん、おばさん、なんかを集めるわ!」
「そ、そうなんですか・・・」
「まず、大学で宣伝しようかと思ってるの」
「なんでですか・・・?」
「(1.5倍のスピードでお読みください)今企業が求めているのは、コミュニケーション能力の高い学生。しかし、今時の学生は、仲間うちででしか付き合うことができない。上の人、下の人、赤の他人に対して、どういうスタンスを取ればいいかという訓練ができてないのね。そんな時に、こういう雑多な人と触れ合える場所があったらどうかしら?基本的にうちは、一組の客に、一人、キャストをつけるわ!」
恐ろしい早口だった。
「どんなキャストがついても、それらしく話ができるような訓練にもなるのよ!お見合い大好きおばちゃん、みたいなキャストが登場すれば、お客さん同士のマッチングだってできるわ!そう!!まさにここは昔のご近所さんでもあるの!」
「はい、ミルクティー」
由紀夫が、呆然としている稲垣医師の前にカップを置く。カップ&ソーサー、ではなく、マグカップだ。
「あぁ、家だから」
「家だから」
「由紀夫!あんたも聞きなさい!」
「もう聞いたしー」
「(2倍のスピードでお読みください)さらに!日本の雇用問題の一助になるかと思うのよ!2007年問題。大量の定年退職者。仕事仕事でやってきて、仕事を離れたら何をしていいか解らない夫たち。その夫にまとわりつかれ、家にいては息がつけない妻たち。そんな人たちが、2011年までに全県でオープンされる『おうちカフェ』のキャストとして登録したらどうかしら!?様々な事情で、はからずもシングルマザーになってしまったお母さんたち。どうしよう。子供を預けるにもお金がかかるけど、子供と一緒じゃ仕事もできやしない!そんな時、むしろ赤ちゃん連れてきて!という職場があったらどうかしら!うちは赤ちゃんにもキャストとしてギャラを支払うわよ!!」

「えーっと。今日の出来事だっけ・・・?」
「今日あったこと・・・」
「えーーーっと。いや、別に俺が話すって訳じゃなくて、聞くのがメインになるんだけど」
「あ、そうなの。ま、お互いに話ましょうよ。よく考えたらお兄さん、確かにコミュニケーション能力に問題ありそうだし」

「(通常のスピードで、しかし、声の大きさを2倍に)このおうちカフェで日本を変えて見せるわ!!」
「なっちゃんかっこいーーー!!」
「ぺけぽん!」
びしぃ!とオリエンタルラジオなポーズを決めた奈緒美から、完全に目を逸らした状態で、由紀夫は言った。
「今日は、アー、俺って、気の毒な社長がいる会社に勤めてんだなーってことが改めて解って、ちょっと、軽く凹んでるってとこかなー」
「あー、僕は、どこで笑っていいかよく解らなくて混乱してるってとこかなー」

果たして腰越奈緒美人材派遣センタープロデュース(だてに人材派遣してる訳じゃない)『おうちカフェ』は成功するのだろうか。
2011年を待て!


結構いいビジネスモデルじゃないかと・・・(笑)。夢はワールドビジネルサテライトで取り上げられることです(笑)

てことで、次回は来週の水曜日!の予定は未定にして決定にあらずってことを人々はもう知りすぎている!

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