天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

Gift番外編』

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ギフトプチ番外編194話プロローグ編『良い眠りを届ける』

 

もちろん、腰越人材派遣センター社員一同はどこにでもよくいる、のレベルを超えたミーハーたちである。
踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃそん、そん、どころの話ではなく、人の倍は踊る!という人間たちが、日本代表が敗退したくらいでワールドカップから目を逸らすことなどできないのだった。

なので当然のことながら。

「んーー・・・」
「眠い・・・」
会社にやってくる時間は遅くなる。その上、いつもいつも眠い。
朝4時からの試合を見ようなどとするからだった。
朝4時に起きるためには、前日早く寝る必要がある。しかし、テレビっ子の正広は、なかなかそれができずに、結局12時ぐらいまでは起きている。
それから4時ほど寝てのテレビ観戦。
6時半くらいに結果が出たら安心して、一応8時ぐらいまで寝ようとする。
が、8時の目覚ましをぶっ飛ばすと、あれっ!9時過ぎてる!?なんてことになる。
そうすると結局のところ、6時間半くらいは寝たことになるね?

「そーなのよねー。だから、まぁ、なんか寝たような感じで、夜、すぐには寝られないってゆーか」
大あくびで、マスカラを涙でにじませながら奈緒美が言う。
「そうですよー。早く寝られないんだもんーー」
正広も顔の半分を口にする大あくびしながら答えた。
野長瀬は会話に加わることもなく、机に突っ伏して寝ている。
残念ながら(?)仕事をしなくてはならない典子は、メンソレータムを目の下に塗る、という古典的な方式で、必死に起きていた。
「ねーー、次って南アフリカであるんでしょーーー?今回よりマシな感じになるのぉーーー???」
「変わらない」
そんな死体の群れの中、唯一しゃっきりしている男、早坂由紀夫はすかさず答えた。
「ドイツと日本の時差、−7時間。南アフリカとの時差、−8時間」
「マイナス7時間って、どゆことー」
「だから、日本が昼の12時ながら、ドイツは朝5時」
「う?」
「起きろ!それくらいの引き算できるだろ!」
「うーー??じゅーに、ひく、ななーー?」
「あー、ダメだ、ダメだ。思考がひらがなになってる」
「ねぶくなってぎだ・・・」
「ここで寝るから、夜寝られなくなるんだろーー!!」

「由紀夫さん・・・」
典子が低い、ドスの効いた声で言った。
「そんな正論が脳に届くくらいだったら、あんなことになってませんよ・・・」
「そうだな・・・」
それぞれの席に突っ伏して寝ている3人を見て、由紀夫は首を振る。
「おまえ、それ、急ぎなの?」
「少し、だけ・・・」
「変わってやろうか?」
「後、ちょっと、ですから・・・!」
よろよろと請求書など作りながら、典子は、ときおり訪れる眠気による浮遊感を楽しんでいる。
「そんな状態の請求書でいいのか・・・」
一人正常な由紀夫は、出来上がった請求書のチェックをそっとやってあげる。

そしてそのうち。

一人ぼっちになった。

午後一の腰越人材派遣センターは、さんさんと降り注ぐ明るい日差しと、すぅすぅと心地のよい寝息に満ち溢れている。
結局、常に少数派というのは不遇なものなのだろうか。
一人起きている由紀夫は、自分でできる仕事を、しみじみとやっている。
由紀夫は、眠い、となったら瞬間的に眠れるし、起きたと同時に動ける。その深い良質な眠りは、睡眠時間の短さにも関わらず体や精神に影響を及ぼしていなかった。
つまり由紀夫は、踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃそんだから、どんどん踊って見るけど、まったく体に影響ないもんねーー、タイプと言えた。
そんなことを考えながら、これが会社か?という社内を見回す。
他の3人がどんな睡眠の仕方なのかは知らないけど、弟の正広のことは解る。寝よう!とすると眠れなくなる天邪鬼な性格だ。逆に、起きてなきゃ!と思うと眠くなるらしい。
朝4時からのサッカーを見るために、どれだけの目覚ましをセットしていることか!
実際には、由紀夫はすぱっと目を覚まし、起きろーー、と起こしてやっているのだが、一人で起きなきゃいけないとなれば、隣の部屋の人も起きるわ!というような大音量で目覚ましが鳴り響くことだろう。
また、今みたいな非常事態ではなく、日常の寝起きも、別段まったくよくはない。
起きた、といっても、意識がぼんやりある、くらいのところから始まり、人として当たり前の活動ができるようになるまで結構時間がかかる。
一度、どれくらいかかるのかな、と、まったく口を出さずに、様子をうかがっていたところ、一応目が覚めた、から、ベッドに起き上がる、までが35分。驚愕した由紀夫を尻目に、もう一度横になった正広が、ベッドを出るまで、さらに40分。
何が恐ろしいって、その間、ただぼーっとしているだけで、なんにもやっていないというところだ。
テレビもつけてはいかなったので、テレビに夢中になることもできていない。
本気で寝起きが悪いんだなぁ、と思ったものだった。

「んーー・・・」

ヒマにあかせて、由紀夫は考えた。
今の状況を考えても、多分自分のような人間は、世間では少数派に属するんだろう。
すぱっと眠れて、すぱっと起きられることは、幸運だと考えるべきに違いない。
では、自分と、弟の違いはなんなのか。
何かをすれば、正広も、自分のようにすぱっと眠れて、すぱっと起きられるようになるものなのか??
これを解明できれば、もしかして、商売になるんじゃないか??
眠っている奈緒美の思念だけが由紀夫に乗り移ったのだろうか。
すやすやと4人分の寝息に満ち溢れる空間で、由紀夫は、眠りとは・・・!?ということについて、深く考えこんでみた。

<つづく>


大昔見たアニメに、そのカプセルに入って寝ると、短時間で8時間分の睡眠がとれるってゆーのがありました。
確か闘将ダイモスです。懐かしい。懐かしすぎる(笑)

てことで、次回は来週の水曜日!の予定は未定にして決定にあらずってことを人々はもう知りすぎている!

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