天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

Gift番外編』

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ギフトプチ番外編194話プチ前編『良い眠りを届ける』

 

<これまでのお話>

ワールドカップなどがあると、眠らなくなる会社腰声人材派遣センター。
というか、夜がワールドカップなら、昼間に職場でも寝てしまう会社腰越人材派遣センター。
その仲間に入れない、いや、別に入りたくもないけども、という由紀夫は、睡眠とは?という事柄に思いをはせる。

さて、よい睡眠とは何か。
すよすよと、今日も今日とてノンキに寝ている弟を見ながら由紀夫は考えた。
休日の朝、正広は起きたら損だと思っているかのごとく起きてこない。
くるんと丸く小さくなって、毛布の中に埋もれて眠っている姿は、冬眠中のリスのようでもある。
穏やかな寝顔は、よい睡眠をとってるようにも見えるのだった。
しかし、時間はすでに十時に近い。
由紀夫は、試しにベッドの上にある窓のカーテンを引いてみた。
明るい日差しが部屋中に溢れかえった。空は青く、あーー、こりゃいい朝だね!というのに、突然の朝の光に、リス正広をもぞもぞと毛布の中に入りこんでいく。そののろのろとした動きは、動物の反射としてはのんびりしすぎている。
眩しい!と思えば、瞬間的に毛布に入ってもよさそうなもんだが・・・。
そんなことをベッドサイドに立ち、腕組みしている由紀夫は思う。
休日の朝、起きたら損だと思っているかのような正広は、休日前夜、寝たら損だと思っているかのごとく起きている。なので、今日の睡眠時間は今のところ6時間。
特別長くはないけど・・・。
休みの日くらいもっとねてもかまわないとは思うけれど・・・。
やっぱり由紀夫は平気なのだ。
正広が4時に倒れるまで起きていて、自然に8時には目が覚めた。多少眠いけれど、不快なほどでもない。
部屋の中とはいえ日の光も浴びて、余計元気になるくらいだ。
正広はようやく毛布の中に入りこみ、小さな山がベッドの上にできる。
よいしょ、とその毛布をまくりあげ、顔が見えるようにする。
するとまたもそもそと入り込んでいこうとする。
まくる。
入る。
まくる。
入る。
繰り返すうちに、ベッドの端の端まで山は移動していったが、それでも正広は起きようとはしないのだった。
・・・面白い。
由紀夫は、表情をほとんど変えないままに、今度は角度に気をつけながら毛布をまくってみた。
まくる。
入る。
まくる。
入る。
こうして、ヘッドボードにくっついた形で山ができる。
そこそこ大きなベッドの上を、これだけ動いているにも関わらず目は覚めない状況をどう説明したらいいのか、と由紀夫は首を傾げた。
身体が動くことと、頭が動くことは別問題か?
これは脊髄反射ってやつなのか??
なかなか見飽きない正広の寝姿ではあるが、毛布から出てきそうもないので由紀夫は朝食にかかった。
今日準備したのはパンケーキ。フライパンでどんどん作り、どんどん積み重ねていく。ふわふわパンケーキには、メイプルシロップをたんまりかけて、バターも乗せて、なんともいい匂いがキッチンに満ちる。
ので、そのお皿を持って、ベッドに戻る。
今度は顔の位置を避けて毛布をまくり、匂いが毛布の中に入っていくように風を送った。
ごそっ。
と、山が動く。
山なのに、疾きこと風の如くといった感じで、パンケーキに向かって動く。
『カカカカ・・・!』
声を出さないままに由紀夫は笑う。
『面白い!面白すぎる!』
しばらくメイプルシロップの香りで小山を思うがままに動かした後、冷める冷めると由紀夫は朝食にかかった。
ベッドサイドのぎりぎりまで動いてきた小山はそこで止まっている。
下敷きの上にまいた砂鉄を、その下から磁石で動かしてるみたいだった。

で。
美味しくパンケーキをいただいた後、由紀夫はとまったままの小山を眺めながら思う。
こういう甘い美味しそうな匂いが大好きな正広が、実際には起きてこないということは、眠気が食い気を凌駕してるということだ。
起きてる時は、何よりも勝っている食い気がおさえられているとは驚かされる。

「なんで!なんでないのパンケーキ!」
「粉が最後だったから一気に作って一気に食ったから・・・?」
「から?って小首傾げないでよー!とっといてくれてもよかったじゃーん!」
「いや、いつまで寝るか解らなかったし。せっかくふわふわと美味しそうにできたから」
「くやちーーー!」
それから一時間して起き上がった正広は、パンケーキ!と起きるなり言った。
その頃には、お昼は何にしようかなーなどと思っていた由紀夫は、なんだいきなり!と驚いたのだったが、もうない、とあっさり言った。
「パンケーキ一人で食べるなんて・・・!」
「だから、起きてこないから」
「だったら、起こしてくれてもいいじゃーん!」
「起こしたよ」
「えーー?だって、俺起きなかったじゃん!」
「えっ!?」
「起きてないんだから、起こしてくれてないんじゃんっ!」
「り、理不尽な・・・!」
「ぱんけーきぃーーー!」
起きた、とは言え、ベッドから出てきている訳ではない正広は、そこでじたばたと暴れる。
「食べたいよぅーー!」
「子供か!」
「おなか減ったよぅーー!!」
そりゃそうだった。
4時に寝て8時間経過。起きてる間にぱくぱくぱくぱくスナック菓子などを食べてはいたが、そろそろ消化もされてるだろう。
「起きてくるんだったら食うもんあるけど」
「ここで食べたいぃ〜」
「あ?」
「だってお休みじゃん!カフェオレとクロワッサン食べるぅー!なんか、こーゆートレイにバラが乗ってるの!」
「欧米か!」
びしっ!と、頭頂部にチョップを入れ、由紀夫はキッチンに戻った。

大変興味深い、ってゆーか面白い観察だったが、果たしてこの正広の睡眠形態というのはどの程度平均に近いのかが解らない。
もうちょっと寝るの大好き社員たちを調べてみたいと由紀夫は思った。

<つづく>


久々に大復活(笑)しかしプチすぎる(笑)!

てことで、次回は来週の水曜日!の予定は未定にして決定にあらずってことを人々はもう知りすぎている!

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